種デスクロスSS_第02話

Last-modified: 2008-01-18 (金) 23:05:50

第二話 それぞれの未来2

 

「あ・・・パパ~!」
医務室から出てくるキラに飛びつくように甘えるヴィヴィオ
「あはは、ごめんね待たせちゃって」
キラはヴィヴィオを抱っこして、なのはの待つ食堂へ向かっていった。

 
 

数分前

 

「よいしょ…っこれでOKやな」
キラの背中に湿布を上手に張っていくはやて
シャマルは看護の研修があるため、半日医療施設が留守だったので、キラの手当てはたまたま居合わせたはやてがやってくれていたのだ。
「ありがとうね、はやて」
「何言うとるの、私は起動六課の部隊長、皆の安否を気使うのは当然や」
キラの背中の湿布をはり、腕に包帯を巻くはやて、悲しげな嬉しげな、不思議な表情だった。
「キラ君…これからどうするん…?」
手当てをし終わった後はやてが心配そうに口を開く。
「うん?どうするって…?」
「六課は事実上解散、その後皆は本来の役職に戻ると思うねんけど…なのはちゃんと一緒に新米魔導師の指導にあたるんやろ…?」
さすが部隊長だけ合って鋭い。全員の進路をすでに握手している。
キラは何のためらいもなくはやての一言に無言でうなづいた。
「うん、出撃も当分なくなるだろうし。それに、僕が出来る事はこれくらいだからね」
「本音を言えば、反対や…戦技指導っていえばやっぱり体を動かすことになる、高度な魔術も指導しなければならへん…キラ君の体の状態は普通の人と違うんよ?」
冷静を保っていたはやての感情も次第に崩れ、顔に感情が表れていた。キラは、はやての発言に返す言葉を失い戸惑う。
「でも、大丈夫、一人でがんばるわけじゃないし…ね?」
「何人でがんばろうと同じや、ボロボロの体引きずって…死んでもうたら元も子もない…なぁキラ君…戦議指導の仕事はもう少し休んで、私と一緒に本局へこーへん…?私達の仕事やったら体に負担なんてかからんし…」
「はやて…」
キラは心が痛かった、ここまで心配してくれてる仲間の気持ちにこたえて上げれない自分にもどかしさを感じていた。
それでも、キラは信じていた、ずっとそばで支えると言ってくれたなのはの事を、だからキラ自身もなのはを心から支えたい、そういう決意があるから自分の考えを曲げるわけにはいかなかった
「はやての気持ちは嬉しいけど、それでも僕は頑張るよ。大丈夫、僕だって死ぬのは嫌だから、無理なときは休むし、だからそんなに心配しないで…」
こつん
くすぐったい感触がキラの背中をなぞる。
はやては後ろから優しくキラを抱きしめた。
「ほんと…心配しとるんよ……」
「はやて…」
しばしの沈黙が流れた後、はやてはキラの背中をぽんと押した。
「ほら、もう行ってええよ!なのはちゃんが首長くしてまっとるで!」
キラは、はやてに一言ありがとう、と礼を言い部屋を出た

 

「なのはちゃんは大事な友達や…でも、なんやろなこの気持ち、なのはちゃんは命の恩人なのに…なんかもやつくなぁ…あかんあかん!頭の中切り替えな…!」

 

食堂にて

 

ヴィヴィオを抱っこして食堂へむかった。
なのははすでにキラとヴィヴィオの席を取って待っていてくれた。
「あ、キラくーん、ヴィヴィオー」
すぐ向かい側の席で手を振ってるなのは。キラとヴィヴィオはなのはが用意してくれてた席に腰掛けた。
「ありがと、なのは」
「ありがとぉママぁ~」
なのはと向かいの席に座るキラ、そしてなのはのとなりにヴィヴィオが座る。
「体のほうは大丈夫?」
「うん、おかげさまで、心配かけてごめんね…」
「あはは、それはお互い様だよキラ君っ」
なのはの優しい笑顔がキラの心に突き刺さった。なんとなくだがキラは感づいていた。
なのはに見通されてると…しかし食事の席で暗い話もあれなので、キラも即座に話題を変えた。
「それよりなのは、一緒に教導隊来ないか?って言ってたけど本当に行って良いの?」
「今まではアスラン君がキラ君を見ててくれたから安心だったけど…これからはそれぞれの道を行くわけだから…キラ君は一人にしちゃうと私たちの手の届かないところまで行っちゃいそうだから」
「パパどこか行ったらヴィヴィオも嫌だ…」
二人の横目視線に思わず顔を下に伏せるキラ。反論できなかった。
「だから、今度からキラ君は私が責任をもって面倒をみますっ」
「面倒って、僕もうそんな歳じゃないんだけどな」
あはは、とヴィヴィオと顔をあわせて笑うなのは、キラも苦笑しながらスープをすすった。

 

それからキラとなのは、ヴィヴィオは食事を終え、公園に来ていた。
ヴィヴィオは公園の真ん中でキラのトリィと遊んでいる。
そしてなのはとキラはベンチで、そんな光景を笑いながら眺めていた。
「ねぇ、キラ君…」
しばらくしてなのはが口を開く。
「どうしたの?なのは?」
「しばらく…空を飛ぶのを休むのはダメかな…?」
いきなりのなのはの発言にキラは驚いた。
「またどうしたのいきなり…教導隊に一緒に来て欲しいって言ったのはなのはだよ??」
「うん…それは紛れもない本音だよ。ただ…キラ君私に隠し事してるでしょ…?」
なのはの目つきが少しきつくなった。キラはなのはのこの目に弱い。
もともと隠し事が上手じゃないキラである、すぐに表情にでたのだろう。
「全部…知ってるみたいだね…」
「当たり前だよ…?しかも命に関ること…キラ君…私も一度空で落とされてるから人の事言えないけど…でも、今回の件、黙ってたことは私ちょっと怒ってる…」
「その…ごめん…」
ぷいっとなのははそっぽを向く。全部キラの口から喋るまで機嫌が直りそうもない。
キラは、なのはが理解してると解っていても、自分の体のこと、昔のことを洗いざらい話した。
ようやくすべてを打ち明けて、なのはの期限も直ってくれたようだ。
「いずれ機会があれば話すつもりだったんだけど…本当ごめんね」
「機会が無くても話さないとだめなの、そういう事は」
めっ!と子供をしかるようにキラから目をそらすことをやめないなのは。
「うん…だから、なのはと一緒の部隊に行っても僕はなのはの役には立てない。それに少しの休暇で直る体じゃないから…」
「そう。だから体を動かさない仕事に付けばいいんだよ。教導隊って言っても体動かすだけが仕事じゃないから、いつか私と一緒に空を飛べるようになるまで事務とかすればいいし」
やけに都合が良いよな…とキラは口に出そうとしたがまたなのはに怒られそうなので黙っていた。
「そっか…そうだね、いまの僕に出来ることはそれくらいだし…わかったよなのは」
うん、となのははキラの言葉に笑顔でうなづく。
「そうと決まったら、僕も移住先の手続きとか色々としないと」
本来本局へ戻って仕事をするつもりだったキラは、変更手続き等込み入った事をまったくしていなかった。
なので当然新しい寮の手続きなども終わってない状態である。
「あぁ、いいよ。私とヴィヴィオと三人で同じ寮で暮らせば良いし。それに、今のキラ君を一人にしておくの心配だし」
「ちょ!?それは!!」
なのはの爆弾発言にキラは、紅茶を吹きそうになる。
「私もパパとママ、一緒がいいなぁ~」
いつの間にやら戻ってきたヴィヴィオもなのはの意見に大賛成である。
これから先のことを考えるといろいろと大変になるのを痛感したキラであった。
着替えとかお風呂とか選択とか…考えるだけで失神してしまいそうである…
でも、なのはに隠し事をしていたという弱みから、別々の部屋にしようなんていまさらいえないし
キラはただなのはの言うことに顔を赤らめながらうなづいた。
そしてベンチから立ち上がり、ヴィヴィオに駆け寄る。
「ヴィヴィオ、パパとあそぼっか」
「うん!」
キラはヴィヴィオを抱っこして滑り台のほうへ向かっていった。

 

「私、ラクスさんの変りにはなれないけど…それでもキラ君を支えるから…だから…そばにいるね…」

 

そしてなのはもヴィヴィオとキラの元へ走り出す

 

「待ってよーヴィヴィオー キラっ!」

 

新しい未来、そして青い空はつづく…
第2話 完