単発ネタ(XXXIXスレ273) 氏_ダイナミックな逆襲のシン_第1話

Last-modified: 2011-04-13 (水) 11:31:39
 

元ネタ「真ゲッターロボ 世界最後の日」「マジンカイザーSKLヴァーサス」

 
 
 

「お、おい!?お前等は何を言ってるんだ!?俺は何もやってない!」

「¨シン・アスカ¨…貴様を殺人及び国家反逆未遂罪により逮捕する。」

 

コズミック・イラ7X年、「戦争慰霊碑バラバラ殺人事件」が発生。
それだけならただの怪事件に過ぎなかった…。
だがある死体の身元が分かった時、世界中に激震が走った。
前大戦の英雄、キラ・ヤマトの影武者だったのだ。
他の死体の身元も程なく判明。ラクス・クライン、アスラン・ザラの影武者とSPが二人。
プラントとオーブの重要人物が残虐かつ陰湿な方法で暗殺されかけた…
この事実は国際社会に大きな衝撃を与えた…。

 

幸い本人達はオーブ庁舎で行われた会議に参加しており無事だったが、
影武者をしてくれていた者が自分達の代わりに死んだと聞いて心を痛められたと報じられただけで、
民衆の前にあまり姿を見せなくなった。
自分達が命を狙われているのだから、当然の事ではあった。

 

そしてすぐさま捜査が始まり、オーブとプラントの警察組織による大捜査の末、一人の男が逮捕された…。
元ZAFTのトップエース¨シン・アスカ¨である…。
動機は十分、オーブにいた上、アリバイもない。
そして彼が逮捕される決め手となったのはある目撃証言だった…。

 

「私は…シンがラクス様達に襲い掛かるのを見たんです…。
 その後すぐに後ろから殴られて…、気が付いたときにはもう…。」

 

かつてのシン・アスカの同僚、そして当時影武者達のSPの一人であった
ルナマリア・ホークの証言が決め手となったのだ。

 

「嘘だ!嘘だと言ってくれルナ!俺はあの日は慰霊碑になんか行っちゃいない!俺は無実だーッ!」

 

本人は無実を主張し続けたものの、シン・アスカの物とされる凶器も見つかり、事件は解決とされた。
シン・アスカには終身刑が言い渡される事となり、オーブ特別刑務所へと囚監され、一年の月日が流れた…。

 
 
 

「謎の勢力に襲撃を受け、演習中のオーブ軍壊滅」

 

このニュースは報じられると同時に世界中に広まった。
この事件によりキラ・ヤマト准将が重傷を負い、オーブ代表カガリ・ユラ・アスハが一時意識不明の重体。
最終的にはアスハ代表の意識は回復したもののオーブ国内は大混乱となった。
自分達を守ってくれるはずの軍が壊滅したのだ。
誰もがまた国が焼かれるのではないかと恐れていた…。

 
 
 

オーブ アメノミハシラ

 

「ウワアアアアッ!誰かぁあ!早く!早くここから出してくれぇえ!」

 

暗やみの中で一人の兵士の悲鳴が響き渡る。
ついには苦しみのあまり自らの顔を掻き毟り血塗れとなり、担架で運びだされていく…。

 

「やはり今回も無理でしたか…。」

 

白衣を身に纏い、サングラスをかけた女性科学者が呟く。

 

「¨やはり¨とは…いくらミナ様直々の特命とは言えこう何人もの兵士を再起不能にして…!」

 

同じく白衣を身に纏った青年が声を少し荒げる。

 

「あの程度のお坊っちゃん兵士では駄目だということです…。 
 私にはわかる…奴の中に渦巻く“炎”が!
 そしてその“炎”は未だ各地で絶えぬ紛争を一掃する!」

 

その目には狂気が滲み出ていた。

 

「…やはりあの男を使うか…。」
「シン・アスカの事ですか…?」

 

ルナマリア・ホークが突然話に入ってくる。
彼女はあの事件の後、ここアメノミハシラで働いていた。

 

「そうだ…かつてお前が監獄へと送ったあの男だ。」
「私が話を付けに行きます。アイツの事はよく解っているつもりですから…。」
「奴は相当お前の事を恨んでる…殺されるかもな…。」
「覚悟の上です。」

 

そう言い切った彼女の瞳には強い意志が浮かんでいた…。

 
 
 

オーブ終身刑務所

 

「恩赦が出た…仮釈放だ。427番出ろ。」

 

看守が独房の青年に呼び掛ける。青年は無言で立ち上がり、目に再び光を宿した。
囚人427号…シン・アスカの中ではかつて愛した者に裏切られた怒りと悲しみがドス黒く心を染めていた。
更に二度と出ることはできない終身刑という事実が彼の瞳から光を奪っていた…。
しかし出ることが出来るのだ…。紅い瞳に今度は復讐の狂気が宿ろうとしていた。
しかしシンはそこで思いもよらぬ姿を見ることとなった。サングラスをかけた赤髪の女性…。

 

「ルナ…なんでお前がここに…。」

「シン…あなたを迎えに来たわ…。」

 

ルナは淡々と呟く。

 

「…俺に殺される為か…!?」

 

シンの言葉には怒気が混じり、今にも掴み掛かろうとせんばかりであった。

 

「一つだけ頼みがあるの…私への復讐はそれからでも遅くはないわ…。」

「…。」

 

シンは押し黙り、ルナは懐から拳銃をシンに差し出しながら言葉を続ける。

 

「私の銃…あなたに預けておくわ。私を殺したいのなら、全てが終わった後、この銃で私を撃って…。
 それまで私は逃げたりしないから…。」

「信じて良いのか…?」

 

シンは真剣な面持ちでルナに尋ねた。憎んでいたとはいえ、かつては恋人でもあったのだ。
いや愛していたからこそ余計に憎んだのだろう。
そんなことを思う彼の中で彼女を信じようとする心と一年前の裏切りが交錯する。

 

「なら、今ここで私を撃つ…?」

 

彼女のその一言でシンは覚悟を決めた。

 

「いやお前の覚悟はわかった…一度だけ…一度だけルナの頼みを聞いてやる…。」

「ありがとう…。」

 

そう告げると同時に彼女はサングラスを外し、改めてルナの顔を見たシンは驚いた。

 

「ルナ…!?その顔は…!?」

 

ルナマリアの顔には額から右頬にかけて一文字に傷が出来ており、彼女の右目は光を失っていた。

 

「シン…貴方に力を与えるわ…そう、この世界の紛争を一掃する為の莫大な力をね…。
 使い方を誤れば護るものすら破壊してしまいかねない力を…。」

 

「紛争を一掃する」その言葉がシンの中で何度も響いた。

 

「俺を呼んだのは…その為か…。」

「ええ…私じゃその力をコントロールできなくてね…苦痛の末に顔を掻き毟ってこのザマよ。
 …怖気づいちゃった?」

 

ルナは自嘲するように笑う。

 

「いや…やるよ。その力をコントロールしてみせるさ…。
 戦争で死んだレイやステラ、マユ、皆の為にも…。」

 

そこにはついさっき迄の復讐を目論む囚人427号“シン・アスカ”は居なかった。
そこに居たのは戦争で家族を、友を、全てを奪われ、
誰よりも戦争を憎み、誰よりも“守る”事に固執するZAFTのトップエース“シン・アスカ”だった…。

 
 
 

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