勇敢_第15話

Last-modified: 2008-01-13 (日) 13:09:45

・スカリエッティのアジト

 

フェイトの話を聞いたトーレは、同行しているシャッハにも武装解除を求めた。
当初は敵の陣地で武装を解除する事に抵抗を表していたが、フェイトの説得と、自分達が怪しい行動を起こしたら
直に攻撃をしても良いというトーレの提案を受け、しぶしぶ武装を解除、
今はトーレ達に連れられ、スカリエッティがいるオペルームまで歩いていた。
フェイトに考えがあるとはいえ、周囲の警戒を怠らないシャッハだが、
目に付くのは溶液に満たされたポットに入れらた全裸の少女達の姿だった。
「・・・・くっ・・・・」
その光景に顔を顰める。そして二度と見ないように前方の戦闘機人の頭だけを睨みつけた。
そんなシャッハの態度を見たフェイトは落ち着くようにそっと肩を乗せる。そしてシャッハ同様に
通路の左右に置かれているポットを見据える。
「(・・・・・これが・・・・・もし・・・・・調べた事が真実なら・・・・・・)」
シャッハのように感情を表さずに、フェイトは考え込む。

 

フェイトは、当初はスカリエッティのことを『非合法な人体実験などを行なっている科学者』と決め付けていた。
もしもフェイトが一局員だったら、その考えを曲げずにスカリエッティを逮捕していたに違いない。
だが、今のフェイトは執務官であり、自身の母親や兄、アコース査察官などの力強い情報網を持っている。
上がどんなに決め付けていようとも、相手を追う側としては追う相手のことを徹底的に調べなければ、気がすまなかった。
正直、フェイトはこの几帳面とも言える性格を今回の事件ほど誇りに思ったことはない。
『ジェイル・スカリエッテイ』の目的・・・・・局から発表された情報・・・・・・・導き出される答えは・・・・

 

「つきました」
トーレの声に我に返ったフェイトは前を見る。すると、そこには一人の男が椅子に深く腰をかけいてた。
「ジェイル・・・・・・・スカリエッティ・・・・・」
座っている男の名前を確認する様に呟く。
「ようこそ、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官」
ジェイル・スカリエッティは椅子から立ち上がり、訪問を歓迎するかのように名前を呼んだ。
名前を呼ばれた事に、自然と押し黙るフェイト。だか、スカリエッティの姿を確認したシャッハは即座に
ヴィンデルシャフトを実体化しようとする。
「シスターシャッハ!待ってください」
その行為を、トーレ達が止めるより先にフェイトが止めに入った。
「フェイト執務官!何故です!!」
「先ずは話し合いを、話し合いには武器は必要ありません。私の家族から、教えてもらった事です」
「・・・・・わかりました・・・・・」
優しく語り掛けるフェイトに観念したのか、シャッハは溜息をつきながらヴィンデルシャフトを仕舞った。
「良い心がけだ」
満足げに呟いたスカリエッティはトーレ達に目線を送る。それだけで理解した二人はそれぞれ武装を仕舞い、スカリエッティから離れる。

 

「これも必要ないだろう」
続けて椅子に備え付けてある端末を手早く操作し、アジトを覆っていたAMFを全て解除する。
その行為にシャッハは信じられないと言いたげな表情をし、フェイトは予期していたかの様に動じず、一歩前に出る。
「だけど良いのかい?『非合法な人体実験などを行なっている科学者』である私を捕まえなくても?」
「はい、本当に『非合法な人体実験などを行なっている科学者』だったら、直にでも逮捕しています」
フェイトはスカリエッティを真っ直ぐに見据える。そして
「教えてください・・・・・・・貴方の目的を」
かねてからの疑問をぶつけた。
「私の・・・・目的か・・・・・・・・」
椅子から立ち上がり、壁に向かってゆっくりと歩き始めた。
そして立ち止まり、ポットに入れらた全裸の少女達を悲しそうな瞳で見つめる。
「私の目的・・・・・・・彼女達の救済だよ」
「なっ!何を言っているんですか!彼女達をこんな風にし、実験材料に仕様としているのは貴方で(やめてください」
スカリエッティの目的を真っ先に否定しようとするシャッハ。だが、セッテが割り込み、シャッハの言葉を遮る
「貴方に・・・ドクターの何が解ると言うのですか・・・・目先の情報しか信じない・・・貴方達に・・・・・」
セッテがシャッハを睨みつけ、普段は表にあまり出さない感情を露にしながら言い放つ。
「いや、彼女の言っている事は間違いではないよ。確かに私は彼女達を実験材料として集めた」
「ですが、それはあくまでも『名目』でです」
フォローするかの様にトーレが口をはさむ。
「ドクターは、非合法な研究などで命を玩ばれた彼女達を救うために、『実験材料』という名目で彼女達を引き取っています」
「その後、匿名で研究所の場所を広告し、私達に摘発させてますね」
フェイトの発言にスカリエッティは肯定を表すかの様に頷く。
「なぜ・・・・・その様な回りくどい事を?彼女達の救済も一緒に任せれば・・・・・・」
シャッハが疑問に思ったことを口にする。だが、だれも答えを口にしようとはしなかった。
スカリエッティとセッテは押し黙り、トーレは顔を険しくする。
フェイトは暫らく俯いた後、腹の底から声を搾り出すように呟いた。
「それは・・・・・出来なかったんです。もし、彼女達の救済も一緒に行なっていたら、
また利用されるか・・・・・処分されるかもしれませんでしたら・・・・証拠隠滅として・・・・」
最初、シャッハはフェイトの言っている意味が理解できなかった。だがそれも数秒後には
その言葉の意味を理解し、考えが口からこぼれた様に呟く

 

「その・・・非合法な研究を・・・・・・行なっていたのは・・・・・・・管理局・・・・・・」

 

その場にいる全員が、沈黙で肯定を表した。

 

実際、次元世界の秩序を守る時空管理局とはいえ、不正や身内での犯罪行為が無いわけでは無い。
だが、身内だからなのか、管理局の強大さを知っているため世間を揺るがす程の事件はほとんど起きていない。
(その点、十年前の闇の書事件は、終ってみれば前例の無い大きさだった)

 

スカリエッティを始めとした違法研究者達を追っていたフェイトは、調査の初期段階であることに気が付いた。
今までにフェイト達を始め、何人かの執務官や調査隊などがスカリエッティや違法研究者のアジトを摘発した事がある。
だが、踏み込んだ時には既に『全ての物が持ち出され』撤収した後だったため、未だに広域指名手配止まりだった。
ここで不審に思うことがある。『フェイト達がアジトに乗り込んだ時には、全ての物が持ち出され撤収した後だった』という事だ。
スカリエッティ達が行なっていると思われる『生命操作や生体改造』これは
一個人がそう易々と出来る物ではない。研究を行なう場所からして、それなりの規模が必要となる。
仮に研究を行なう場所を確保していたとしても、研究設備などを踏まえると管理局の研究機関に匹敵する規模になることを
現物を見たフェイトは否が応でも理解できた。
一応持ち運ぶことも出来るが、扱う物が物である、資料などの軽い物だけならまだしも、短期間で全てを別の次元世界まで持ち運ぶことは難しい。
(転送魔法といえど、転送できる物量や距離は限られている)
それを確実に行なっているという事は、事前に情報を仕入れたか、もしくは局に協力者がいるかの二つに絞られる。
だが前者に関しては、可能性は無いといって良いほど低い。
全ての摘発に関する行動や情報は厳重にしていたため、漏洩した可能性は低い。仮に漏洩したとしても、そう何度もという事はありえない。
だとすると、後者の可能性しか残らないが、『生命操作や生体改造』というのは下手なロストロギア密売や次元犯罪などより規模が格段に違う。
そのため、後ろ盾もそれなりの地位でなければ続ける事は出来ない。
そこから導き出される答えは一つ。スカリエッティなどの科学者に協力している局の協力者はかなりの地位を持っている人物だという事である。

 

そして、もう一つフェイトが疑問に思ったことが、スカリエッティの目的である。
フェイトは未だにスカリエッティの目的を掴めずにいた。『聖王のゆりかご』が出現した当初は
地上本部の時の様な大規模テロではないかと思ったが、数十分後には、その考えを改めなくてはならなかった。
確かに『聖王のゆりかご』が出現してる地域では、混乱とガジェットによる戦闘が行なわれているが、ガジェットの攻撃は全て『非殺傷設定』となっていた。
これに関しては今回は勿論、地上本部襲撃や今までのガジェットによる戦闘にも当てはまり、
ガジェットによる戦闘での死亡や大怪我などは一度も報告されていない。
現に今現在行なわれている戦闘でも、ほとんどが打撲や擦り傷などの訓練で発生する程度の怪我で済んでいる。
その他にも、アインへリアル襲撃に関してもスカリエッティの戦闘機人が確認されているが、生き残った局員の話によると、
彼女達は襲撃は行なわず、むしろ救助を行なってくれたという事である。
何よりフェイトが一番気になったのが、地上本部襲撃時にスカリエッティが放った言葉だった。

 

『価値の無い、無駄な命と決め付けられ、笑う事も、泣く事も出来ずに傲慢は俗物共によって
散らされそうになった命達。今日のプレゼントはそんな彼女達の恨みの一撃とでも思ってくれたまえ』

 

これは明らかに局が発表したスカリエッティの行動と矛盾している。局が発表している様な男だったら、この様な事を言う筈が無い。

 
 

「おそらく、管理局の関係者・・・・それも少将以上のクラスの人が関わっていた筈です。そうでなければ説明がつかないことがある」
「少将以上の・・・・レジアス中将ですか?」
シャッハが誰にでもなく尋ねるように呟く
「おそらくは・・・・・・中将は司法取引をしたのだと思います。戦闘機人が実用可能段階になるまで待ち、
それらを自身、もしくは地上本部が摘発、その後地上本部がそれらを試験運用という形にまで持っていくことが出来る。
そうすれば地上本部の戦力不足は解消される。これは、あくまでも・・・私の推測です」
フェイトは自身の考えを簡単にまとめ、スカリエッティに向かって話す。

 

「・・・・・・・さすがだね・・・・・・・フェイト執務官」
数秒間を置いた後、肯定するかの様に呟くスカリエッティ。そして歩き出し、再び椅子に座る。
「確かに、レジアス中将は私に接触してきた。理由も君が言った通りだよ。
だが、あの男も地上の平和を真剣に考えてのことだ、攻めないでくれ」
「はい」
「ただ、違うことが一つある。私の後ろ盾だが、レジアス中将ではないよ。彼は依頼者にすぎない」
再び間を空け、スカリエッティはフェイトの言葉を待つ。だが、フェイトは観念したかの様に黙り込んだ。
「『管理局最高評議会』彼らが真のクライアントさ・・・・・・」
「なっ・・・・・・」
自身が予想していた人物以上だったため、言葉を失うフェイト。隣で聞いていたシャッハも同様に驚きを露にしている。
「『生命操作技術の完成』これがクライアントの望みさ。その望みを達成させるために『生命操作や生体改造』という行為を
罰せずに行なわせ、私『ジェイル・スカリエッテイ』という存在をアルハザードの技術を使って生み出した・・・・・・・・
コードネームは『アンリミテッドデザイア(無限の欲望)』・・・・・滑稽だと思わないかい?」
スカリエッティから話される真実に、頭が追いついていかないフェイト。正直な所『アルハザード』という言葉だけで
立ち眩みを起こしそうであった。その言葉を聞くだけで頭によぎる・・・・・・母の最期・・・・・
「・・・ああ・・・・すまないね。座ると良い」
フェイトの状態を感じ取ったのか、スカリエッティは端末を操作し、椅子を出現させる。
「ああ・・・・・すみません・・・・」
断りを入れて椅子に座る二人、フェイトは落ち着くように深呼吸をしてから再びスカリエッティを見据えた。
「だが、君の母君をあんな強行に走らせた原因は私にもある。おそらくは彼女は『プロジェクトF.A.T.E』から、
私の正体を知ってしまったのだろう・・・・・・だからアルハザードの存在を確証した」
「いえ・・・・・たとえそうだったとしても、母は・・・・間違いを犯していたに違いありません」

 

今なら分かる。母は、どんな分岐点を通ったとしても、アリシアを失った時点で、あのような強行に出たに違いないと

 

フェイトの言葉を聞いたスカリエッティは俯き
「ありがとう」
はっきりと感謝の言葉を呟いた。

 

「話しが逸れてしまったね。評議会は『生命操作技術の完成』という目的で私を生み出した。
当時の私はその事に関して特に疑問を持たなかった。暗示や刷り込みだったのかも知れない。だがね、ある日彼女と会って変わった」
「彼女?」
「『初恋の相手』とでも言っておこう。彼女は私に色々なものを与えてくれた。心が空っぽだった私に温かさを与えてくれた。
もしあの時、彼女と会わなければ、今目の前にいる私は世間で好評されている『非合法な人体実験などを行なっている科学者』だっただろう」
昔を懐かしむように、天上を見上げる。思い出すのは幼かった自分と彼女が、野原で寝そべっている姿。
「それからかな・・・・・・自分のことや、行いに疑問を持ったのは・・・・・自分が行なっている研究は意味があるのか
それは人の役に立つのか・・・・・その疑問を実証するために、私の意志で行なった最初のプロジェクトが「F.A.T.E」だった」
話し終わった後にフェイトの様子を窺うスカリエッティ。その姿は『犯罪者の戯言を聞いている執務官』ではなく
『答えを求めている少女』であった。
「(やはり・・・そっくりだな・・・)」
内心で呟いた後、再び話し始める。

 

「プロジェクトFの本当の目的はね・・・・・丈夫な体を持った人間を生み出す事だったんだよ。遺伝的な病気を持って生まれてくる子供。
病気に対する免疫が弱いために、生まれて直に命を落としてしまう子供。ミッドチルダの様な恵まれた環境なら対処する方法はあるだろう。
だが、それ程科学が発達していない次元世界ではどうだい?『神に祈る』という行為しか出来ない」

 

フェイトもプロジェクトFについてははっきりとは知らなかった。いや、自分から調べようとは思わなかったのかもしれない。

 

「だけど、正直びっくりしたよ。私の考えを既に実戦してる世界があったのだから」
「カナード達の世界ですね」
「ああ、私はヴェイアから聞いたがね。遺伝子を調整されて生まれてきた人類『コーディネーター』確かに私が求めていた結果が
あの世界には出ていた。だが、それが引き金となって争いが起こっていることも聞いた」

 

C・Eでの戦争は『血のバレンタイン』が引き金となって起こった。だが、それ以前にも、ナチュラルはコーディネーターの事を
『化け物』と罵り、いくら良い結果を出そうとも『遺伝子を改造したのだから当然』と鼻で笑っていた。
コーディネーターも自分達のことを特別視し、普通の人間であるナチュラルを見下していた。『自分達が真の人類』と疑わなかった。
互いを罵り、互いを蔑む、ある意味では地獄と言っても良い世界である。
(無論、中には互いを理解しあう者もいたが、それは比率からして圧倒的に少なく、中には理解しあう者同士で
コロニーを宇宙船に改造して地球圏から飛び出したというケースもある。)

 

「当時の私はそんな事が起きるかもしれないと、内心で確証していたのだと思う。だから『プロジェクトFの基礎』だけで留め、
代わりにその研究から出たデーターで薬品などの代用品を作った。無事に広まってくれてよかったよ。
その後は自分の答えを求めながら評議会の言う事を聞いていた。そんな時だね、彼女達と会ったのは・・・・・・・」
首だけをポットに向け、話し始める。
「今から数十年前だね・・・・・私が初めて本格的に『生命操作や生体改造』を行なった日のことだ・・・・・その日の衝撃は今も忘れない」
昔の光景を思い出したのか、俯き、かすかに体を震わせる。
「当時の私は『生命操作や生体改造』に関する知識はあったが経験などは全く無かった。だからなのだろう。評議会は
一つの研究施設を私に与えた。クライアントの関係者である私に媚を売るつもりだったのだろう。そこの責任者は自慢げに
自分達の行いを話した。反吐が出たよ・・・・・・・」
自身の感情を押さえつけるように拳を握り締める。その姿をフェイト達は悲しそうな瞳で見つめる事しか出来なかった。
「ここで初めて自分が生み出された理由を呪ったよ・・・・こんな外道な事をさせるために私を作った評議会を・・・・・・
だから抗ってやろうかと思った。自分の生き方に・・・・・そして救ってやろうと思った。価値の無い、無駄な命と決め付けられ、
笑う事も、泣く事も出来ずに傲慢は俗物共によって散らされそうになった命達を・・・・・」
フェイトはスカリエッティの言葉を疑おうとはしなかった。シャッハも反論せずに、彼の言葉に耳を傾ける。
「先ず最初に、『生命操作や生体改造』に関する研究を私に一任してもらうように評議会に頼んだよ。
実験体にされている彼女達を集めるにはそうする事が一番だったからね。そして保護が終った研究所から情報を管理局にリークした。
評議会の連中は止めようとはしなかった。切捨てに丁度良いと思ったんだろう。それからは彼女達の蘇生に専念したよ、
表向きは『生命操作や生体改造』という事にして。だから同時に結果も出さなければいけなかった」
「それが・・・・・・戦闘機人技術・・・・・」
フェイトの呟きに、スカリエッティはしっかりと頷く。そして今まで喋らなかったトーレが前に出て話し始めた。
「ドクターは、研究の助手やボディーガードとして私達を生み出してくれました。ですが、それを強制したりはしませんでした。
私達は私達の意思で、ここにいます。それだけは憶えていてください」
「わかりました」
フェイト達はトーレを見据え、しっかりと答えた。

 

「保護した彼女達は生きていた。だから時間をかけて治療をすれば回復する見込みがあった。だが、
既に実験が行なわれた後で手の施しようがない子もいた。そんな時には戦闘機人技術が役に立ったよ。そしてレリックも」
「レリックが・・・・・ですか?」
「そうか、君達はレリックの正体を知らなかったんだね。おそらくは『超高エネルギー結晶体』としか解っていないのだろう?
あながち間違いではないよ。使い方によっては使用者に力を与える。そして、死者を復活させることも出来る」
「そんな・・・・・・馬鹿な!!そんな夢物語が!!!」
シャッハは椅子から立ち上がって叫んだ。
「死者蘇生・・・・・・・正にアルハザードの技術・・・・・・」
フェイトも驚くが、それを表に出さないように顔を俯ける。
「死者ごとに対応する刻印ナンバーのレリックを使うことでそれを可能にしている。現に成功例が二人いる。ゼスト・グランガイツとプレア・レヴェリーだよ」
「プレアが・・・・・蘇生させたのは・・・貴方ですか?」
「いや、評議会が子飼いにしている研究機関が行なった。どうも自分達の駒として利用するつもりだったらしい。。
最初から目を付けていたのか10年前から遺体を確保していたそうだ。最近になって蘇生させられ、直に脱走したとしか知らない」
スカリエッティの言葉に、フェイトはここに聞て、初めて怒りを表す。大切な家族を玩んだという怒りが。
「ゼスト・グランガイツに関しては評議会の命令だった。だが、命令が無くとも彼を助けるつもりでいた。
彼を始めとしたゼスト隊を全滅させたのは私と言っても間違いではないからね」

 
 
 

・地上本部

 

外では激戦が繰り広げられている中、レジアス・ゲイズ中将は誰かを待つ様に、ただじっと自身のオフィスの椅子に座っていた。
自身の娘でもあり、優秀な副官でもあるオーリス・ゲイズに退席を命じるがそれを拒否される。むしろ指揮権限のない
レジアスに退席を求めるが、
「わしは・・・・・ここにおらねばならんのだよ・・・・・」
そう呟き、退席を拒む。そんな二人の会話を見ていた女性局員は、どうして良いのか、ただおろおろするばかりであった。
その時、爆音と共にオフィスの扉が吹き飛び
「手荒い来訪ですまんな・・・・・レジアス・・・・・」
外でシグナムを退けたゼスト・グランガイツが、自身の武器を構えながら爆煙の中から現れた。
オーリスは自身の父親を守るように前に出るが、
「・・・・かまわんよ・・・・ゼスト」
『ゼスト』という名前を聞いた途端、オーリスは驚きのあまり目を見開き、確認するかのように侵入者の名前を呟いた。
そんなオーリスの姿に軽く微笑んだ後、再び顔を引き締め、レジアスを見据える。
「オーリスは・・・・お前の副官か?」
「頭が切れる分、我侭でな・・・・・子供の頃から変わらん・・・」
「そうか・・・・・聞きたいこと・・・・いや、確かめたい事だな・・・・・一つある」
ゼストは懐から二枚の写真を取り出し、机に向かって放り投げた。写真は机のほぼ真ん中に落ち、レジアスの目にさらされる。
「八年前・・・・・俺と・・・俺の部下達を殺させた事に・・・・お前は関わっていた・・・間違いないか・・・・・」
ゼストの質問に、レジアスは無言で投げられた写真を見つめた。そして数年前の出来事を思い出す。

 

まだ、自分とゼストが共に地上本部にいた頃、進む道は違えど共に自分達の正義を語り合った。
あの頃の自分は必死だった。ゼストのような魔法の力や、人を育てる力も無い自分。
そんな自分に出来た事は局内で上り詰め、権力を、力を得る事だけだった。『自分だったらこんな現状を変えられることが出来る』という自信と
無二の友、ゼストの応援により、レジアスは徐々に権力を、力をつけていた。
そして身に着けた権力や力を駆使し、犯罪増加率を防ぐ事にも成功した。だが、強硬手段など、あまり褒められた行為をとった事も事実であり、
そのことから自分を蔑む者も出てきたが、地上の平和のためなら甘んじて受け入れる事が出来た。
だが、企業や政界からの支援、管理局最高評議会という非常に厚いバックボーンを確保しても、どんなに結果を出そうとも、
『人員不足』『戦力不足』という二つの壁を突破する事は出来なかった。
そこで目を付けたのが、人造魔導師や戦闘機人という戦力だった。優秀な魔道師や戦力は本局に持っていかれる。
本局の事情も理解は出来る。向こうは事件の規模が違うからだ。だが規模だけに目を向け、小さな世界の事件などが後回しにされる事が
レジアスには許せなかった。
だが、戦闘機人や人造魔道師は『生産』することが出来る。安定して数を揃えられる量産可能な力、倫理的な問題と、量産によるコストダウンさえ出来れば
実現可能な計画、最後の二つの壁を突破するために、レジアスはその力に縋るしか無かった。
どんな偶然か・・・・その直後、レジアスはジェイル・スカリエッテイと接触する事に成功する。
彼の噂を聞いていたレジアスは早速取引を開始、準備が整うのを待った。
計画はいたってシンプルな物だった、スカリエッティは戦闘機人を大量生産し、それを地上本部が発見し摘発。
そうなれば、摘発されたそれらを試験運用という形に持っていける。あとは結果を残せば、採用され、最後の壁を打ち破る事が出来る。
それが、レジアスの野望であり、地上平和を望む彼の願いであった。
ゼストと互いの正義について語り合う事は無くなって来たのは、その頃からだっただろうか。
人員不足から、互いに酒を酌み交わす時間が無かった事もあるが、戦闘機人事件を追っていたゼストと、
その力に手を付けている自分とが、互いの正義を語る事が出来るはずも無かった。
ゼストは本局から何度も誘いが来るほど、優秀な魔道師だった。そのため、彼が事のカラクリを知るのに時間が余りかからないと
踏んだレジアスは、ゼストとその部下を戦闘機人事件から手を引かせるように圧力をかけ、別の事件を担当するように伝えた。
明日には正式な辞令を出し、完全に手を引かせようとしたが、そのレジアスの行動がゼスト隊の行動を急がせる結果となった。

 

翌日、聞かされたのはゼスト隊が施設の調査中に敵と遭遇、全滅したという報告だった。
救難信号を察知し、その場所に駆けつけた局員が見たのは、死体となったゼスト隊の局員達。
プラントに残された映像から、戦闘機人プラントを発見したゼスト隊が、
その場にいた戦闘機人と戦闘、全員死亡した事、ゼストと部下であるメガーヌ・アルピーノに関しては、
バラバラに吹き飛ばされ、遺体を回収する事も出来なかった事、
犯人はジェイル・スカリエッティと彼が作った戦闘機人である事、それらの事を朝早く呼び出されたレジアスは最高評議会から直接聞かされた。
オーバーSランク魔道師でもある友の死により、戦闘機人の優位生を思い知らされたレジアス。そして、自分がもっと行動を迅速にしていれば
友とその部下を死なせずにすんだのではないかという後悔の念と、犯人を逮捕できるのに出来ないという現状に苦しんだ。
その気になれば、彼は今すぐにでもスカリエッティを捕まえる事が出来たが、その行為は数年をかけた計画を潰す事でもあった。
だが、レジアスが迷ったのは一瞬だった。彼は引き続き、スカリエッティとの取引を続ける事にした。
地獄に落ちようが構わない、あの世で友に罵られようが構わない。救われる命が増えるのならば、
どんな苦しみも甘んじて受け入れよう。自分の命は、『地上の平和』のために捧げる事を、彼はその日硬く決心した。

 

ゼストの問いかけに数秒間を置いたレジアスは、ゆっくりと顔をあげる。そして目の前にいるゼストを見据えながら
「そうだ」
ゼストの覇気に臆する事無く、はっきりと答えた。

 

「・・・・・・・・そうか・・・・・」
短く返事をした後、ゼストはゆっくりと自身の槍の切っ先をレジアスに向けた。
「やめてください!ゼストさ(良いのだよ・・・・オーリス」
自分を庇うオーリスを優しく諭す。それでも、自分の父親を守るようにその場を動こうとはしなかった。
「・・・もう一つ聞く・・・・・俺達を・・・どうやって・・・殺した?」
依然槍を突きつけたまま、再度尋ねるゼスト。
「・・・・あの時・・・・・私が直にでも辞令を出していればお前とその部下は・・・・死なずに・・・・スカリエッティ達に殺されずに済んだ。
なのに・・・・・私は・・・・犯人であるスカリエッティを逮捕せずに、奴との取引を続けた・・・・罰は喜んで受け入れよう」
「・・・・・やはりな・・・・お前は勘違いをしている・・・・・」
槍を下ろし、待機状態にまで戻したゼストは、安心したかのように語りだす。
「勘違い・・・・・ですか・・・?」
オウム返しの様に尋ねるオーリスにゼストは無言で頷く。
「・・・・あの時・・・・・俺の部隊はプラントの一つと思われるアジトに突入をした。
そして戦闘機人である彼女達とも戦った。・・・・・だが、殺し合いになるまでには至らなかった」

 
 

8年前のあの戦闘の時、部下の一人が謝って実験体が入っているポットに攻撃を仕掛けた時の事、
その攻撃を小柄な戦闘機人(後にチンクと聞いた)が自分との戦闘を放棄し、体を張ってポッドを守った。(その時に右目をやられてしまう)
部下達は主力といえる彼女の負傷に好機と見たが、ゼストとクイント、メガーヌは不審感に襲われた。
もし、局が発表している様な連中だったら、先ほどの行動は不自然極まりない。自身の右目を犠牲にしてまで、
『沢山ある研究材料の一つ』である彼女を守るのは可笑しいからだ。
一時は一触即発の空気が流れたが、ゼストは部下に戦闘行為をやめるように指示し、こちらの目的を話し始めた。
「・・・・そうだったのですか・・・・」
ゼストの話を聞いたチンク達も武装を解除し、突然襲撃したことへの謝罪と、ここで行なわれている内容を話し始めた。
スカリエッティの本当の目的・これらの研究を行なわせている管理局の上層部のこと、
本来来るはずが無いゼスト達が来たため、先制攻撃を行なった事などを。
「評議会の命令を聞けずに、彼女達を欲しがる人達はいますからね・・・・彼らの仲間かと・・・・」
「なぜ・・・・評議会は・・・・・こんなことを・・・・・それに・・・貴方達にありもしない罪を背負わせたの?」
拳を握り締め、クイントは吐き捨てるように言い放つ。
彼女も最近、違法研究所から二人の戦闘機人を引き取ったばかりであった。その違法研究が局の上層部の指示によって
行なわれていた事に、彼女は湧き出る怒りを抑えるのに必死であった。
「・・・・ドクターを縛る紐の役割でしょうね。真実を暴露しても『異常犯罪者の戯言』で終ってしまうだろうし、
仮に信じれたとしても、この子達がどうなるか・・・・」
「それは・・・・私達が保護を・・・・」
「上層部が関わってる管理局に保護を?馬鹿を言わないでください。貴方達は信じれますけど、
所詮は上の駒に過ぎない貴方達に何が出来ます?証拠隠滅処分されるか、実験に使用されるか、直に見当がつきます。
それに彼女達を救えるのはドクターだけです。貴方達の技術ではただ死なせるだけですよ」
メガーヌが保護を申し出るが、クアットロがその申し出をあっさりと斬り捨てる。
「・・・お前達は・・・・・これからどうするのだ・・・・」
「直に彼女達を回収して、この場を後にします・・・・・貴方達が邪魔をするならば・・・・・先ほどの続きを」
「邪魔はしない・・・・・俺達は、この事実を公開するつもりだ・・・・・局の中でも
ミゼット議長やキール元帥・・・・それにレジアスのような信頼における方々がいる。いざとなれば民間の報道局という手もあるさ」

 
 
 

「・・・・・・あの人達の退去を確認したわ」
モニターでゼスト達の行動を確認したクアットロは引き続き周辺の警戒を行なっていた。
「分かった、こちらの運び込みももうじき終了する。そうしたら直にこの場を立ち去るぞ・・・・・チンクお前は休め」
今回の戦闘で一番負傷したにも関わらず、作業を手伝おうとするチンクをなだめる。
「・・・・・・わかった。すまない・・・・・・」
「そうよ。トーレ姉様の言う通り。機材と一緒に先にアジトの帰ってなさ・・・・あら?」
展開していたモニターに異常があったため、クアットロは途中で言葉を止めて操作を開始する。
「・・・どうした?また侵入者か?」
「・・・・・・いえ、戦闘が行なわれているわ・・・・・それも・・・・すぐ近くで・・・・」

 
 

プラントから出たゼスト隊は、聞かされた事実を公表するため、すぐにでも本部に向かおうとした。
出ていく時に、メガネを掛けた戦闘機人(後にクアットロと聞いた)から今回潜入したプラントの運営に
局が関わっていた事の証拠の入ったディスクを託されたため、直にでも行動を起こそうとした・・・・その時である。
「ゼスト隊長」
自分の部下に呼ばれたため、立ち止まり、振り向いたその時

 

            ザシュ

 

「・・・・・な・・・・・・」
突如襲った激痛、自然に激痛の元と思われる自身の体を見ると、わき腹に刀が刺さっていた。
その刀は、自分を呼び止めた部下のデバイスであり、自身を刺している男も、そのデバイスの持ち主の部下だった。
「おやおや・・・・『戦いの後でも油断をしてはいけない』・・・貴方がおっしゃった事ですよ・・・・・・耳にタコが出来る程」
刺さっている刀を90℃捻り、続けて至近距離から殺傷設定の攻撃魔法を放つ。
「隊長!!!」
放たれる瞬間、クイントが割り込み防御壁を展開するが
「残念でした!間に合いませんでした!!二人そろってさようなら!!!」
醜悪に微笑みながら放った!!
攻撃を至近距離から受けた二人は吹き飛ばされ、近くの岩にそれぞれ叩きつけられる。
「隊長!!クイント!!」
メガーヌは叫びながらも戦闘態勢に入り、残りの隊員も男にデバイスを向ける。
だが、それでも男は余裕の笑みを崩さずに指を鳴らす。すると
何も無い空間から突然ガジェットⅣ型が現れた。それらは既にメガーヌ達を取り囲んでおり、徐々に距離を詰めて行った。
「貴方達の相手はこいつらです。さぁ、遊んであげなさい」
その言葉を待っていたかの様に、ガジェットⅣ型は一斉にメーガヌ達に襲い掛かった。
聞こえてくる叫びと金属音をお気に入りの音楽を聴くように味わいながら、ゆっくりとゼストの方を向く。
「くっ・・・・・貴様・・・・・・」
わき腹から出る血を左腕で押さえつけながら、ゼストは目の前にいる部下を睨みつける。
「さすがですねぇ~。ですが、この傷ではもう長くないでしょう」
自身の勝利を確信しているのか、男はゼストの殺気を含んだ視線をニヤつきながら受け止める。

 

「困るんですよ~、公表などされては・・・・・『生命操作や生体改造』の研究は無くてはならない物ですからね~」
「あん・・・な・・・・外道なこと・・・・・をして・・何を言う・・・・・」
「彼女達は『尊い犠牲』という奴です。でも、亡骸でも欲しいという人はいますからね~。死して尚貢献する彼女達には感謝の極みです。
それをスカリエッティは・・・・・『救う』などと言う詰まらない目的のために・・・・才能の無駄使いですね」
「やれやれ」と首を振る男にゼストは再び質問を投げ掛ける。
「お前は・・・・・評議会の・・・・スパイ・・・なのか・・・」
「あったり~!さすがです。自分は評議会から貴方達の監視を命じられまして。ですが、スカリエッティの本当の目的も分かりましたら
今日は本当についている。これは臨時ボーナスも期待できますね」
途絶えそうな意識を懸命に繋ぎ止めながら、ゼストは自身の槍を持つ手に力を込める。
「真実を知った評議会はスカリエッティを処分・・・・・はしないでしょう。ですが洗脳くらいはする筈です。プラントに入た子や
戦闘機人も有効活用されるでしょう。ああ・・・・あの銀髪のオチビちゃんは僕の好みですか(黙れ・・・・」
「まだ生きていたのか?」と言いたげな顔をしながら、ゼストの方を再び見た瞬間、男は心の底から震え上がった。
数分後には死ぬであろうキズを負ったゼスト、だが、その瞳は見たものを射殺すほどの迫力に満ちていた。
正に『修羅』という言葉が似合うほどに。
「死・・・・・死にぞこないが・・・・・・・・え・・えええ・・・・えらそうに!!!」
足をがたつかせながらも、とどめの攻撃魔法をゼストに向かって放つ。だが
「リボルバァァァァァ!!!シュートォ!!!!」
クイントが右腕のリボルバーナックルから放ったリボルバーシュートにより、相殺されてしまう。
「隊長!!!」
クイントの叫びと同時に、カートリッジをロード、目の前に向かって構える。そして
『フルドライブ・スタート』
その電子音と共に、ゼストは一気に加速、男の体を貫いた。
「へ?」
「信じられない」という顔をする男。それが、彼の死に顔となった。そして、ゼストも
「これ・・・・・まで・・・か・・・・」
大量の血を口から吐き出した直後、男を刺し貫いた格好のまま、息を引き取った。

 

「くっ・・・・・みん・・・・な・・・」
どうにか立ち上がろうとするクイント、だが、体に力が入らず、再び座り込んでしまう。
周りを確認しようにも、目がかすんでしまし、状況を把握する事も出来なかった。そして、徐々に体の力が抜けてくる。
「スバル・・・・・・・ギンガ・・・・・・」
薄れゆく意識の中、自分の娘の名前を呟く。せめてもう一度会いたかった・・・・・・
「ごめんね・・・・・お母さん・・・・遊園地に行く約束・・・・・・守れないや・・・・」
そして、愛した夫の名前を呟く。
「あな・・・・た・・・・・ギンガと・・・・スバルを・・・・・よろしくね・・・・・・」
体の力が完全に抜け、ゆっくりと瞼が閉じられる。

 

         「貴方を・・・・・・愛して・・・・・・・幸せ・・で・・・・・し・・・・・た」

 

その言葉を最後にクイント・ナカジマは息を引き取った。

 
 
 

「・・・・・・・・私は・・・・・・踊らされていたのか・・・・・・評議会の連中に!!!」
友から語られる真実に、悔しさのあまり、力任せに机を叩きつけるレジアス。
オーリスもただ唖然とし、力なく机にもたれ掛った。
「お前がスカリエッティと司法取引を行なっていたと聞いたのは、俺が蘇生させられた直後だった。だが、
お前は純粋に地上の平和を願っての事だと、スカリエッティから聞いたよ」
「それでも、違法な手段を取ろうとした事には変わりはない。私もスカリエッティの事を勘違いしていた」
暫らくの沈黙の後、レジアスは決意した瞳でゼストを見据える。
「・・・・・・・ゼスト、私はこの事実を公表する。それが、お前の部下の、スカリエッティの、
そして実験体にされた彼女達への、せめてもの償いになるだろう・・・・・・愚かな私に出来る事は、それ位だ」
「・・・・・・・俺が蘇生されたのは最近でな。それまでの出来事を知ったのもつい最近だった。
レジアス・・・・・お前は俺の正義を・・・俺達の正義をを叶えていてくれたんだな。ここ数年の地上での犯罪比率の減少
少ない戦力でそれを成し遂げるお前を、俺はお前の友であることを誇りに思っている」
ゼストから発せられた『友』という言葉に、レジアスは反応する。二度と聞けないと思っていた言葉に
「・・・・・おまえは・・・・・私のことを・・・・まだ・・・・・友と・・・・・呼んでくれるのか・・・」
「ああ・・・・・当然だ・・・・・俺も再びお前と共に、自分達の正義を貫きたい、そしてすまなかった。
お前が戦闘機人関係に関わっていた以上、評議会との関係を確かめずにはいられなかった。許してくれ」
その言葉に、レジアスは泣いた。周りのことなどを気にせずに、ひたすら泣いた。

 

・廃都市

 

ルーテシアから語られる真実に、エリオとキャロは戦闘中という事も忘れ、聴き入った。
「襲撃の後、クアットロ達がゼスト隊の皆を見つけたんだけど、お母さん以外全員死んでいた。お母さんも重体で
今もポットの中で眠っているんだ・・・・・」
「・・・・それで・・・レリックを・・・・・」
「うん。レリックの効果はさっき話した通りだよ。生き返らせる事も出来るけど、刻印ナンバーに対応する
事が出来るのはほとんどいないんだって。だけど、力を・・・活力を与える事ならナンバーをそれ程選ばずに出来るって」

 

実際、蘇生できなかった隊員達(クイント)などの遺体は、家族の下に返された。
家族達には『極秘任務中に死亡』とだけ報告し
レジアスには『スカリエッティ一見に殺された』と報告して。

 

「だから私は、レリックを探していた。『レリックNo.11』このレリックが、お母さんに対応する物だったんだけど、
それも必要なくなった・・・・・・ドクターがね、お母さんを治してくれたんだ。後は目を覚ますのを待つだけ」
「だったら・・・・・・なんで・・・・」
エリオは質問を投げ掛けようとしたが、途中でやめる。そして、自身で導き出した答えを呟いた。
「『家族』のため・・・・・・」
ルーテシアがスカリエッティに保護された時は、まだ物心が付く前だった筈。
その間、彼女は今までの数年間、スカリエッティや戦闘機人達と共に生活をしていた事になる。
彼女にとっては彼らこそ、『家族』と呼べる者ではないだろうか。

 

「そうだよ・・・・・・・私は、自分の意思でドクター達の為に戦っている。最初はね、何度も何度も止められたんだ。
『そんな事をする必要は無い』って。だけど、私は役に立ちたかった、みんなを助けたかった。だから私は戦っている」
目を閉じ、腕を交差させる。それと同時にアスクレピオスが光りだし、召喚魔法陣が足元に出現する。
それと同時にガリュウも再び戦闘態勢に入る。
「だから私は・・・・・・」
それと同時に、上空に足元に展開されている物より三倍近い大きさの召喚魔法陣が出現する。
「負けられない!!!!」
決意の声と共に、魔法陣から召喚獣『白天王』が出現した。