「みんな、集合して。依頼が来たわよ」
サリィがプリベンターの面々に声をかける。
ここはプリベンター本部。
彼らはひっそりと世界平和ために行動している組織である。
「依頼内容は?また身辺警護か?」
「今回の依頼内容は……ヒーローよ」
「?」
サリィの言っていることが理解できず皆ポカーンとなってしまった。
* * *
「要するに、ヒーローショーで中の人を演じてもらいたいってことよ」
「……なぜ、ヒーローショーなんだ?」
サリィの持ってきた変な依頼に困惑するトロワ。
「おいおい、今でも大変なのにガキのお守りはゴメンだぜ?」
普段コーラサワーのお守りをしているデュオにとって、さらに迷惑なことは避けたいご様子。
しかし……というかやはりと言うべきか、あの男達の反応は全く違った。
「ヘッ!俺様はいつだってヒーローに決まってんだろ!」
「ヒーロー?うむ、良い響きじゃないか」
コーラサワーとグラハムはノリノリである。
「まぁ冗談は置いといて……真の狙いは凶悪犯の逮捕よ」
サリィが今回の作戦の資料を皆に配る。
「凶悪犯?………コイツは!あん時の野郎か!」
コーラサワーが大声をあげる。
それもそのはず、凶悪犯とはアリー=アル=サーシェスその人なのだから。
「また何かやる気なんですか? あの人」
呆れ気味にカトルが質問をする。
アリーは以前カティ=マネキンの命を狙ったが、我らがコーラサワーに阻止されていたのだった。
「そうよ。今度は遊園地でヒーローショーの悪役をやっているらしいわ」
「悪人が悪役やってるのかよ!」
「馬鹿にしちゃだめよ。次の資料を見て」
ページをめくってみると……
「何で、台本がここにあるんだ?」
ジョシュアが思わずつぶやく。
そこに書かれていたのは何かの台本だった。
ヒーロー1「悪事もそこまでだ。観念しろ!」 敵ボス「フハハ、まだ俺様にはこのロケット砲が残っているんだよ」 ~敵ボス、ビルの方へ向けてロケット砲発射。弾着~
「ただのヒーローショーの台本じゃねえか。俺様にはヒーロー1役がピッタリだな」
コーラサワーは息巻く。
「みんな想像してみて。普通ならロケット砲は本物じゃなくて音が出るだけの物を使うわ。でも、それを本物とすり替え、ビルに向けて放ったとしたら……」
「奴なら、あの男ならやりかねん」
五飛の目は険しかった。
逃がしてしまったことを悔やんでいるのだ。
「だが、奴の居場所はわかっているのだろう。なぜすぐに捕まえない?」
「それが……セリフ覚えに集中したいと言って三日前から行方をくらましているらしいのよ」
サリィも困惑している。
「だから俺達にショーの最中にテロを阻止し、そのまま奴を捕まえるよう依頼が来たってことかぁ」
デュオは呆れぎみにつぶやいた。
「そういうこと。では配役を決めるわ。 え~と、戦隊は5人いて、他に第6と第7の戦士が途中で加わるから7人ね」
「初演なのにもう7人も出るのか?」
「仕方ないのよ。人数多い方が捕まえやすいし」
「じゃあ俺はブラック役だな」
デュオがまず決定。
「僕は、イエローで」
カトルはイエロー。
「私はブルーが良い。ブルーが良いと言った!」
グラハムがブルー役をもぎ取る。
「……俺が白だ」
ヒイロはホワイト。
「グリーンは俺様……」
「俺が取る」
「いや、俺もグリーンが良い」
ああ、愛機の色が似通っている故の悲劇。
コーラサワー、トロワ、五飛でグリーンの枠を争うことになってしまった。
「ここは公平にジャンケンで決めようぜ」
「仕方ない」
「そうだな」
「せ~のせいで。ジャンケンポン!」
五飛がパー。
トロワとコーラサワーはグーで、五飛の一人勝ち。
「当然だ」
「後残ってる色は、レッドとピンクね」
「レッドだ。俺はレッドが良い。ピンクなんて着れっかよ」
「俺もだ」
ということで、またジャンケンポン!
「チクショ~!負けた~!」
コーラサワーの悲しい叫びが聞こえる。
結局、トロワがレッド、コーラサワーがピンク役になった。
* * *
「ところでサリィさん。ヒーローの戦隊名ってなんですか?」
「考えてなかったわ。名付けるとしたら……」
「ピンクでもしょうがねえ。でもせめて俺に名前をつけさせろ!そうだな。S.P.I(Special Pulibentar Iyaffu)・特捜戦隊プリペンターだっ!」
「イヤッフゥてなんだよ!イヤッフゥって!!」
デュオのツッコミが入る。
しかし、彼らはこの時知るよしもなかった。
戦隊ヒーロー物には厳しい掟があることを。
(つづく)
【あとがき】
今回の話は次のヒーロー編への繋ぎです。
トロワの愛機はエンドレスワルツの時の奴で考えて下さい。
皆さんお忙しいようですね。
かくいう私もレポート提出ラッシュでネタ考える暇がねえ!
暇を見つけてまた投下します。