運命と最強_番外編前編

Last-modified: 2007-11-19 (月) 13:33:10

:ある土曜日

 

図書館

 

「ご返却、ありがとうございました~」
職員のお礼の言葉を聞き流し、本棚に向かうカナード。
仕事の関係で石田先生に用があったカナードは、ついでと言わんばかりにはやてに本の返却を頼まれたのだった。
「そういえば、はやての付き添いで来る事は多かったが本を借りることは無かったな」
そう思い、何気なく本棚を見渡すカナード。
数分後
「丁度いいものがあったな」
そこにあったのは『これぞ最新ロボット技術!ドラ○も○も夢じゃない!!』
「『ドラ○も○』とは何だ?まぁいい。これを借り・・・・ん?」
ふと、隣の本棚を見ると
「う~ん・・・う~ん」
手を伸ばし、一生懸命に本を取ろうとする月村すずかがいた。
「(・・・とどかんだろ・・・)」
そう思い、何気なく観察するカナード
「う~ん・・・・もう・・すこし・・」
それでも諦めずに頑張るすずか(ちなみに本との距離は変わってません)
「・・・はぁ・・これか?」
見るに見かね、棚にある本をとり、すずかに渡すカナード。
「あっ、カナードさん。ありがとうございます」
お礼を言い、頭を下げる。
「気にするな、それより無理に頑張らずに人を呼べ」
シュンとするすずか。
「わかりました、それじゃあ隣の後編もお願いして、あっ、貸し出し中・・・・」
「ああ、その本ならはやてに頼まれてさっき返却した。カウンターにあるんじゃないか?」
「そうなんですか、ありがとうございます」
笑顔でお礼を言い、カウンターに向かうすずか。だが、直にカナードの元に戻り
「カナードさん、この本はやてちゃんに渡してもらえますか、前から読みたいって言っていたので」
そう言い童話を渡すすずか
「了解だ、ありがとう」
今度こそカウンターに向かうすずか。
「さて、俺も目的のものを」
本棚に戻るが
「・・・・・・無い・・おのれぇー!!!」
誰かが持っていってしまった後だった。

 
 

商店街付近

 

その後、特に読みたい本も無く、用も無いので八神家に帰ろうとしたその時、

 

       キキキー!!!・・・・・・ドン!

 

少し遠くで、車の急ブレーキ音と何かがぶつかる音がした。
「なんだ・・・・・?」

 
 

商店街

 

ざわざわざわ
群がる野次馬
急ブレーキとぶつかった音がした辺り、そこには大きな犬が横たわっていた。
そして、犬の赤い血が地面にゆっくりと広がっていく。
「たいへん・・・・・・」
そう言い、現場に居合わせたアリサ・バニングスは犬に駆け寄った。
だが犬は、アリサの声に反応せず、ただ足を少し動かしているだけであった。
「どうしよう・・・どうしよう・・・・」
学校も早く終わり、なのは達と遊ぶ約束をしたアリサ、
なじみのペットショップに寄る為、今日は一人で帰ると鮫島に電話したときに起きた惨事。
アリサの家は『犬邸宅』と呼ばれるほど犬が多く、
アリサ自身も犬が大好きであり、犬の死にも立ち会ったこともあった。
だが、沢山の血を流しながら苦しむ犬の姿を見るのは初めてであり、
その姿がアリサの思考を鈍らせ、軽いパニックに陥れた。
それでも犬を助けようとするのは、犬が本当に好きなアリサが無意識に行った行為であった。
どうにか犬を抱き上げようとするが、9歳の子供の力では、ただ制服を血で汚すだけ
「どうしよう・・どうしよう・・・・このままじゃ・・」
戸惑うアリサ、その時
「邪魔だ、どけ」
そう言いながら、人ごみを掻き分けカナードが現れた。
犬の姿を見て苦い顔をするカナード
「少しどいてろ」
アリサを退け、犬の様子を見る。
「まだ息がある、傷も致命傷では・・・なさそうだ」
血で汚れることを気にせず、犬を軽々と持ち上げるカナード、その時

 

       ガブッ

 

気が立っているのか、犬はカナードの腕に噛み付いた
「や、やめなさい!その人は貴方を助けようとしてるのよ」
犬に注意するアリサ
「かまわん、むしろ噛み付く位の気力があれば直に死ぬこともあるまい。そこのお前、動物病院がある場所を知ってるか?」
「そっ・・・それなら槙原動物病院なら」
「そこに行くぞ。タクシーを拾ってきてくれ」
「わ・・・わかりました」

 

「困るんだよな~・・・そういう荷物は・・・」
「お願いします!この子、結構危ないんです!!」
渋るタクシー運転手に懇願するアリサ。
「槙原動物病院、直そこですから!」
「でもね~」
『いい加減勘弁してくれ』と言いたそうな顔をするタクシー運転手、その時
「犬は乗せたぞ、お前は犬と一緒についていってやれ、今は落ち着いているから噛み付くこともあるまい」
後部座席に犬を乗せた終えたカナードが現れた。
「はっ、はい!」
咄嗟に返事をし、後部座席に乗り込むアリサ
「お、お客さん困る(おい・・・」
運転手が文句を言おうとしたその時、開いた窓から腕を伸ばし運転手の胸倉を掴むカナード
「汚れたシートのクリーニング代は出してやる、いいな・・・・」
醜悪な笑みを浮かべながらカナードは運転手にお願い?した。(どんな笑みかはXアストレイ第二巻36ページ参照。)
「は・・はい・・・・ご利用ありがとうございます・・・」
タクシー運転手はビビリながら答えた。
ちなみにアリサは犬の様子を見ていたのでカナードの『ドギツイ交渉』を見ることは無かった。

 
 

槙原動物病院

 

槙原動物病院に運ばれた犬は直に手術を行うこととなった。
手術が終わり、出てくる獣医
「見た目よりは酷く無いわ、命に別状はなさそうよ」
その言葉にホットするアリサ
「あの、包帯とか消毒液があれば、かしてくれませんか。この人、噛まれたので」
「気にするな、この位」
コーディネーターのカナードにとって、犬に噛まれた位ではどうこうなる様な体ではないので断ろうとしたが、
「だめよ!」
アリサが遮った。
「私・・・何も出来なかったから・・・だから・・・」
俯くアリサ。
「何を言ってる、お前は犬を助けた、野次馬の馬鹿共が見ている中で必死にな」
「でも・・・・」
「それに、この病院のことを教えてくれた。自分は何も出来なかったと思いこむな」
アリサを見据え、カナードは答えた。
「・・うん、ありがとう。でも傷の消毒はするからじっとして」
そう言い、傷の消毒をするアリサ

 

その後手術は成功し、入院する必要はあるが、元気になることは間違いないことを話す獣医。
「よかった」
安心するアリサ
「で、治療費はいくらだ?」
現実的な質問をするカナード
「ここの治療費は野良動物に関しては無料なのよ、お金がもったいないって理由で見殺しにされる動物が可哀想だからって」
自慢げに話すアリサ
「そういうこと、だけどこの犬が助かったのもアリサちゃん達のおかげね、えっと・・・・」
「カナードだ、俺はもう帰るぞ」
そう言い、出て行くカナード。
アリサが慌ててお礼を言おうとしたが、カナードは既に病院から出て行ってしまった。
「あら・・・・これ?」
ふと獣医が机を見ると

 

      『消毒液と包帯の代金だ、残りは犬の餌にでも使え』

 

近くのメモ用紙から取ったと思われる紙にそう書かれ、一緒に諭吉さんが一枚挟まっていた。

 
 

帰り道

 

「・・・・・・すずから預かった本・・・・どこにやった・・・・」
一冊の本が商店街のポストの上に置いてあった。

 
 

八神家

 

「今帰った」
そう言い、真っ直ぐリビングに向かうカナード
「帰ったかカナード・・・・どうした、その服は」
カナードの姿に驚くシグナム達
「ああ・・・犬を助けた」
詳しい事情を話すカナード
「そうやったんかー、ご苦労様。お風呂沸いてる筈やからゆっくり浸かってな」
「ああ・・・・そうさせてもらう」
風呂場に向かおうとするカナード、その時
「きゃあああああああああああああ」
シャマルの悲鳴がこだました。