起動魔導士ガンダムR_06話

Last-modified: 2011-08-13 (土) 22:06:54

シンと負傷したフェイトはユーノに連れられてアースラに収容された。医務室で治療を受けるフェイトと付き添うシン、そこに、
「フェイト!シン!」
二人の見知った人物が入ってくる。
「「アルフ!!」」
そこにはプレシアにやられて行方不明だったアルフがいた。抱き合って喜ぶフェイトとアルフ。
「アルフ、今までどこ行ってたの?心配したんだよ?」
「ごめんよ…実はあの後なのはの友達に助けられてさ…。」
「そうだったんだ…シン?」
ふと見るとシンはワナワナと握り拳を震わせていた。そして、
「痛っ!?」
勢い良くアルフに抱きつく。
「無茶しやがって…、フェイトが悲しむだろ!?俺だって……!」
「うん…ごめんよシン。」
そう言ってアルフはシンの頭を優しくなでた。
「ちょっといいかい?」
三人がいる医務室にクロノが入ってくる。
「艦長が呼んでいる、三人とも至急ブリッジに来てくれ。」

 

ブリッジに連れてこられた三人、そこにはなのはとユーノの姿もあった。
「フェイトちゃん!アルフさん!シン君!」
なのはが駆け寄ってくる。
「フェイトちゃん…大丈夫なの?」
「私は大丈夫だよ…こっちこそ思いっ切りやっちゃってごめん…。」
「ううん大丈夫だよ、ユーノ君が必死に治癒魔法をかけてくれたから…。」
「ユーノ君ホント一生懸命だったよね~、やっぱ愛の力ってヤツ?」
会話を聞いていたエイミィが入ってくる。
「なななななななにを言ってるのエイミィさん!?」
“愛”という言葉に激しく反応するなのは。
「そそそそそそうですよ!僕は当然のことをしたまでですよ!」
同じくユーノ。
「いいなあ……もし私もシンにやってもらったら……。」
妄想の世界に入っていくフェイト。
「なんで二人とも顔赤いの?あとフェイト、なんか言った?」
なにもわかっていないシン。
「エイミィ……いい加減にしないか。」
「クロノ君…うらやましいの~?」
「なんでそうなる!?」
『これなんてラブコメ?』
デスティニーの突っ込みが入ったところで、
「そろそろ本題に入ってもいいかしら?スクリーンにだして。」
リンディの指示に従い、クルーは巨大スクリーンを展開させる、そこに映っていたのは、
「時の庭園…。」
「アルフの証言やジュエルシードのあとを辿ってようやく見つけたんだ。今武装局員が向かっている。」
「えっ……!?」
驚くフェイト。
「君達は知らないだろうけど先程この艦も攻撃を受けている、逮捕の理由には十分なんだ。」
「ごめんよフェイト…フェイト達を助けてもらうにはこの方法しか無かったんだよ…。」
俯いてしまうフェイト、そんな彼女の肩にシンは手を置く。
「大丈夫か…つらいなら医務室に戻るか…?」
「大丈夫…自分の目で見届ける……。」
それに応えるフェイト。

 

「艦長!局員が何かを発見したそうです!」
「スクリーンに出して!」
正面のスクリーンに大きく映し出されたそれに一同は驚愕する。
「………。」
そこに映し出されていたのは、大きな水槽の中で眠っているようにみえるフェイトそっくりの少女だった。
「なんだよ…これ…。」
『うわあ!』
突然武装局員が何者かに吹き飛ばされる。
『私のアリシアに触らないで!』
「プレシアさん…!?」
「母さん…!?」
反撃してきた武装局員の攻撃を魔力障壁で防ぐプレシア。
『うるさいわ!』
「危ない!防いで!」
リンディの言葉も虚しく武装局員はプレシアの雷によって全員倒される。
「いけない!局員の回収を急いで!」
エイミィはすぐさまパネルを叩き座標を調べにかかる。
「アリ…シア…?」
フェイトは母と水槽の中にいる自分そっくりの少女の姿をただ呆然と見つめていた。プレシアに倒された局員がすべて転送される。
『フフフ…ジュエルシードはすべて揃った、あとは…。』
水槽の中の少女を愛おしそうに見つめるプレシア。
「あの水槽の子…なんでフェイトちゃんにそっくりなの…?」
なのはの疑問にエイミィが答える。
「プレシアはね…ある事故で一人娘を亡くしているの…、そして彼女が最後に行っていた研究…それは使い魔を超える人造生命の生成、そして死者蘇生の秘術…。」
「死者を……生き返らせるだって…!?」
エイミィの説明に驚くユーノ。
「そして…その研究の開発コードが…」
どんどん顔が青くなるフェイト
「プロジェクト…“FATE”」
ブリッジに重い空気が流れる。
『フフフ…シン君、あなたは本当に役に立ったわ、そこの出来損ないと違ってね…。』
「なんだと…!?」
『アリシアはもっと私に優しく笑いかけてくれた…。偽者であるあなたにアリシアの記憶を植え付けてもやはり偽者でしかない。』
「やめて…やめてよ…。」
なのはが声を震わせて懇願する。
『ねえ…?わかる…?私はね…あなたを作り出したときから…あなたのことが…。』
「フェイト!聞くな!」
だがプレシアは無慈悲にその言葉を口にする。
『大嫌いだったのよ!!!』
「やめてー!!」
「やめろー!!」
その一言を聞いてしまったフェイトは力無く倒れてしまった。
「フェイト!」
フェイトを受け止めるシン、彼女の瞳は死んでしまったかのように光を失っていた。
『アハハハハ!!さあ行ってらっしゃいアリシア!失われた地アルハザードへ!!』

 

その瞬間、轟音と共にアースラが揺れだした。
「一体なにがあったの!?」
「庭園の敷地内に魔力反応!どれもAクラス!60…80…まだ増えていきます!!」
「プレシア・テスタロッサ!何をするつもりなの!?」
プレシアは水槽を魔力で持ち上げ、玉座に戻りながら答えた。
『アリシアの旅立ちの邪魔をされないよう…時間稼ぎをさせてもらうわ。』
その瞬間21個のジュエルシードが展開され、光を放つ。
「次元震です!中規模以上!」
「振動防御!ディストーションフィールドを!」
ブリッジに声が飛び交う。
「このままだと次元断層が…!」
「アルハザードだと…!?くそっ!バカなことを…!」
そう言ってクロノはブリッジから出ようとする。
「クロノ君!どこ行くの!?」
「僕が現地に行って止めてくる!ゲート開いて!」
「ちょっと待て!」
ゲートに向かおうとしたクロノをシンが止める。
「なんだ!?こんなときに!」
「おれも連れて行け。」
シンの言葉に驚く一同。
「なにいってるんだ!犯罪者である君に協力してもらうなんて…」
「俺ならあそこの構造を知っている、それに…。」
「それに!?なんだ!?」
「こんなこと…許しておけるか!!」
シンの叫びに沈黙するブリッジ。
「……わかりました。」
「艦長!?」
「今は一刻の猶予も無いの、こうなったら猫の手でも借りたいわ。」
「く……わかりました。」
そして二人はゲートに向かおうとする。
「待って!僕も行くよ!」
「わ…私も…。」
「なのははダメージが大きいから無理だ、だからアルフと一緒にフェイトのそばにいてやってくれ…。」
「う…うん、わかった…。」
そしてシンとクロノとユーノはゲートに入り時の庭園へ転送されていった。
(シン…頼んだよ…。)
アルフはフェイトを抱えながら三人を見送った。

 

『いよいよですね、プレシア。』
玉座に移動したプレシアは水槽の中のアリシアを見つめながらどこかと通信をしていた。水槽の上には21個のジュエルシードが浮いている。
「ええ…あなたが送ってくれたあの因子をもつコーディネイターのおかげでね……ところでもう一人の彼はどうしたの?」
『彼はリニスが調整を行ってますが…なにぶんあの下衆共に植えつけられた余分な思考が邪魔で捗らないそうです。』
「そう…悪いわね。」
『いいのです。貴方達は大切な私の協力者なのですから…。彼にはアリシアのエスコートを任せようと思っています。』
「それじゃあとは…ゴホッ!…任せたわ…私はもうアリシアの生きた姿は見れないけど…。ゴホゴホっ!」
咳き込むプレシア、咳を抑えた手には血が付いていた。
『…私にも子供がいますので…貴方の気持ち、少しわかります。アリシアは任せてください。』
「もう切るわ…、どうやら来たみたいね。」
『ええ、それではごきげんよう、プレシア』
「貴方の武運を祈ってるわ。」

 

その時プレシアの背後から轟音が鳴り響く、振り向くとそこにはアロンダイトを持ったシンがいた。
「意外と早かったわね…さすがは“種を持つ者”かしら…。」
「………。」
何も答えないシン。その瞳に光はなかった。その時、あたりに響いていた次元震が収まる。
そして念話を通してリンディがプレシアに語りかける。
(プレシア・テスタロッサ、終わりですよ。次元震は私が抑えています。動力炉もクロノとユーノ君が封印し、そちらに向かっています。だから…。)
「投降しろ。とでも言うの?」
その時、水槽の下に巨大な魔方陣が展開される。
(転移魔法!?何を!?)
「フフフフ…一足遅かったようね……!」
そして魔法陣から大量の光が放出され、光が収まるとアリシアの入った水槽と21個のジュエルシードはそこに無かった。
(エイミィ!)
『ダメです……完全にロストしました…!』
(くっ……!)
「アハハハハハハッ!!アリシアは旅立った!後は彼女が……ウッ!ガハゲハッ!」
プレシアは咳き込み大量の血を吐いた。
(……貴方は…!!)
「ふ…ふふ…私にはもう時間が無い…あとはどうなろうと…。」
「プレシアさん、一つ答えてくれ。」
先程まで押し黙っていたシンが口を開く。
「さっきのフェイトに言った言葉、あれは本当なのか…!?」
しばし流れる沈黙、そして、
「ええ…本当よ、なんならもう一度言ってあげる、私はフェイトが“大嫌い”だと!」
その瞬間、シンは一瞬でプレシアとの距離を詰め、アロンダイトを振り下ろす。
「アンタって人は……アンタって人は―――――!!!!」
振り下ろしたアロンダイトは魔力壁で防がれた。
(シン君!クロノ達が来るからあまり無茶は……!)
リンディの忠告に耳を貸さずシンは一旦プレシアとの距離をとる。
「フフフ、いいわ…相手になってあげる!!」

 

プレシアは無数の魔力弾をシンに向けて放ち、彼はそれをかわし、切り払い、打ち落としていく。
「フラッシュエッジ!」
投げつけられたフラッシュエッジを右手で受けるプレシア。
「こんなもので……」
「誰が一つしかないって言った!?」
もう一つフラッシュエッジがシンの手に現れ、シンはそれもプレシアに投げつける。
プレシアはそれを空いていた左手で受ける。
「前ががら空きだ!」
そのままビームライフルを手に持ちプレシアに向かって何発も放つ。あたりに爆煙が舞い上がった。
「やったか!?」
だが爆煙から無数の光弾が発せられ、
「うわあ!?」
それはバインドとなってシンを縛り付ける。
「いいかげんにしろ!クソガキが!」
プレシアは詠唱を唱える。
「フォトンバースト!」
シンを中心に大爆発が起こる。
(そ…そんな…シン君…!)
リンディの悲痛な声が響く。だが、
「……!?なんですって!?」
爆煙が晴れると、そこにはいたるところ傷だらけになりながらも立っているシンがいた。
「くっ…さすがはコーディネイター、頑丈にできてるわね…。」
(シン君もうやめて!死んじゃうわよ!?)
それでも、シンはアロンダイトを構える。
「なんでだよ…なんでそんな事言うんだよ……。」
目に涙を浮かべ、訴えかけるシン。

 

「何度も言ってるでしょう?あの子はアリシアになれなかった。」
首を横に何度も振るシン。
「当たり前だろ…フェイトはフェイトなんだ……アリシアじゃない…。」
「………。」
「俺…ずっと考えていた…。もし俺がアリシアで…フェイトがマユで…プレシアさんが母さんだったら…
「………!?」
(シン…君…?)
「母さんが…マユを…いじめていたら……俺は…すごく悲しい…たとえ自分だけが愛されても……幸せになんかなれない………。」
「や……やめろ……!」
その時、プレシアはシンの隣に自分のよく知っている少女の幻影をみた。
「マユをいじめないでって…必死になって止める……。」
『お母さん!フェイトをいじめないで!』
「どうしてこんなことするのって……聞こうとする…。」
『なんでこんな酷いことするの!?お母さんなんて……!』
「もしかしたら……母さんを……拒絶するかも……。」
『私はね……フェイトに酷い事するお母さんがね………!』
「や……やめて……アリシア。」
プレシアはとても悲しい顔をしながら懇願する。だが少女はその一言を口にする。
『大嫌いだったのよ!!!!』
その少女の表情はかつて自分に向けてくれた優しい笑顔ではなく、まるで悪魔をみるような、軽蔑と怒りと悲しみが入り混じったような表情だった。
「うるさい!!黙れ―――!!!」
先程自分がフェイトに向けた言葉を今度はアリシアの幻影に浴びせられ、心を乱したプレシアはシンにありったけの魔力弾を放つ。
「うおおおおおおおお!!!!」
シンは背中に紅の翼を展開し、プレシアに突撃していく。途中光弾にアロンダイトを叩き落とされるが、
「ああああああああ!!!!」
それでも突き進む事を止めなかった。そして目と鼻の先まで距離を詰めたシンはプレシアの頭を右手で掴む。
「!?」
「パルマ………!!」
右手に光が収束されていく。
「フィオキーナ!!」
次の瞬間プレシアは遥か後方に吹き飛ばされた。
「ぐ……ガフッ…!」
体力の限界が来て、シンはそのまま前のめりに倒れてしまった。

 

しばらくして、辺りに轟音が鳴り響くと、いたるところで地割れが発生していた。
『シン君!次元震の影響で庭園が崩れそうなの!だから脱出して……シン君!?』
(どうしたのシン君!?返事をして!)
「う……あ…。」
力の使いすぎとプレシアから受けたダメージで大量に失血しておりシンは全く動くことができなかった。そしてそのまま、発生した地割れの中に落ちようとしていた。下は虚数空間になっており落ちたら二度と上がってはこれない。
(シン君――――――!!)
だがシンは落ちる事はなかった。なぜなら先程吹き飛ばしたプレシアが落ちそうになった彼を掴み引き上げたのだ。
「プレ…シ…ア……さ…ん…?」
(なにを…?)
「フフ…フ…今まで私は…何をしていたんだろう…?私はただ……こんなはずじゃなかった世界を変えたかっただけなのに……。」
(プレシア……!貴方泣いて……!)
プレシアはシンを抱え、天を仰ぎ泣いていた。
「世界はいつだってこんなはずじゃないことばかりだよ。」
そこにようやくクロノとユーノがやってくる。
「そうね…私は…娘達にとりかえしのつかない傷を負わせてしまったのね…。」
プレシアは抱えていたシンをユーノに渡す。
「お願いがあるの…フェイトと…アルフは何も知らず私に協力していただけ、シン君も知人に頼んで何も知らせずコズミックイラから連れてきただけなの…だから…。」
「わかった、なるべく罪が軽くなるよう尽力しよう、だから貴方も…。」
「私は…。」
そう言ってプレシアは1、2歩下がる、すぐ後ろは虚数空間になっている。
「な…!?バカな真似はよせ!」
「やめろ……プレシアさん……ガハッ!!」
「喋っちゃだめだよシン!」
「ねえ…シン君…フェイトと…もし会ったらでいいんだけど……アリシアに…。」
そしてそのまま、プレシアはシン達のほうを向きながら、虚数空間に小さく飛んだ。
「くっ!!」
クロノはプレシアを掴もうとするが間に合わなかった。
「プレシアさん……!」
「“ごめんなさい”って伝えて………。」
そしてプレシアは虚数空間にどこまでも落ちていった。
「くそっ!」
クロノは助けられなかった悔しさで地面に拳を叩きつける。
『みんな!脱出急いで!もうそこはもたないよ!』
「クロノ…シン…行こう……シン?」
「なんでだよ………なんでなんだよ……。」
「「………。」」
その後シンは意識を失い、クロノとユーノに連れられて崩壊する時の庭園から脱出した、だがアースラに帰還してもシンが意識を取り戻すことはなかった。