00-W_土曜日氏_110

Last-modified: 2009-07-11 (土) 21:13:17
 

♪これから始まる ダブルオー
 注目浴びて いななくは
 天下のスペシャル コーラサワー
 今日はお披露目 めでたいな

 

 出張れ 出張れ コーラサワー
 ガンダム ソレスタ 押しのけて
 出張れ 出張れ コーラサワー
 目立って 癒して ぶっこぬけ

 
 

 二話からいきなり 出遅れる
 どこまで行っても 離される
 ここでコーラが 出ないなら
 おいらの視聴は ままならぬ

 

 カマせ カマせ コーラサワー
 グラハム サーシェス かきわけて
 カマせ カマせ コーラサワー
 目立って 癒して ぶっこぬけ♪

 
 

《エーこのたび、00における敵キャラをどうするかという問題につきまして、監督と脚本とスタッフ一同慎重に検討を重ねてまいりました結果、本命はイノベイター、大穴はアッと驚くアレハンドロ・コーナーという結論に達したのであります。
 さて各キャラ、スタートラインからいっせいにアピール。
 第二クールを終わったところで先頭は予想通りリボンズ・アルマーク。
 さらに各キャラ一団となって、グラハム・エーカー、ソーマ・ピーリス、アリー・アル・サーシェス、セルゲイ・スミルノフ、ネーナ・トリニティ、アレハンドロ・コーナー、王留美、コーラサワーと続いております。
 さて今、第三クールを終わって第四クールにかかったところで、先頭は変わらずリボンズ・アルマーク、一方コーラサワーは大きく遅れて出番最下位というところであります。
 さぁ最終話の直線に入った、あっコーラサワーが出てきた、コーラサワー凄い、コーラサワー凄い。
 トップのリボンズ・アルマークが懸命の主張。
 これをコーラサワーが軽やかに追いかける。
 コーラサワーが持っていくか、リボンズ・アルマークが威厳を見せるか、
 コーラサワーかリボンズか、コーラサワーかリボンズか、他のキャラはどうしたー?》

 

♪ところが奇跡か 女神懸り
 いならぶキャラを ごぼう抜き
 いつしかラストに 躍り出て
 ついに嫁さん ゲットだぜ!

 

 ヤッホ ヤッホ コーラサワー
 本命穴馬 押しのけて
 ヤッホ ヤッホ コーラサワー
 目立った癒した ぶっこぬいた!♪

 
 

 走れコーラサワー。
 ソ○ティー・シュガーよりも今だとマキ○オーの方が有名ですかね。
 まぁ原曲は当然私もナマでは知りませんが。
 つうか長いですが、これも歌詞ネタのやりおさめということで、ひとつご容赦を。

 
 

「ふわああああ」
「大欠伸とは、落ち着いているな」
「そうでもない、昨夜深夜映画を見てて寝不足なんだよ」
「何だ、『サンダ対ガイラ』でも見てたか」
「いや、『アタック・オブ・ザ・キラートマト』だ」
「趣味の悪い映画だったわね、ホント」

 

 パトリック・コーラサワーとデュオ・マックスウェルの漫才―――では、ない。
 今日のデュオの相手は、コーラサワーではなく張五飛とヒルデ・シュバイカーである。
 何故なら。

 

「あー、とっとと終わってくれないかな」
「そうだな。カティ・マネキンには悪いが、心から喜べない行事だな」
「二人とも、さすがに酷いわねー」

 
 

 そう、今日は結婚式だから。
 誰って、コーラサワーとカティ・マネキンの。

 
 

 コーラサワーはハンサム。
 どれだけ他に欠点があろうとも、これだけは動かしがたい事実である。
 幼い頃から「モッテモテやぞ!」であり、女で苦労したということはほとんどない。
 今までに数多くの女性とイチャコライチャコラしてきた割には、暗い夜道でブッスリ背中を刺されちゃったりしてないので、別れる時も結構さっぱりと別れて、向こうに引きずらせないタイプなのかもしれない。
 何という男性の敵、スマキにして大阪南港に沈めちゃろかとモテない側からは思うわけだが、まぁとにかく、今日という吉日に晴れて、そのハンサムなコーラサワーは、カティ・マネキンとゴールインの運びとなった次第だ。
 で、カティ・マネキンだが、歳はコーラさんより数歳上であり、三十路もそろそろ終盤を迎えるが、容姿はコーラさんが心から惚れるだけあって、こちらもかなり美人さんである。
 外見だけではなく、中身も素晴らしく、戦術予報士としてAEU軍で大佐まで上り詰め、OZも引き抜きを画策したことのある優秀な頭脳の持ち主でもある。
 コーラサワーを正面からヘコませることの出来る人間でもあり、その意味では、この二人をくっつけたのはまさに天の廃材、じゃない配剤とも言えるだろうか。

 

「しかし久しぶりに着たな、タキシード」
「やはりこういうものは好かんな、仕方ないとは言え堅苦しい」

 

 デュオと五飛のタキシードは、レンタルではなく彼ら個人の所有物である。
 プリベンターとして政府主催のパーティなどに警備で出向くこともあるので、レディ・アンが予算を割いて買ってくれたのだ。

 

「二人とも、着ていると言うより着られているって感じね」

 

 一方のヒルデは、タキシードではもちろんない。
 ちゃんとしたフォーマルドレスである。
 スカイブルー一色、肩口まで開いたトップスに、胸元に揺れる大きなリボン、スカートは三段フリルで、膝上からふくらはぎまでのアシンメトリーラインが特徴的だ。
 こちらは女の子ということで、レディ・アンもやや奮発してくれたようで、お値段も男性陣のタキシードに比べて結構お高いシロモノだ。
 もっとも、ヒルデ自身は裏方をこなすことが多く、せっかくのこのドレスも着ていく機会がなかなか無いのが可哀想なところか。

 

「そういうヒルデも、『馬子にも衣裳』って感じだな」
「デュオ、後でビール瓶で後頭部殴っていい?」
「はいごめんなさい、すいませんでした」
「……さて、そろそろか」

 

 デュオとヒルデの夫婦漫才を横目に見つつ、五飛は時間を確認した。
 コーラサワーとカティ・マネキンの結婚式が始まるまで、あと数分というところまで来ていた。

 

   ◆   ◆   ◆

 

「ふわああああ」
「大欠伸とは、落ち着いているね」
「そうでもないさ、昨日夜遅くまで映画を見ていて寝不足でね」
「ふうん、『エイ○アン』の新作かい?」
「いや、第一作目だよ」
「相変わらず古いね」

 

 リボンズ・アルマーク。
 世界的なアイドルグループ、“イノベイター”のリーダーが彼である。
 “イノベイター”には彼の他に、リジェネ・レジェッタ、リヴァイブ・リバイバル、ヒリング・ケア、ブリング・スタビティ、デヴァイン・ノヴァの四名がおり、先程から彼と会話をしているのは、メンバー中唯一の眼鏡属性人間であるリジェネ・レジェッタだ。
 なお、リヴァイブは居眠り、ヒリングは携帯ゲーム、ブリングとデヴァインはあっちむいてホイをさっきからしており、二人の会話はとんと聞いていない。
 いや、聞いていないのではない。
 聞く必要がないのだ。
 何故なら、『情報を共有出来る』という特殊能力を彼らは持っているのだから。

 

「リボンズ、おおぅマイ・エーンジェルぅうう」

 

 と、彼らのマネージャーを務めるアレハンドロ・コーナーが、何そのエセ若本節とツッコミが入らんばかりの口調で部屋に入ってきた。
 名家の生まれであり、マネージャーとしての手腕も問題はないのだが、キンピカ趣味にナルシスト気味、天然嫌味野郎と、好かれないタイプのスリーカードが揃っちゃってる男である。

 

「さあ、いざ隣室に行こうではないか。我らの華麗なる船出が今始まるのだ、その号令をリボンズ、お前が!」

 

 普通に喋ればこの半分で言葉は済む。
 が、こういう言い方をしちゃうのがアレハンドロ様という人間なのだ。
 グラハム・エーカーがグラハム語を喋るなら、彼は立派にアレハンドロ語圏の人間と言えるだろう。

 

「了解した。……さて、行こうか」
「いよいよだね、リボンズ」
「ふわぁ……何だ、彼らが揃ったのかい?」
「やっとって感じ? 待ちくたびれちゃった」
「よしデヴァイン、この勝負は俺の勝ちだ」
「次は負けんぞ、ブリング」

 

 リボンズを先頭に、返答は違えど、四人全員がまったく同じタイミングでソファーから立ち上がる。
 それこそ、寸分の狂いもなく。

 

「直に彼らと会うのは久しぶりになるな」

 

 リボンズは四人を従えて、ドアをくぐり、隣室へと移る。
 彼らが暮らすこの邸宅は、高台にポツンと立っている大豪邸であり、敷地面積は東京ドーム十個分はゆうにある。
 だがこの購入・建設に費やした金も、彼らが稼いだうちの1%にもならない。

 

「なかなか壮観だ、こうして一同が揃うというのは」

 

 リボンズの目の前には、彼の“同志であり部下”が勢揃いしている。

 

「緊急の呼び出しにつき、我らトリニティ、ここに参上した次第」
「あー……どもッス」
「あれぇ、ミハにぃ、ちょっとビビってる?」

 

 ヨハン、ミハエル、ネーナのトリニティ三兄弟妹。

 

『すまないが、どうしても仕事で離れられなくてな。今日はモニター越しなのを許されたい』
「代理として、オホン、私たちが来させて貰いました」
「お久しぶり、と言うべきでしょうかな」
「どうぞよろしく……ふふふ」
「……」

 

 ホーマー・カタギリ、アーサー・グッドマン、リー・ジェジャン、アーバ・リント、バラック・ジニンのアロウズ組。

 

「よう大将! ついに旗揚げかい、派手にやろうじゃねえか」
「君まで来ているのか。頼むから、やりすぎないで欲しいものだ」

 

 ゲイリー・ビアッジこと、アリー・アル・サーシェス。
 リニアトレイン社総裁、ラグナ・ハーヴェイ。

 

「有象無象、有能無能を全て使いこなしてこそのマイ・エンジェルだ。お前なら出来るはずだ、リボンズ!」

 

 そして、イノベイターのマネージャー、アレハンドロ・コーナー。
 それは、異様な光景ではあった。
 並んだ面子は、普通なら、住む世界も職種も全く違う者達である。

 

「ふふ……じゃあまずは」

 

 全員の顔を見回すと、リボンズはドッカとソファーに腰を下ろした。

 

「説明から入ろうか。まず、ヴェーダからの情報だが……」

 

 口調、態度ともにリボンズはあくまでも穏やかだった。
 しかし、その目は、部下を睥睨する王の如き光を放っていた。
 そう、金色に。

 

   ◆   ◆   ◆

 

「あははははは、あっはははははははは」

 

 パトリック・コーラサワーは笑いっ放しだった。
 さすがに宣誓や指輪交換は普通にやっていたが、それが終わってからはもうひたすら頬が緩みまくっている。

 

「いやあ、不死身のコーラサワー改め、幸せのコーラサワーになりましたあ」

 

 不思議なもので、苦笑は誘うものの、うっとうしさを一切与えない笑いだった。
 それは、コーラサワーの一点の曇りもない心から喜びの現れだったからか、それともここが結婚式という特別な場だったからか。
 とにもかくにも、デュオや五飛に至っても、参列した客と同様に、不快さは無かった。

 

「あいつ、心底嬉しそうだな」
「とは言え、悲しそうに結婚式を挙げる者もいないだろう」
「まあ、今日だけは祝ってあげてもいいんじゃない?」

 

 デュオたちは、コーラサワーとカティを包む輪からは、少し離れた場所に立っていた。
 教会から出てからずっと、二人は集った客にもみくちゃにされんばかりに祝福を受けている。
 そのうちの何人がコーラサワー関係で、カティ関係なのか、三人にはわからない。
 拍手しつつも寂しそうな顔をしているあの女性はコーラサワーの元彼女なんだろうな、とか、
 理知的な雰囲気の顔立ちの者たちはカティの知り合いなんだろうな、ぐらいしか見当がつかない。
 小さな子供の姿がちらほら見えるのは、さて、両者の親戚なのか、それとも知人の息子や娘か。

 

「あっははははは、あっはははははっはははははー!」

 

 笑いが全く止まらないコーラサワー。
 その横でカティ・マネキンが「やれやれ」といった表情をしているのが、三人にも見えた。
 そして、これが結婚式でなければ多分彼女はコーラサワーを思いっきり怒鳴りつけてただろうな……と共通して思った。

 

「ところで、ヒルデ」
「なあに、デュオ」
「それ、どうするつもりだ?」

 

 コーラサワーの高笑いを聞きつつ、デュオはヒルデの腕の中にあるモノを指差した。

 

「うーん……ドライフラワーにするか、プリザーブドフラワーにするか、押し花にするか……」

 

 そこには、つい先程、新婦が投げたブーケがあった。
 どういった神様のイタズラやら、放物線を描いたそれは、全然争奪戦に興味のなかったヒルデに向かって落ちてきたのだった。
 なお、さすがにコーラサワーもガーター・トスはやっていない。
 やってもいいと言われたら、きっと嬉々として実行しただろうが。

 

「え、保存するつもりか?」
「……だって捨てたらダメでしょ、バチ当たるわよ」
「よし、言い考えが浮かんだ」
「ん、何か案でもあるのか? 五飛」

 

 ブーケを受け取った女性は、次に結婚出来ると言われている。
 で、ここで「お前ら二人結婚しろ」などと言う五飛さんではないのは、ご存知の通り。

 

「サリィかレディ・アンにプレゼントすればいい」
「えーっと五飛、それはどういう意味なんだ?」
「そういう意味だ、デュオ」
「……ヒルデ、どうする?」
「何でそんな核爆弾背負って地雷原に飛び込むような真似をしなきゃならないのよ、私が!」
「あ、お前何気にヒドイ」

 

 レディ・アンは仕事の都合がつかなかったが、サリィ・ポォは無理すれば参加は出来た。
 が、していないのは、彼女にも色々思うところがあるためだ。
 コーラサワーにではなく、結婚というものに対して。

 

「大丈夫だ、笑顔で一直線に渡せば、他意は与えないだろう」
「いやあ、無理だと思うぞ」
「やるならデュオ、あんたがやりなさいよ!」
「何で俺が!?」

 

 あっちであははは、こっちであわわわ。
 今日も今日とて、プリベンターは平和なり。
 裏の世界でどのような陰謀が育っていようとも、今はコーラサワーに幸よあれ。

 
 

 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は第三部に続く―――

 

 

【あとがき】
 コンバンハ。
 第二部終了、次回より第三部へ。
 少し期間が空くと思いますが、その間にでも放りっぱなしのラノベ的ナントカをどげんかせんと……。
 ……しかし、スレが落ちない限りは映画公開まで継続するつもりですが、本当に来年なんでしょうねサヨウナラ。

 
 

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