起動魔導士ガンダムRSG_13話

Last-modified: 2011-08-13 (土) 22:26:14

海鳴市上空、そこではなのは、フェイト、シン、スウェンと、はやてを取り込んだ闇の書との死闘が繰り広げられていた。
「どおおおおりゃあああああああああ!!!!!!!」
闇の書に向かってアロンダイトを振り下ろすシン、だがそれは魔法障壁に防がれてしまい、シンは吹き飛ばされてしまう。
「うおおお!!」
「はあああ!!」
今度は横からフェイトとスウェンが仕掛ける。だが、
「穿て、ブラッディダガー。」
魔力が爆散し、二人ともとっさにガードする。
「このぉ!」
遠距離から魔力弾で攻撃するなのは。
「盾。」
だがそれは難なく防がれてしまう。
「くっそー!!アイツ強すぎだ!!」
先程から攻撃が通らず、シンは空中で地団駄を踏む。
その時、闇の書の天にかざした右手に桜色の魔法陣が展開され、空から光が集まってきた。
「星よ集え…すべてを導く光となれ。」
「スターライト…ブレイカー!?」
なのはは闇の書が自分の技を使っている事に驚く。
「あいつ…蒐集のときにコピーしたんだ!」
「シン!」
フェイトはなのはを連れて闇の書から距離をとる。それに応じて、シンもスウェンを連れてフェイトと並行に飛ぶ。
「フェイトちゃん…何もこんなに離れなくても…。」
「お前!あんなもん至近距離で喰らったら死んじまうだろうが!」
「そんなにすごいのか…?」
シンの様子を見て、スターライトブレイカーを見たことがないスウェンはフェイトに聞く。
「うん…私も一度放たれて…死に掛けた。」
「あ…あの時はフェイトちゃんが勝ったでしょ!死に掛けたのはコッチだよ!」
『主、ちょっといいですか?』
言い争うなのは達の会話に割って入るデスティニー。
「どうした?」
『この付近に一般市民がいます。恐らく取り残されたのでしょう。』
「はあ!?」
「バルディッシュも感知したみたい…巻き込まれちゃうね。」
「そこまで連れてってくれ、救出する必要がある。」

 

そのころ、病院から帰る途中だったアリサとすずかは街の中から人が消えて呆然としていた。
「なんだろう…アレ…。」
すずかは空に浮かぶ桜色の光に不安を感じていた。そこにあたりの様子を見に行っていたアリサが戻ってくる。
「やっぱり誰も居ないよ…辺りは暗くなるし、なんか光ってるし…一体何が起きてるの!?」
その時、桜色の光から一筋の巨大な光線が大地に向けて放たれ、その衝撃波がアリサ達に襲い掛かる。
「「!!?」」
思わずお互いを守るように抱きしめあうアリサとすずか。
だが、衝撃波が二人に直撃することはなかった。
「え?」
「一体何が…?」
恐る恐る目を開ける二人、そこにはなのはが、フェイトが、シンが、そしてスウェンが衝撃波から光の壁を展開して自分達を守っているのだ。
「なのは…?フェイト…?」
「シン君…?スウェンさん…?」
背中から羽根を生やしたり、見たことも無い格好や物騒な武器を持っている彼等に、二人とも頭が混乱していた。
そして衝撃波が収まり、二人は改めていつもと様子の違う彼等を見る。
「アンタ達…その格好…。」
「ゴ…ゴメン!訳はちゃんと後で話す!」
「だからパーティーの準備をして待っていてくれ。」
シンが両手を合わせて謝罪のポーズをとる。すると二人の足元が光り、いつのまにか学校まで移動していた。

 

「バレちゃったな。」
「そうだね…。」
悲しそうなシンの言葉に頷くなのは。
そこに、闇の書が四人の前に降り立つ。
「もうやめてくれ……無関係の奴まで巻き込むな!」
スウェンは必死に闇の書に訴えかける。
「我が主はこの世界が、愛する者達を奪った世界が、愛しき者が奪った世界が、悪い夢であって欲しいと願った、我はそれを叶えるのみ。主には穏やかな夢のうちで永久の眠りを…。」
「なぁにがはやての願いだ!はやてがこんなこと望むはずがないだろ!!」
「そうだよ…!はやては悲しむよ…!だからもうやめて!」
シンとフェイトは闇の書がプレシアと重なって見えていた。
「あなたは…それでいいの!?」
「あなたは主の願いを叶えるだけの道具なんかじゃない!!」
「だから武装を解除して、はやてを開放しろ!!」
なのは、フェイト、シンの訴えに、闇の書は目に涙をためて答える。
「我は魔道書…ただの…道具だ。」
その言葉に、スウェンの堪忍袋の緒が切れる。
「ふざ…けるなああああああ!!!」
「「「「!!!!?」」」」
スウェンの突然の叫びに、その場にいた全員が驚く。
「お前は!戦うだけの…壊すだけの存在なんかじゃない!兵器が…シン達の言葉を聞いて涙を流すものか!!!」
闇の書は慌てて涙を拭った。
「これは…主の涙だ…私には悲しみなど…。」
「そんな悲しい顔で…!悲しみなんかないなんて誰が信じるか!!」
その時、結界内に地響きが立ち、地面が割れ、至る所に火柱が立つ。
「うわぁ!?なんだ!?」
シンは火柱に巻き込まれそうになったが、服が焦げる程度ですんだ
『崩壊が始まってます。このままじゃあの方は…暴走しますね。』
「早いな、もう崩壊が始まったか。私もじき意識をなくす。そうなればすぐに暴走が始まる。意識のある内に主の望みを叶えたい」
「そんな…!どうしたら…!」
その時、スウェンは勢いよく闇の書に向かっていく。
「いいかげんにしろ!駄々を捏ねるなら手を上げさせてもらう!!」
スウェンはフラガラッハを振り下ろすが、防御魔法で簡単に防がれてしまう。
「二人とも…主と騎士達に本当によくしてくれた…だから…。」
『……!アニキ、ヤバイ!』
ノワールは危険を察知したがすでに遅く、スウェンの体は光の粒子になって徐々に消えていった。
「な………!?」
「スウェン!!」
「「スウェンさん!!」」
「すべては…安らかな眠りのうちに…。」
そして、スウェンは完全に消えてしまった。
「テメエ!なにしたんだ!」
シンは訳も判らず闇の書に怒鳴り散らす。
「彼等は私の中で覚めることの無い眠りの中にある。そのほうが…心置きなくこの世界を破壊できる。」
「こっ!この…駄々っ子!」
「話は終わりだ、デアボリック…。」
その時オレンジ色の光弾が飛来して闇の書に直撃し、詠唱を止める。
「よ~し!ストライク!」
「ゴメン!遅くなった!」
光弾が放たれた先には、援軍にきたアルフとユーノがいた。
「ユーノ君!アルフさん!」
「たく…遅れた分キリキリ働けよ!」
「く…何人こようとも…。」
闇の書は集まったなのは達五人を見る。
「いっくよーみんな!あのワガママ娘を止めるよ!」
「「「「おー!!!!」」」」
なのはの号令に他の四人も答える。そしてなのは達と闇の書の激闘の火蓋が切って落とされた。

 

スウェン……スウェン……。

 

誰だ…俺を呼ぶのは…?

 

起きなさい…スウェン…。

 

この…懐かしい声は……。

 

「スウェン、もう朝よ、起きなさい。」
スウェンは気が付くと、どこかの部屋のベッドで寝ていた。
「あれ…ここは…?」
身を起こし、辺りを見回すと、彼は信じられないものを目にする。
「マ…マ…!?」
数年前、自分を庇って命を落としたはずの母親が、何事も無かったかのように自分に微笑み掛けていたのだ。
「ママ…なの…?」
「何を言ってるのスウェン、私は貴方のママじゃない。早く顔を洗って朝ごはんを食べましょう。」
そういうと、スウェンの母はスウェンの部屋から出て行った。
「ここは…。」
スウェンは改めて辺りを見回す、そこは自分があの爆発事件に巻き込まれる前の、幼き日を過ごした家そのものだった。そして自分の体を見る、体は先程よりも縮んでいた、つまりスウェンは父と母が生きていた頃にもどってきたのだ。
「これって一体…?」
リビングに行くと、父親が新聞を読みながら朝食をとっていた。
「おはようスウェン…どうした?狸に化かされたような顔をして?」
「……なんでもないよ、パパ。」
何事も無かったかのように、スウェンは朝食が並べられたテーブルに座る。
「もう、スウェンったら…また遅くまで星の映像を見ていたのね。」
「全く…スウェンは本当に星が好きだな、そういえばこの前プレゼントした望遠鏡はどうだ?」
「うん!とってもよく星が見えるよ!ありがとうパパ!」
「ふふふ…よかったわね、あ、もうすぐ学校へ行く時間よ、早く支度をしなさい。」
「わかったよママ。」
朝食を食べ終えた後、スウェンは洗面台で顔を洗う。ふと、鏡に映る自分の顔を見る。
「もしかして……これは夢?」
スウェンは鏡に映る四歳若返っている九歳程度の自分の顔を見て戸惑う。
「スウェーン!時間よー!」
母に呼ばれたスウェンは、慌てて着ていた学校の制服を直し、カバンを手に取った。
「行ってきまーす!」
「いってらっしゃい、スウェン。」
「車には気をつけるんだぞー?」
父と母に見送られ、スウェンは学校へ向かった。

 

通学路でのこと
「ハーイ、スウェン。」
「よう!スウェン!」
「あ!シャムス、ミューディー、おはよう!」
同じ学校に通う級友に出会う。
「アラ?いつもより元気よね?なにか嬉しい事でもあったの?」
「ううん、なんでもないよ。」
「そういやさ、この前バスケ部に凄い新人が現れたんだってよ、確かスティングとアウルだったかな…。」
友人達と他愛のない会話をしながら、スウェンは学校へ向かう。

 

学校に着いて教室に入ると、担任の先生が入ってきてホームルームが始まる。
(おっ!スウェン!お前の愛しのセレーネ先生だぞ!)
スウェンの後ろに座っていたシャムスがスウェンをからかう。
(や…やめてよ…別にそんなんじゃ…///)
顔を真っ赤にして俯くスウェン。
(あ・ん・た・は・何をやってんの!?)
そんなシャムスの隣に座っていたミューディーが耳を引っ張って止める。
「いてててて!!すんません!」
「まったく…あの三人組は元気ね…。」
その光景をセレーネはやれやれといった具合で見ていた。
「今日は皆さんに転校生を紹介します。」
そのセレーネの言葉に、教室中がどよめく。
「センセー!転校生は美少女ですか!?」
すかさずシャムスが手を上げる。
「残念、転校生は男の子よ、入ってきてー。」
セレーネの声と共に、教室のドアが開かれる、そこには水色の長髪をした少年が、鋭い眼光で教室中を見回していた。
「さて…自己紹介をお願いね。」
「火星からきたアグニス・ブラーエだ、よろしく頼む。」
一斉に教室がざわつく。
「すっげー!マーシャンじゃん!」
「留学生かよ滅殺!!」
「その語尾が…うざい。」
「はいはいはい静かにー!じゃあ…スウェン君の隣に座ってね~。」
セレーネの指示通り、アグニスはスウェンの隣に座る。
「よろしく、アグニス。」
スウェンは笑顔で挨拶をする。それに対してアグニスは、
「………よろしく。」
ぶっきらぼうながらも挨拶を返した。
一時間目の数学の授業が始まり、算数の先生が入ってくる。
「さっそくだが…先日実施したテストを返す、一位は…ソルとスウェンだな。」
オオー!という声と共に、一同の目線はスウェンとソルに集中する。
(スウェン…カッコイイ♡)
そんなスウェンにミューディーだけは熱い視線を送っていた。
(トホホ…やっぱりミューディーはスウェンの事…。)
それを横で見ていたシャムスはガックリと肩を落とした。
「赤点だったそこの常夏三人組は放課後補習だ!覚悟しておけ!」
「ええ~!見逃してくれよ~!」
「勘弁してくれ撃滅!」
「ダメだ!お前ら授業中に音楽やら小説やらゲームやら…ちっとも授業聞いてねえじゃねえか!」
「鬼エドモンド…うざい。」
「き~こ~え~た~ぞ~シャニ~。お前は漢字の書き取り追加な。」
「ちょ!!算数カンケーなくね!?」
シャニのキャラを崩壊させたツッコミに、教室は笑いに包まれた。

 

昼休み、スウェンはセレーネに頼まれて、アグニスと一緒にシャムスとミューディーと共に弁当を食べていた。
「この学校は変わっているな…ナチュラルもコーディネイターも関係なく同じ教室で学んでいる…。」
「君は…ナチュラルが嫌い?」
「いやそんな事は無い、むしろそういう差別は…我慢ならん。」
「そうだね…僕もそうだ。世の中には魔法使いとか守護獣なんてのがいるしね。そういうのは些細なことだと思う。」
ふと、横で話を聞いていたミューディーの目にある物が入る。
「アグニス…なにそのまぜゴハン…。」
ミューディーはアグニスのカオスな弁当を見て顔を引きつらせる。
「これか?これは姉さん特製『子羊と春野菜のマリネリスじゃんじゃんスキャパレリソースまぜご飯』だ、一口どうだ?」
弁当箱からは得たいの知れない生物の足?がはみ出していた。
「「遠慮します。」」
シャムスとミューディーは0.1秒で断ったが、
「じゃあ…僕が一口。」
スウェンが味見の立候補をする。
(やめとけスウェン!短気な性格になるぞ!)
シャムスの制止も聞かず、スウェンはカオスな混ぜごはんを一口食べる。
「「「どう?」」」
スウェンに感想を促がす三人。
「………シャマルといい勝負だね。」

 

帰宅後、スウェンは今日学校であったことを夕食の食卓で両親に話していた。
「でね、あの後ダナとエミリオがアグニスに突っかかってきて…大変だったよ~。」
楽しそうに話すスウェンを、父と母は微笑ましく見ていた。
「ハハハ、スウェンのクラスには面白い子が沢山いるんだな。」
「そういえばお隣のルーシェちゃんも同じ学校だったわね。見たことある?」
「校庭に迷い込んだ犬と戯れていたよ、動物好きだよね、あの子。」
和やかに続いていく時間、ふと、スウェンはテーブルから立ち、外出の準備をする。
「じゃあいってくるね、父さん、母さん。」
「そうか…今日はこと座流星群がやってくる日だったな。」
「気をつけるのよ?夜道は危ないから…。」
「うん、わかった。」

 

スウェンは父が誕生日に買ってくれた望遠鏡を持って、いつも星を見る丘にやってきた。
「うわぁ…。」
空を見上げると、銀河に浮かぶ幾億の星が宝石のように辺りを照らしていた。
「こんなに星が……すごい……でも……。」
先程までの嬉しそうな顔とは打って変わって、とたんに悲しそうな顔になる。
「これは…夢なんだよね、ノワール。」
スウェンは後ろにいた相棒に声をかける。
「アニキ……。」
ノワールは今にも泣きそうな顔でスウェンを見ていた。
「どうしてそんな顔するの?」
「だって…オイラ、アニキを連れ戻そうとしたんスけど…アニキ、お父さんとお母さんに会えて…友達がいて…見たこと無いぐらいすごく幸せそうに笑っていて…そしたら入りずらくなって…。」
「そうだね…現実の僕は感情が失われるぐらい強化を受けたから…。」
「アニキ…!?記憶…!!」
「パパとママが死んだ後…僕は施設で沢山の人を殺すための兵隊の訓練を受けていたんだ、シャムスやミューディー達を見て思い出した。」
「アニキ…アニキィ…!」
ノワールは我慢できなくなり、スウェンの胸に飛び込み、泣いた。
「そんなのひどいよ!アニキは何にも悪い事していないのに…!なんでそんな目に遭わなきゃいけないんだよぉ…!」
「よしよし…僕は平気だよ…君たちがいるから…。」
ノワールの小さな体をスウェンは優しくあやすように撫でる。
そこに、スウェンの両親がやってきた。
「パパ…ママ…。」
両親の顔は、どこかすまなさそうだった。
「スウェン…ごめんなさい、今まであなたに辛い思いをさせて…。」
「ここなら私達がいる、友達もいる、望遠鏡も、星がよく見える場所も、暖かい家もある。夢だっていいじゃないか、だから…行かないでくれ。」
「「スウェンが欲しかった幸せ、みんなあげる。」」
「僕が…望んだ幸せ…。」

 

とてもとても深い闇の中にはやてはいた。
とても眠たく、いつ瞳を閉じてもおかしくなかった。
「そのままお眠りを我が主、貴方の望みは全て私が叶えます。」
目の前にいる灰髪の女性…闇の書が語りかける。
(私は…何を望んでいたんやったっけ…?)
「夢を見ること、悲しい現実はすべて夢となる、安らかな眠りを、」
「私の…本当の望みは…。」

 

一方なのは達は、戦う場所を海上に移したなのは達は引き続き闇の書との戦闘を続けていた。
「おらぁー!!」
「はあぁー!!」
「甘い…。」
バルディッシュとアロンダイトの攻撃を同時に防ぐ闇の書。
「穿て、ブラッディダガー。」
シンとフェイトは距離をとって襲い掛かる爆発を避ける。
「「バインド!!」」
その時、ユーノとアルフが放った鎖型のバインドが、闇の書の足に絡みつく。
「今だ!なのは!!」
「うん!スターライト…ブレイカー!!」
桜色の閃光が闇の書を包み、爆発が巻き起こる。
「やった!?」
だがその時、爆煙の中から複数のビームやフラッシュエッジが放たれ、なのは達に襲い掛かる。
「きゃあ!?」
「お…俺の技まで使うんじゃない!このマネッ子!」
いきなりの反撃に避けるのが精一杯の一同。
その時、ビームの一つがフェイトに直撃する。
「あ…。」
防御力のないソニックフォームだったフェイトはダメージをモロに受け気絶し、海に落下していった。
「フェイトー!!!」
アルフの悲痛な叫びが木霊する。そして追い討ちを掛けるように、闇の書はフェイトに向けて手をかざす。」
「ディバインバスター。」
光線が無防備なフェイトに襲い掛かる。
「こなくそー!!」
シンは全速力でフェイトの下へ飛び、寸でのところで彼女を抱きかかえ救出する。
「大丈夫か!フェイト!」
息を切らしながらもフェイトの無事を確認するシン。
「ご…ごめんねシン、いつも迷惑をかけて…。」
「いいんだよ、ちゃんと守るっていったろ?」
「う……うん///」
その光景を見ていた闇の書は、シンに問いかけた。
「貴様…なぜそうまでして戦う?この世界はお前とは関係ないのだろう?」
負傷したフェイトをアルフに預けて、シンは改めて闇の書を見る。
「確かに…俺は望んでこの世界に来たわけじゃない、でもこの世界には友達が沢山いるんだ!お前なんかに……!!!」
シンの背中の羽から光の粒子がばら撒かれ、そのまま彼は闇の書に突撃する。
「パルマ…。」
その時闇の書の右腕に青い籠手が装着される
「壊されて…!!!」
同時にシンの右腕にも同じものが装着される。
「フィオキーナ。」
「たまるか――――――!!!!!!」
次の瞬間、シンの右腕と闇の書の右腕がぶつかり合い、彼等を中心に大爆発が起きる。
すると爆煙の中から、ボロボロになったシンが海へ向かって落ちていった。
「シン―――!!!」
思わず悲鳴に近い声でシンの名前を呼ぶフェイト。
「危ない!!」
海に激突する前にユーノがシンを救出する。
「ちくしょー…相討ちかよ…。」
ユーノに抱きかかえられながら悔しそうに舌打ちするシン。
そして爆煙が晴れると、そこにはボロボロになった右腕を抱えた闇の書がいた。
「くっ…。」
「シン君!」
なのはは慌ててシンの下に駆け寄る。
「ごめん…後は頼んだ…。」
「わかったよ…後は私に任せて。」
そしてなのはは闇の書のもとへ飛び立った。
対峙するなのはと闇の書。
「お前も…もう眠れ。」
「いつかは眠るよ、でもそれは今じゃない。」
そしてなのはは大きく深呼吸し、レイジングハートを構える。
「カートリッジロード!!エクセリオンモード…ドライブ!!」
レイジングハートから数個のカートリッジが排出される。
制御を誤ればレイジングハートが壊れてしまうかもしれないエクセリオンモードを起動する、それだけの覚悟で挑まなければ闇の書には勝てないのだ。
(撃てるチャンスさえあれば…!私だって皆を守りたいんだ!)
そしてなのはは、闇の書へ突撃していった。

 

「ありがとう…でも僕はもう行くよ。」
スウェンは首を横に振った。
「スウェン…なんで…!?」
「あそこにもどっても…辛い思いしかしないのよ!?ずっと私達と暮らしましょう!」
「パパ…ママ…。」
悲しそうな顔でなおも引き止めようとする両親、そんな彼らに、スウェンは笑顔で答えた。
「僕ね…兄妹ができたんだ。」
「きょう…だい…?」
首をかしげるスウェンの両親。
「不器用だけど、家族のことをいつも思ってくれているお姉ちゃん。」
「料理は下手だけど、それ以外の家事はなんでもこなすお姉ちゃん。」
「僕が迷っていたり、辛い思いをしているとき、黙って話を聞いてくれて、相談に乗ってくれるお兄ちゃん。」
「ガサツで乱暴だけど、本当は誰よりも家族のことが大好きな妹。」
「辛いときも…太陽みたいに笑ってみんなを支えてくれる妹。」
「そして…ここにいる僕の一番の味方の弟。」
「ア…アニキ…。」
ノワールはスウェンに抱きしめられながら、彼の笑顔を見上げる。
「僕は…今兄弟達に囲まれてとっても幸せだよ…だから心配しないで。」
『幸せ』という言葉を聞いて、スウェンの両親は彼を引き止めるのをやめた。
「そうか…スウェンは幸せなんだな…安心したよ。」
「なら…私達は何も言う事はないわ…。」
その時、スウェンは両親のもとに駆け寄り、二人に抱きつく。
「ありがとう…もう一度会えてよかった…。」
「スウェン…。」
すると二人の体が、光の粒子になって徐々に消えていく。
「私達は…遠く離れてしまうけど…。」
「いつまでも、貴方の近くで見守っているよ。」
「「だから…。」」
そして完全に消える寸前、その言葉をスウェンに贈る。
「「がんばれ!!スウェン!!」」

 

二人だけになった丘。相も変わらず星達はスウェン達を照らす。
「アニキ…?」
様子のおかしいスウェンの顔を覗こうとするノワール。
「うう…ひっく…うえ…パパ…ママ……ありがっ…とう…。」
スウェンは顔を涙と鼻水だらけにして泣きじゃくっていた。
「アニキ…よしよし。」
今度はノワールがスウェンの頭を優しく撫でる。
「グスッ…ありがとうノワール、もう大丈夫だよ。」
「そうッスか!じゃあ行きやしょうか!」
「そうだね…駄々っ子で泣き虫な妹を止めなきゃね。」
そして、その丘からスウェン達の姿は消えていた。

 

「私が…欲しかった幸せ…。」
「ええ、愛する者達とずっと続いていく暮らし。」
はやての頭の中に、次々と大切な家族達の顔が浮かぶ。
「眠ってください…そうすれば夢の中で貴方はずっとそんな世界にいられます。」
その時だった。
「それは違うよ、それは…逃げているだけだ。その夢は…カケラでしかない。」
突然の来訪者に驚く二人
「スウェン・カル・バヤン…!?」
「スウェン…?なんかちっこくないか?」
はやてはいつもと性格も身長も目つきも違うスウェンに驚く。
「確かに思い通りに生きられないのは辛いけど…夢って見るだけじゃなく、叶えるものでもあるんだよ。」
「叶える…もの…。」
半開きだったはやての目が徐々に開いて行く。
「僕…思い出したんだ、僕の夢は将来天文学者になることなんだ、でも…眠ったままじゃ叶わない、だってそれは…。」
「それは、ただの夢の欠片や。」
はやての目ははっきりと開かれ、しっかりと闇の書を見据える。
「ウチら、こんな事望んでへん、貴方も同じはずや、違うか?」
すると、闇の書はポロポロと涙を流し始めた。
「…私の心は騎士達と深くリンクしています。だから騎士達と同じように私も貴方達を愛おしく思っています…。」
そして闇の書は固く目を閉じリ、
「だからこそ!貴方を殺してしまう自分自身が許せない!!」
いままで溜め込んでいた思いを、さらけ出した。
「…覚醒の時、少しは解ったんよ、望むように生きられない辛さは、ウチにもわかる、せやけど…忘れたらアカン。」
はやては手を伸ばし、両手で闇の書の頬を触る。
「あなたのマスターは今は私や、マスターの言う事はちゃんときかなあかん。」
はやての足元に白い魔法陣が現れる。
「名前をあげる、闇の書とか呪いの魔道書なんて呼ばせへん。私は管理者や、私にはそれができる。」
闇の書の目から涙が溢れ出す。
「無理です、自動防御プログラムが止まりません、管理局の魔導師が戦っていますがそれも…。」
すると、スウェンが闇の書の頭を優しく撫でる。
「大丈夫だよ…はやてを…シン達を信じて。」
「止まって。」
その時、魔法陣の輝きが増した。

 

「動きが…とまった?」
闇の書の動きが止まり、戦っていたなのは達は様子を見る。
『外の方!管理局の方!こちら…その、そこにいる子の保護者、八神はやてです!!』
「はやてちゃん!?」
「はやて!?」
「無事だったのか!?よかった~。」
『その声はなのはちゃん?それにフェイトちゃんにシン君まで!?あの、なんとかしてその子止めてあげたげる?』
「どうすればいいのはやて!」
『魔導書本体からコントロールを切り離したんやけど、その子がああしてると管理者権限が使えへん、今そっちに出ているのは自動行動の防御プログラムだけやから…。』
「ど…どうすればいいの?」
理解しきれず、なのはは他の仲間達に聞いてみる。
「つまり…アイツにでっかいダメージを与えればいいんだな。」
「じゃあなのはの得意なアレだね…。」
アルフ(大型狼型)の上に乗っていたシンとフェイトは互いに頷く。
「つまり…なのはの全力全開を、アイツにぶつけるんだ!!」
ユーノの説明を理解したなのはは、パアっと笑顔になる。
「さすがユーノ君!解りやすい!!」
そしてなのははレイジングハートエクセリオンを闇の書へ向ける。
「エクセリオンバスターバレル展開、中距離砲撃モード!」
柄が伸び、レイジングハート本体から桜色の翼が生える。
そして、魔力による衝撃波を放った。防御プログラムの自由を強制的に奪う。
「エクセリオンバスターフォースバースト!!ブレイク…シュート!!!」
放たれたエクセリオンバスターは四つに裂け、そのすべてが闇の書に襲い掛かる。

 

「はやて…行って来ます。」
「はい、行ってらっしゃい。」
スウェンはノワールとユニゾンし、自分の目の前に銀色の魔法陣を展開する。
「いくぞノワール、悲劇の闇を切り裂く銀の閃光、その名は…。」

 

そしてエクセリオンバスターが闇の書を飲み込むのと同時に、その光を貫くように銀の閃光が天に向かって放たれた。

 

「夜天の主の名に於いて汝に新たな名を送る、強く支えるもの、幸運の追い風、祝福のエール。」
辺りが白い光に包まれる中、はやてはその名前を呼ぶ。

 

「あなたの名は…リインフォース。」