第18話~~とっても過激な平和の国

Last-modified: 2013-04-22 (月) 18:39:35

グゥル欲しい。グゥル欲しい。グゥル欲しい。グゥル欲しい。グゥル欲しい。グゥル欲しい。
「あ~~! ムカツク!」
もうすぐオーブだって時に、ザフトの襲撃を受けた。相手はお馴染みの4人組。
「近付いてこい! 臆病者!」
まあ、いくら叫んでも聞いてはくれない。お陰で、俺はザクに乗ってたレイやルナみたいに甲板で移動砲台と化していた。
少佐とフレイのスカイグラスパーコンビも、さすがにG4機が相手では勝ち目は無い。
1度だけエールの滑空距離内に入ったバスターからグゥルを奪おうと突っ込んだが、上手くブリッツの牽制射撃に邪魔されたしまった。
それが最初で最後のチャンスだったんだ……後は、その時の距離を覚えられたのか、そこから少し離れた距離から砲撃を喰らっている。
しかも、俺よりアークエンジェルに狙いを絞って、俺の居ない方向から攻撃してくる。
時々、イージスが突っ込もうとするが、その時は味方の3機から攻撃を受けて止まっていた。
……アスラン、すっかり人望無くしたみたいだな。
それにしても……あのイザークまで、大人しくしてるなんて……どっから、こんな戦術仕入れたんだ?
「損害率25%を超えました」
「イージス、ブリッツ、接近!」
「ウォンバット照準!グゥルを狙うんだ!」
アークエンジェル内で交わされる会話に背中が冷たくなる。俺がいながら……情けない!
「どこかに突破口は!?」
珍しくバスターが長距離射撃に徹している。時々接近してくるデュエルを狙おうにも、ブリッツが目を光らせている……アスランに助けを求めるか?……ダメだ。
プライドを抑え利用しようにも、アイツが迂闊なマネをした途端に、他の3機から一斉攻撃を受けて沈みそうな雰囲気だ。
残念だが、今の鬱陶しいぐらいの価値が最善だろう。
「どうすれば……」
正直言って、大ピンチ!

第18話~~とっても過激な平和の国

「御覧いただいている映像は、今、まさにこの瞬間、我が国の領海から、わずか20kmの地点で行われている戦闘の模様です。
政府は不測の事態に備え、既に軍の出動を命じ、緊急首長会議を招集しました。
 また、カーペンタリアのザフト軍本部、及びパナマの地球軍本部へ強く抗議し、早急な事態の収拾、両軍の近海からの退去を求めています」
テレビ画面に映るアークエンジェル対ザフトのMS。ようやく来たね。
「情けない限りですな。あれがザフトのMS部隊とは……」
馬場さんの呆れた声。気持は分かる。でも……
「ホントに、あんな船沈めるのにどれだけかかってるんだか?」
「でも、結構頑丈そうよ」
「だったら、近付いてブリッジ狙えば1発じゃない?」
「まあ、たしかに……」
……アサギさんも強気な意見。ジュリさんも一応はアークエンジェルの頑丈さに目を付けたけど、結局は、アサギさんの意見に納得。
……ダメだ。確かに彼等は強いけど、肝心なところを見落としてる。
「甲板に居るMS……どう思います?」
「へ? どうって……」
しばらく皆でストライクを観察……やっぱり変だな。この頃の僕、あんなに強かったかな?
「な、なによ! あれ!?」
「速い? 違う、上手いんだ」
「じゃあ、ザフトの4機が近付かない理由って……」
「申し訳ありませんでした教官。危うく敵を甘く見るところでした」
「いえ……」
責める気はしない。僕だって、何となく昔の僕の戦いを見てみようって、気楽な気持で見てたから気付いただけだし……
「まあ、今回みなさんのターゲットは追撃してくる4機のMSです。情報は頭に入ってますね?」
「はい。モルゲンレーテから頂いたデータ。全て頭の中に」
「では行きましょう。目的は追撃しているザフトのMSの無力化。撃墜してしまうと、面倒ですから気をつけてください」
「「「了解!」」」
「お願いします。アークエンジェルは僕が相手をします」
「ですが……お1人で大丈夫ですか? 教官の腕を疑うわけではありませんが……」

馬場さんが心配する。3人娘や、他のパイロットも同様だ。
まあ、ある意味、さっきより良い傾向だね。甲板にいるMS。ストライクの力が分かってるって事だから。でも……
「なんとかなる相手です」
うん。シュライクがあって良かった。それにストライクの性能は充分に分かってる。つまり、どんな動きをするか、どんな事が可能か、全部分かっている。
「ならば……」
「ええ……」
僕は、少し離れた場所から見ているマユちゃんの微笑みかける。民間人が、こんな場所に居て良い筈は無かったが、彼女は特別に許可されていた。
何でもマユちゃんがいると、仕事の効率が上がって、色々と便利らしい……何でだろう?
まあ、良いや。とにかく今はマユちゃんに格好良いところを見せるチャンス。
そして始る馬場さん作の出陣前の儀式。
恥ずかしいけど……でも、マユちゃんが好きだったら、やるしかないじゃない!
「オーブのパイロット諸君! 我が国の目の前で、戦っている連中……アレは何だ!?」
「「「愚か者であります!!!」」」
「なにゆえ彼等を愚か者と思う!?」
「「「獅子の目の前で騒ぐ鼠ゆえに!!!」」」
「獅子とは誰だ!?」
「「「我々、オーブ軍!!!」」」
「では、目の前で騒ぐ鼠を獅子は如何する!?」
「「「捻り潰します!!!」」」
「よろしい! ならばあそこで騒いでる鼠どもに見せてやれ!我等、獅子の力を!」
「「「了解!!!」」」
汗くさ~~……でも、マユちゃん喜んでる……うん。頑張れ僕。
それに待っててね。フレイ。今、艦内で怖い思いをして震えてるんだろ?
アークエンジェル、ちょっと揺れるけど我慢して、すぐに助けるから。

「ああぁ! もう鬱陶しい! 死ね! この変態野郎!」
フレイがお嬢様とは思えない叫びを上げながら、アスランを攻撃してるが、流石に無理らしい。
まあ、反撃を避けてるし、互角と言っても差支えが無い。だが……
「フレイ! 気持は分かるがアスランは放っておけ! それより、バスターだ! お前はソードパックを装備してるんだからランチャーの少佐と代われ!」
「でも!」
「火力の強いバスターは厄介なんだよ! 逆にアスランはアークエンジェルに対しては役に立ってない! 
 あの馬鹿、お前には本気でやれるが、こっちには…俺が……いる…し……」
「ご、ごめん……分かったから泣かないで。とにかくバスターを優先する!」
「頼む!」
……情けない! フレイに頼むだけなんて! 俺が、あそこまで行けたら……
「領海線上に、オーブ艦隊!」
何?……ヤバイ! 向うにはアスハが乗ってることを伝えていない。このままじゃ……
「接近中の地球軍艦艇、及び、ザフト軍に通告する。貴官等はオーブ連合首長国の領域に接近中である。
 速やかに進路を変更されたい。我が国は武装した船舶、及び、航空機、モビルスーツ等の、事前協議なき領域への侵入を一切認めない。速やかに転進せよ!」
だよな……
「本艦隊は転進が認められない場合、貴官等に対して攻撃する権限を有している」
……どうする? このままじゃ……
「うむ、その戦艦。我が国の領海に入ったな! これより、攻撃を開始する!」
は?……
「ちょ、ちょっと待て! 艦長!?」
「え? ま、まだ入ってないわよ!」
そうだよな……なんで………って、おい!
「何でアレが!?」
オーブの艦隊から一機のMSが発進した。
「M1?……しかもシュライク装備だと?」
おかしい……M1の完成は、もう少し後じゃ……それにシュライク装備は戦後の事で……
「え?」
さらに近付いてきた機体をよく見ると、カラーリングが少し違う。腕や脛、アンテナが赤から白に、爪先と翼のような背部ユニットは青……その色調はまるで……
「フリーダム?」

なんで?……って呆けてる場合か! アイツが来る前に落す!
「落ちろ!」
あっさりと避けた?……なんなんだよ? コイツ!
しかも、攻撃しているのは俺だけじゃない。アークエンジェルの艦砲射撃も完全に避けてる。
「チッ!…気持を切り替えろ……あの色に惑わされるな…ただの偶然だ」
M1がビームライフルを撃ってくる。避けたらアークエンジェルに……
「させるか!」
次の瞬間、頭がクリアーになる……弾けた。まずはシールドで防御……ほら第2射が来た。
「ふん」
ビームをビームサーベルで弾く……動揺してくれたか?
「今度は…」
動きが止まった相手にシールドを投げつける。続いてビームライフルを発射。
反射を利用した攻撃……これなら……
「避けられた!? 読んでたのか!?」
嘘だろ?……そんな…って、おい!
「逃げる気か!」
違う。そんなんじゃ無い。M1が、アークエンジェルの下に回った。
「こっちが攻撃できない場所から……」
まさか奴の狙いは……
「1番2番エンジン被弾!48から55ブロックまで隔壁閉鎖!」
「推力が落ちます!高度、維持できません!」
……やられた! 今度こそオーブに向かって落下しはじめるアークエンジェル。
「キラ!」
「フレイ?……ソードを渡せ!」
「え?」
「速く!」
「う、うん」
フレイのスカイグラスパーからシュベルトゲベールが落下し、ストライクの手に……
もうすぐ、アークエンジェルは着水する。そして、あのM1は今はアークエンジェルの後方やや下。
だったら!
「ふざけたマネを……」
ここまで舐められて、黙っていられるほど人間は出来ていない。俺はストライクを艦の後方に走らせた。
もうすぐ見えてくるはず……

「見えた! 落ちやがれ!」
M1の姿が見えたのと、俺が後方に辿り着いたのは、ほぼ同時。
俺は一気に跳躍し、M1に斬り付けた。
「うおぉぉぉっ!」
「くっ!?」
俺の頭からの斬り降ろしの攻撃。だが、わずかに横に避けてかわされた……俺の一撃はM1の右腕を奪うだけに終った。
そして、その時、聞こえたパイロットの驚きの声……
「子供?……つあっ!」
呆けた一瞬、M1の左手に持ったビームサーベルにエールパックが破壊された。
「や、やばい!」
もう飛行出来ない……このままじゃ、動きの取れない海上で狙い撃ちに、いや、向うも腕と一緒にシュライクをやられたか、海上に着水した。だったら……
「キィィィラァァァァァァ!」
…………おい、何考えてるんだ? ここはもうオーブの領海だぞ。
「今、助けるぞぉぉ!」
馬鹿みたいに近付いてくるイージス。それを切欠に残りの3機もアークエンジェルに止めを刺そうと近付いてきた。
まあ、アスランは兎も角、多少無理してもアークエンジェルを沈めようとする3機の気持は分かる。
でも……
「そのMS、貴様等も我が了解に入った! MS隊、発進!」
「お、おい……」
オーブの艦隊から飛び立ったM1……12機。
「キラ! 大丈…ぐあっ!」
3機小隊のフォーメーションでGに攻撃開始するM1隊……な、なんだよ! この連中!?
「キ、キラ……だ…い…じょ…う…ぶ…か?」
ガトリング砲の雨を浴びながら、アスランが何か言ってるけど、今はそれどころじゃ無い。
アスランだけじゃ無い。残りの3機も、飛行MSのフォーメションに成すすべも無く、次々とやられてる。
そして、ブリッツ以外がPSダウンすると、ようやく砲撃が収まった。
「さあ、速やかにオーブの領海から引け!」
指示に従い、残りの3機をグゥルに載せて、撤退をするブリッツ……そして、俺の頭上にもM1……
ど、どうする? だが考える間も無く、ガトリング砲が俺目掛けて撃たれ始めた……

続く

】【戻る】【