舞乙HiME+SEED DESTINY
第一話『時をかけるものたち』
「あんたが!!俺たちを裏切るから!!」
「やめろ!シン!お前は利用されているんだ!議長たちに」
「うるさぁぁぁい!!」
漆黒の宇宙を激突しあう二つのMS
彼らの後ろにもいくつもの巨大な人型機動兵器が争い、そして閃光として姿を消していく。そしてそのさらに後ろにあるが巨大な岩…ただの岩ではない。
それは戦争というものをなくすために作り上げられた反射衛星砲レクイエム。
時代はCE(コズミック・イラ)地球連合軍とザフト軍による大戦は、第二次ヤキン・ドゥーエ宙域戦、ユニウス条約の締結を経て、一応の停止を見た。しかし、争いの火種は消えることはなかった。
それから2年後、C.E.73年10月2日。プラント最高評議会議長 ギルバート・デュランダルとの非公式会談の為、新造艦 ミネルバの進水式の準備が進むL4
アーモリーワンを訪れたカガリ・ユラ・アスハとアスラン・ザラ。
だがその最中、ザフト軍が開発した新型MS(モビルスーツ) カオス、ガイア、アビスが何者かに強奪され、周囲は混乱に陥る。
これを阻止すべく、ミネルバからも新型機インパルスが出撃。そのパイロットは、プラントに渡りザフト軍に入隊したシン・アスカであった。
新型機を強奪した謎の部隊を追い、カガリとアスランを伴ったままミネルバは出撃する。だがそんな中、安定軌道にあったはずのユニウスセブンが地球に落下し始めたという報せが入る。
それは、ナチュラルへの憎しみを募らせ続けるザフト軍脱走兵達の仕組んだものだった。しかし、この事件を利用しようと暗躍する者達も動き始め、世界は再び混乱と戦火に包まれるのだった。
戦火は広がり見せ続ける。
デュランダル議長はこの戦争の真の敵を超巨大軍需産業ロゴスと決めつけ、これを連合、ザフトとともに協力し殲滅することを宣言する。
その後ロゴスは圧倒的世論の味方をつけたデュランダル議長率いるザフロ軍とそれに同調する連合軍によって壊滅させられることになる。
そして彼はディスティニープランを実行に移す。遺伝子情報の統制による世界の管理された平和。
彼の野望を食い止めるべく、第二次ヤキンドゥーエ戦を勝ち残ったアークエンジェルは旧クライアン派、そしてオーブ連合軍とともに宇宙要塞メサイアにへと向かったのだ。
「やめて!シン!!アスランも!」
MSインパルに搭乗するルナマリアは二人の戦いをとめるべくインパルスを走らせる。
アスランもシンも両方自分にとっては大事な人であることにかわりは無い。たとえそれが所属する軍が違っていても。
アークエンジェル艦内
「インフィニットジャスティス、ストライクフリーダム、ともにディスティニー、レジェンドと交戦中!」
「艦長!射線上、ミネルバです!!」
アークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスは艦内から見える、そのもはや見慣れてしまった戦艦をにらむ。一度は撃破されかけた。だ今度は…。
「ローエングリーン!!スタンバイ!!」
混沌とした戦い、それはどちらが勝ってもおかしくは無い。戦争というものは互いの譲れない意思をかけて行うもの。
戦争など本来なら誰も望まない。だが人の争いは必ず起こるもの。人との争いはやがて集団となり、国としての争いになる。
人間は動物、争いは起こって仕方が無いものなのだ。
さらにいえば人間は動物とは違い知能が発達している。それが戦争を残虐なものにへと進化させているのだ。
本来の歴史であるなら、ここからミネルバはアークエンジェルの反撃を受け戦闘不能に陥り、
そしてシンはアスランに破れ、レクイエムは大破。
メサイアはデュランダル、そしてレイ・ザ・バレル、ミネルバ艦長であるタリア・グラディスとともに爆発するはずである。
だが…こことはまったく違う別の世界での出来事が幾つもあるこの世界の一つの歴史を狂わせることになる。
「レクイエム付近で高エネルギー反応を確認!!」
「なんですって!もう発射されるの?」
マリュー・ラミアスは目前に迫るミネルバの後ろに見えるレクイエムを見た。
それはミネルバ側からも確認されていた。
「艦長!!レクエイムを中心にエネルギー反応!増大していきます!」
「なにがおこっているっていうの?メサイアに確認急いで」
艦長であるタリアもまた目前にいるアークエンジェルを射程に収めながらもその異常事態を確認することのほうが急務である。
「さらに増大!!」
「これは一体…」
ストライクフリーダムに搭乗するキラ・ヤマトはレクイエムを中心に光がすべてを包んでいくその光景を見つめていた。
だがそんな彼にせまるもう一人の男にその光は見えてはいないようであった。
「キラ・ヤマト!!」
「くぅ!レジェンド、まだくるのか?」
かつて倒したはずの亡霊に取り付かれたそのMSはストライクフルーダムを圧倒する。
だが彼らもまばゆいその光に飲み込まれていく。
『アスラン君?聞こえる?』
シンの操るディスティニーの巨大なサーベルをインフィニットジャスティスはビームサーベル二つを用いてなんとか抑えているところだ。
だがそうしている間にも巨大な光が次々と敵味方かまわず飲み込んでいく。
「どうなっている艦長!」
『わからないわ!でもすぐに…を…き…』
「艦長!?」
アークエンジェルからの通信が途絶される。撃墜?いや光に飲み込まれたか。
「シン!状況がわからない。ここは一旦」
アスランは直接回線からシンに通信をかける。
「そうやってまたお前は逃げる気か!メイリンをそそのかしてまたお前はぁ!」
「くそぉ!!シン!!」
インフィニットジャスティスはディスティニーの胴体に蹴りをいれる。
大きくバランスを崩すディスティニー。
「二人ともやめて!!」
ようやく二人にたどり着くルナマリア。
だがシンにはそのことさえもうわからなくなっていた。
すべての憎悪…今ここで吐き出す。妹を失い、メイリンを失い、自分を否定したすべてのものに対する憎悪。
「うぉぉぉぉ!!!!」
ディスティニーはバランスを崩した状態からすぐに立ち直り、巨刀を用いまっすぐそれをアスランに向け突撃してくる。
「シン!」
ルナマリアはシンをとめるべくインパルスを向ける。
二人を戦わしてはいけない。そんなことをすればまた自分のかけがえの無い人を失う。もうそんなことは絶対にさせない。
「下がれ!ルナマリア!!」
アスランはルナマリアが自分の機体を楯にしようとするそれを察知する。目前に迫るシン。
あの勢いでは彼はルナマリアの機体もまとめて自分を狙ってくるだろう。アスランは苦渋の決断をするしかなかった。
「くそぉぉぉ!!!」
アスランのビームサーベルはルナマリアのインパルスの右肩部分を貫き、そのままシンのディスティニーの頭部と胴体部分の狭間にビームサーベルを貫いた。
「うわぁああ!!!」
シンのディスティニーから爆発が起こる。
「シン!!」
ルナマリアの機体も右肩を失い、そのバランスは保てない。
彼女の目前でディスティニーは光の中、爆発とともに消えていく。
「いやぁあああ!!!シン!!!!」
そういう彼女もまたその光の中にへと飲み込まれていく。
それは限りなく遠い世界…。
惑星エアル…そこは科学を封じ、オトメというものが存在する場所。
ここでもついこの間まで戦争状態であった。北方の軍事大国アルタイと黒科学を崇拝する武教集団シュヴァルツが手を組みヴィントを制圧し、
強力な力を持ったオトメ同士による代理戦争システムを崩壊しようとした、ヴィント事変から二ヶ月が経過し戦後処理もようやく軌道に乗り始めていた。
アルタイでは平和維持軍による間接統治が行われている。
三台の車がそこには走っていた。
前後にあるのは軍用車であり、中央にある護送車をけいごしているようだ。護送車にいるものは足かせをつけられ、
身動きが取れないようになっている。
だが特に暴れる様子もなく、彼の手には本だけが握られている。
「なんだ!?あれは!?」
突然叫ぶ運転手の声、急な車の停車にその囚人はおもいっきりずっこけることになる。
「…全員無事?」
タリアはぼーっとする頭を振って大声を出す、その声で目を開ける艦内オペレーターたち。
タリアが前方を見るとそこは先ほどまでの深遠の宇宙ではなく、大地…地球のようだ。視界に広がる限り青空と緑の大地しかないようだ。
艦は地上に落着しているようだ。損傷の激しかったミネルバの修理のためにも今はこの状態のほうがいいだろう。
それにしてもここはいったい…。
「なぜ…」
タリアは思わず声が漏れる。
「艦長!前方、インパルス、ルナマリア機、レジェンド、レイ・ザ・バレル機を確認しました」
「ディスティニー、シン・アスカ機は?」
「反応ありません」
「…現在地を確認、メサイアとの通信を。索敵、敵MSを確認急げ」
先ほどの戦闘とはうってかわってそこはまるで夢の世界のように、落ち着いている場所であった。
周りには何も見えない。
爆発するMSも襲って来るものも。
目の前にあったあのアークエンジェルも。
すべてが消えてしまっていた。出来の悪い漫画の世界のようだ。
「敵MS、メサイアともに反応ありません」
「…第二次戦闘配備のまま、インパルスおよびレジェンドを回収」
「艦長…」
その声はいつものオペレーターの声とは違っていた。
タリアは視線をそのオペレーターに向ける。
「…ここは地球ではありません」
「どういうこと?」
「現在地は地球上では大西洋のはずですが、ここは地上です。さらに地形がかわっています」
「もう一度確認して。計器の故障かもしれないわ」
「はい…」
まさか…そんなことがあるはずがない。しかしタリアはその空から見た光景を見てそれも間違っていないのではないかと思ってしまっていた。
「艦長!!艦の外に車らしきものがとまっています」
「車?」
カメラを拡大するとそこには三台の車が止まっている。
一台は急ブレーキのため車が横転している。
艦内に戻ってくるレジェンドとインパルス。両機ともかなり損傷している。
インパルスに限っては右部分の腕を失っており、コクピットこそ無事なものももう少しずれていたら危なかっただろう。
「…一体なにがあった?」
レジェンドから降り立ったレイは周りにいる作業員に聞く。だが誰もが首を傾げるばかりだ。
レイは滑走路から外の様子を見る。
先ほどとは違ったあまりにも別世界の光景。
だがレイにはあまり関係ないことだ。
もう少しであのキラ・ヤマトが倒せたというのに。
レイは拳をにぎりそのまま奥にへと歩いていく。
「インパルスはどうなっている?」
作業員はレジェンドより損傷の激しいインパルスに集まっていた。
「コクピット応答ありません」
「外側からあけるぞ!」
作業員の言葉の中、ルナマリアはコクピットで呆然とした表情で座っていた。目の前でシンの乗ったディスティニーの姿が消えていのを目撃した。私はまた大切な人を失ってしまった。愛する妹に続いてまた…。
「…シン」
薄暗いそのコクピットの中、嗚咽が漏れた。
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