00-W_不定期氏_04

Last-modified: 2008-11-15 (土) 17:19:59
 

「教会に逆らって、魔女を助けると!? お気は確かか、ウィナー卿!!」
「・・・バートン卿、彼女は魔女なんかじゃありません。 王家の都合で神の声が聞こえたという乙女を救世主に仕立て上げ、戴冠したら用済みとばかりに魔女に仕立て上げる。 こんなことは私は許すことはできない。 いまから、彼女を助けに行きます」
「しかし、魔女と認定されたものを助けたとなると、貴公も黒魔術師として、処刑されるんですよ。 この国の良心といわれる貴公が処刑されたら、この国はどうなるんです」
「マックスウェル卿、私をお気使いいただいて、光栄です。 しかし、私はこの国の行方は心配していません。 例え我が身がこの世からなくなろうとも、私と同じ志を持った者が現れるでしょう。 いまはこの愚かな所業を止めることが先決です。 では、失礼します」
「ウィナー卿!! ・・・貴公のお覚悟はわかった。ただ、お一人でいかすわけにはいかない。我等も貴公と同じ思いを抱くもの。 援軍として加えていただきたい」
「バートン卿・・・マックスウエル卿・・・」

 

 3人剣をかざし、剣を交わす。

 

「さあ、急ぎましょう。ルーアンへ!!」

 

 3人は、馬に跨り、全速力で異端尋問裁判が行われているルーアンへ駆け出した。
 彼らが去った後、黒髪と茶色の庇のような髪型をした男2人が藪の中からあらわれる。

 

「どうやら、本気らしいな。 しかし、あのウィナーって男、童顔だけど、強烈な人間だな。五飛」
「人はみかけによらんよ、ヒイロ。 だがあの3人をほっとくわけにはいくまい。 俺は彼らを助けに行く。 おまえはどうする?」
「ここで傍観してりゃ男が廃るってものよ。 あの3人には生きててもらわなきゃ困るってわけよ。 なんせ、カトル、トロワ、デュオの御先祖様なんだからな」

 

 五飛の顔に笑みが浮かぶ。

 

「予想どうりの回答だな」
「ほんじゃ、いきますか」

 

 2人は隠してあった、小型ジェットを背負い、ルーアンへと旅立った。

 

 

「はい、お疲れ様でした!」

 

 演出から声がかかる。
 部屋が明るくなり、そこにいた人々の緊張が解けて賑やかになった。

 

「いやあ、本当に初めてなんですか?声優のお仕事は」
「ええ、本当に絵に合わせて台詞を入れるのは緊張しました。 意識的に声は低めにしたんですが」

 

 演出家の質問にカトルが答えると、

 

「モビルスーツの操縦よりも緊張しましたよ」

 

 とトロワとデュオ。

 

「俺たちは現代からタイムスリップしてきて、彼らを助ける役目でしたけど、かまないように緊張してましたよ」

 

 と五飛とヒイロ。

 

「いや、声量もあるし、演技もプロ顔負けでしたよ。 思わずあの世界にのめりこんでしまいました。 今度もまたお願いします」

 

 とヒロイン役の声優。
 演技を褒められて照れ笑いする五人。
 こういう褒め方に弱いところは、まだ十代の青少年である。

 

          *          *          *

 

 プリペンターの面々、今日は声優の仕事である。
 なにせ、この方ぱったりと仕事が来なくなったので、サリィが芸能事務所のマネージャーよろしく売り込みをしていたら、この仕事が舞い込んできたというわけである。
 いくらマリナ=イスマイールというスポンサーがついたとしても、仕事がなければ話にならない。
 たとえ稼ぎが安くても、やれる仕事はやろうということである。

 

「ち、ヤニさがりやがって、面白くねえ」

 

 と控室でモニターを見ながらぼやいているのは、プリベンター変態1号パトリック=コーラサワーである。

 

「ふん。あのような役、私のほかに相応しい者はいないというのが当然だろう」

 

 と、同じく不機嫌になっているのは、プリベンター変態2号のグラハム=エーカーである。

 

「テメェに喋らす台詞はねぇ!!」
「それは私の台詞だ!!」

 

 コーラサワーが挑発すると、グラハムが欧州いや応酬した。
 『同じ種族の違う種類ほど猛烈に憎みあうものはない』という言葉があるが、これも、一種の近親憎悪みたいなものだろう。
 まさに一触即発といったところに誰かが入ってきた。

 

「ちょっくら、お邪魔しますよ・・・おやおや、穏やかじゃないねぇ」

 

 コーラサワーはその顔を見たとたん、自分の顔から血の気が引くのを感じた。
 そう、五飛に椅子に縛り付けられ、講義を5時間延々と聴かされて失神させた張本人……ビリー=カタギリがそこにいたのである。

 

「カタギリじゃないか。今日はどうしたんだ?」
「いや、うちの農園で新品種を開発したんで、今日はその差し入れに来たんだけどね」
「また、変なものを作ったんじゃないだろうな?」
「ははは、ちゃんとした食べ物だよ。 表にあるから、お見せするよ」

 

 疑いの目を向けるコーラサワーを余所に、カタギリは2人に外へ出るよう促した。

 

          *          *          *

 

 スタジオの外は快晴。暑くもなく、寒くもなく、絶好の運動日和である。

 

「なんだ、どこにあるんだよ。差し入れは」
「ああ、私だ。例のやつを持ってきてくれ、そう・・うん。お願い」

 

 コーラサワーがぶっきらぼうに問うと、カタギリは携帯を取り出し何処かと連絡をつけたようである。
 しばらくすると、飛行機の音がした。
 そして、青い空からなにかが投下された。
 黒い影がだんだん大きくなってくる。

 

「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁーーーー!!」

 

 MS(モビルスーツ)級の大きな物体がコーラサワーを直撃した。

 

「何って、うちの農場でとれた大カボチャだよ。 某薬品をまいたら、どれもこんなに大きくなってね。 でも、生でも甘くておいしいし、デザートやスープの材料にもなるよ」
「うーむ、さすが元ユニオンの天才科学者。スケールが違う」
「そんなところで感心してないで早くこれをどけろーーーー!!!」

 

 平然と言うカタギリ。
 変な処で感心するグラハム。
 そして……大きなカボチャの下でもがいているコーラサワー。
 さすが、あっちの世界でもこっちの世界でもフラグをへし折り続けた男だけのことはある。
 生命力は超人級だ。
 さて、ここから救出されるのはいつの日か、それは神のみぞ知る。

 

 

【あとがき】
 どうも、元平日の職人です。
 素晴らしい才能を持った「毎週水曜日」氏方新たに加入されて、笑い転げながら拝読させていただきました。
 また、週末担当の職人氏も「名無しさん土曜日」というコテハンをつけられました。
 本当に、ネタのまわし方、物語の展開の仕方、笑わせどころ、全てにおいてつぼに嵌るので、文章の書き方の勉強をさせていただいております。
 ということで、私のほうもコテハンをつけさせていただきました。
 また、お会いできる日をでは又。

 
 

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