艦内点景◆炎のX好き氏 07

Last-modified: 2016-03-05 (土) 06:27:25

艦内点景7
 
 
(雛祭り編SIDE:B)
鏡の中でマユが微笑む。今にも『お兄チャン』と声が聞こえてきそうだ。
「おにぃちゃん」
「うわぁあっ!」
「うぇい!」
「なっなんだステラじゃないか」
青に金を散らしたフリソデのステラがいる。
「だって今、シン『お兄チャン』って言えって…」
やばい…声に出していたらしい。これじゃ女装癖の変な奴だよ。
今日は女の子のお祭りだから女の格好で来い、というから『いつもの制服』で来たのに他の連中、普通の服じゃないか。
騙された…。
「よぉシン」
やはりフリソデのティファといっしょのガロードが声をかけてくる。
こっちはゴスロリ姿だ。ガロード、2人で強く生きて行こうな(涙)
(終わり)
 

艦内点景(続、虎虎虎編<1>)

虎仮面1号、2号ことバルドフェルドとテクスの「平和を愛し、争いを憎む」活動は続いていた。
それどころか、恐ろしいことに、その行動範囲はラクス軍を越えてタカマガハラまで及び始めた。
キラが、ジャミルが、アスランが次々とコーヒーの海に沈んでいった。
そして大物ギルバート・デュランダル(本物)に虎達の正義の魔の手が迫る。
「新たな時代に誘われて、虎仮面1号、華麗に登場」
「虎仮面2号、優雅に活躍」
虎とラクス医師がギルバートに襲いかかる。
「議長!危ない」
車椅子のギルバートを、付き添ったハイネが庇うが、虎仮面達の攻撃に瞬殺。
ハイネは口から噴水みたいにコーヒーを噴き上げながら悶絶する。
「…無念」
「お待ちなさい。それ以上の狼藉は許しません!」
そこに凛々しく現れるはタリア・グラディス艦長だ。
「あんたらみたいな変態が、正義を騙(かた)るとは、言語道断!」
怒気鋭く言うはトニヤ・マームだ。
「どぅあれが。変態だ!我々は愛と正義の虎仮面1号だ!」
「2号だ!」
虎のマスクをかぶり、裸の上半身に虎縞のマントを着た、変態じみた格好の虎とラクス医師が雄々しく名乗りポーズを決める。
「変態よ!」
トニヤが一言の元に切り捨てる。
「重ね重ね失礼な!このまま、良い子の待つヒーローショーに出演出来るカッコ良さ、だろうに」
出演する気か?虎仮面。
その時、司会のお姉さんはラクスだな。
きっと。

「問答無用!!ギルは私が守ります」
タリアは胸元のペンダントから魔法のステッキを引き抜くと「ププル、オフ!」もはや誰も覚えちゃいない簡易呪文を唱える。
タリアの姿がみるみる魔法"少女"風、ピンクのフリフリミニスカートのコスチュームに包まれる。
『歳を考えろよ』と言う全員のツッコミは、殺人光線のごとき殺気を発する視線で封じる。
「シンちゃん!アスカ!出撃よ」
負けじとトニヤも叫ぶ。
「俺1人なんすけど…」
頭に一本角、肩が真上につき出た紫のプロテクターを着込んだ"シン"・"アスカ"がぼやきつつも前に進み出る。
「確か"レイ"・ザ・バレルっていたっけ。次は連れてくるわね」
「次、あるんですか?…」
シンの声は既に何かを達観している。
その視線は、自らの背中からトニヤの手元に伸びるケーブルを見る。
「ヤーッ!コーヒーメーカーアーム」
先制攻撃とばかり、虎が腕のカセットアームを交換する。
その先端から漆黒の"何か"がほとばしる。
その黒きビーム状のものは周囲の壁や床を切り裂く。
「どうだ!数tの水圧をかけられたコーヒー流は触れる物、全てを切断するのだぁ」
コーヒーを使う意味が全く無いが、剣呑な武器であるには変わり無い。
悲鳴を上げつつ、タリア、トニヤ、シンが逃げ惑う。
と、黒き死の噴流が止まる。コーヒーが切れたのだ。
「テクス!」
「待て!」
ゴォリゴリゴリ。
テクスが手動のミルでコーヒー豆を挽く。
「電動で挽くと風味が変わるからな」
目立たないが、テクス医師のコーヒーに対するこだわりは虎に負けない。
「それならしょうがない」
虎も納得してテクスの手元を見つめる。

ゴリゴリゴリ

「あぁっ、心癒される音だ。良い豆は良い音をたてる」
「ウム、煎り方を少し工夫してみたのだ」
「隙有り!」
タリアの魔法のステッキから大量のリボンが飛び出し、虎とテクスを拘束する。
「「しまったぁ&#12316;」」
すかさずシンがN2爆弾を放り、虎とテクスが空の彼方に吹っ飛ばされる。

&#8212;&#8212;あれが最後の虎仮面とは思えない…。
議長が恐ろしいことを言う。
「あんなのが、あれ以上いてたまるもんですか」

&#8212;&#8212;でも、少なくても2人はいたろ?油断は禁物だよ。タリア。
「うっ」タリア艦長はその不吉な言葉に声を失う。
『もし、そんなことになったら我々は…いや人類は勝てるのだろうか?』

…その頃、虎仮面1号、2号こと、虎とテクス医師は、運命的な出会いを果たしていた。
「今から君は虎仮面V3だ!」
「恐れ入ります」
やはりCE世界に飛ばされていた『ウィッツ・スーの母親の再婚相手、コーヒーをいれるのが上手いバーテン』がいつも変わらぬ穏やかな表情で微笑んだ。

(おわり)
 
 
前>