起動魔導士ガンダムRSG_エピローグ

Last-modified: 2011-08-13 (土) 22:33:03

十二月二十五日
桜台林道でリインフォースは雪が降る海鳴の街を見つめていた。
そこにスウェンとノワールがやってくる。
「ああ…来てくれたか…。」
「リインフォース…。」
「お前も…私をその名で呼んでくれるのだな…。」
リインフォースはスウェン達に向かって優しく微笑む。
「リインフォース…本当にいいんッスか…?空に帰るなんて…。」
「ああ、これが…一番の方法なのだ。」
夜天の書の防衛プログラムは破壊された。だがリインフォース…マスタープログラムがある限り、近い未来狂った防衛プログラムが形成され、再び主であるはやての体を蝕んでしまうのだ。
「でも…お前達とあの小さな魔導師達のおかげで私は主を喰い殺さずにすみ…騎士達を生かす事ができた。だから後は私がいなくなれば…。」
リインフォースは優しくスウェンに微笑む。
「星に還すのは俺達でいいのか?それに…誰も連れて来なかったぞ。」
今この場に居るのはスウェンとノワール、そしてリインフォースだけだった。
「お前達に閉じて欲しい…。それにお前達だけに話しておきたいことがあるんだ。」
「…なんだ?」
「私は…もうすぐ空へ帰る、もう主達の側に居る事は出来ない、だから…お前達が私に代わって、主達を見守っていてほしいんだ。」
「「……。」」
二人は、なにも答えない。
「そろそろだ……頼む。」
スウェンは何も言わずノワールとユニゾンしフラガラッハを構えた。
リインフォースの足元に魔法陣が展開される。
『リインフォース…。』
「二人とも…世話になった、小さな魔導師達の剣にもよろしくと…。」
魔法陣に光が放たれ、リインフォースは静かに目を閉じる。
「主……騎士達……小さな勇者達……スウェン……ノワール……ありがとう、私は…。」
そしてリインフォースは…、

 

「ふがっ!?」
鼻を摘まれた。

 

「ふぁ、ふぁにふぉ…!?」
リインフォースは目を開ける。そこには木陰に隠れて『ドッキリ大成功!!』のプラカードをもったなのは、フェイト、シン、はやて、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラがいた。
「勝手に逝こうとした…罰だ!」
スウェンは指に力を込める。
「いふぁふぁふぁ!!!ふぉんふぉふぃふぃふぁふぃ!!!」←訳:いたたたた!!!ホントに痛い!
リインフォースはあまりの痛さに涙を流していた。
「いえ~い!だ~いせ~いこ~!」
一斉に木陰から出てくる一同。
「あ…主…皆…一体何を…?」
リインフォースは痛む鼻を擦りながらはやてを見る。
「だって…ウチにだまって勝手に逝こうとするからなんとなく腹たって…。」
「で…ですが私が居なくならないと防衛プログラムが…。」
するとシンが防寒服のポケットから一枚のフロッピーを取り出す。
「その心配は無いよ、ここに修正プログラムがあるから。」
「修正…プログラム!?なんでそんなものが…!?」
「サンタと猫みたいなトナカイに貰ったんだよ、コレさえあればあのウネウネした化け物は出てこないし、はやてが死ぬ事はない。特殊なロックが掛かっていたんだけど、デスティニーがパパッと解除したしな。」
「リインフォースが天に帰る必要は無いんだよ。」
フェイトが笑顔で答える。
「全く…アースラでリインフォースの話を聞いた後、シン・アスカが修正プログラムを持ってきた時は目が飛び出しそうになったぞ。」
「そんでオメエが勝手に悲劇のヒロインぶってアタシらに黙って死のうとするから…。」
「みんなでドッキリを仕掛けようってことになったの!!」
「見事大成功と言う訳だ。」
「お父さんから借りてきたカメラにもバッチリ収めたの!」
「え…?は…?え…?」
リインフォースは今だ状況が理解できずうろたえていた。
「う~んつまりな…。」
はやてはリインフォースの傍により、彼女の手を優しく握る。
「これからリインフォースは…ウチ等とずっと一緒にいてもええんや。リインフォースは消えなくてもええんやで。」
「……!!」
その言葉を聞いてリインフォースは先程とは違った理由でまた涙を流す。
「わた…し…は…いきて…いい…の…ですか…みん…な…と…いっ…しょに…いて…も…。」
するとスウェンがリインフォースの頭を優しく撫でる。
「生きていていいんだよ…誰もリインフォースの幸せを拒んだりしない。これからも…。」
「これからもずっと一緒や!!」

 

その光景を、グレアムとロッテとアリアは遠い所で見守っていた。
「よかった…本当によかった…!」
「ロッテ…泣き過ぎよ…、でも本当によかった…。」
「うむ、あの少年達のお陰で私は自分の過ちに気付くことができた…ありがとうカヤン君、シン君、皆…。」
「でもお父様…あの子が作ってくれた修正プログラムが役に立ってよかったですね。」
「あの子もあの世界で悲しい思いをしていたから…父親を失ったクロノを見て…自分の子供達と重ね合わせていたのかも。」
「そうだな、彼女は子供達が大人の勝手な理由で淘汰されるのが我慢ならなかったのだろうな…。」
グレアムはまだ雪が降る空を見上げる。そして遠い昔の日に出会った彼女に、お礼の言葉を捧げた。
「ありがとう……ヴィア・ヒビキ。」

 

「それじゃあ皆、行こうか。」
スウェンの一言にシン以外は全員首を傾げる。
「行くって…どこへ?」
「忘れたのかはやて?アリサと約束しただろうが、今準備して待ってるよ。」
「アリサちゃん…?あ!そっか!今日はクリスマスパーティーの約束してたな!!」
「えー!?じゃあ私家からケーキ持ってくるね!」
「おーしっ!クロノやユーノ達も呼ぶか!」
「なあなあ!クリスマスケーキってギガうまなのか!?」
「わ…我々も行っていいのか…?」
「いいに決まってますよ、プレゼントも買わなきゃ…。」
「じゃあお料理作るの手伝いますね~!」
「やめろ…聖夜に病院送りは勘弁だ。」
わいわい騒ぎながら、一同はその場を後にする。
「行こう、リインフォース。」
「みんな待ってるッスよ!」
一番後ろにいたリインフォースは、スウェンに手を差し伸べられる。
「ああ…わかった。」
リインフォースは差し伸べられた手を掴んだ。そして、一言呟いた。

 

「私は……世界で一番幸福な…魔導書だ…。」

 

リインフォースのうれし涙が混じった笑顔は、まるで銀河に輝く幾億の星達のように光り輝いていた。

 

これは、一風変わった幸せな家族の、絆が紡がれる物語。

 

これは、雪が降る聖夜に起きた、小さくて大きな奇跡の物語

 

これは、数多の世界を駆ける魔法使いと、数多の星の海を駆ける騎士達の、二つ目の出会いの物語。

 

この小さな出会いと奇跡はやがて、“種”の名を冠した物語の“運命”を、大きく変えていく事になる。

 

でもそれは、まだ少し先の物語。

 
 

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