神隠しanother_第01話

Last-modified: 2015-11-01 (日) 14:58:09

オーブ、オノゴロ島
「シン!早く!!」
「分かってるよ、母さん!!」
黒髪に赤い瞳の印象的な少年、シン・アスカ、両親、そして妹のマユ・アスカは戦火から逃れるため避難船のある沿岸へと向かっていた。
空を蒼と緑、黒とコバルトブルーの光がめまぐるしく駆け巡る。

『Mjorrnir』
キュボゥッ!!
空気が破裂するような音を立て少年の手から放たれる漆黒の塊。
キラは飛翔魔法を巧くコントロールし即宙反転。
「っぐ!!フリーダム!」
『Yes, Load cartridge!
Balaena』
両肩部に展開される環状魔法陣。
二本の太い奔流が赤い髪に吊り目な少年、クロトに向け放たれる。
しかし
『Geschmeidig Panzer』
展開される障壁。バラエーナは突然クロトの前に現れた術者をそれ、地上へと降り注いだ。
「ッ!?砲撃が曲がる?」
目の前の緑色の癖の強い髪を持つ少年に視線をやる。
笑っていた。
戦争をしているのに…命のやりとりをしているのに…笑っていた。
「どうして…君達は…。」
デバイス、フリーダムを握る手に力が入る。
『Warrning!』
『Schlag&Skylla』
地上から狙い撃たれるコバルトブルーの三本の奔流。
フリーダムの警告に即時反応したキラは何とか回避に成功した。

オーブ、オノゴロ島ウミナリ市。
ナノハ・タカマチとフェイト・テスタロッサ・ハラオウンは両親、兄弟姉妹と共に逃げていた。
「お兄ちゃん、避難船まであとどれくらい?」
「何とか海までいかないと…シェルターはどこも満員だ。」
ナノハがキョウヤに肩で息をしながら尋ねると、近所で仲良のよいハラオウン家の長男、クロノが付近のシェルターの空きの調べから戻ってきて言った。
「どうするの?」
ミユキがキョウヤを見る。
「取り合えず、海まで走るんだ!」
戦火ももうそこまで迫ってきている。
シロウに促され走り出そうとしたとき、頭上を猛スピードで駆ける人。
「ストライク!」
『Yes, sir。アグニ』
轟音と共に放たれる紫色の光線が、ナノハたちの行く手に現れた人を吹き飛ばして行く。
「嬢ちゃんたち!早く逃げるんだ!ここも、もう!」金髪の男は妙な服装で、それだけ言うと地球連合兵の元へと飛んでいってしまった。

自在に宙を舞う4の光。
蒼の光は残りの三色から逃げるようにして応戦している。
地上に降り立ったオルガに向け、ルプスを放つキラ。
銃口から溢れだした光が一直線に地へと突き刺さり、大地を揺るがす。
「くっ、外れた!?」
「どこみてんだよ!そりゃぁぁああ!!瞬・殺!!!」
『Ahura Mazda』
連続して放たれる漆黒の光弾。
「くっ!」
『PICWS』
同じようにして魔力で練り編みあげる蒼き光弾が放たれ、相殺。
「キャーッ!!」
耳をつんざくような悲鳴。
キラが視線をやれば、シェルターに入りきらなかった住民だろう。
その住民の目の前にはオルガが立っている。
「やめろォ!その人たちはッ!!」
『Xiphias』
腰部砲芯が持ち上がり、高速で撃ち出される閃光の塊が、行く手を阻むシャニを吹き飛ばす。
『サーベルモード』
銃型デバイスフリーダムの砲芯が持ち上がり、銃口から発生する魔力刃。
「間に合ってくれぇえ。」
振り被った刃を縦一閃。
オルガは紙一重の差で跳躍。
かわされてしまう。
「よかった、間に合……」
『ヘクツァーン』
キラのすぐ両脇を駆け抜ける緑色の魔力光が住民の幾人かを吹き飛ばした。
「…あ…お…かぁ……さ…。」
二人の少女が呆然と立ち尽くしていた。
目の前の惨状に、泣く、吐く、叫ぶことも出来ずただ放心しているだけ。
『シールド』
クロトが奇声とともに放つツォーンをシールドで防ぎ、キラは二人の少女を抱え、避難船に向け飛翔を開始する。
「待てぇぇコラァ!!」
「逃がさないよ!」
「逃がすかァ!!」
放たれる砲火を避けかわし、防ぐ。
背後から空駆けてくる数多の本流をうまい具合いに飛翔魔法を操り避ける。
二人の少女のうち、茶色い髪をツインテールをしている方が暴れだした。
「お父さ…!お母さん!!
いやぁ!!放して!!!お兄ちゃ…お姉ちゃぁぁぁあん!!」
いくら下が土でも速度が速度、しかもビル三階分はある高さ。
「じっとしてッ!」
たが遅かった。
片手では押さえきれず、少女の片方が宙へと投げ出される。
「…ッ!!!」
急停止、反転、急降下。
シールドでクロトたちの追撃を受けつつ、キラは少女が地面に落下するのを防ぎ、二人を自分の後ろに下がらせた。

カートリッジがニ発排出される。
『High MAT Full Burst』地に小気味よい音をたて転がる薬莢。
異変を察知したシャニがクロトとオルガの前でゲシュマイディッヒパンツァーを展開。

当たらなくてもいい、足止めになってくれれば…!

放たれる五本の太い閃光。
不快なまでに眩い光、そして電光を伴いながらゲシュマイディッヒパンツァーに命中し、反れるバラエーナとルプス。
そして、それた先にはシンの家族がいた。

一瞬、何が起こったのかよくわからなかった。
蒼い閃光が走ったと思ったら、爆発が起こった。
いや、わからなかったんじゃなくて、理解するのが怖かった。
マユの落とした携帯を拾いに行って吹き飛ばされたシン。
痛みに悲鳴をあげる体を何とか立たせ、シンは家族がいるはずの場所を振り返った。
「父さん…母さん…マユ…。」
へし折れた木々に貫かれた父、首が有り得ない方向に曲がった母。
「あ……あ…あ…。」
手があった。
袖を見る限りマユが着ていた服の袖。
手をとる、まだ暖かかった。

寝てるんだろ?起きろよマユ、早く逃げないと…。

持ち上げたら腕だけだった。
ゾワッと足元から書け上がってくる冷たい感覚。
腕から少し離れたところの岩陰に、マユは横たえていた。
シンは膝を、手を地面についたまま、おえつを漏らす。
「早く、君も避難船に…」
声をかけられたが耳に入らなかった。
赤い、真紅の瞳で空を舞う蒼い光を睨みつけた。
顔は姿は涙のせいではっきりしない。
でも、それでもはっきりと見えた。
蒼い十枚の翼。
「うぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!」
大空に向かってシンは吠えた。

C.E.73

アーモリーワン
「もう二年か、早いもんだな…、」
紙袋を片手に歩くシン。

そう、C.E.71、ヤキン・ドゥーエ攻防戦で戦争は一先ずの終戦を迎えた。
戦火の爪痕残る場所もまだあるが、しかし、復興も大分進み、人々も落ち着きを取り戻しつつある。
深呼吸を一つし、空を仰ぐシン。
コーディネイターとナチュラル。
遺伝子操作により人為的に魔導士の素質、学習能力、身体能力を向上させ、目の色や髪の色まで決められるコーディネイター。
しかし、ナチュラルはそんな彼等を化け物だと忌み嫌い、やがてそれが戦争へと発展した。
当初、圧倒的な魔導士の人数で戦況を押していた地球軍。
しかし、Z.A.F.Tが初めて導入したベルカ式魔法により戦況は大きく覆った。
「おまたせぇ~。」
「おまたせ…。」
と、声。
「ナノハ、フェイト随分買ったな…。」
片手に紙袋のシンとは違い、両手に大きめの手提げ袋を六つもつナノハとフェイト。
「まぁ、色々と必要なものがあったからね。
化粧水とか…色々ね。」
笑って言うナノハ。
「あ、二人とも、もうすぐミネルバの進水式の時間だよ、急がないと…。」
「えぇ~、お昼食べてからじゃないの?」
「ナノハが選ぶのに時間かけすぎるからだよ…。」
「そういうフェイトちゃんこそ、下着選びに時間かけてたじゃない!」
「なっ、それをいったらなのはだってピンクかオレンジかで悩んでたじゃない。」
道行く人々が立ち止まり三人を見る。
周りを見渡すシン。
「はぁ…もぅ…。」
シンは言い合う二人の襟首をひっ掴み、引きずってミネルバへと向かうのであった。
「取り合えず、これでも食べながらミネルバに向かおう。」
あらかじめ買っておいたサンドウィッチの封をあけ、一人一枚ずつわける。
「ありがとう、シンくん。」
「でも…いいの?シンの食べる分…。」
シンの顔色をうかがうようにフェイトが聞いてきた。
「いや、今から急いで帰れば、食堂で食べる時間があるかもだぞ?」
「じゃあ、競争だね?シン…。」
「今日こそ決着つけてやる、フェイト!」
燃える二人。
「へっ?」
置いてけぼりのなのは。
「ちょと、待ってよ~、フェイトちゃ~ん、シンく~ん!」

アーモリーワン技術区域、実験場
「だが、強すぎる力はまた争いを呼ぶ!」
オーブ代表、カガリ・ユラ・アスハはプラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルにくってかかった。
「代表…。」
カガリのSP、サングラスをかけ、男にしてはやや長い藍色の髪をした少年、アレックス・ディノ。
カガリをなだめようとかけた言葉だったが
「しかし、姫、力なくばそれも叶いません。
オーブ戦の折りに流出した技術の即時停止も…出来ません。」
「何故だ?」
「そんなことをしてしまえば、オーブからの避難民はどうやって暮らせばいいのです?
持てる技術を生きる為に使って何が悪いのですか?」
「それは…。」
その必要はなかったようだ。
少しだけ安堵するアレックス。
ふと、周りを見渡す。
どれも初めて見るタイプのデバイスだ。
ゲイツーR、ザクウォーリア、ガズウートetc...
以前はほぼミッドチルダ式、デバイスはほぼストレージデバイス。
しかし、C.E.71、オーブが秘密りに開発したインテリジェントデバイス、イージス、デュエル、ブリッツ、バスターをザフトが奪取。
その技術を応用し初のベルカ式カートリッジシステムを導入したミッドチルダ式インテリジェントデバイスがフリーダム、ジャスティス、プロヴィデンスの三機だ。
しかし、どうもそれらとも違うようだ。
アレックスは興味深そうにテバイスを装備した一般兵を見る。
ゲイツR、腰部レールガン、左腕に障壁発生補助装置兼魔力刃形成補助装置。
「アレックス君、君がよければだが、実験に参加してもらってもかまわんのだよ?」
突然のデュランダルの声に慌てたアレックス。
「あっ、いや…。」
カガリに睨まれる。
「いや、遠慮することはない…、緊急の申し出とはいえ、こんな場所での会見になってしまったのはこちらの都合だ。
それぐらい構わんだろう?」
デュランダルはそういうが、どうみても技術班長、シャリオ・フィニィーノは困り顔だった。

「議長、お見せするのは構いませんが…、実際に使用させると言うのは…。」
「いや、議長、私にはどうぞお構い無く。話の続きを…」
アレックスが話を戻すよう促そうとした瞬間、警報が鳴り響いた。

「ステラとシグナムは左、俺はヴィータと!」
空色の髪の少年アウルが言う。
「わかった。」
「了解した。」
漆黒のバリアジャケットに身を包んだ金髪の少女、ステラ。全身を紫でまとめ、剣を持つ女、シグナムの二人はアウルの命令通りに散開し、
「さてと、行きますかぁ!」
「あぁ、まずは保管庫をぶっ叩く。」
アウルとヴィータも散開。
「さて、キャロとエリオは俺とこっちだ。」
「キュック~…。」
「あぁ、お前もだ。フリード。」
ピンク色の髪の少女と赤い髪の少年、キャロとエリオの頭にポンっと両手をのせるスティング。
「ちゃんとついてこいよ。」
「「はい!」」
スティングと共に飛び立った。

「何だ?一体どうしたと言うんだ?」
デュランダルが声を荒げ、片っ端から状況を説明を仰ぐ。
「六番保管庫の新型カオス、ガイア、アビスが何者かに…。」
「何だと!!」
目を見開くデュランダル。
「新…型?」
カガリは呟いた。

ミネルバ。
「艦長!」
「大声出さなくても分かってるわアーサー。シンは?」
ミネルバ艦長、タリア・グラディス、副艦長アーサー・トライン。
「えっ?艦長…、シン一人で?」
「もちろん、ナノハ、フェイトも出すわ。メイリン、レイとルナマリアは?」
「シン・アスカ、フェイト・T・ハラオウン、ナノハ・タカマチはスタンバイ出来てます。レイ・ザ・バレル、ルナマリア・ホーク、両名はまだです。」
CIC担当、メイリン・ホークが言う。
「そう、じゃあ、三人を出して応援が来るまで時間を稼ぎましょう。」

『コンディションレッド発令…』
艦内に響くメイリンのアナウンス。
『シン・アスカ、ナノハ・タカマチ、フェイト・T・ハラオウン出撃スタンバイ。』
両弦、中央カタパルトのハッチが解放され、
「シン・アスカ、インパルス行きます!」
「ナノハ・タカマチ、レイジングハート!行きます!」
「フェイト・T・ハラオウン、バルディッシュ!出ます!」
バリアジャケットを纏い、射出される三人。
緋、桜、金の魔力光がアーモリーワン技術区へと向かっていった。