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機動戦史ガンダムSEED 09話

Last-modified: 2018-06-06 (水) 21:14:22

 ――第4機動艦隊旗艦『クサナギⅣ』艦橋――

 

  「――ムゥゥン!と。しかし、結構まだ揺れるよなぁ?」

 

 指揮官シートにもたれ掛りながら、猫のように背伸びをして、
私に向って手を振りつつ、艦橋の司令部では、今日も司令は愚痴を溢していましたとさ……という日常が続く。

 

 第4艦隊はまだ、戦闘前の静けさを保っているのです。

 

 メイン・ドライブを通常運転へと切り替え、通常航行へ移行した第4艦隊は、
第二級臨戦体勢を取りながら、順調に通常戦航を続けています。

 

 この時代、艦や艦隊の運用の殆どが発達した、ハードの関係で全自動に近くなっています。
そう、細かい運用や面倒な計算式などは全てメカがやってくれる為に、ナチュラル、コーディネイタ―を問わずに
運用方法の差別化が、ほぼ皆無となっているのです。

 

 私が物心がつく頃には、時代はもうこのような状態へと移行していたので、自分が半分コーディといえども、
何ら有利性が働いていなかったのです。

 

――精々、2階の自分の部屋に重い荷物を人の手を借りずに運べる事等、多少の腕力があったとか。
――タイピングが多少、早かったとか。
――暗算が15桁できるとかは、ナチュラルより多少はマシ程度の差でしかなかったのです。

 

 前時代のナチュラルとコーディネイタ―との差は激しかったと聞きましたが、
今の常識ではとても考えられない事ですよね?

 

 同様に、旧世紀の世界情勢では、肌の色による差別があって、
アフリカ系やアジア系の人達への差別があったといいますけど。

 

 そんな大昔の価値観を持ち出されても、私達の世代は困りますよ。

 
 

 そして、アーガイル司令は、その激動の時代を駆け抜けた訳なんですが……
何かフレキシブルな人だな~、と。……また、指揮シートで大あくびしてるよ……
でもこういう、トコを見ると……

 

 ――もっと豪胆で何か『英雄』!!と言うイメージを持っていたので何となく、ちよっとガックしきますね?

 

 さて、と。司令がまだ宇宙酔いの後遺症がありそうなので、
私は、多少の冗談を混ぜながら応対してあげましょう。優しいですから。

 

 「――大丈夫ですか司令?酔い止めをお持ちしましょうか……?」

 

 と心配そうな声を出してみせる。

 

 「お……優しいね」

 

 司令は嬉しそうに、私に対して猫なで声で応えてくる。
だが、次の私の一言で司令の表情が変わった。

 

 「……それに、よければ、また洗面器をお待ちしますけど?」

 

 ちょっと余計だったかな。ボケを入れておいたけど……

 

 「……結局それかい!」

 

 と司令は突っ込みを入れ返してくれる……
ノリは良いんだけどな……

 

 「――まぁいい。もう大丈夫だ。……良い感じでこ慣れてきたね」

 

 「ええ。まぁ」

 

 と受け答える私。

 

 「さてと、……そろそろかな」

 

 そうして、司令は威を正す。どうやら休憩時間は終了したようだ。
この点は、私も場の空気が読めるようになってきたのだ。えへん!

 
 

 「で……敵さんの様子はどうだ?」

 

 司令はズバリと、本題へと入って来た。
専用コンソールで高速のタイピングをしながら、私は現在の戦況をリアルタイムで集めている。 

 

 敵部隊補足の為に偵察部隊を複数派遣して、部隊毎の報告の長所をまとめるのが、
今の私の仕事でもあるのです。情報を整理しますと、

 

 「――どうやら敵はこちらの艦隊を補足した模様ですね。
  占拠された拠点基地『ヘーリオス』に配備された、敵前衛部隊の一部に動きが見られます――」

 

 重要拠点でもある拠点基地『ヘーリオス』は、ある意味で最重要拠点の一つでもあります。
この拠点基地は、三拠点がある宙域基地の中でも、宙域入り口の付近設置されている小惑星を改造した前衛補給基地なのです。
ここを攻略する事が、反攻作戦の第一歩となるのです。

 

 「――さて、こちらはどう動くのかしら?」

 

 落ち着いた大人の女性の声が、私の後ろから聞こえてきた。
私の直属の元上司だったエリカ・シモンズ主任だ。

 

 現在、シモンズ主任は、オブサーバーとして<クサナギⅣ>に乗り込んでいる。
国営企業であるモルゲンレーテ社の前総裁でもあるのだ。
そして、その権限は未だに強力で、政府内の発言権も高いのです。

 

 現在、シモンズ主任がアーガイル司令を全面的に支持している事が、
司令の政治的基盤の強化にも繋がっているのだといいます。

 

 「――軍事的素人の私が言うのも何だけど……」

 

 とシモンズ主任は前置きをする。素人と言っても、
私から見ればシモンズ主任も百戦錬磨の女傑だけど。

 
 

 「……今、私達が率いている艦隊戦力なら、時間をかけて慎重に進撃すれば、
   先ず、負けることはないと思わないかしら……?」

 

 私もその述懐にフン、フンと頷く。
これだけの大戦力なら、ちょっとやそっとでは負けないんじゃない?と思えるからです。

 

 ゆっくりと慎重にやれば、絶対的に勝つことができるのだろうし。
ですが、司令の考えは、ちょっと違っていたようです。

 

 「いやいや……」

 

 そうゆっくりと話しながら、司令は私達のいる方へ座ったまま、
指揮シートをこちらへと回して向けると、膝に肘を付けて軽く顎を載せた。
そして、

 

 「――少々無理を押してでも、ここぁ、なるべく華やかに勝たなきゃならない展開でございますな」

 

 と、欠伸をしながら、やや軽い口調でシモンズ主任の疑問に受け応えてくれた。
その返事に私は、思わず、

 

 「……へ?どういうことですか司令??」

 

 そう、私は声に出してしまったでした。おバカです……
でも、普通にやれば勝てるのでは?と疑問を持つのはおかしいのでしょうか?
確かに私は素人ですけど。
そうしたら、司令は私の方に顔を向けて、

 

 「――こちらとしては、ここいらで緒戦の大負けを精算して、帳消しにせねにゃならんのでね……」

 

 と口元に笑みを浮かべながら司令は、私の疑問にそう答える。

 
 

 ???――余計混乱してきた。
為らば尚更、絶対に負けないように慎重にいかないといけないんじゃ?

 

 「……じゃないですか?」

 

 と私は自分のその思いついた考えを、司令に即座に話してみた。
司令は苦笑しながら、半ば素人の私にも分かるように、噛んで含むような説明を続けてくれた。

 

 「――確かにな。現在の保有戦力ならば、慎重に事を進めれば負ける要素は極めて少ない。
  が、それは、あくまで戦術面の話で、だ――」

 

 通常戦力が、敵側3倍の時点で戦術の常識として勝利が得られると言う。
その条件を整える事には既に成功しているのです。

 

 「……だがな、それでは、緒戦の大敗北へのオーブ国内の動揺が……特に『連合総議会』への収拾がつかないんだよ。
   先ずは、こっちの最優先として、飛び散る前に、国内で燻っている火種の始末をせにゃならないんだ……」

 

 そう話しながら、司令の眼差しは瞬時に鋭くなる。私は息を呑む。
バイザーの奥で輝く、目の色が深くなったように思えたのだ。

 

 「……ごくっ」

 

 その司令の迫力に私は思わず、唾を呑み込む。

 

 『オーブ首長国連合』の『連合総議会』とは、諮問機関として開かれていて、
そして、国民投票の選挙で選出された『下院議員』で形成されている議会の事である。

 

 無論、政治的な立場は代表府に劣るが、国営企業とは別に民間の経済的な面でオーブを支えてる面が有り、
無視できない重要な勢力でもあるのです。

 
 

 さり気なく、シモンズ主任が私と司令との会話に割り込んでくる。

 

 「……今までの、私の経験からいえば、『戦略戦術』を建てる思案に、
  政治関係が入り込むというは、不吉だと思うんだけど?」

 

 素人の勘で悪いんだけど、とシモンズ主任が聞いてきた。
それに対して司令は、私が気味が悪くなるくらいの淡々とした口調で、

 

 「ええ。シモンズ主任……ですが、どうも、逆に私の勘では今回の戦いで、そちら関係の方面を無視して動くと、
   思わぬ大怪我や大火傷を負うような気がするんですよ――」

 

 と司令は、シモンズ主任に語り掛けると言うよりも、
敢えて自分の考えをまとめるかのように、淡々と話しを続けてゆく。
そして、

 

 「……最近の『連合総議会』は、代表府に権力が集中しすぎている事に批判的だ――」

 

 と低く呟くように凄みの口調で言葉を紡でいった。
――うぉ!司令、怖っ……一瞬、目が光ったわ。

 

 「――これ以上の失点が重なれば、奴らは『カガリ・ユラ・アスハ』の政権に対する弾劾へと動き出すかもしれない……
  そうなって来たら、少々、拙い事態に陥るでしょうな……」

 

 と鋭い眼光を光らせながら、語る司令は怖い。 
そして……何となく、もにゅもにゃした気分になってくる。
司令がアスハ代表の側近中の側近と言う事はわかるんだけど……

 

 それ聞いたシモンズ主任は微笑しながら、

 

 「――最初から貴方に全てが託された戦争よ。私は貴方の考えに全面的に支持するわ」

 

 シモンズ主任が太鼓判を押す。
この人の背景には、モルゲンレーテがあるから心強いだろうな。

 
 

「――貴女にそう言ってもらえるだけで、グッと気が楽になりますよ。
 私ゃ意外と、世間の目を気にする性質なんでね」

 

あっはははは、と大口を開いて笑い出す男。こいつ……少し前のシリアスさはどうした?

 

「もともと、私も技術者だし、政治政略の思案は不得手なのよ――」

 

シモンズ主任も一緒に笑い出している。先程まで司令と一緒に政治的な話をしてたのは誰?

 

 ――そうして、私は、一人蚊帳の外に取り残されるでした。
何なんでしょうね……?

 
 
 
 

続く

 
 

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