起動魔導士ガンダムR短編1

Last-modified: 2011-08-13 (土) 22:34:10

闇の書事件から三週間後、商店街のとある雑貨屋。
スウェンはそこにあるショーケースの中にある商品をかぶりつくように見ていた。
『アニキ~いきましょうよ~。』
おでかけノワールボックス(略してONB)の中のユニゾンデバイス、ノワールは、30分以上もそこに張り付いている自分のマスターにいいかげんうんざりしていた。
そのショーケースの中には「\59、800」の札が立てられた、素人から見たらなんて変哲のないものだが、その手のマニアから見ればとても価値のあるものであろう望遠鏡が置かれていた。
「………ほしい。」
ショーケースに顔面をベッタリくっつけ、スウェンは豚鼻になっていた。
『トランペット欲しがる黒人の少年じゃないんスから…そんなことしてても大富豪のオジサンとかは現れないッスよ。』
スウェンはショーケースから顔を離す。
「0が一個余計だな…。」
『はやて姐さんに頼んでみたらどうッスか?』
「そうは行くまい…タダで住まわせてもらっているのにこれ以上迷惑は掛けられん…。」
スウェンは溜め息をつき、トボトボと店を出ようとする。ふと彼の目に店の入り口に貼られているアルバイト募集の張り紙が入った。
「これだ……!」
『何が?』
ちなみにノワールの念話はリンカーコアを持たない普通の人には聞こえないので、その雑貨屋にいた店員や客は見えない誰かと喋っているスウェンを可哀相な子(様々な意味で)的な目で見ていた。

 

自分の好きなこと(星関連)にはとことん突き進みのめり込む性格のスウェンは、その足でコンビニで履歴書を買い、八神家に帰宅する。
封を切って履歴書を出し、ボールペンを握る。
「誕生日は…CEと書くわけにはいかんか…逆算しよう。」
スラスラと書いていくスウェン、ふと、ペンを握る手が止まる。
「学歴と職歴は…。」
学校中退(悲しい家庭の事情)→養成施設で頭がパーな組織の兵隊になるため軍事訓練→???→世界を飛び越え八神家に居候→はやてを助けるため人を襲い、現在裁判中。
「オイラなら採らないッスね…。」
「……………。」

 

本日はここまで、次回の投下h

 

「イヤイヤイヤイヤイヤイヤ。」
「短すぎッス!」

 

次の日、スウェンはシャマルに頼まれて、負のオーラを纏いながらスーパーに夕飯の買い物に来ていた。
「はー…。」
『元気出してくださいよアニキー、明日があるさー。』
ONBの中で試食コーナーから拝借したウインナーを寝転がりながらもしゃもしゃ食べるノワール。
「諦め切れん…MASA開発の高性能望遠鏡…アレさえあれば火星にいる火星人の着替えを覗くことだって出来るのに…。」
『それバッタもんじゃないんッスか?てか火星人の着替え覗きたいんッスか?』
「はあ~、とにかく用事を済ませて帰ろう…。」
そう言ってスウェンは、メモに書かれている食材を次々と買い物籠に入れているつもりでいた。
『うおっほ!こっちは買い物籠じゃ…ぎゃあああ!!!!生魚入れられた!!!臭いがああああ!!!』
「あら…?あそこで見えない誰かと喋っている一見すごくアブナイ人に見えるあの子は…なのはの友達のはやてちゃん家の同居人のスウェン君?なにしてんのー?」

 

買い物を終えたスウェンは、先程出逢ったなのはの母、桃子と共に帰宅の路に着いていた。
「ふ~ん、じゃあスウェン君は欲しいものがあるけどお金が無くて困ってるのね~。」
「はい…それでいっそノワールと一緒に路上で何かしようかなと思ったんですが…俺ピアニカで『キラキラ星』しか弾けないし、ユーモアセンスも皆無ですし…。」
「オイラは別にいいんッスけど…。消臭材欲しいし…。」
「ふ~ん、あっそうだ!スウェン君!ウチでアルバイトしてみない?」
「翠屋…喫茶店で…?」
「うん♪実はこの前バイトの晶ちゃんとレンちゃんがケンカして二人とも骨折しちゃってね、これから二週間働き手が減って困ってたのよ~。時給700円でどお?」
「やります。」
スウェンは迷わずその提案を受け入れた。その間0.2秒。
「じゃあ二人とも、明日の朝9時にウチにきてね~♪待ってるから~♪」

 

「……アレ!?いつの間にかオイラまで働く事になってる!?」

 

「と、言うわけで明日から二週間翠屋で働く事になった。」
帰宅後、スウェンとノワールはアルバイトが決まった事を八神家の皆に報告した。
「大丈夫かよ…スウェンほど接客に不向きな奴はいねえだろ…。」
話を聞いたヴィータは不安そうにお茶をすする。
「まあノワールもいるし大丈夫だろう。」
「でもホントスウェンて星の事になるとキャラ変わるわよねー。」
シグナムとシャマルもお茶をすする。
「うん、まあ一日中家で寝転んでいるよりはエエやろ。」
「……なぜだろう、主の視線が痛い…。」
はやてとザフィーラ(人型)もお茶をすする。
「なんの話をしてるんだ?」
そこに風呂上りのリインフォースがやってくる。
「ああ、明日から俺が翠屋で…。」
「「「「「ぶ―――!!!!」」」」」
風呂上りのリインフォースの姿を見てお茶を口に含んでいた者達は全員それを噴出した。
リインフォースは全裸に手ぬぐいタオルだけという格好でリビングにやってきたのだ。
ちなみに女の上の大事な部分はタオルで二つとも隠れており、下の大事な部分はたまたま置いてあった観葉植物の葉で隠れていた。
「貴様は…!風呂から上がったらまず服を着ろといっただろ!!」
「いや…熱いし…。」
「もう!リインフォースたら!ザフィーラが鼻血出して倒れちゃったじゃない!」
「あばばばば……。」
「ほら、服きてこいよ、そのままじゃ風邪ひくぞ。」
ヴィータに押されてリインフォースは脱衣所に向かっていった。
「いや~いいもんみた、ノワールは後十年は戦えるッス。」
「何と戦うんや…そういやスウェンってシグナムやリインフォースの裸みても恥ずかしがらへんな、どないして?」
「いや…別に興味ないし…。」
「健全な男の子としてそれは問題あるんじゃ…。」
「み…魅力がないのか私には…それはそれで凹む…。」
ちょっと落ち込んでるシグナムを尻目に、はやて達はスウェンの将来が本気で心配になってきていた。

 

次の日、開店前の翠屋
「と、いうわけでしばらくここで働くことになったスウェン君とノワール君で~す。」
「どうも。」
「よろしくお願いしますッス!」
バンダナにエプロンという格好のスウェンとノワール(青年ver)は、同じく翠屋で働いている士郎、恭也、美由希、忍に挨拶する。
「へ~、君がなのはの友達のスウェン君か、よろしくね。」
「すっごーい!妖精なんて初めて見た!しかも大きくなった!」
美由希と忍は珍しいものを見る目でスウェンとノワールを見る。
「……………。」
「のほー♪美女二人にモテモテでノワール困っちゃうッス~♪」
「こらこら二人とも、困っているじゃないか。」
はしゃぐ二人を恭也が制止する。
「んじゃあ二人とも、軽く接客の練習でもしてみようか、桃子達は店の方を頼む。」
士郎の指示に従い、恭也達は店を開ける準備を始める。
「それじゃあまず、挨拶から…。」

 

そして、数十分後。

 

「う~んノワール君は合格でいいとして…スウェン君、もっと笑う事とか出来ないかな?」
年中仏頂面のスウェンにとっては一番難しい注文だった。
「わかり…ました。」
スウェンは顔面の筋肉をフルに使い、ぎこちない笑顔を作る

 

メキメキメキメキメキメキ…

 

「ちょ!大丈夫かいコレ!?」
「羽化する!アニキの顔面からなんか羽化する!!」

 

メキメキメキメキメキ…ドシュ!!!

 

「力み過ぎて血管が切れた!」
「ストップストップ!このままじゃ死んじゃうよ!」

 

スウェンは士郎のレフェリーストップにより、顔が血まみれになりながらもいつもの仏頂面にもどった。
「ハアッ!ハアッ!どう…でした…!?」
「汗ビッチョリ血はベッタリ…どんだけ笑うのヘタクソなんすか…。」
「こりゃ接客は無理だね、厨房で皿洗いのほうがいいか…それとちゃんと顔洗ってきなよ。」

 

そして開店時間、スウェンとノワールは与えられた仕事をなんなくこなしていった。
「桃子さーん、ショートケーキとモンブラン2つずつ!あと紅茶4つッス~。」
「はいはーい。」

 

「スウェン君、この皿洗っといてくれる?」
「了解しました。」
「ぷっ!な~に~その口癖?まるで軍人さんだね~。」

 

「チーズケーキとコーヒーお持ちしたッス~。」
「うわーなんだろあの新人さん、かっこよくない?」
「ほんとだー、彼氏とかいるのかな~?」

 

「合計で960円です。」
「あれ~君お手伝い?えらいねー。」
「ええ…まあ…ありがとうございました。」

 

そして閉店時間はあっという間に訪れ、店内の掃除を終えたスウェンはイスに座り一息つき、ノワールは変身魔法を解除していつもの妖精形態にもどってテーブルの上で寝転がっていた。
「疲れたッス~。」
「ああ、喫茶店がこんなにハードだったとは…。」
そこに、翠屋特製トロピカルジュースを持った桃子がやってくる。
「は~い二人とも、お疲れ様~。これまかないね~。」
「のっほー!うまそー!」
「ありがとうございます。」
二人は桃子からジュースを受け取り、ストローでそれを味わって飲んだ。
「すごいですね桃子さん…なんでも作れるんですね。」
「そりゃそうだよ、お母さん昔は海外でパティシエの修行に出てたんだから…ボディガードをやっていたお父さんと出逢ったのもその頃だったんだよね。」
(ボディガード…道理で喫茶店のマスターにしては身のこなしが只者ではないと思ったが…。)
「なんで今はやってないんスか?結構儲る仕事でしょ。」
「ノワール。」
スウェンは事情を察してか、ノワールの口を手で制する。
「いや別にいいよ、なのはには事故と言ってあるんだが…実は数年前、テロに巻き込まれた女の子を助けようとしてね…私は大怪我をしてしまったんだよ。」
「テロ…。」
士郎はポツリポツリと昔の話を始める。
「外国のパーティー会場でね…私はある偉い人とその娘の警護に就いていた…そのとき、一人の女の子が記念品を渡すためにその偉い人に近づいたんだ…そのときね、女の子が持っていたヌイグルミから時計音がしたんだ、僕は慌ててその子を庇った。大怪我を負ってしまったが、その子はちゃんと守りきることができたんだ。後で聞いた話なんだが、その子はパーティー会場に来る前にそのヌイグルミをテロリストらしき男に渡されたらしいんだ、全く酷い話だよ。」
「「「「「………。」」」」」
スウェンとノワールだけでなく、恭也、美由希、忍までもが士郎の話に聞き入っていた。
「それでボディガードは廃業、日本に帰って怪我を治すことに専念していたんだ。あの時は…みんなに迷惑をかけてしまったね。なのはにも…とても寂しい思いをさせてしまった…。」
「そんなこ「そんなこと言わないでください。」
桃子の言葉をスウェンが遮った。
「スウェン君…?」
「貴方は…ちゃんと生きて帰ってきて…今こうして家族と笑いあう事ができるじゃないですか、なのは達はそれだけで嬉しいはずです…。」
スウェンはなんとなく、士郎の境遇が自分の両親と重なりあって見えていた。
「ごめんね…なんか思い出したくないものを思い出させてしまったようだね。」
「いえ、いいんです、なのはがなんであんなに他人を気遣うことができる優しい子になったか…判った気がします。」
スウェンとなのはの付き合いは一ヶ月にも満たないが、闇の書事件の時、はやてやヴォルケンリッターを必死になって救おうとした彼女を間近で見ていたので、スウェンはなのはがどういう女の子なのか十分理解していた。
「でしょ!?ウチの自慢の娘だよ、勿論恭也と美由希もな。」
「ちょ!父さん!」
「恥ずかしいな~もう~。」
娘を褒められて上機嫌の士郎を見て、恭也と美由希は恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「そうだ!ちょっと待っててね。」
そういうと桃子は店内にあるCDプレイヤーにあるディスクをセットする。

 

CDプレイヤーから優しい旋律のピアノの前奏が流れる。

 

『青空を――見上げて―♪風の囁き――聞いてる―♪』

 

そして、子守唄を歌っているような優しい歌声が流れた。

 

「この歌は…。」
「父さんが守った女の子…フィアッセ・クリステラの歌だよ、フィアッセは…私と恭ちゃんの幼馴染でもあるんだよ。」

 

『私も笑ってる―♪この空の下―♪笑ってる―♪』

 

「ちなみにね、テロに巻き込まれた女の子…エリスも私達の幼馴染、今はフィアッセのボディガードをしているんだ。」
「………。」

 

『傷ついた――記憶に――悲しみ沈む―♪思いに―♪負けないよう――今――瞳を開く―♪大地に足を付け―♪大きく息を吸う―♪負けないように――♪』

 

「この曲は彼女と彼女のお母さんが、よく遠い国の紛争区域の人々に聞かせている曲なんだって。」
(すごい…ナチュラルでこんなに綺麗な歌声が出せるなんて…。)
スウェンはいつの間にかその歌声の虜になっていた。

 

『旅立ちに――願いを込め―♪祈り――思い――うたいゆくからそっと―♪心に留めて――Sweet songs for you-♪あなたに贈る―♪祝福の歌―♪あなたの胸を――あたためるよう―♪Sweet songs ever with you―♪』

 

「………。」
「やべえ…泣きそうになったッス…。」

 

『Sweet songs ever with you―♪』

 

曲が終わり、あまりの歌声に放心状態になるスウェン。
「なはは…気に入ってくれたみたいだね。」
「スウェン君もう数ヶ月で帰っちゃうんだろ?なのはによくしてくれた俺達の贈り物だと思ってくれ。」
「はい…ありがとうございます…あの…今度MDに録音してもいいですか?」

 

帰り道、スウェンは先程聴いた曲を鼻歌で歌いながら歩いていた。
『アニキ~上機嫌ッスね~無表情だけど。』
「そうか…?いつもと変わらないよ。」
沈む夕日を見ながら、スウェンは遠い故郷の事を思い出していた。
(ナチュラルだって…頑張ればコーディネイターよりも綺麗に歌えるんだ。この歌…CEの人間にも聞かせてあげたいな…。)

 

この日、スウェンに生まれた“願い”は、後にコズミックイラの世界に大きな影響を及ぼす事になるのだが、その時のスウェンはまだ知る由もなかった。

 

そして、二週間後…。

 

「今日までありがとう二人とも、これ二人分のお給料ね。」
約束していた期限が過ぎ、スウェンは桃子から給料袋を渡される。
「あ…ありがとうございました!」
「また何かあったら手伝ってね~、まかないにも腕を振るうから♡」

 

翠屋を出たスウェンとノワールは、早速給料袋を開けてみる、そこには一万円札が6枚入っていた。
「よし…!これなら…!」
『早速買いに行こッス!』
その足でスウェンは、お目当ての望遠鏡がある雑貨屋へと向かった。
『いよいよッスねアニキ~。』
「ああ、ここまでがんばった甲斐があったな。」
そして二人はお目当ての雑貨屋に着き、店内に入る。
「これくだ……………!?」
スウェンは二週間前、望遠鏡が入っていたショーケースを見る。その中には望遠鏡の代わりに『売り切れました。』の札が立てられていた。
『売り切れ…そんな馬鹿な…アニキ?』
次の瞬間、スウェンは膝を付き、そのまま前のめりに倒れ、顔面を床に強打した。
ただならぬ雰囲気に気付いた店員は、慌ててスウェンに駆け寄ろうとする。
「お客様どうし「アニキィー!!しっかりしてくだせぇー!!」
その時、スウェンが持っていたバスケットの中からノワール(青年形態)が出てくる。
「お…お客様のカバンの中から人がでてきたー!?」
店員の突っ込みに意を返さず、ノワールはスウェンを抱き上げる。
「アニキ!しっかりしてください!!傷は浅いッス!!」
「ノワール…?そこにいるのはノワールか…?なにも見えねえ…。」
「しっかりしろよお!オイラやはやて姐さん達を置いてくなよ!」
「そうか…なら…はやてに伝えておいてくれ…はやてが楽しみにしていたガリ○リ君…あれ食べたの俺なのにヴィータに罪をなすりつけてごめんなさいと…がはあ!!」
「バカヤロウ!!自分で伝えろよ!!後が怖すぎるんだよ!!」
「あれ…父さん、母さん、なんでここに…?迎えにきてくれたの…?」
「!!!そっちいっちゃダメェー!!!」
「もう一度…皆で…星を…みた…か…。」

 

カクン。

 

「あ…アニキィィィィィィィイイイイ!!!!!」

 

この日、スウェンは星になった。ありがとうスウェン・カル・バヤン、君の事はレンタルビデオ店でスターゲイザーのパッケージを見るたびに思い出すだろう……。

 

「消防車はまだッスかああああ!!!?アニキを助けてやってくれえええええ!!!!」
「えええ!!?なんだこの客…店長!てんちょおおお!!!」

 

「アニキ~元気出してくださいよ~。」
ノワールは抜け殻になったスウェンを背負ってカラスが寂しく鳴く夕方の帰り道を歩いていた。
「ぁ…大きな星が、点いたり消えたりしている…あはは、大きい…。」
「重傷だ…。」
そして二人は八神家に到着する。
「ただいまッス、ザフィーラのアニキ。」
「おかえり、ん?どうしたんだ二人とも?」
いつもと様子が違う二人にザフィーラは?マークを浮べる。
「彗星かな?…いや、違う、違うな。彗星はもっと“ばぁー”って動くもんな!」
「なにも聞かんといて下さい…!!」
「?????まあいいさ、とりあえず二人とも、こっちに来てくれないか。」
ザフィーラに連れられて、ベランダにやってくる二人、そこにははやて、シグナム、ヴィータ、シャマル、リインフォースがおり、そしてシートを被せられた大き目の物体が置かれていた。
「どうしたんスか皆揃って?それにそれは…?」
「おぉーい!出してくださいよ、ねぇ?」
「我らはなんか呟いているスウェンのその状況が気になるのだが…。」
「んふふー♪みんないくで!せーの!」
はやての号令と共にシートが剥がされる、そこには二週間前、あの雑貨屋で売られていた望遠鏡が置かれていた。
「!!!」
「え!?何でそれがここに置かれているんスか!?」
ふふんと鼻を鳴らし、はやては自慢げに答える。
「今日たまたまコレが売ってた雑貨屋行ったらな…違う人がこれを買おうとしてたんよ。折角スウェンがんばっとったんに買えなかったら可哀相だと思ってな…銀行で慌ててお金下ろしてその人より先に買っといたんよ。」
「主に感謝しろよ。」
「はやて…!みんな…!」
スウェンは嬉しくなって、思わずはやてに抱きついた。
「ひゃい!!?」
「ありがとう…みんな大好きだ!!」
スウェンは嬉しさのあまり自分のキャラを忘れていた。
「だいす…!?あわわわわわわわわわわわわ。」
はやては“大好き”の部分にのみ反応し、頭から機関車の如く煙を噴き出した。
「うわー主!!!しっかりしてください!!!」
「ちょ!スウェンもはやても落ち着け!」
「あーあ、大変だこれ…。」

 

その日から、八神家のベランダに高級そうな望遠鏡が置かれるようになり、スウェンの天体観測の時間が増えたのは言うまでもなかった。