魔法成長日記_08話

Last-modified: 2010-07-20 (火) 20:43:42

「・・・」
スバルのいない自室でティアナは椅子に座って物憂げに天井を見る。今スバルは訓練中で、しばらくは帰ってこない。ティアナ自身訓練に行くべきなのだがどうにも行く気になれず、頭痛ということにしてあった。
「駄目だな私・・・」
ティアナはおもむろに机に置いてあったクロスミラージュを手に取った。
「もっとコントロールが良ければ・・・ヴィータ副隊長は・・・」
何度と呟いた言葉をまた呟く。そして、ティアナは立ち上がりクロスミラージュを持って部屋を出る。向かうのは六課裏側の木が生い茂った場所。普段だれも来ないそこは、一人で何かするには絶好の場所だった。しかし、ティアナはそこで意外な先客を見つけた。
「ヴィータ、副隊長?どうしてここに?」
「ん、おぉ、ティアナか。てか、そりゃこっちのセリフだ。訓練はどうした?」
ヴィータは赤の騎士服を身に纏い、そこに立ち尽くしていた。
「私は・・・頭痛がするので・・・」
その言葉にヴィータはティアナを睨む。
「嘘こけ。出たくねぇんだろ?」
「・・・」
「これからももう出ねぇつもりか?」
「・・・」
ティアナの沈黙を半ば分かっていたかのようにヴィータが続ける。
「はぁ・・・まぁティアナがどうしようとあたしは止めねぇけどよ。あたしは今もこうしてピンピンしてんだ。いつまでもぐずぐずと引っ張ったって何もならねぇぞ。」
「・・・」
「でもな、ティアナ。これだけは言っておく。」
ヴィータが一層きつく睨むようにティアナを見る。
「逃げるなよ?」
「え?」
「目を背けるな。ティアナ、お前は重大な失敗をした。そのことから逃げるな。それを受け止めて前へ進め。」
「・・・」
「ぐずぐずと引っ張れって言ってる訳じゃない。それじゃあな。そろそろ行かないとはやてとシャマルがうるせぇんだ。」
「はい・・・」
ヴィータはそのまま去っていく。残されたティアナは半ば途方に暮れていたが、無意識にクロスミラージュを強く握りしめていた。

 

――訓練場にて――
「スバル!それじゃあ攻撃の後にまたやられるよ!!後先考えて!」
なのははスバルの打撃に障壁で対応しつつ、攻撃中の硬直を狙ってアクセルシューターを飛ばす。
「くっ・・・」
スバルは突きだしていたマッハキャリバーを戻し、両腕を胸の前で交差させてアクセルシューターを凌ぐ。そしてそのままウィングロードで一度距離をとった。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ」
「よしスバル、交代だ。」
シンが後ろからスバルの肩を軽く叩き、そのままなのはへ向けて飛翔していく。この訓練は一定時間経つとエリオ、スバル、シンと交代していくという新しいシステムで、キラたちの強さがなのはが考えたよりもはるかに上だったため一対一でも十分に戦えるようにというコンセプトの訓練である。
「シン・アスカ!フォースインパルス!!いきます!!!」
シンは魔力スラスターをふかし、なのはの元へと向かう。
「だらああぁぁあぁ!!!」
シンはビームサーベルでなのはに斬りにかかるが、なのははその初段を大きく回避、シンと距離をとってアクセルシューターで牽制する。シンはビームライフルでアクセルシューターを的確に潰し、なのはに迫る。それでもなのははシンを距離をとろうとする。端からみれば鬼ごっこだが、軍配はシンに傾く。
「高起動用シルエットをなめるなよ!!」
シンは背面スラスターをふかし、急加速してアクセルシューターをビームサーベルで切り裂きながらなのはとの距離を一気に詰める。
「これで!」
シンはビームサーベルを振り抜かず、シールドをなのはに向かって投げ飛ばした。
「え?」
なのははその奇怪な行動に疑問を抱きながらも素直に回避する。シンはもうなのはを追わず、ビームライフルに持ち変えてなのはと、その後ろのブーメランのように旋回しているシールドを狙う。なのははもちろんそれを避ける。
「うし!!インパルス!エクスカリバーを単体で呼び出せ!!」
『Is it good through the magic consumption is intence?』
「あぁ!!!」
シンは急加速と共にビームライフルを一発放ち、エクスカリバーを持ってなのはへ突進した。
「うぅぅららぁああぁあぁああぁ!!」
(なんなの?攻撃が単調すぎない?)

 

なのはは少し疑いながらも回避体制をとる。しかしその直後、なのはの疑問は氷解した。
『Caution!!』
「へ?後ろ!!?」
なのはは後方から迫るビームライフルの魔力反応を察知し、急上昇する。しかし、それ以上のスピードでシンがエクスカリバーと共に突進してくる。急上昇したなのはが下を見た時見えたのは、シンと、回転しているインパルスのシールドだった。
(なるほど・・・でも!!)
なのははそのまま逃げれる限り上空へ飛んだ。
「そんなことしたって!」
シンは構わず突っ込む。
(よし!もうちょっと!!!)
なのはが最後の加速をすると次の瞬間に、シンは自分の体の自由が利かなくなっていた。
「な!!これは・・・バインド!??いつの間に!」
なのはが事前に仕掛けていた設置型バインドにシンの両腕両足が縛られる。
「くっ!この!!」
設置型のせいか強度が高く、外すのに悪戦苦闘していると、なのはが上からスターライトブレイカーの発射用意を完了させた。
「はい。シンくんも終わりね。」
なのははそこで発射を止め、シンへのバインドを解く。
「ちぇ、うまくいったと思ったのになぁ。」
「シンくんは少し走りぎみだからね。そうやって突っ込んでばかりいるとやられちゃうよ?」
「そうみたいだな。まぁそのへんの細かいのはアスランに任せきりだったし・・・」
「うん。シンくんの課題はそこだね。じゃあみんな集まって!!いまの訓練の反省やるよ!」
疲れた顔を見せながらもシンたちはなのはの元に集まり、訓練を続けるのであった――

 

――Side Athurun――
アスランはシンと相談した上で訓練には出ず、ティアナの様子を伺いに行くことになっていた。
「それで、お前はこそこそと隠れて見物してたわけだ?」
アスランはティアナのいる場所の側の木陰に隠れ、そこにいたヴァイスの肩に手を置いた。
「ん?おいおい人聞きの悪いこと言うなよアスラン。お前だって同じだろ?あんなことがあった後だ。誰だって心配もするさ。まぁ俺は直接みたわけじゃないけどさ。」
余談となるがヴァイス、シン、アスランは機動六課の数少ない男として仲が良い。六課の前線に男が少ないのを真剣に悩んだこともあるが、結局納得のいく答えは出なかった。
「まぁいい。見てたなら教えてくれ。もうどれくらいこれをやっているんだ?」
アスランが指差したティアナは、黙々と自主練をしていた。
「俺が来たのは十分前くらいで、その時にはもうやってたぜ?」
「やりすぎ、ってわけでもないのか?」
「どうだろうな。でもだいぶ息はあがってるみたいだ。俺の来るけっこう前からやってるかもな。」
「だったら止めるだろ普通。」
アスランはため息をつき、木陰からでた。
「ティアナ。いつまでやるつもりだ?」
ティアナは自主練を中断し、声のする方を見やる。
「あれ?アスランじゃない。どうしてここに?」
「どうしてじゃないだろう。お前こそどうした。自主練するくらいなら訓練に出ろ。」
「アスランだって出てないじゃない。」
「俺はお前のお守りだよ。まったくなにしてんだ?」
「いや、訓練には・・・出たくないのよ。」
「なぜだ?」
「なぜって・・・それは、あんなことがあった後だし・・・」
「それで出ないのか?」
アスランは確かめるようにティアナをみた。
「一日しっかり頭を冷やしたかったの。許可されるなら明日からにでも出るわよ。」
「出るのか?」
「えぇ。」
「これからも、戦い続けるのか?」
「・・・」
「やはり、怖いか?」
「否定したら嘘になるわね。」
「いいじゃないか。その失敗を忘れなければ、ティアナの大事な糧にもなるさ。」

 

そこでティアナは少し吹き出してしまった。
「ヴィータ副隊長もアスランと同じ事を言ったわ。忘れるな、いや、ヴィータ副隊長は逃げるな、って言ったっけ。」
「ヴィータが?」
アスランも少し意外そうに訊き返した。
「うん。逃げるな、その失敗を受け止めて前へ進め、って。」
それを聞くと、アスランは安心したような顔で言う。
「そうか。・・・なら俺が言うことは一つだ。」
「何よ。説教はもううんざりよ。」
「いや。戦い続けることだけが道じゃない、ってことだ。」
「・・・ようするに、ここを辞めろってこと?」
「辞めろとは言わない。ただお前の抱えるその恐怖が実戦でどう影響するかはだれにも分からない。」
「まぁ・・・」
「お前がこの失敗はどう受け止めるかで未来は変わってくるさ。もう銃をとらずに裏方に回るという選択肢もあるし、戦線から完全に身を引くのもありだ。もちろん、もう同じ失敗をしないように奮起してもいい。俺は選択肢を提示したいんだ。戦い続けることだけが道じゃないってな。」
「戦線から離脱って、逃げてるようなもんじゃない。」
「そうじゃないさ。何事もそうだが、自分に向かないことを無理矢理やることはない。」
アスランの言葉にティアナは少し苛立った。
「つまり、私は戦闘には向かないから消えろって言いたいの?」
「それは違う。ティアナの頭のキレの良さはこの中でも群を抜くものがあるしそれを実行できる実力もある。前線指揮官としてお前ほど頼りになるやつはいないよ。」
「じゃあ結局アスランは何が言いたいの?」
「言ったろ?選択肢を示しただけだよ。選ぶのはお前だ。」
「そう・・・」
「ここを辞めたって誰も責めないだろうし、覚悟を決めて訓練に戻っても誰も責めないさ。ただ・・・」
そこで一度言葉を切ってこう続けた。
「銃をとるなら、覚悟しろよ?お前のその恐怖や迷いが次は仲間、それか自分を殺すぞ?」
アスランのそのキツい物言いにさすがにティアナもたじろいだ。
「殺すって・・・」
「よく考えろ。自分は何のために戦うのか、もしくは何のために戦線から離脱するのかを。はっきりした目標のある人間は強いぞ?」
「・・・」
「俺はもう戻る。午後からは訓練に戻るからな。」
「私ももう戻るわ。今日はもう疲れた。」
アスランは少し笑ってからこう言った。
「それが良い。体も頭も使うんだ。休まないと倒れるぞ?」
「でも倒れるくらいやらないと、私足引っ張っちゃうから・・・」
「自分を卑下するのはお前の癖か?」
「事実を言っただけよ。」
などと長々とアスランと話ながら、心の整理を進めていくティアナであった――

 

――訓練場にて――
「うし!スバル!エリオ!!!」
「任せて!!」
「はい!」
シンはソードインパルスでなのはに迫り、スバルは右に、エリオは左に回る。
午前中最後の訓練は、なのはVSシン、スバル、エリオで三分以内に一発でもなのはにいれたらシンたちの勝ち、というものだった。シンたちの疲れもかなり来ていたが、最後ということで気合いを入れる。
「らぁああぁああぁ!!」
シンがエクスカリバーを両手に持ってなのはに斬り込む。弾かれてもお構い無しに手数を増やしていく。
「エリオ!!スイッチ!」
「はい!!!」
シンが攻撃を止めると同時に後ろからエリオが間髪入れずにストラーダを振るった。
「スバル!!」
「OK!」
スバルを一瞥したシンは次はインパルスに命ずる。
「インパルス!シルエット変更いけるか?」
『ギリギリいけます。』
「よし!インパルス!ブラストシルエットを!!」
『Alright』
シンはブラストシルエットを身に纏うと、腰のケルベロスを両方抱え、なのはに照準を定めた。
『スバル!合わせろよ!』
『了解!!』
『三・・・二・・・一!』
シンがケルベロスからビームを放つと、スバルも反対からディバインバスターを放った。

 

「くっ・・・レイジングハート!!」
『Protection』
「エリオォ!!スイッチィィ!!!」
「はい!」
二人の砲撃がなのはに至る寸前でエリオは身を引く。
「くぅ・・・」
なのはは両方向からのビームに耐えることに専念する。
「うし、ラストォォ!!」
シンが叫ぶと、今まで行動を起こさなかったキャロが動く。
「ケリュケイオン!!」
キャロがケリュケイオンを呼ぶと、一度ピンクに光り、魔法陣を展開する。その強化先は・・・
「貫け!エリオ!!」
「はぁあああぁぁあぁあぁ!!!」
「しまっ!!!」
上空からエリオがストラーダを下に突き出して落下速度のそのまま、ブーストアップでさらに加速しなのはを突き刺そうとする。なのははさらに障壁でガードしようとするが、シンとスバルの砲撃を耐えながらさらに急加速を付けたエリオを防ぐことは出来ず、非殺傷設定の槍がなのはの障壁を突き破り、彼女の肩を突きく。
その衝撃でなのはは真下へと叩きつけられた。
「やった!!・・・っとと。」
エリオは、スバルに着地地点にウィングロードをひいてもらい、体のバランスを保つ。しばらくすると、なのはが戻ってきた。
「いたたた・・・今のは効いたよ・・・うん。でも、訓練成功だね。お疲れ様。敵を動けないようにスイッチしながら戦うっていう発想もすごい良かったよ。」
なのはがそう言うと、全員気が抜けたように息をついた。
「はぁ~~。やっと終わった。疲れたな~。」
シンが大きく伸びをすると、なのはもくすりと笑って、伝達をする。
「はい。午前中はこれで終わり。各自休憩ね。午後のメニューはまた後で伝えるから。」
「「「「はい!!」」」」
なのははそれだけ言って訓練場を出て、技術室へと向かう。
「さて、俺たちも飯にするか?」
「そうだね。私もお腹減ったよ。」
「エリオとキャロは?」
「あ、じゃあ僕も行きます。」
「私も・・・」
「よし、じゃ行くか。」
シンが歩きだすと、スバルが控えめに声をかけた。
「ねぇ、ティアは・・・」
「ん?あぁ、ティアナならアスランと仲良くやってるよ。気にすることじゃない。すぐに帰ってくるさ。」
シンが努めて明るく答えるとスバルはそれ以上何も言わず、四人で食堂へ向かった。

 

――Side Nanoha――
「ふぅ、さすがにちょっと疲れたよ。あの子たちの実力も上がってきたし、何より連携がとれてきたよね。」
なのははシャーリーと共に先ほどの戦闘の映像をモニターで見ていた。
「そうですね。ここなんかアイコンタクトだけですもんね。」
「うん、さすがに私一人じゃもうキツいかな~~~。」
「そんなこと言って余裕そうじゃないですか。ほら、ここ最後笑ってますよ。実は防げたんじゃないですか?」
シャーリーが言いながらモニターを指差す。
「ふふ・・・教え子の成長ってやっぱり嬉しいじゃない?」
「そう感じる余裕があるうちは大丈夫ですよきっと。」
「言うねぇシャーリー。」
なのはもクスクスと笑いだす。
「でも、そろそろフェイトちゃんと組んでやりたいなぁ。」
「だったら・・・シンとアスランを組ませれて模擬戦をやればいいじゃないですか。彼らの実力も分かるチャンスですよ?あの二人はまだ何か隠してると思います。特にシンは。アスランはかなり手の内を見せてるようにも見えますけど。」
「あ、シャーリーもそう思う?私も、あの二人の実力は知りたいんだよね。もしかしたら、私たちの方が下かもしれないし。」
「ヴィータ副隊長とシグナム副隊長の時は曖昧なまま終わりましたからね。」
その言葉になのはが頷いた後、話を元に戻す。
「そうだね。そのうち組んでみるよ。今はそれよりも午後をどうするかだよ。私がおもってたよりもみんな成長が早いから考え直さなきゃ。」

 

「それより・・・ご飯食べてきたらどうですか・・・?」
「あ、そっか。シャーリーも行く?」
「いえ、私は今のデータを見て今後のことを考えないといけませんから。」
「そう?じゃあ私は行ってくるね。」
「はい。分かりました。」
なのははそのまま技術室を抜けて食堂に向かって歩き出す。
そしてしばらくするとアスランと出くわした。
「ん?アスランくん。どしたの?食堂はむこうだよ?」
「あぁ、いや。自室に戻るだけさ。午前中の訓練はもう終わったのか?」
「うん。今休憩とって、しばらくしたら午後の部ね。今度はアスランくんにも出てもらうよ?」
「あぁ、分かってる。それに、今日は俺だけだが、ティアナだってじきに来るさ。」
その言葉になのはは少し怪訝そうに訊ねる。
「何か話したの?」
「まぁな。俺は少し背中を押したくらいだ。まぁ、どうするか決めるのはあいつだ。急ぐこともない。」
「そう・・・」
「・・・そんなに心配なら行ったらどうだ?」
アスランがそう提案するが、なのははそれを拒んだ。
「もう言うだけのことは言ったんでしょ?なら私がすることは何もない。アスランくんの言う通り、あとはティアナ自身の問題だから。」
その言葉を聞いたアスランはもうティアナに関しては何も言わず、別れを告げる。
「そうか。俺は午後からの訓練の用意をしなくちゃならない。また後でな。」
「うん。じゃあね。」
(ティアナ・・・)
なのはには今のティアナの心境を理解するのは難しくなく、スバルと同じくらい彼女を心配していた。アスランにはああ言ったものの、直ぐにでもティアナと話がしたかった。
しかし、いまなのはが行ったところでもうティアナに言えることは無い。アスランに託すべきだ、と思いもするが、やはり心配でもある。そんな気持ちと葛藤する。
しばらく悩んでいると、ふと声をかけられた。
「なのは?なのは~?」
「ふぇ?」
だいぶその場に立ちすくんでいたらしく、気が付くと目の前でフェイトがなのはに向かって手を振っていた。
「あれ?フェイトちゃん。どしたの?」
「それはこっちのセリフなんだけどな・・・どうしたのぼーっとして。」
「あぁ、いや・・・午後の訓練をどうしようかな、って。」
咄嗟にそんな言葉がなのはの口から出たが、明らかな嘘ではないので良しとした。
「なるほど。でも、わざわざこんなところで考えなくてもいいんじゃない?」
「本当はご飯食べに行くつもりだったんだ。午前中の訓練のデータをシャーリーに任せてあるからその間にね。」
「そうなんだ。私もこれからご飯なんだ。どうせなら一緒に訓練考えようよ。」
「本当に!?ありがとう♪」
二人はそのまま食堂へ向かい、その日の訓練メニュー、シンとアスランとの模擬戦について話し合った――

 

――午後、訓練場にて――
「揃ったね?午後の訓練、始めるよ!」
「「「「「はい!!」」」」」
先ほどの四人+アスランが返事をすると、なのはは訓練の内容の説明を始める。
「まずはウォーミングアップね。五人でガジェット十五体、制限時間は十分、バリアジャケットの準備をして。」
その声に四人はデバイスを起動させる。ちなみに、シンはデスティニー、アスランはセイバーだ。
「じゃあ行くよ?訓練、開始!!」
開始の合図と同時にアスラン、スバル、エリオは一気に前へ走り出す。シンとキャロはその場に残ったままだ。
「エリオ!スバル!!きちんとついてこいよ!」
「言われなくても!!」
「が、頑張ります!」
アスランはセイバーをMA形態にし、飛翔した。
『まずは前方の三機からだ!』
『じゃ私右のやつ!!』
『え、え?』
スバルがそのまま右前方に飛び出し、ガジェットザクに狙いをつける。アスランはそのまま直進するので、エリオはそっちについて行く。
「くらえ!!」
アスランがMAのまま高出力ビームを放ち、それをみてエリオはソニックムーヴを発動、ガードして硬直を余儀なくされたザクの腹部をストラーダで貫く。
「よし、スバル!!」
「はい!」
既にザクを一機倒したスバルが最後のザクに向けて走り、魔力弾を放つ。もちろんザクは回避するが、その回避コースを見切ったセイバーをMS形態にしたアスランがビームライフル的確に射抜いた。
『シン!!』
『了解!』
アスランから通信を受けたシンは、右腰のケルベロスの銃口を正面に向ける。
「キャロ、頼む!!」
「はい!ケリュケイオン!!」
『Power increase』

 

ケリュケイオンの機械的な声の後、シンが淡いピンク色に魔力を纏う。
「うぉぉおおぉおぉぉおぉおおぉ!!」
ケルベロスから赤と白の高出力ビームを放つ。二機ほどのザクが爆発するが、それだけでは終わらない。
「まだまだぁああぁぁああぁ!!」
シンはケルベロスを持ち、銃口をずらす。それにつられてビームも曲がっていく。ケルベロスの銃口をさらに横にずらしていき、最後には巨大な剣で横に薙いだような形になった。
『残存機・・・四!』
『よし、アスラン!!』
『まかせろ!』
そこからのアスランの行動は速かった。
「セイバーリリース!!いくぞジャスティス!」
『Savior release.Jastice set up』
「マルチモード!!」
『Target multi lock』
度重なる訓練の後のチューンアップのおかげで、ジャスティスのマルチロックのための補正にかかる時間はほぼ皆無となっていた。
「スバル!エリオ!!」
「分かってるよ!!」
「はい!」
アスランがフォルティスとビームライフルから計三本のビームを放ち続け、それを避けるザクを後ろからスバルとエリオが的確にザクを破壊する。
「ラス、トォォオオオォォオォ!」
スバルがからだを地面と平行にして跳躍し、そのまま横回転する。その勢いのまま、最後のザクに裏拳を放った。
「いよっし!!」
スバルはそのままウィングロードを伝って着地。前線メンバーはザクの破壊を確認すると、もといた場所へともどる。そこにはシンとキャロ、訓練の完了を確認したなのはとシャーリーがいた。
「はい、お疲れ様。少し簡単すぎたかな?でもウォーミングアップにはちょうどいいよね。じゃあ、次にいくよ。次は・・・」
ティアナ抜きでの訓練はその後も1日続いた――

 

――その夜――
――Side Subaru――
スバルとティアナの部屋では、訓練を終えたスバルと、自主練を終えたティアナが話していた。
「じゃあ、ティアは結局いつから訓練に出るの?」
「ん~~~、なのはさんは何か言ってなかった?私はいつまで訓練に出たら駄目とか。」
「ん?いや、そんなことは聞いてないけどな・・・」
「だったら明日からでも出ようと思ってる。気持ちの整理もついたし。」
ティアナのそれを聞いたスバルは顔を喜ばせる。
「そか♪よかった!!」
「でもね、いまのままじゃ足引っ張るだけだから、もっと、もっと強くならなきゃならないの。分かるわよね?」
「だって、それは私も同じだし・・・」
「私は皆より人一倍努力しなきゃならない。だから、これからは朝練してから訓練に出る。明け方にちょっとうるさいと思うけど、少し我慢してね?」
「朝練?なら私も付き合うよ。」
「あんたまで巻き込むわけにはいかないでしょ?あんた前衛なんだから、休んどかないと本当に辛いわよ?」
「何言ってんのさティア!ティアがやるなら私もやるよ!また二人で頑張ろうよ!」
もうこれはひかないだろう、と思ったティアナはそれ以上その事については何も言わないことにした。
「そ。で、今日の訓練はどうだったの?」
「え?今日?今日は・・・いつも通りだよ。ガジェット破壊から、なのはさんとの四対一・・・あ、午後はアスランも来たからシグナム副隊長もはいって五対二か。他にも基礎練やって・・・それがどうかしたの?」
「別に、訊いただけよ。」
「でも明日からはティアが来るんだよね!?楽しみだなぁ!!」
意気揚々とはしゃぐスバルを見ながらティアナは溜め息をつく。
(とにかく、足を引っ張るわけにはいかないんだ・・・私だって、やれるんだから・・・)
「スバル。私、ちょっとトイレ行ってくるから。」
「はいはい。」
ティアナはそのまま退出する。

 

「はぁ・・・」
ティアナは溜め息をつきながら歩き出す。別にトイレにいきたいわけではなく、単にあれ以上スバルといたくなかっただけである。
「どうしよ・・・」
そのへんをぶらついていると、一人でゆっくり舎内を見たことがないのにに気付き、すこし散策がてらもう一度頭を整理することにした。自分、ティアナ・ランスターはこれからどうするのか。しかし幾度考え直しても、出る答えは一つだった。
「強く・・・なるんだ。今度はもう、失敗しないように。」
「その気持ちは大事だ。でも、無茶しちゃなにも意味ないからなティアナ。」
「え?」
小さく呟いたつもりだったが、返答があったことに驚く。
「よ。」
「あぁ、アスランじゃない。」
「なんだよそれ。俺じゃ悪かったか?」
「いいや、別に。それより、どうしたのこんなところで。」
「どうしたって・・・俺の部屋はあそこだ。」
そう言ってアスランはティアナの後方を指差す。
「え?そうなの?」
「あぁ、それよりティアナ、決めたのか?」
アスランの言いたいことを理解し、ティアナも真剣に答える。
「・・・決めたわ。」
アスランもティアナの瞳の真剣さを見て、無言で次を促す。
「もう、誰にもこんな失敗をさせないように、もっと強くなる。」
「強くなりたい理由はそれか?」
「まぁ、そうだけど・・・」
アスランはしばらく考える仕草をした後にこう言った。
「ティアナ、お前六課で自分はどうだと思っている?」
アスランの唐突な問いにティアナは少し戸惑う。
「え?まぁ、あのなかでは私が一番弱いでしょ、普通に考えれば。」
「そっか、じゃあ・・・強いってなんだ?」
アスランのその問いの意味が分からず、ティアナは首をかしげる。
「は?何言ってるの?」
「お前の言う"強さ"ってなんだ?ってことだよ。」
「それは・・・シンとかアスランとか隊長たちみたいな、一人でも十分に戦える程の力があるような・・・」
「それだけか?」
ティアナはシンの言いたいことが分からず、問い返す。
「じゃあ、何があるのよ?」
「俺が言いたいのは、そんな力だけが強さじゃないってことだ。」
「つまり?」
「お前の戦闘の時のポジションはどこだ?」
「センターだけど?」
「ならなおさらだ。そのポジションに必要なのは誰をも凌駕する絶対的な力か?」
「それは・・・」
「よく、考えろ。自分が何をするべきなのか。」
「え?」
ティアナが聞き返す前にアスランは自室へと歩いていってしまった。

 

「なんなのよ・・・別に私がずっとセンターかなんて分からないじゃない・・・」
ティアナはそれ以上深くは考えるのは止めた。
(明日早いからもう寝るか・・・)
散策しようとしていたがどうにも興ざめし、ティアナは自室へ戻って早めに寝ることにした。

 

――翌日午後、スカリエッティ本拠地にて――
「ムゥさん?」
自分たちに割り当てられた部屋で寝そべっているムゥにキラが話しかける。
「ん?どしたキラ?腹でも痛いか?」
「いや、意外とやることないですね、と思って。」
「そんなもんだろ。そんなにしょっちゅう戦ってちゃこっちももたないしな。」
「いや・・・戦いわけじゃないですけど・・・」
「お前は焦りすぎなんだよ。ちょっと落ち着いてどっしり構えたらどうだ?」
「・・・」
「果報は寝て待て、って地球の諺があってな、良いことってのは焦っても意味ないからゆっくり待てってことだ。」
「そう・・・ですね・・・」
キラはもう何も言わずムゥの隣に座り込む。
「でも、それならせめてどこか行きませんか?ずっとここにいるっていうのも・・・」
「う~ん・・・それもそうだな。んじゃ、外でっか。」
言いながらムゥは起き上がった。
「どこ行く?」
「いや、特に行きたいところは・・・ないですけど・・・」
キラが申し訳なさそうにそう言うと、ムゥはキラを茶化す。
「なんだそれ?まぁ、その辺ほっつき歩くのも悪くはないわな。じゃいくぞ。とりあえずスカリエッティのところへ行って外出の許可もらわないとな。」
ムゥはそのまま先に部屋を出てスカリエッティのところへ向かう。キラもそれに続き、スカリエッティに外出許可を求めた。
「外へ出たい?あぁ、もちろんかまわないよ。そこまで君たちを縛るつもりはないよ。ただ、気を付けてくれたまえよ?」
「なにがだ?」
「君たちは管理局、機動六課に顔を知られている。見つかったら捕まるかも分からない。」
「あぁ・・・たしかに・・・」
「そうだな・・・気休め程度にしかならないかもしれないが、これを持っていくといい。」
スカリエッティは二人にサングラスを渡した。
「おぉ、助かるぜ。」
「ありがとうございます。」
「気を付けてな。」
二人はそのままスカリエッティのいた部屋から出ると、そのままクルーゼのもとへ向かった。
「ん?どうした、ムゥ・ラ・フラガにキラ・ヤマト。私に用か?」
ムゥは少し気を尖らせながら答える。
「あぁ、外へ出たいから転送魔法を頼みに来た。」
「それは私一人では決められないだろう。」
「スカリエッティの許可はとってある。」
「・・・少し待て。」
クルーゼはスカリエッティに通信を入れて、ムゥの発言の真偽を確認する。
「あぁ、なら良いだろう。場所は?」
「あ~~、どこでもいいが・・・どうせ行くならでかいとこがいいよな。ミッドチルダの都市っぽい辺りにでも落としてくれ。」
「やけに適当だな。予定は無いのか?」
「あぁ、ちょっとした散歩だ。しばらくしたら戻る。」
「分かった。プロヴィデンス!!」
『Get set』
クルーゼはプロヴィデンスを起動し、キラとムゥの下に灰色の魔方陣を発生させる。
「万が一、何かあったら知らせろ。いいな?」
「言われなくても。」
「ではな。」
そのままキラとムゥはどこともわからぬところに転送された。
「ん~、ここはどこだ?」
「都会なことは間違いないみたいですね。」
「しまったなぁ、地図ぐらい貰えばよかったな・・・」
ムゥがボリボリと頭を掻く。キラも黙ってここがどこなのか把握しようと努めていた。しかししばらくして、ムゥがいきなり血相を変えてキラの手を引いて走り出した。
「まずい!!!くそ!あのやろう!」

 

キラはなにがなんだか分からなかったが、引っ張られながらも周りを見ていると、周りにいる人が全員同じ制服を身に纏っていることに気づく。
「ムゥさん・・・あの制服・・・まさか・・・」
「そのまさかだよ!ちっ!!ラウ・ル・クルーゼめ!なんのつもりだよ・・・管理局の目の前に落とすか普通!?」
二人はサングラスをつけてしばらく走り続ける。ただひたすら管理局から離れようと後ろを見ながら走っていると前方から同様に歩いてきた人とぶつかってしまう。
「ワリィ!!」
ムゥはぶつかった相手に謝りながらそのまま走っていこうとするが、不意にその相手に呼び止められた。
「待って!あなたたち!」
「ん?」
「失礼ですが、顔を見せてくれませんか?」
「は?」
いきなりの質問にムゥは戸惑う。
「そのサングラスを外して素顔を見せてくれませんか?」
「なぜだ?」
「いえ、あなた方に見覚えがあるような気がして・・・」
(まさか・・・ビンゴか?)
ムゥは心中穏やかではなかったが、それでも平静をよそおう。
「見間違いだと思うぜ?俺はあんたを知らない。」
「私が見ただけなので、あなた方が私を知らないのは当たり前なんですが・・・」
ムゥはそう受け答えする間にも必死に言い訳を探す。しかし、相手を説得させたのは、隣で黙っていたキラだった。
「すみません。僕たち目の病気にかかっていて、直射日光や紫外線は危険なんです。勘弁してもらえませんか?」
(そんなやつはこんなとこ来ねぇよ・・・)
ムゥは心中でつっこむが、今は事が事なので何も言わない。
「そうなんですか?」
その相手はムゥにも確認を求める。
「あ、あぁ。そうなんだ。すまないな。」
すると相手は気まずそうに一歩下がった。
「そうですか。こちらこそ、お引き留めしてすみませんでした。では、失礼します。」
そのままその人は管理局の方へともどっていった。
「ふぅ~~、あぶねぇ・・・にしてもキラ、よく思い付いたな。」
「いや、なんか偶然・・・」
「まぁなんにしてもよくやったよ。とりあえずここから離れよう。」
「はい。」
「くそ、あのやろう・・・なんでこんなめんどくさいことを・・・」
ムゥは愚痴ながら管理局を離れ、ミッドチルダの中心を目指した。

 

――その頃、訓練場にて――
「あ、お帰りシャーリー。」
午前中出掛けていたシャーリーをなのはが出迎えた。
「はい、今戻りました。訓練はどうですか?」
「これから模擬戦やろうとしてたところだよ。」
「そうですか。」
その淡白な返事になのはは少し違和感を覚えた。
「どしたのシャーリー?具合悪い?」
「あ、いえ、すみません。大丈夫です。」
「何かあった?」
別に隠すことでもなかったのでシャーリーはなのはに先程のことを告げた。
「実は、いまさっき管理局の前で人とぶつかったんですが・・・」
「乱暴されたの?」
「いえ、ですが何か見覚えのあるような気がして・・・サングラスを掛けていたのでよくわからなかったのですが・・・」
「デジャヴってやつ?」
「わからないです・・・金髪と茶髪だったんですけど、どうも前の二人のような気がして・・・」
「ムゥ・ラ・フラガとキラ・ヤマト?」
「はい。」

 

シャーリーがそう答えると、なのはも首わ傾げる。
「なんでわざわざここに?」
「さぁ。だから私も人違いかな、と思ったんですけど・・・」
「わざわざ敵地のど真ん中に来たりはしないよね普通・・・」
「はい・・・」
二人も首を捻るが、結局納得のいく答えは出てこなかった。
「まぁ、なにもしてないならいいんじゃないかな?別にレリックの反応があったわけでもないんでしょ?」
「あい。それは大丈夫です。」
「だったらいいんじゃない?人違いかもしれないし。まぁ、シンくんとかアスランくんがいれば分かったかも知れないけど・・・」
「ですね。」
なのははFWメンバーに向き直り、訓練を続行する。
「はい!じゃあ次ね!次はアスラン、ティアナペアと私でやるよ~。」
それからその二人の話題が出ることはなく、サングラスのおかげで命拾いした二人だった――

 

――Side Kira&Muu――
「やっぱりミッドチルダともなると、でかい所だな。」
大きな町に出ると、ムゥがキョロキョロと周りを見ながらそう呟いた。
「ですね。」
キラもムゥと同じように町を眺めていた。
「どこいきたい?」
「どこでもいいですけど・・・」
「じゃああれだな。昼飯。」
キラの答えを見越していたムゥが即座に行き先を決定する。
「わかりました。で、どこに行くんです?」
「食いたいもんは?」
「え?僕ですか?僕は・・・」
「無いのか?」
「じゃあ・・・」
キラは道端である広告を見つけ、そこを目指すことにした。

 

「お前、よくこういうとこいくの?」
ムゥは出された特盛の牛丼を見ながらキラに問いかける。
「いえ、僕も初めてです。昔、まだ僕がストライクに乗ってアークエンジェルやムゥさんのスカイグラスパーと一緒に戦ってた時にサイたちから話だけは聞いてたんです。」
キラの提案で二人が行ったのは、意外にもファストフードの牛丼屋だった。
「へぇ~。俺は戦争が始まる前なんかはよく来たな。速いし、安いし、美味いし、多いし。」
ムゥは割り箸を割って、牛丼に紅しょうがをかけて食べ始める。すると、キラにも豚丼が運ばれてくる。
「ん~、んまい!お前、若いんだから、もっと、食わなきゃ、駄目だぞ?」
ムゥは、牛丼に舌鼓を鼓ちながらそういった。
「そうですか?これでも十分だと思いますけど・・・ムゥさんが多すぎるだけじゃないですか?」
「いやいや、これくらいは常識だぜ?」
「そうなんですか・・・」
キラも豚丼を一度睨み、割り箸を割って食べ始める。
「ん、美味しいですね。」
キラとムゥは黙々と各々の昼食を食べ続けた。しかし、先に食べ終わったのは特盛だったにも関わらずムゥだった。
「ふぅ、旨かった~。あ~、すんません!勘定!」
「はい!ありがとうございます!!」
ムゥが勘定をしている間にキラも食べ終わり、勘定を頼んだ。
「さって、出るか?」
「はい。」
二人はそのまま店を出ようとドアを目指す。キラが店を出るとき、店に入ろうとした人とぶつかってしまった。
「ん?」
「どうした?」
「ムゥさん、あの人・・・」
「誰?」
「今店に入ったあの赤い髪の人です。」
「あれか?あれがどうした?」
「いや、どこかで見たような・・・」
キラがそう言うと、ムゥは真剣な顔で聞き返す。
「向こうでか?こっちでか?」
「確か・・・向こうで・・・」
「いつ?」

 

「それがもう一年以上前だから分からなくて・・・」
「赤髪か・・・たしかに、俺も心当たりはあるが・・・声・・・かけてみるか?」
ムゥがそう問うと、キラはしばし考えてから決断する。
「いや、止めておきましょう。サングラスしてる意味が無くなりますよ。僕たちは気付かれないようにサングラスをしてるんですから・・・」
「それもそうか・・・声かけないならさっさと出よう。」
「そうですね。」
二人はそのまま店を出て、次の目的地を定めにかかった。
「さて、次は・・・」
「どうします?」
「そうだな・・・まぁとりあえずどっか店入ろうぜ。外は暑い。」
ムゥの視界には前方にヒートアイランド現象を確認できるほど、その日は猛暑だった。
「じゃあ、デパートかどこかにでも行きます?」
「お、いいねぇ。ショッピングか。」
ムゥとキラはそのままあてもなく町をさ迷い続けた。

 

――Side ???――
「今の人たちって・・・確かアスランのところの・・・」
昼食をとるべく今さっきこの牛丼屋に入ったが、その時にサングラスをかけた奇妙な二人組とすれ違った。片方は金髪、もう片方は茶髪だが、どちらにも朧気ながら見覚えがあった。
「あの金髪、それにあの顔の傷・・・」
心当たりを探るべく、通信を入れる。
『ギンガさん、今度協力することになっている機動六課が追っている次元転移者って誰でしたっけ?』
いきなり呼び出された彼女はキョトンとして疑問を口にする。
『ん?どうしたのいきなり?』
『いえ、少し気になっただけなんですけど・・・』
『ん~、ちょっと待ってて。確か・・・あ、これだ。』
そう言って通信相手――ギンガ・ナカジマ――が送ってきたのは二枚の写真とその名前だった。
(やっぱり・・・ムゥ・ラ・フラガ、キラ・ヤマト・・・ストライクフリーダムの・・・サングラスしててよくわかんなかったけど・・・)
『ありがとうございます。』
『別にかまわないけど・・・休暇中くらい仕事の事は忘れたほうがいいわよ?』
『分かってます。では、失礼します。』
それで通信を切った。また、それと同時に注文していた豚丼が運ばれてきた。
(うわぁ~。すっごい久しぶり・・・いつ以来だろこういうの・・・)
そんな感傷に浸りながら、黙々と昼食にありつくのだった―――

 

――機動六課、訓練――
その頃、訓練場ではデスティニーを起動させたシンとバルディッシュを起動させたフェイトが中空で睨み合っていた。その日の午後は、アスランとシンの実力を図るというのが主となっていて、ティアナやスバルたちとのコンビネーションを模擬戦で確認した後、なのはVSアスラン、シンVSフェイトの模擬戦の予定になっていて、今はシンVSフェイト、となっている。
「本当に、本気でいいんだな?」
「もちろん。」
シンはアロンダイトを正眼に構え、後ろの赤の翼を広げる。
(午前中の疲れが抜けてないってのに・・・)
「デスティニー!!」

 

直後、デスティニーの翼から緋色の魔力が流れだし、さらに大きな翼を形成した。
「はぁああぁぁああぁあぁ!!!」
シンは少し左右に揺れながら高速でフェイトに迫る。そのスピードは、通った軌跡に残像が残るほどのものだった。
「!!?」
フェイトはそれに驚き、後退しようとするが、スピードが違いすぎた。ソニックムーヴを用いないフェイトの飛翔速度では、どうやってもデスティニーのそれに敵わない。
「もらっ・・・たぁああぁあぁあぁあぁ!!!!」
上段に構えたアロンダイトを左右面の要領で右上から左下へと降り下ろす。
「くっ!!」
フェイトはそれを避けるべくギリギリで強引に左肩を後ろに引き直撃を避けてから反撃を試みる。
「甘いんだ、よぉぉおおぉおぉ!!!」
しかし、反撃のために振り抜いたバルディッシュが切り裂いたのはシンの残像。本体は既にフェイトの後方で新たに斬撃を加えようとしていた。
「バルディッシュ・・・」
フェイトが小さく呟くとバルディッシュは淡く発光する。そして、次の瞬間、デスティニーが注意を促す機械音声を発した。

 

『Warning!!!』
「何!!?」
シンがそれを聞いた時には既に遅く、シンを取り巻いていたプラズマランサーが高速でシンに迫った。
「くっそ・・・」
シンは即座に攻撃を放棄して回避を試みる。しかしそれもフェイトの計算の内。プラズマランサーの追尾性能であっても、こんな鼻先三寸から外すはずがない。
シンは翼への魔力の出力をさらに増やす。そして、急激な左旋回を敢行した。しかし、それをも予見したフェイトのサンダーレイジが回避先の前方から迫っていた。
(ちっ!!あの時か・・・)
フェイトが先ほどの初撃を避け、シンの残像をバルディッシュで切り裂いた時、同時にこのサンダーレイジを放っていた。シンは後方からフェイトを斬ることだけを考えていたため、それを見つけることは出来なかった。
そのサンダーレイジは大回りをして今シンの目の前にある。
(よし・・・今!)
フェイトは思いきって攻勢に出る。後ろからプラズマランサー、前方からサンダーレイジ、あとはフェイト自身で攻める、とフェイトは決めていた。しかし、すんでのところでそれを断念する。
「そんな・・・」
フェイトは心中愕然とした。
無いのだ。今頃シンの後ろを追尾しているはずのプラズマランサーは、そのまま直進してあらぬ方向に突き刺さっている。
「らぁあああぁああぁあぁああぁ!!!」
シンはアロンダイトでサンダーレイジを砕き、一度フェイトと間合いをとった。
「どうして・・・?」
「へっ・・・」
フェイトは試しにその場でもう一度プラズマランサーを放った。しかし、一度シンが避けると、その残像だけを貫きそのまま直進してしまう。
「追尾弾が、効かない?」
「そっちが来ないなら・・・こっちから!!!」
シンは緋色の翼を広げてフェイトへと急接近する。それに呼応してフェイトもシンとの間合いを詰めていく。近付きながら、最後にもう一度プラズマランサーを放つ。シンはそれをギリギリで避け、ケルベロスでフェイトに照準を合わせる。
「くらえ!!!」
赤の高出力のビームをフェイトに放つが、もちろん避けられる。
そして二人の剣の間合いに入ると、各々の剣を振るう。一合、二合、と剣が交わると二人は弾かれたようにまた間合いをとる。ひたすらその繰り返しを続ける。互いに互いを探り合いながら、期を待つ。そして、最初に動いたのは、またしてもシン。
「デスティニー!」
『Desteny's flight system output gets the maximum』
今までとは比べ物にならない魔力が翼が流される。もはやその様子は壮観、見るものを圧倒するようなものだった。
「これでぇ!!!終わらせる!!!」
シンの本気を見たフェイトもそれ相応の覚悟で相対する。
「バルディッシュ!!」
『Cartridge load』
バルディッシュの無機質な声とともに三つ薬莢が射出される。その次の瞬間、シンは猛スピードでフェイトに接近し、右腕一本でアロンダイトを振るう。フェイトはそれをほぼ感覚のみで避けてカウンターを合わせる。しかし、フェイトは気づいていなかった。シンの左手が発光していたことに――
「これでぇえええぇぇええぇ!!!」
シンは左掌底を、迫っていたバルディッシュの魔力刃にぶつける。するとバルディッシュの魔力刃が砕けちり、さらにシンはそのままフェイト目掛けて左手を突き出した。フェイトは、眼前に迫るシンの手をバルディッシュの柄でギリギリ弾きあげる。するとその光はフェイトの頭上で爆発する。
「ちっ!!!」

 

シンはそのまま右腕でアロンダイトをフェイトの腹から横に振るう。フェイトもバルディッシュでそれに応じる。すると、シンは先ほど弾かれた左手で右腰のケルベロスを無理矢理持ち上げてフェイトに向け、何の補正もなしにビームを発射する。
「くっ・・・」
障壁を張り防御するものの、いかんせんフェイトとシンの間合いが近すぎた。
「きゃあああぁああぁあぁ!!」
フェイトは根負けし、ビームによって吹き飛ばされてしまう。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・ちくしょお・・・」
シンも魔力が底を尽き、デスティニーの翼から出ていた緋色の魔力が消え、乱高下する。
「シン!」
不時着寸前のシンをアスランがジャスティスのファトゥム-00を飛ばして回収する。
「おぉ~、アスラン。サンキュー。」
「かなりお疲れみたいだな?」
「まぁ、かなり。」
「かなり急いでるような戦い方だったぞ?」
「パルマ・フィオキーナで決めるつもりだったから。はずされて焦ったよ。まさかあんなギリギリで弾くなんて。腹狙ったほうが良かったかな。」
シンが溜め息混じりにそういうと、アスランは苦笑する。
「頭は本当に隙だらけの時しか当たらない。で、結局負けたわけだ。」
「手をぬいて負けたアスランよりマシだろ?」
「それはなしにしてくれよ。」
アスランもそれに苦笑する。すると、そばにいたスバルがアスランに尋ねた。
「負けって、シンは勝ったんじゃないの?」

 

「いいや、俺の負けだ。」
「どうして?」
「見ての通り、俺の魔力はもう無い。いや、無くはないけどもうフェイトと戦えるほどは無い。でも、まだフェイトは戦える。だからだよ。」
え?」
スバルが聞き返そうとした時、上空からなのはとシャーリー、それにフェイトが降りて来た事によりその疑問は解消された。
「シンく~ん、大丈夫?」
なのはの質問にシンは心底くたびれたように答える。
「あぁ、疲れただけだ。午前中と午後でこんだけやれば誰だって疲れるさ。」
「そう。まぁ、なんにせよお疲れ様。二人とも惜しかったね。」
その言葉にアスランはまた苦笑した。
「隊長には敵わないな。」
「まぁ二人とも疲れただろうし今日はもうあがっていいよ。」
「なに?」
「うん?二人はもうあがっていいよ。私たちはティアナやスバルたちの面倒を見なきゃならないけどね。」
「なら俺たちも残るべきじゃないか?」
「これからは基礎練だし、君たちの残り魔力じゃ何も出来ないでしょ?」
「まぁ・・・」
「だから、ゆっくり休んでまた明日から。」
なのはの言葉に二人は顔を見合って頷いた。
「そういうことならまぁ・・・分かった。先に終わろう。行くぞシン。」
「あぁ。」
二人がデバイスを解除し、訓練場を出ていこうとしたところでシャーリーがシンを呼び止めた。
「あぁ!ちょっと待って!デスティニーのことで少し話があるんだけど・・・少し付き合ってくれる?」
「ん?俺?別にいいけど・・・」
「ごめんね。今の戦闘についてなんだけど。」
シンはそれを聞くと、アスランに先に帰るよう促す。
「先戻っててくれ。終わったら戻るから。」
「分かった。」
アスランはそのまま歩き出した。
「じゃあ、技術室に来て。」
それだけ言ってシャーリーも姿を消す。
「じゃあ、俺もこれで。」
シンは軽く会釈して技術室へ向かった。
「ここだよな?」
技術室へ向かったシンが部屋へ入るとスクリーンに映像を映す準備をしていたシャーリーを見つけた。
「とりあえず来たぞ?」
「あ、ありがとう。そのへんに座って。」

 

シンは言われた通り、そのへんから椅子を引っ張り出した。
「さて、では、先ほどのデスティニーの事なんですけど・・・」
「なんだ?」
「えぇと、特にこの翼と左手なんだけど。」
それを聞くだけでシンの顔が少し曇る。
「あぁ・・・」
「非常に魔力の効率が悪いのね。自分でも分かるわよね?」
「まぁ・・・」
「翼の巨大化でスピードが増すのも分かるし、翼自体の武装を大きくするとかさばって他の邪魔になるのも分かる。ただ、カスタマイズ次第で魔力のコストダウンは可能なはずなの。」
「・・・」
「私にはそのデバイスに関するノウハウがないから触れない。だからこう伝えることしか出来ないんだけど・・・」
「パルマ、いやあの左手も?」
「あれ?あれも確かにそう。元々魔力を圧縮して爆発させてるみたいだから魔力を浪費するのは確かだけど、もう少し範囲を絞ることで少ない魔力で同等の攻撃力が出せるはず。」
「なるほど・・・」
「う~ん、魔法の知識と君たちのデバイスの知識、両方を持ってる人がいれば話は早いんだけど・・・」
シャーリーは腕を組んで唸るが、良い案は浮かばない。
「まぁ、こっちでなんとかするよ。戻って調整するから、そしたらまた見てもらってもいいか?」
「えぇ、もちろん。」
「サンキュ。じゃあ、俺ももう戻るよ。」
「はい。分かりました。お疲れ様。」
シンは技術室を出て自室へ向かう。
「でも、魔力の数値設定とかあんまいじったことないから分かんないしな・・・」
はぁ~、と溜め息をつきながらシンは歩く。
「う~ん、いじりすぎると翼の可動域にも影響するから・・・」
しかし、シンが一人でぶつぶつ呟いていた次の瞬間、六課の舎内をけたたましいアラートが鳴り響いた。
『ガジェットを確認!繰り返します!!南西に未確認型のガジェットを確認!数十!飛行系統ガジェットと思われます!繰り返します!南西の洋上に未確認型のガジェットを十機確認!!機動六課前線部隊はブリーフィングルームに集まってください!繰り返します!!!』
「ちっ!!こんなときに!!!」
シンは回れ右とともにブリーフィングルームへと駆け出す。そして、そこに全員が着くと、なのはがその場を取り締まる。
「みんな揃った?まず、今回の任務はターゲット、ガジェットの破壊だけ。魔導師の反応は今のところ出ていない。それに、ガジェットも別に破壊行動をしてるわけじゃなくて、ただ洋上を飛んでいるだけなの。」
「つまり、囮?」
シンの疑問になのははうなずく。
「もしくは、こっちの戦力の把握、ってところかな。両方の可能性を視野に入れて行動する。」
「どうするんだ?」
「まず、ガジェットを倒すためには飛行魔導師が必要になる。それにシグナムさんとヴィータちゃんはいま外で合流は見込めない。だから、私がガジェットを倒しに出て、残りのメンバーでここに待機して敵の動きを探ってほしいの。」
なのははそう伝達するが、アスランがそれに異を唱える。
「いや、前線には俺もでる。魔力もまだ残っているし、こちらの戦力を把握したいなら既に手の内がしれている俺が出るべきだ。それに、一人は危ない。」
アスランのその進言になのははしばし悩んだ。
「なんで魔力が残っているのかはもういいとして・・・そうだね・・・そうしようか・・・」
実はアスランは、なのはと模擬戦を行った際今のような状態を危惧し、本気でという約束を破って手を抜いて負けた。なのはもそれを薄々気付いてはいたが、特になにも言わなかったのである。
「な、なら私も行きます!!」
なのはが決断した瞬間、ティアナが口を挟む。
「でも、ティアナは飛べないでしょ?」
「スバルがいればなんとか・・・」
「それじゃあこっちが手薄になっちゃうじゃない?飛んでるガジェット相手にスバルだけじゃ辛いし。」
「でも、模擬戦のあとの二人では危険です!」

 

その言葉になのはもさすがに考え込む。
(確かに、万全とはいえない今の状況で見栄は張れない。安全策が一番だけど、前線にメンバーを集めちゃうと、やっぱりこっちが手薄になる・・・でも、少ない人数で勝つにはティアナみたいに頭のキレる人も要るよね・・・)
「う~ん・・・」
しばらくなのはが黙考すると、シンがなのはに確認した。
「飛べればいいのか?」
「え?」
「ティアナが飛べれば問題は無いのか?」
「ん、まぁ・・・確かそうすればこっちにスバルとシンくんにキャロにフェイトちゃんを置けるから安心だしこっち側も安心出来るけど・・・」
少し曖昧になのはが返答すると、シンはすぐに行動にでた。
「分かった。ちょっと待っててくれ。ティアナ!クロスミラージュ貸して!シャーリーは一緒に来てくれ!!」
「え?私?」
「早く!!!」
シンはクロスミラージュを半ばぶんどってシャーリーの手をひいて駆け出した。
「シンくん!!?」
「すぐ済む!皆出撃準備を終わらせておいてくれ!」
シンはそのまま技術室へと駆け込み、インパルスとクロスミラージュをそれぞれキーボードに接続し、メニューウィンドウを開いた。
「よし、まずはインパルスの・・・フォースだな。」
シンはそれから黙ってひたすらにキーボードを鳴らしていく。
「よし・・・このまま・・・」
しかし、そこでシンは一度キーボードを叩くのをやめる。クロスミラージュに繋いだそのウィンドウに赤くエラーの字が浮かんだからだ。
「ちっ、やっぱり無理か・・・」
そこでシンはすぐにシャーリーに声をかける。
「クロスミラージュをこのデータと同期できるように魔力接続を合わせてくれないか?」
インパルスのウィンドウを見せながらシャーリーにそう説明した。
「これですか・・・やってみます。」
「頼む。」
今度はシャーリーがクロスミラージュのキーボードを叩いた。
「これは・・・バックパックの出力?」
叩きながら呟くシャーリーにシンが答える。
「あぁ。でも急繕いだからずっともつわけじゃない。」
「でも、これだけのデータをいまの時間ですべて同期させようとしたの?」
「まぁ、そうだな。」
「そんな無謀な・・・」
シンから見せられたデータは、普通なら丁寧に調査をして丸一日、下手すれば数日かかるほど緻密で膨大なデータだった。
「それよりも時間が無い。」
「まぁ、魔力接続だけだからすぐ終わるわ。もう少し待って。」
再びシャーリーはキーボードを叩き始める。そして、しばらくしてその準備が整い、クロスミラージュをシンに渡す。
「一応これで大丈夫だと思う。」
「よし!」
シンは先ほどと同じ作業を行う。今度は青緑色のウィンドウにSynchronous completionの字が浮かぶ。
「これで大丈夫なはず・・・戻るぞ!」
「は、はい!」
シンは技術室を飛び出し、来た道を戻っていく。ブリーフィングルームには既に誰も居なかったので二人で屋上にかけ上がると、ヘリコプターの前で全員待機していた。
「待たせて悪い!」
シンはそのままティアナの元へと走り込んだ。
「ティアナ、クロスミラージュだ。起動してみてくれ。」
「ん・・・クロスミラージュ!」
ティアナがそう言うとクロスミラージュは機械音とともに起動する。そして、そのバリアジャケットの背面には、元々シンのフォースインパルスの背面のスラスターが付いていた。
「え?これたしかシンの・・・」
「それなら飛べるはずだ。魔力を流すだけで大丈夫だから。なのは、これでティアナもいける。」
「でも、試してもいないのにいきなり実戦は・・・」
「飛行は簡単だ。飛びたい方向を向けばその方向に飛べる。やってみてくれ。」
「まぁいいけど・・・」
ティアナはスラスターをふかし、上昇、旋回を繰り返した。
「出来るだろ!!?」
下からシンが確認する。
「これなら別に問題は無いわ!!」
「だとさ。」
シンはなのはに向き直ってそう言った。
「こっちは俺とフェイト、スバルにエリオにキャロ、そっちは高町とアスランとティアナ、それでどうだ?」
「・・・うん。そうしようか。」
なのはは少しだけ悩み、そう決断を下す。
「じゃあ、私とアスランくんとティアナはヘリに乗ってガジェット撃墜に向かうよ!」
「「「はい!」」」
三人はヘリに乗り込み、ガジェットのいる洋上へと向かった――

 

急に訪れた六課創設から二度目となるアラート。今回は、無事ミッションを完遂できるのか――そして、まだ揺れ動くティアナの心は―――

 

次回、シンとアスランの魔法成長日記 第九話