起動魔導士ガンダムRSG_12話

Last-modified: 2011-08-13 (土) 22:25:05

スウェンが脱走する数時間前、
はやての病室、そこでシグナム、ヴィータ、シャマルは、はやてのお見舞いに来ていた。
「ごめんねはやて…あんまりお見舞いに来れなくて…。」
「べつにええよ~、元気にしてたか~?」
「うん!めっちゃくちゃ元気!」
はやてに撫でられてヴィータは気持ちよさそうだった。
「そういえばゴハンとかどないしてんの?ちゃんと食べとる?」
「え…ええ…。」
しどろもどろに答えるシグナム。
「大丈夫ですよ~私が毎日愛情をたっぷり込めて作ってますから~。」
「そうか…ご愁傷様やね…。」
はやては毎日シャマルのお世辞にも美味しいと言えない料理を、毎日食べてる二人とこの場に居ない一匹に哀れみを感じていた。
(スウェンとノワール、早く帰ってきいひんかな…何気にノワール料理うまいからな…。)
すると病室のドアが何者かにノックされる。
『失礼しま~す。』
「あっ!すずかちゃんや!どうぞ~。」
「「!?」」
突然の来訪に、シャマルとシグナムは嫌な予感がしていた。
そして病室のドアが開かれる。
「じゃ~ん!遊びに来たよ~!」
「お邪魔しま~す。」
「いらっしゃ~い、みんな。」
「「「!!!!!」」」
シグナム達はすずか達の後ろにいたなのはとフェイトの姿に驚く、今日までなのは達と会わないよう色々と手を回していたのだが、はやてを驚かせようとしたすずか達の行動が今日の事態を招いてしまったのだ。
「「!!!?」」
なのはとフェイトも、まさかここに闇の書の守護騎士達がいるとは思わなかったのか、少しばかり動揺していた。そして直感的に、はやてが闇の書の主ということに気付いてしまった。
「今日はサプライズプレゼントを持ってきたよ~!」
すずかとアリサは掛けていたコートを取り、プレゼントが入った箱をはやてに渡す。
「うわぁ~ありがとうな~。」
はやては嬉しそうにプレゼントを受け取る。
「……。」
そんな中、ヴィータはずっとなのは達を刺すように睨んでいた。
「あの…そんなににらまないで…。」
なのははそんな視線に耐えられなかった。
「にらんでねーです。元々こういう顔なんです。」
「コラッ!ヴィータ!」
はやては態度の悪いヴィータの鼻を躾として摘みあげる。
「あうあうあうあうあう~~!」
「悪い子はこうやで~!」
その微笑ましい光景をみて、一同の重苦しい緊張が少し解れる。
なのは達は何故シグナム達が必死になって主のために戦うのか判った気がした。
(二人とも、少しいいか?)
そこにシグナムが小声で話しかける。
(スウェン・カル・バヤンは今どうしている?)
シグナム達は今管理局に囚われているスウェンの事がずっと気掛かりだったのだ。
(スウェン…?え!?もしかしてあの人がスウェン!?)
なのはとフェイトは先日捕まえた少年と、はやての想い人であるスウェンが同一人物だということに今気付いたのだ。
(その様子だと、スウェンはなにも喋らなかったようだな。)
(え、ええ…。)
(とりあえず今は主達がいる、後で屋上に来てくれないか?)

 

数十分後、夜の海鳴大学病院の屋上。
そこでなのはとフェイト、シグナムとヴィータとシャマルが対峙していた。
「もうやめてください!沢山の人を傷つけて…こんなことをしてもはやてちゃんは喜ばない!」
なのはの言葉に、シグナム達は首を横に振る。
「闇の書が完成したら大変なことになるんです!悪意ある改変をうけて…だから…!!」
すると、辺りに結界が張られる。
「それでも…主のためなのだ…。」
「クラールヴィントの結界からは出しません…!!」
その時、上空からザフィーラがやってくる。
「遅くなったな。」
「構わん、その分働いてもらうぞ…。」
「2対4…!まずいね…なのは…。」
「それでも…逃げればいいって訳じゃない、やめればいいって訳じゃ…もっとない!」
各々がバリアジャケットに身を包む。
「邪魔すんなよ…もうすぐ終わるんだ…はやてと…みんなで静かに暮らすんだ…だからお前ら…邪魔すんなあ!!!!」
ヴィータが先陣を切り、なのはに襲い掛かる。
それを、なのはが受け止める。
「わかった、その代わり…私が勝ったらちゃんとお話聞いてもらうよ!!」

 

その光景を、遠く離れている所で見ている薄茶毛色の猫がいた。
「フェイト……必ず生きて帰ってくるのですよ。私もアリシアも待ってますから。」
猫の足元に魔法陣が展開され、猫は何処かへ転移しようとしていった。
(シン…スウェン…彼女達を…お願いします。)
そしてその場から猫の姿は完全に消えてしまった

 

「きゃ~!!」
ヴィータの攻撃に吹き飛ばされ、なのははフェンスに激突する。
「なのはぁ!!!」
シグナムと鍔競り合いをしていたフェイトはなのはに声を掛ける。
「余所見をしている暇があるのか?」
シグナムの斬撃をギリギリでかわすフェイト、だが、
「でええええええい!!!」
そのスキにザフィーラの拳撃を腹部に喰らってしまう。
「がっ…はっ…!」
フェイトはそのまますべるように地面に倒れる。
「すまないテスタロッサ、私は主のためなら…たとえ騎士道に反してしまっても…!!」
シグナムは自分の卑怯な行いを悔いてか、一筋の涙を流していた。
ザフィーラはフェイトを抱き起す。
「大丈夫か?この前はタイミングよくあの小僧が来たが…。」
「大丈夫よ、今のところ反応はないわ。」
「そうか、では…。」
シグナムはフェイトのリンカーコアを獲るため、彼女の胸に手を伸ばす。
「フェイトちゃん…起きて…。」
フェンスに叩きつけられたなのはは、ダメージが深い体で必死に親友の名前を呼ぶ。
(くっ…!このままじゃ…!)
フェイトもダメージが深く体の自由が利かなかった。
そして、フェイトのリンカーコアが獲られようとしたその時だった。
「なぁ!?」
「うわぁ!」
「え、えぇ!?」
「ぐっ!!」
突然、ヴォルケンリッター全員にそれぞれ四重のバインドが掛かる。
「今彼女に力を奪われては困る…。」
そこに現れたのは仮面の男だった。
「貴方達は…!?」
その時、なのはとフェイトにもバインドが掛かった。
そして仮面の男はヴォルケンリッターに手をかざす。
「足りないページは貴様達のリンカーコアで補う…今までもそうしてきたはずだ。」
その時、上空から一つの影が舞い降りた。
「お前は……!?」
その場に居る全員が、その人物の姿を見て驚く。
「この姿のほうが呼び覚ましやすいからな…、さて。」
その人物はヴォルケンリッターを見る。
「それでは…さようならだ。」
そして、騎士達はリンカーコアを奪われ、魔力で姿を保っていた彼女達はヴィータを除いて、この世から消えてしまった。

 

はやては胸騒ぎがして目を覚ます。
窓の外はもう夜、そのせいか病室も暗くなっていた。
体を起こした瞬間、胸の辺りに激しい痛みが襲う。
そして視界が真っ暗になったかと思うと、いつのまにか屋上に来ていた。そして彼女は信じられないものを目にする。
「スウェン…!?」
そこには空中でヴィータを磔にしてフラガラッハを向けているスウェンがいた。
「スウェン!!なにしてん!?」
「あ…はやて…。」
スウェンは醜悪な笑みを浮べてはやてを見る。いつもとは違う様子のスウェンにはやては戸惑う。
「はやてはね…病気なんだよ、闇の書の呪いっていう病気、もう治らないんだ。」
はやてはスウェンの言っていることが判らなかった。
「闇の書が完成しても治らない、はやてが助かることはないんだ。」
「何言うてるん…?ウチはそんなこと命じてへん…それよりもヴィータを離して…。」
スウェンははやての言葉に耳を貸さず、話を続ける。
「みんなもう壊れていたんだ、俺がこうする前から…とっくの昔に壊れていた闇の書の機能を、まだ使えると思い込んで無駄な努力を続けていたんだ。」
スウェンの言葉にはやては反論する。
「無駄ってなんや!?シグナムは…シャマルは…ザフィーラは!?」
ふと、はやては後ろを見る、そこには三人の服だけが抜け殻のように落ちていた。
悪い予感が頭を駆け巡る。信じたくない、あんなに優しかったスウェンがこんな事をするなんて信じたくなかった。
「壊れた兵器は役にたたないよな、なら……壊そう。」
スウェンは一枚のカードを取り出す。
「やめて…やめてぇ!!」
悲しそうに叫ぶはやてをあざ笑うかのように、
「やめてほしかったら…力ずくでやってみろよ。」
邪悪な笑みをうかべるスウェン。
「やめてぇ!スウェン!!」
はやては自由の利かない体を這いながら、スウェンに近づく。
「ねえはやて…運命って残酷だよな…俺もはやてが思っているほどカッコいい男じゃないんだ、だって…。」
スウェンはヴィータに手をかざす、そしてカードが光りだした。
「俺は…こんな残酷なことが平気で出来る男だったんだから!!」
カードが強く発光し、しばらくして光を失う。
同時にはやての胸の痛みが増す。

 

なんでこんなことに、

 

ドクンッ

 

みんな消えてしまった。

 

ドクンッ

 

スウェンがみんなを消した。

 

ドクンッ

 

はやてを中心に白く光る魔法陣が展開される、そして目の前に闇の書が現れる。
『グーテンモルゲン、マイスター。』
そして闇の書が、覚醒の時を迎える。

 

そのころ仮面の男によってクリスタルケージの中に閉じ込められていたなのはとフェイトは、駆けつけたシンによって救出されていた。
「クソッ!遅かったか!」
「シン…スウェンさんがはやてを…!!」
「あの人は偽者だよ、本物は俺と一緒に来ている。俺達はまず…。」
三人ははやての方を見る

 

「うわああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
憎悪の叫びと共に、はやては光の中に取り込まれる。
「我は闇の書の主なり…この手に力を…。」
はやての手には闇の書が握られていた。
「封印、開放。」
その声と共に、はやての骨格がメキメキと音を立てて変わっていき、
髪の色が灰色になり、顔と腕に赤いラインが入る。
漆黒の騎士服に身を纏い、六枚の黒い羽が背中に生える。
そして瞳の色が、光のない血のような紅の色に変わった。

 

「うまくいったようだな…。」
はやてを覚醒させ距離をとった偽者のスウェン。そこに仮面の男が近づいてくる。
「暴走開始までもつかな…。」
その時、後ろから二人の体にワイヤーが絡みつく。
「な…!お前は!?」
「………。」
そこには本物のスウェンがいた。彼は二人の頭上を飛び越え、
「ふんっっ!!!」
手から出たワイヤーを思いっきり引っ張る。
「「!!!???」」
二人は成す術もなく振り回され、空中でお互い激突する。
「がは…!」
「ぐっ…!」
そのまま二人は地面に倒れる、そして体が光だし、二人とも猫耳と尻尾をつけた少女…リーゼアリアとリーゼロッテになった。
「変身魔法で俺に変身していたとはな…!!」
スウェンは怒りに満ち溢れた表情で二人に銃を向ける。
「よくも…!!みんなを…!!」
そして躊躇なく、その引き金を引いた。
だが銃弾が二人に当たる事はなかった。
「まってくれ!」
クロノがスウェンの腕を掴み、弾道を逸らしたのだ。
「君の怒りはもっともだ!だけど今は他にやる事があるだろう!」
「……了解した。」
クロノに諭され、スウェンはシン達のもとへ向かう。

 

「はやて…!!」
なのは、フェイト、シンはその光景を見て言葉を詰まらせる。闇の書が完成してしまったのだ。
「また…すべて終わってしまった…幾度この悲しみを繰り返せばいいのか…。」
はやてを取り込んだ闇の書は、天を仰ぎ涙を流していた。
「我は闇の書…我が力のすべては…。」
右腕を天に向かって伸ばす闇の書。
『デアボリック・エミッション』
掌に闇ができ、それが拡大していく。
「主の願いをそのままに…。」
「大変!二人とも私の後ろに!」
なのはに言われた通り、シンとフェイトは後ろに隠れた。
「闇に染まれ。」
小さな闇の塊が破裂し、膨大な闇があふれ出す。
なのははラウンドシールドを展開し後ろの二人を守る。
「くっ…!」
だが予想以上に強力な魔法で、なのはの体は悲鳴を上げていた。その時、
「こっちだ!」
突然フェイトとシン、なのはの体にワイヤーが絡みつく。
「うにゃ!?」
「スウェン!?」
「うわわわわ!!シンの顔が近い///」
フェイトはシンごとワイヤーに巻きつかれて、顔を真っ赤にしていた。
そして三人はそのまま、ビルの陰に引き込まれた。

 

「どこへいった……?」
闇の書は消えたシン達の行方を捜していた。
そのころビルの陰では、
「あなたは…スウェンさん!?」
なのはとフェイトは自分達を救ってくれた少年の姿を見て驚く。
「スウェン…はやてが…!」
「わかっている…俺は…誰も救えなかった…!」
スウェンは不甲斐無い自分に腹を立てていた。そのとき、
「主よ…貴方の願いを今、叶えます。」
闇の書の足元に黒い魔法陣が展開され、広範囲で封鎖領域を作る。
「これは…閉じ込める結界だね。」
「狙いは俺達か…。」
息を呑む一同、するとスウェンが口を開く。
「お前達は隠れてろ、ここは俺が食い止める。」
「何言ってんだよ!?アンタ一人でアイツに勝てるわけ無いだろう!?」
スウェンは首を横に振る。
「君達を巻き込んだのは俺達だ、家族の不始末は俺が…。」
その時、なのはがスウェンの右頬を、フェイトが左頬をそれぞれ引っ張る。
「ふべ?」
『アニキのほっぺがビロビロに!!』
「あの…事情はよく解らないんですけど…。」
「私達もはやてを助けたいんです…!!だからそんなこと言わないでください!!」
真剣な面持ちでスウェンを見るなのはとフェイト。
「俺だってそうだよ…守りたいものは皆同じだ。」
「………。」
『姉貴はいいお友達を持ちましたねえ…。』
「ふぁあ、ふぁっふぁふふぁ。」←訳:ああ、全くだ。
その時、エイミィから通信が入る。
(みんな!ユーノ君とアルフが結界の中に入れないみたいなの!だから…。)
「俺達だけでやるしかないみたいだな。」
「うん。」
「そうだね。」
「ふぁあ。」←訳:ああ。
「てかいいかげんはなしてやれよ…あとお前も少しは嫌がれ。」
抓りから開放されたスウェンは改めて三人を見る。
「はやては恐らく…闇の書の中で眠っている、俺達が呼びかければあるいは…。」
「じゃあ俺達がやる事は一つだ。」
「闇の書さんと全力全開で戦って…。」
「はやてを起こせばいいんだね。」
四人は一斉に頷き、闇の書の前に出る。
「そこにいたか…。」
四人を見つけた闇の書。
「いくよ、レイジングハート。」
レイジングハートに桜色の翼が生える
「バルディッシュ、ソニックフォーム。」
フェイトのバリアジャケットが動きやすいデザインに変わる。
「デスティニー、みんなを守るぞ。」
種が割れるイメージと共に、シンの瞳から光が失われる。
「ノワール、力を貸してくれ、俺は…。」
スウェンは胸に手を当て、ノワールに語りかける。
「俺は…はやてを!シグナムを!ヴィータを!シャマルを!ザフィーラを!そしてあいつを…みんなを救いたい!!!」
『了解です、マイスタースウェン。』

 

星空は、雲に覆われて見えなかった。