「鍼灸?」
パトリック・コーラサワーは、何か胡散臭いものを見る眼差しをミスター・ブシドーことグラハム・エーカーに向けた。
「ああ、疲れたときや調子の悪いときに針を打ってもらったり、灸をしてもらうと非常に調子が良いのでな。
お前もどうだ? 少しは頭の調子もよくなるだろう」
「人の事言えるか! しかし、スペシャルな俺でも疲れるときがあるからな。いってみてもいいか。
そうだ、アラスカ野は俺たちより頭の治療が必要だからな、あいつも連れて行こう」
というわけで哀れジョシュアは2人に拉致されるように鍼灸院に連れ出されたのであった。
「なんで俺があああああ!」
別に『私は○になりたい』の台詞をかいたわけではない。
針や灸等自ら体に異物をつけることなんぞ真っ平御免のジョシュアにとって拷問に等しいのである。
それでよく軍人なんかやっていられるなという突っ込みはさておき。
◆ ◆ ◆
「とにかく、早くやってもらおうぜ。まずはこのへタレからな」
ジョシュアをスケープゴートにするコーラサワーとグラハム。
鬼や、あんたら鬼や。
「針は痛いものです。それが人間が持つツボを刺激し、体調をよくするんですから」
鍼灸医もジョシュアの不安を煽るようなことを平気で言う。
「まずは、体をほぐすためにマッサージを行います。はい、上半身裸になって」
ジョシュアは素直に上半身裸になり、ベッドにうつ伏せになった。逃げても無駄と悟ったのだろう。
ボキッ、ボキッと指をならして、鍼灸医はマッサージにはいった。
「アッーーーーーーーーー!!!!!」
「まだ序の口ですよ、もっとリラックスしてください」
悲鳴をあげるジョシュアを他所に、鍼灸医は冷静に返答する。
「こいつ、へタレだから、何かかまさないとうるさいぞ」
コーラはジョシュアの口にタオルを押し込めた。舌を噛むと難儀だからだろう。
マッサージにはいろいろな流派があり、わりと丹念にツボをおさえていく日本式、手の指をくの字に曲げてツボを押す韓国式、体の重みをのせ一番きつく感じる台湾式がある。
で、ここの先生はその台湾式であった。
ツボを丹念に探り、ぐっと体重をのせるため、そのたびに悲鳴を挙げそうになるが、だんだん諦めがでてきたか、何もリアクションを起こさなくなった。
さて、30分ほどしただろうか。
「針をやりますね」
消毒された針をツボに次々と刺していく。
「どうも、体全体が疲労してますね」
針は腰、くるぶし、膝の裏、アキレス腱などに刺されていく。
そして、灸、ツボにおかれ、火をつけると、もぐさが煙をたてる。
針にはなにも反応を示さなかったジョシュアもこの熱さには耐えかねたようで、悲鳴にならない悲鳴をあげた。
「はい、これで終わりです」
最後に整理体操のようなことをして終了。
「……どうだった?」
「痛かったです……熱かったです……」
グラハムの問いに、ジョシュアは半泣きで答えた。
「まあ初めてだから仕方あるまい。3回4回とやると、気持ちよくなる。それまでの辛抱だ」
次にグラハムが治療してもらったが、さすがに慣れたもので針や灸を楽しんでいるように見えた。
そして、我等がコーラさんの番がやってきた。
さて、スペシャルな彼がでるのか、思いもよらずヘタレな面を見せるのか、それは次回のお楽しみ。
【あとがき】
どうも、不定期です。きのう鍼灸にいってきて思いついたネタです。
もしかしたら、コーラさんのことだから、「こ、この人ツボがない!」ってことが真面目にありそうです。
では、またお邪魔します。 失礼いたしました。