暇人A_第02話

Last-modified: 2007-11-19 (月) 14:05:09

ここはミッドチルダ南西に位置する、小さな街。
あまり人通りの多くはないところだが、ここは知る人ぞ知る、ある筋にはなかなか有名な場所だった。
ある筋即ち、軍であり、その理由は、ここに存在する部隊であった。

少年が二人、名はキラ・ヤマトとアスラン・ザラ。
彼らをフォワードとして、小規模ながら大きな戦力を保有する部隊で、さらに旗艦となる艦も保有していた。
艦の名はアークエンジェル、大天使の天使較名を持つこの艦は、アルカンシェルなどの大型兵器は搭載していないものの、いや、だからこそ、平和の象徴的な存在でもあった。
部隊名は第08独立特殊機動隊。
申請したカガリ・ユラ・アスハの文字が汚くて08がOBに見えた事から、周囲からは『オーブ』と呼ばれていた。

そんな様々な特別視を受けている艦は現在、街に戻るため異空間を通っていた。
「キラ」
「あ、アスラン。
どうかしたの?」
2人は先ほどロストロギアを封印、本部に転送を行ったためか、疲労が見てとれた。
「さっきのロストロギアだが、どう思う?」
「どうって、あまり変わったタイプじゃ無かったよね?
魔力も少なかったし…」
「あぁ、大したものじゃ無かった。
だが、ならあれは何

何だったんた?」
あれ、と言うのは、先ほどの世界でロストロギアを奪おうとした機械の事だろう。
キラが封印をしようとしたのを邪魔して、さらに奪おうとしてきたのだ。
「あれによほど隠された能力があったのか、またはロストロギアなら何でも狙ってるってやつかな?」
ロストロギアはいかに能力が低くとも、それ一個で人生が変わってしまう人だっている。
封印には慎重さと速さが求められるのはその為である。
アスランがそんなロストロギアの見解をキラに述べようとしたとき、艦内に警報が鳴り響いた。

「亜空間内で敵襲!?」
アスランが驚きの声を漏らした。
オーブとしても亜空間内での戦闘はこれが初めてとなる。
「相手はさっきと同タイプの機械よ。
亜空間内でも魔力消費無しで戦えるわ。
油断は禁物よ」
艦内放送でマリューが言った。
普通の人が亜空間内の戦闘を嫌う理由はつまり、常に魔力を漏らしていないと息が続かないことなのである。
「こちらは疲労が激しい。
行けるか、キラ?」
「行けなきゃ、逃げ場は無いみたいだ」
言われて、アスランは感覚を研ぎ澄ました。
なるほど、確かに360°×360°どこも敵まみれだ。
「2人じゃきついかもしれないけど、頑張ろうね、アスラン」
「あぁ、勿論だ!!」

とは言えども数分、アスランもキラも先ほどのロストロギア封印がたかってか、なかなか思うように行けない。
加えてなぜか相手には魔法が通じないうえ、ダメージの媒介になるものなどこの空間内にはない。
「キラ、こいつら…」
あとは殴るくらいしか攻撃方法は無いのだが…
「うん、近くの魔力を消し去るのが能力みたいだね…」
これでは近くに行けば息切れでこの世との別れとなる。
「場所が悪すぎるか…」
アークエンジェルにも法律上質量兵器は搭載していない。
質量兵器を禁止し減らして安全を図ろうとした現在の管理局の事を相手は良くお分かりのようだ。
そんな中、マリューから二人に声がかかる。
アークエンジェルもダメージが重なってきたため、この艦で捨て身で逃げるしかない、と。
その言葉に、二人は不服ながらも頷いた。
もはや退路を切り開くしか、生き延びる手だてはない。

その後、時空間移動を果たし、キラ達は街に戻ってきた。
無事に帰れたとは言え、今回の事で受けた被害は半端なものでは無かった。
「お帰りなさい。
今はただ、休む事だけ考えて下さいね」
とは、ラクス・クラインの言葉だ。
事前に通告を受けていたからこそ、ラクスはキラ達にそう言った。

「ラクス、どう思う?」
オーブの実質上の隊長であるカガリが、ラクスにも意見を聞いた。
「おそらく、これまでにも何度か目撃されていたドローンでしょう。
亜空間内では手の出しようが無いのは痛いですね…」
各個人を転送するのならば亜空間で会敵することは無いだろう。
が、戦艦となれば亜空間走行をしなくては転送はできない。
「そうだな…
アークエンジェルは随分かかるそうだ…」
実際かかろうがかかるまいが、手の出しようが無いのは変わらない。
「ではその間キラ達には、管理局へ?」
「あぁ。
あいつらをここで遊ばせておく訳にはいかなくなったようだしな」
相手の目的こそ不明だが、事態が緊迫しているのは、カガリにも良くわかっていた。
「幸いにも知り合いに新部隊を設立しようとしてるところがある。
そこに組み込まれるよう手配しておく」
「わかりました。
その部隊とは、起動六課のことですね?」
「あぁ。
キラ達も知り合いの多い部隊だから、馴染んでくれるさ」

この日、失ったものは確かに多かった。
が、カガリ達はあきらめず、キラ達もまた、最高の面もちで本局に出向していった。

六課とシン達が関係を持つのは、あと少し先のお話…