魔法成長日記_01話

Last-modified: 2010-03-30 (火) 00:27:57

結局、はやてとシグナムが隊長室に着いたのは14:20、シンが愚痴ってから5分後である。
「本当にごめんなぁ二人とも。」
「別に。」
ぶっきらぼうにシンが呟く。
「シン」
アスランがそれをたしなめる
「申し訳ありません八神隊長。こいつ、いきなりの異動と長旅で疲れてるんです。無礼をお許しください。」
「いやいや、遅れたのはこっちや。
でもそやな、疲れてるんやったらつまる話は後にして今日ははよ休みぃや。」
「よろしいのですか?」「ええよええよ。話はいつでも出来るからなぁ。」
「は、はい。分かりました。
それでよろしいなら。」
はやてがグリフィスに通信を入れる。
「グリフィスくん。この二人を彼らの部屋に連れてってや。」
『了解しました。すぐ伺います。』
「あぁ、そや。自己紹介しとかなあかんな紙じゃ分からんこともある。」
「はっ!これは申し訳ありません。私はアスラン・ザラ二等空尉であります。本日付けで機動六課へ転属となりました。よろしくお願いいたします。」
「シン・アスカ二等空尉だ。よろしく。」
「この隊の部隊長、八神はやてや。よろしゅうな。」
「機動六課のシグナムだ。よろしく頼む。」

 

そして次に口を開いたのは、意外にもシンだった。
「隊長。一つ訊いてもよろしいですか?」
「ん?なんや?」
「ずっと気になっていたのですが、この机はなんです?」
「あぁ。それ?ちょっと待ってな。リイン!」
「はいです~!!」
「「ん?」」
あたりを見渡すシンとアスラン。
今の声ははやてではない、と思い二人は必然的に残りのシグナムを見つめる。
その直後、はやてが机に引っかけていたカバンが激しく揺れる。
そして、、、カバンから何かが飛び出した。
「はいは~い!なんですか~?」
「え?」
「は?」

 

シンとアスランはあいた口がふさがらない。
ちなみに、上がアスラン、下がシンの言葉だ。
「ほらリイン。新しいフォワードのシンさんとアスランさんや。自己紹介しぃや。」
「はいです!あなたたちが緊急で入ったシン・アスカ二等空尉とアスラン・ザラ二等空尉ですね?私はリインフォースⅡです!よろしくおねがいしますね!!」
「「よ、よろしくおねがいします。」」
この時、二人にしては珍しく、ハモっていた。
「あ、ちなみにこの机は私のものです。はやてちゃんの補佐役、といったところですね♪」
「なるほど。」
そう言われてシンは納得が言った。なにせ、リインフォースⅡと名乗った彼女ははやての肩にちょこんと乗っている、いわゆる手のひらサイズだ。
「そゆことや。まぁ、詳しいことはまた今度な。」

 

直後、背後のドアが開きグリフィスが現れる。
「シン・アスカ二等空尉、アスラン・ザラ二等空尉。お部屋へ案内いたします。」
「はい。」

 

二人が立ち上がり、グリフィスの後に続く。

 

「あ、そや。明日の開設式、10時からや。遅刻厳禁やで?」

 

「「了解しました。」」
そして、三人が退室した。
残ったのは、はやて、シグナム、リインの三人。
「案外普通でしたね。そこまで変わったようにはみえませんが。」
「そやなぁ。でも話を訊かんことには何もわからんしな。彼らのことはおいといて、明日の開設式の準備や。行くで二人とも。」
「はい。」
「了解です~♪」

 

シンとアスランは同室に割り当てられ、部屋で荷物の整理を行っていた。

 

「にしてもあの隊長のしゃべり方変だったよなぁ。アスランあのしゃべり方知ってるか?」
「いや、俺も初めてきいたな。多分あれが方言というやつなのだろう。」
「へぇー、あれが。あ、俺ベッド下な。」
「分かった。」

 

二人は黙々と作業を続ける。
アスランはここ一年シンとすごしてきてやっと関係が良好になってきていた。コズミック・イラではあくまで上司と部下だったが、この世界で『同僚』『友人』として接することが出来るようになってきたのだ。
これは彼にとって喜ばしいことだ。
この世界でも、最初は昔の名残か、ギクシャクした関係が続いていたが、一年も任務をともにし、格段と仲が良くなっている。

 

そして、そんなシンとアスランには一つ懸案事項があった。

 

――キラ・ヤマトの出現である――

 

シンとアスランは、ここミッドチルダに来て何度かキラの反応を捕捉していた。
なぜ彼がここにいるかは未だに分からない。
現れた、と思ったらすぐに消えてしまうのだ。
シンは殊更これに敏感だ。
キラの反応をキャッチするとシンは周りが見えなくなり『フリーダム、今度こそ。あんたは俺が・・・』とぼやきながら転移してしまう。
こればかりはアスランが止めようとしても止まらなかった。
なのでいつも仕方なく援護に向かうのだが、キラは二人を認めるとシン達に見られる前にすぐに姿を消す。
これを続けてもう1ヶ月近くになる。
実際にキラを見たのはアスランだけだ。シンはこれに苛つきはじめている。
シンとアスランが機動六課に入った最大の目的がこの、キラ・ヤマトの捜索でもあるのだ。

 

「ん。これで一通り終わったかなぁ。アスラン、そっちはどうだ?」
「あぁ、こっちも片付いたぞ。」
「そか。どうする?休むか?中を探検でもするか?」
「そうだな。ひとまず休まないか?さすがに疲れた。」
「だな。寝るか。」
「あぁ、夕食時には起きろよ?」
「わかったよ。」

 

部屋の灯りを消し、二人は眠りについた。

 

???
「アスラン、それにあれはデスティニーの、、、」

 

その頃、キラもアスランとシンの出現に戸惑っていた。シンは自分がおとしたはずだし、アスランもラクスの側にいるとばかり思っていた。
「どうしたんだキラ?そんな元気ない顔して。」
「フラガ少佐。いえ、なんでもありません。」
「おいおい、フラガでいいよ。階級は無しだ。こっちの事はまるでわからん。」
「すみません。でも、どうしますか?ずっとこのままというわけにもいきませんし、、、」
「そうだなぁ。とりあえず、ここへ来てわかったのは世界の情勢とこの"魔法"ってやつだけだなぁ。まだここへきて十一か月ほどだろう?しかも派手に動きだしたのはつい最近だ。いままでは、"やつ"に魔法ってやつを教えてもらうだけで手一杯だったんだし。」

 

そう言いながらムゥは首もとの金色のネックレスを持ち上げる。
「ですね。でも、早く戻らないと、、、」
「ん?どうしたそんなに焦って。もっとどっしり構えねぇと、疲労でぶっ倒れるぞ?」
「あ、すみません。」

 

キラはラクスが心配で仕方なかった。あのラクスだから大丈夫だとは思うが、まさかアスランもこっちに来ていたとは思いもしなかった。
自分もアスランもいない状況下のラクスを心配するのは、彼にとって当然だった。
「とりあえず、どっかで飯食いたいが、まだ金あるか?」
「えぇ、まぁ。」

 

不思議な事に、コズミック・イラで稼いだ金がこの世界に換金されて振り込まれていた。
こちらの通貨とコズミック・イラの通貨レートが分からないのですべて、とは断言出来ないが、ムゥがダメ元で、ATMの静脈認証システムに手をかざしたら見付けたのだ。
なので金にはあまり苦労していない。

 

「そんじゃ行こうぜ。腹が減っては戦は出来ぬ、ってなぁ♪
あ、キラ、お前何食いたい?」
「フラガさんにお任せします。」
そんな元気なムゥを羨むキラであった。

 

――ミッドチルダ付近とあるポイント――
「またこれっ!!?くっ、レイジングハート!アクセルシューター!!」『Alright.Accel shooter.』
飛びながら周囲に桜色の球体を発生させているのは無論管理局の白い悪魔、高町なのはその人である。
機動六課の設立をまだかと待ち望んでる時にいきなり出動要請がかかった。アンノウン5機の殲滅と言われ、まさかと思っていたが、その"まさか"であった。
「速いなぁあれ。フェイトちゃん呼べばよかったかなぁ。」
その彼女のぼやく"あれ"とは、紫色で、犬のようなフォルムを持ち、地上を滑走し、背中にミサイルポットのようなものをつけてそこから魔力弾を発射する、いわゆる『砂漠の虎』が愛用した地上用MSバクーの小型版のようなものであった。
今追っているのは計5機だ。
「でも、動きが単調なのよねぇ。」
なのはがニヤリとした次の瞬間、バクーの動きが止まった。否、止めさせられた。
設置型バインドである。アクセルシューターが当たらないことをしったなのはは、アクセルシューターでバクーを設置型バインドのところまで誘導し、そこで止めをさすという作戦をとっていた。
「これでおしまい、と。」
アクセルシューターでバクーを破壊し、ふぅ、と一息いれるなのは。
「でもなんだろうねこれ?はやてちゃんにもフェイトちゃんにも言われてないやつだし・・・こんだけ壊しちゃ持ち帰れないしなぁ・・・」
『Don't worry.There is still a chance.Never give up.』
「そうだね。高町なのは、帰還します!」
『了解しました』
通信をいれて、なのはは帰還していった。

 

「へぇ。やるじゃないの。」
そしてその様子コーヒーを飲み、影から伺う者がいた。
「やっぱ管理局は敵にしないほうがいいかねぇ。おっ、今日のコーヒー美味いなぁ。うん、今日は気分がいい。」

 

そう、バルトフェルドである。
彼もまたコズミック・イラから強制転移させられた一人だ。キラやムゥより少し前にこちらに来ている。
どうやらコズミック・イラからミッドチルダへ来るのは人それぞれかかる時間が変わるらしい。
シンやアスラン、キラは同時期に転送されたはずだが、着いたのは1ヶ月程違う。バルトフェルドも同じだ。キラ達よりずっと早く転送されたはずだが、着いたのはキラやムゥとほんの数ヶ月しか変わらない。

 

「ま、俺も引き上げるかな。」
そういってバルトフェルドも姿を消した。
残ったのは無惨に砕け散ったバクーの残骸のみとなった。。。

 

次回シンとアスランの魔法成長日記 第二話「因縁の邂逅」