00-W_土曜日氏_82

Last-modified: 2009-03-19 (木) 17:07:33
 

 あざ~すぅ!
 私、アザディスたん!
 ちょっとオマセでイナセでエロカワイイはずの女の子!
 今、私ちょ~っとピンチなの!
 何かぁ、タイヨーコーのシステムってやつに同調しなかったら世界の皆が私をフルボッコ!
 枠から外れた足並み乱したーって、だってウチには少ないけれど石油があったもん。
 レアメタルだってあったもーん。
 民族問題と宗教問題もあったもーん。
 簡単に解決しないもーん。
 皆と一緒に何て出来ないよー。
 なのにイジメるなんてサイテー? って感じだよー!
 マリナちゃんもシーリンちゃんも頑張ってるけどアザディスたん、よくわかんなーい。
 ソレスタルビーイング?
 カタロンてなーに?
 アロウズってF1?
 ダブルオーってつおいの?
 オーライザーって食べ物?
 ドッキングってわーんエッチーい!
 やけにみんな深刻になっちゃってー、つまんなーい。
 もっともっとニコニコ笑って楽しくいかないとおもしろくなーい。
 アザディスたん、こんなのやーだもーん!
 ああ、白馬の王子様が来ないかなぁー。
 颯爽と現れて私を助けてくれるの!
 ハンサムでスラリとした人がいいなー!
 でもホント、どーしたらいいのかなー。
 メメントモリちゃんが私を狙ってるって噂もあるしぃー、私ノーマルだしー。
 誰かぁ、教えてようー!

 
 

 はい、もう悪ノリやめときます。
 アザディスタンが舞台です。
 それだけです。

 

   ◆   ◆   ◆

 

「さて、そう言うわけだが」
「何がそう言うわけなんだよ」
「このやり取り、本当にもうやめましょうよ」

 

 プリベンターは現在、特殊自治区であるアザディスタンにいる。
 いらんことしいの天才アリー・アル・サーシェスが、また何ぞ悪さをそこで始めたという情報を得ての行動である。
 しかも蜜柑エンジンの性能を現場で見たいとかいう人類革新重工の思惑も絡んで、アリーとその一党以上にうるさい一行になってしまっているのであった。

 

「カトル様ぁぁ、どこですのー?」
「うげ、姫さん来た」
「……本当についてくるとは思わなかった」

 

 そうそう、ショタ姫こと現アザディスタン代表のマリナ・イスマイールもコバンザメで共にいる。
 おとなしく帰りを待ってりゃいいものの、やっぱりガンダムパイロット勢揃いという涎出まくり(彼女にとって)の状況に我慢出来なかったらしい。
 正味の話、くっついてきても能力的にはまるでヤクタタズ、それどころかヒイロたちの士気を下げかねないアシデマトイである。
 や、別に彼女を叩いているわけではない。
 適材適所、それだけである。
 まあ、「アリーにさらわれちゃう」というある意味ウルトラおいしい役回りになっちゃう可能性もあるので、物語的にはヤクタタズでもアシデマトイでもなく、むしろノリと酔狂で書き散らすにはもってこい……。
 おっと指が滑った、それは後々の話、うん。
 今適当に決めたけど、後の話。

 

「ああ、ここにいらっしゃったのですねカトル様にパイロットの皆様」
「え、ええまあ」
「お姿が見えないのでとても心配しましたわ」
「……何処にも行きゃしませんて」

 

 マリナに聞こえないよう、デュオ・マックスウェルはポツリと小さく呟いた。
 作戦行動中とは言え、まだ敵の本陣がいずこにあるのか詳しくわかっていない。
 まずはそれを調べるのが、今のプリベンターの仕事であるのだ。

 

「おい、お面」

 

 つつつ、とマリナから距離を取りつつ、我らがヒーロー(今日は活躍したよ!)のパトリック・コーラサワー氏はグラハム・エーカーに声をかけた。
 なお、グラハムはアザディスタンに来てからずっとお面と陣羽織姿である。
 その時の気持ちでコロコロと変えちゃうから、まったくもって変態さんは困る。

 

「敢えて言おう、私はお面という名前ではない。グラハム・エーカーであると。いや、今はミスター・ブシドーであると」
「んなのどっちでもいい。なあ、俺たちはとっとと偵察に行こうぜ」
「ふむ、出撃するのは望むところだが、そう急ぐのは何故だ?」
「……あの姫さんに関わりたくねーからだよ」

 

 マリナ姫、少年大好きな代わりに成人男性は苦手、つーか露骨に嫌っている。
 それも、お前何か昔にあったんかと思わせる位に。
 迂闊に近寄ろうもんならスタンガンの一撃を容赦なく喰らわせてくるとんでもねー御人なのである。
 こりゃあさらったアリーもさぞかし取扱いに苦労……おっとおっと、それは先の話先の話。

 

「しかし、プリベンター・ウォーターの指示が出ない以上はな」
「かまやしねーよ、敵の巣穴を見つけりゃいいんだろ? 簡単な話じゃねーか」

 

 簡単な話じゃないです。
 四畳半の部屋で無くした財布を探すわけじゃないのだ、無闇に探して見つかるわけがない。
 コーラサワーなら発見出来るかも、と思ったそこの諸兄、はい貴方はコーラサワーウイルスに脳髄まで汚染されています。

 

「お前も行こうぜ、アラスカ野」
「え? 何で俺も」
「お前に拒否権なんか無い、ほれ準備しろとっとと」

 

 アラスカ野ことジョシュア・エドワーズ君、二人の側にいたのが運の尽き。
 つうかまあ、ここは三人セットで動かさないとね。

 

「お前ら、聞こえてるぞ」

 

 で、やっぱりデュオに突っ込ませとかないとね。

 

「なっ、みつあみおさげ! お前立ち聞きしてたのかよ、趣味悪いな」
「あんだけ大きな声で話てりゃ嫌でも聞こえてくるっつーの」

 

 うむ、密談には向かない男である、コーラサワー。
 時代劇で言えば、「いいかご老中様にはこのことはご内密になふっふっふ」と悪者が言った側から、「はい側用人に賄賂贈ったのは内緒にするんですねわかりましたぁ!」と大声で叫んじゃうようなキャラであるからして。

 

「もう少し我慢してろよ、サリィが色々と検討してんだから」
「検討だか弁当だか知らないけどよ、俺は今すぐ行きたいんだよ」
「遠足前日の子供か、お前は」

 

 マリナだけが理由ではない。
 そもそもコーラさん、じっとしておれないタチ。
 見る前に飛べ、もしくは随時臨機応変(行きあたりばったり、と読む)を日々実践している男である。
 よくそれでAEUのエースになれたもんだと今更ながらに感心してしまうが、まったくもって幸運と才能は望んだ者に与えられるとは限らないのが忌まわしくも美しいこの世の理であることよ。

 

「おとなしくしていろ、俺達だって我慢している」

 

 五飛もこっちに参戦。
 つうかカトル一人にマリナを押しつけて逃げてきた次第。
 味方を犠牲にするのに躊躇いを見せない彼は実にである。

 

「いや、行かせたらどうだ、五飛」

 

 ヒイロもこっちに参戦。
 つうか彼も逃げてきた次第。
 味方を犠牲にするのに躊躇いを見せない彼は実にである。

 

「そうだな、その間に俺達はサリィの指揮に従って捜索をするとしよう」

 

 トロワもこっちに参戦。
 つうか彼も逃げてきた次第。
 味方を犠牲にするのに躊躇いを見せない彼は実にである。

 

 これにて鬼のジェットストリームアタックが完成である。
 なお踏み台してくる連邦の白い悪魔はいないのであしからず。

 

「もし仮にこいつが発見したとしたらどうするんだよ」
「そのまま突っ込ませればいい、そして遠隔操作で敵のアジトごと爆破だ」
「ぬるいな。オキシジェン・デストロイヤーでもくっつけておけばどうだ」
「いや、それで駆逐出来たとしてもだ、このコーラサワーが最後のコーラサワーとは限らんぞ」
「このコーラサワーが最後の一匹とは思えない、てか」
「お前ら、好き勝手に言いやがってー! つうか俺じゃなくて敵を倒すんだろうがー!」

 

 ああもう、相も変わらずコーラサワーにオールレンジ集中攻撃のガンダムパイロットたち。
 彼らの関係が端的に現れていて、実に心温まる光景である。

 

「……オキシジェン・デストロイヤーは水中でしか効果を発揮しないのでは」

 

 マリナに頭を撫でくりまわされて髪型が崩れてしまったカトルがここで遅れて参戦したが、残念ながらその言葉は誰の耳にも届かなかった。

 

 なお、サリィから具体的な指示が出たのはこの約一時間後のことになる。
 その間、プリベンター的会話が場に飛び交っていたのは言うまでもない。

 
 

 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――

 

 

【あとがき】
 00だけはやらねぇと思っていたのにやっちゃいましたか裸で官能、じゃない感応コンバンハ。
 宇宙からの破壊光線といい今回の裸体交信といい、これがやはりもう伝統ってやつですかサヨウナラ。
 まぁマネキン大佐が何気にヤバいフラグたててましたがコーラさんはそれなりに活躍したのでイヤッフー。

 
 

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