第19話「4強決定!」

Last-modified: 2016-01-17 (日) 21:56:06

ガンダムビルドファイターズ side B
第19話:4強決定!

 

「皆様大変お待たせしました!それではこれよりガンプラバトル世界選手権
 決勝トーナメント準々決勝第2試合、アメリカ代表グレコ・ローガン対
 ドイツ代表ライナー・チョマーの一戦、開始ですっ!」
明けて8/14、準々決勝の残り3試合が行われる、その会場には各所に警備員が
配置されていた。どこか張り詰めた会場はそれでも満員だ。
・・・もっとも警備員は単なるポーズだ。主催者側からすれば、あんなガンプラの
盗み方をするのは企業としての利権の絡む作りのトリックスターくらいで
他のガンプラが盗まれる心配はそうはない。

 

「グレコ・ローガン、呂布トールギス、出るっ!」
「ライナー・チョマー、ウォドム・ストレッチ、行くぜ!」
両者がフィールドに踊り出る、かたやSDガンダム系、かたや露骨な兵器系、
見た目に全く対照的な機体の戦いとなった、開幕の挨拶代わりとミサイルを
複数発射するヴォドム。
「でやあぁぁぁっ!」
槍を薙ぎまくってミサイルを全て両断するトールギス。そのままの勢いで
ヴォドムに突進し、槍の一刀を浴びせる。
「あらよっと!」
何と、まるで跳び箱のようにトールギスを飛び越すヴォドム、これはかなり気色悪い。
「ス、ストレッチ・・・か、なるほど、よく動くな。」
グレコが顔を引きつらせて返す。巨大な足のヴォドムがスムーズに屈伸運動をする様は
かなりシュールな動きに見える。
「コイツも、もうずっと作りこんでるからな、付き合い長い機体なんでね。」
そう言うと、猛然とトールギスに突進、その巨大な足でケンカキックをかます。
直撃し吹っ飛ばされながらも、バック転から鮮やかに着地するトールギス。
「SDに格闘戦を挑むとは、いい度胸だなチョマー!」

 

「通算成績5勝5敗、それがあの二人の世界大会での戦績だよ。」
ルワン・ダラーラが選手席で宇宙にそう解説する。
「・・・そんなに戦ってるんですか?あの二人。」
「ま、予選も込みでだがね。クジ運の絡みもあってよく当たるのさ。」
フェリーニがそう付け加える。二人とも第4回大会からの縁だそうだ。
「大抵の試合で、ペースを掴むのはチョマーのほうさ、それをグレコが真っ向から
 突き崩せるかが毎回勝敗の鍵となる。」
メイジンがそう語る。そして今回もその言葉通りになりつつあった。

 
 

「魂いいいっ!」
槍を右に左に振り回し、ヴォドムに斬りつけるトールギス。しかしヴォドムは
その巨体をひょいひょいクネクネ動かして、そのヤリをかわし続ける。
まるで体操選手のようなその動きは、シュールを通り越してもはや不気味の一言だ。
そしてスキを見てはパンチやキックを繰り出し、呂布トールギスを吹き飛ばす。
ただ、体系的に塊に近いSDガンダムには、その大味な攻撃はあまり効いてはいないようだ。
「(わざわざヴォドムを持ってきた以上、何か打つ手を隠していやがるはずだ。)」
距離を取り、チャージの完了した必殺技の構えを取る。
「こいつで見極めてやる!くらえ、旋風大烈斬!!」
トールギスの放った巨大な竜巻がヴォドムに向かう。
「さすがに、コイツを喰らうワケにゃいかんぜ。」
側転で竜巻の軌道から外れるヴォドム。しかしそこにはそれを予測したトールギスが
先回りして待ち構えていた。
「もらった!」
槍の一撃がヴォドムの頭に命中する。が、命中したのみで、それ以上
めり込むことは無かった。
ヴォドムの右手の甲から剣が伸び、鍔迫り合いの形で槍を防いでいたのだ。
そこからヒザ蹴りを放つヴォドム、喰らった呂布トールギスは上空に舞い上げられる。
剣を伸ばし、まるで野球の打者のように落ちてくるトールギスに狙いをつけるヴォドム、
トールギスもまた、上空から落下しつつ一撃を加えようと槍を構える。
「その剣ごと叩き折ってくれるわ!うおおおおらあぁぁっ!」
グレコが吠える、チョマーも狙いをつけ、一本足打法でフルスイングを狙う。
「せーのっ!ふんっ!!」

 

ヴォドムが豪快に空振りした。ずっこけるルワン他野球経験者。
当然その剣に槍を合わせようとした呂布トールギスの槍も空を切り、受身を取り損ねて
地面に激突する。
次の瞬間、呂布トールギスはヴォドムの巨大な足に踏み潰されていた・・・。

 

「なーんか精彩に欠けてたよな、今日のお前。」
選手席に帰ったグレコにチョマーが声をかける。
「やかましい!来年は借りを返すからな!!」
一括するグレコ。見守る宇宙たち新参組にフェリーニが耳打ちする。
「あいつ、ああ見えて意外にデリケートなんだよ、根が正直だからな。」
「・・・なんかあったんですか?」
フェリーニが宇宙の左手の包帯を指して返す。
「昨日のコレだよ、あいつずっと犯人にカンカンだったからなぁ・・・」

 
 

「続きまして第3試合、レイラ・ユルキアイネン対マツナガ・ケンショウ
 バトルスタートっ!」

 

 山岳地帯のステージ、マツナガのザクは背中に巨大なヒートホークを担いでいる。
某ガンダム雑誌の某隊長が愛用しているのと同じサイズだ。
対するレイラは今回も丸腰である。緩斜面でヒートホークを抜いて待ち構えるザク。
「おー!でっかいオノだねー。んじゃ、いっくよーっ!」
相手の武器もお構いなしに突撃してパンチを打つモック。それにカウンターを合わせるように
モックの正中線にヒートホークを叩き込む。
直撃したモックは、そのまま斜面下まで転がり落ちた。そして『元気に』立ち上がる。
「うっそおおおおおお!」
観客席のあちこちから驚嘆の声が上がる。1回戦を見ていない人にとっては尚更だ。
まさに不死身のモック、同じ機体でもCPUプレイヤーのモックとはえらい違いだ。
「やはり普通に戦ってもダメか・・・」
マツナガは特に慌てない。前の試合のマスターガンダム戦を見てもこのくらいは覚悟の上らしい。
「もっぺん、とっつげきぃーっ!」
助走をつけ、見え見えのパンチを放つモック。ザクはそれをかわすと、反対側の手を掴み
モックの動きを止める。
「なら関節部はどうかなっ!」
掴んだ手のヒジ関節にヒートホークを叩き込む。さすがに脆い関節部にコレを喰らえば・・・
「ふーんっ!」
そのオノを喰らった左手で平然とザクを振り回すモック。観客から悲鳴に似た声がいくつも上がる。
豪快に振り回され、投げ飛ばされるザク。

 

「ねぇレイジ、あれって一体どういう作りなの?」
観客席の隅でイオリ・セイがレイジに問い掛ける。超一流のビルダーのセイをしても
あのモックの強さの秘密が全く見えない。
「さぁな、作ったのはププセだ。ただ、作る時にちょいとアリスタを使ってたな。」
レイジがそう言って返す、娘の戦いを不満そうに眺めながら。
そう言っている間にも、再度ヒートホークに叩き飛ばされるモック。
「あーもうヘタクソ!それでも俺の娘か、つか俺に代わ・・・いててててっ!」
隣のアイラに耳を引っ張られ悶絶するレイジ。
「代われるなら、私が行くわよ・・・」
「そっち!?」
セイがツッコミを入れる。相変わらずの似たもの夫婦だ。

 

 35分後、ついにザクはその活動を停止した。攻撃をクリーンヒットさせた回数は
相手の20倍にも達するのに・・・
「しょ、勝者、レイラ・ユルキアイネーンっ!」
右手を上げられ、満面の笑みのレイラ。周囲は完全に凍りついている。
選手席でも全員が唖然とした顔だ。

 

 主催席改め対策本部、ニルスに一枚のレポートが届く。
―レイラ・ユルキアイネン使用のモックに対する報告―
目を通したニルスが、あーあ、という顔をする。そのまま隣のキャロラインに回す。
「・・・こんなことが、可能ですの?」
「来年はかなりルールを変更しなきゃならないね、これは・・・」

 
 

「そ、それでは準々決勝最終戦、サザキ・ススム対エマ・レヴィントン、始めてください!」

 

―STAGE SPACE―

 

「宇宙ステージとは残念、是非僕の剣技を見てもらいたかったけどね、エマお嬢ちゃん。」
サザキが剣を突きつけてそう挑発する、どうやらエマが元フェンシングの選手なのは
承知の上のようだ。
「それなら、そこのコロニーに入りません?その中なら重力もありますわよ。」
「遠慮しておくよ、オッゴ相手にそりゃいくらなんでも張り合いが無い。」
サーベルを仕舞い、代わりにビーム・スプレーガンを抜く。
「ショット!」
まるで拳銃のようにスプレーガンを連射するギャン、オッゴは大きく動いてかわすと
マニピュレーターでザクマシンガンを構え、掃射する。
互いに激しく動き、余った手で盾を操作して相手の銃撃を防ぐ。小手調べは互角と
言った所か。
「さて、そろそろ行くか。」
そう言って盾を前方に構えるギャン。ミサイルか?それとも機雷か・・・
オッゴも機体を横に向け、砲撃防御体制を取る。
「ウェイブッ!!」
サザキがそう叫んだ瞬間、盾からまるで波のような衝撃波が放たれる。
薄く広がったそれは広範囲に四散し、オッゴにも一部が命中する。
しかし攻撃密度が薄いため、それほどのダメージにはならない。

 

「ほう・・・ビームを極限まで細く薄くして、広範囲に放っているのか、面白いな。」
選手席からメイジンが感心する。
「けどよ、あれじゃたいしたダメージにゃならんぜ、意味あんのか?」
グレコがそう返す。確かにアレではせいぜい嫌がらせくらいのレベルだ。
「単発では無意味だ。単発では・・・な。」
そのメイジンの洞察を証明するように、高速移動を始めたギャンは盾からウェイブを連発する。
右から左から上から下から、次々と衝撃波がオッゴに飛来する。直撃しても
深刻なダメージは無いが、代わりに広範囲のこの攻撃は避けようがない。
ガンゴンガンゴンと細かい衝撃が絶えずオッゴの機体を叩く。
「なんて鬱陶しい攻撃なの!」
完全に機先を制されたエマが吐き捨てる、四方八方に飛び交い周囲全体から衝撃波が飛んでくる
下手に動けばカウンターになりダメージが倍加するし、動かなければ狙い撃ちされ続けるだけだ。
「オールレンジモード!」
しびれを切らせたエマは、オッゴを縦割りにし、十字に変形させて全包囲にミサイルを放つ。

 
 

「・・・かかったね。」
ギャンが回転を始めたオッゴに突撃する、いつのまにか再びサーベルを抜いて。
全包囲に放たれたミサイルのうち、ギャンに向かったそれは全て盾に阻まれる。
「動きを止めるのを待っていたんだよ!サーブルっ!!」
ギャンの剣が振り下ろされる。しかしオッゴは前の試合同様、自らをバラバラにして
その剣をかわす。
「おっと!」
咄嗟にバーニアを吹かし距離を取るギャン、ルワンの二の舞は御免だ、といいたげに。
再び合体し、元の姿に戻ったオッゴ。ギャンが再度ウェイブを放とうとする。が、
オッゴはギャンに背中を向けて一目散にコロニー方面に逃走していく。
「(あのウェイブを宇宙空間で相手にしては不利ね、狭いコロニーの中なら・・・)」
コロニー内部に進入するオッゴ、追ってギャンも入っていく。

 

「結局、こうなりましたね。」
オッゴがヒートホークを、ギャンがビームサーベルを構えて対峙する。
「しょうがないね。それじゃあ行くよ、スイスの剣姫!」
ギャンが盾を捨て突撃、剣を次々と繰り出す。オッゴもマニュピレーターを器用に動かし
ヒートホークで応戦する。剣と斧が交錯し、ぶつかり、こすれて火花を釣らす。
しかしMSの腕とモビルポッドのマニュピレーター、剣と斧では動きの差は明白だ、
何度か打ち合った後、オッゴの斧は剣に絡め飛ばされる、回転しながら上空に舞い上がる斧。
「もらった!」
ギャンが放った突きがオッゴの本体左の隅をえぐる、返す刀で本体を袈裟に斬ろうとする。
が、オッゴは急発進し距離を取りにかかる。即座に追撃するギャン。
「逃がさないよ!」
「逃げるつもりはありません!」
急停止したオッゴが、マニピュレーターを上に掲げる。フライを捕球する外野手のように。
それを見たサザキがギャンにブレーキをかける。
「ま、まさか、さっきの斧の着地点に!?」
さっき弾いた斧に目をやるギャン、しかしそれはギャンの後方、あらぬ方向に落下する。。
「さすがにそれは無理です。」
サザキが一瞬、視線を切ったスキに、オッゴが変形を完了させつつあった。
「変形モードY!」
横向きから機体を3分割し、小型の加速式砲塔 ”ヨルムンガンド”の形に姿を変える。

 
 

「ファイア!」
大蛇の咆哮がコロニー内にこだまする。ギャンはかろうじてかわしたが、代わりに
コロニー自体がえらいことになっている。
どうやら心臓部に直撃したらしく、コロニーの爆発も時間の問題だ。
「とんでもないね・・・」
即座にコロニーを脱出するギャン、そしてビームスプレーガンを抜き、オプションパーツを
合体させてビームライフルに変形させる。
「出てきたところを仕留める!」
火を噴き、崩壊していくコロニーに狙いを定めるサザキ。
しかし、一向にオッゴは脱出してこない。このままでは爆発に巻かれるしかない。
やがてコロニーの心臓部が大爆発を起こし、コロニー全体に爆発が広がっていく。

 

ズドドドドドドォォォーーーン

 

豪快に爆発するコロニー、あれでは中にいたオッゴはひとたまりも・・・
サザキがそう思った瞬間、爆発の中から一本の光が飛んでくる。あまりに意外なその光線は
内部から放たれたヨルムンガンドの咆哮であった。胴体を丸ごともっていかれるギャン。

 

 ―BATTLE ENDED―

 

「な、なぜ・・・どうしてあの爆発の中で。」
嘆くサザキ。やがて粒子が回収され、両者のガンプラが舞台に残る。それを見たとき
彼の疑問は解けた。
オッゴのマニピュレーターは、ギャンの盾を握っていたのだ。
「そうか!それを持ってオールレンジモードで、四方八方にウェイブを飛ばして
 周囲の爆風を防いでたのか・・・。」
「ええ、脱出したら狙い撃ちに遭うと思って、周囲を見回してみたらちょうど落ちてたから
 使わせていただきました。」
「・・・お見事。」
そう言ってギャンを回収し、舞台を降りるサザキ。観客に手を振りながら通路を歩いていく。

 
 

「さぁ、いよいよベスト4が出揃いました!泣いても笑っても後3試合!
 そのバトルを飾るのはこの4組ですっ!なおサトオカ・ソラ選手は負傷のため
 次戦は兄のサトオカ・ダイチ選手の出場となります。」
ベスト4が壇上に上がる。宇宙+大地、チョマー、レイラ、エマ。
誰が優勝しても初優勝、そしてチョマー以外の3人は初出場での初優勝がかかる。
決勝戦まであと4日、運命の日が近づいて来ていた。

 
 

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