「とある企業が、モビルスーツを不正に製造している疑いがある」
刹那・F・セイエイからもたらされた情報に、プリベンター本部に緊張が走った。
「……悔しいが、どうやら彼と僕の用件は同じ内容のようだ」
「ではカタギリ技術顧問、彼も」
「ああ。会議に参加してもらったほうがいいだろうね」
「承知した。マイスター運送主任スメラギ・李・ノリエガに代わって列席させてもらう」
ビリーと刹那の情報が一致したため、急遽人数を増やしての会議となった。
会議室で全員が円になって座り、スクリーンの前に立ったビリーに注目する。
「ここ最近、うちの研究所の所員が何人もとある企業からヘッドハンティングをされてね。
不審に思って調べみたら、他にも同じように引き抜きをされた研究所や会社がいくつか見られた。
それらの組織の共通点は、どこもモビルスーツ製造に転用できる技術のノウハウを所有するということだ」
ここで、刹那が言葉を引き継ぐ。
「俺たちマイスター運送がこの事実に気づいたのは全くの偶然からだ。
本来はあってはならないことだが、貨物の搬送中に外装を破損してしまったものがあった。
荷主に事情と状況を説明するため荷物を調べていたら、破れた箱の中から出てきた物が、これだ」
刹那がポケットから透明のパックを取り出して掲げてみせる。中に入っているのはベアリングのようだった。
それをビリーに手渡す。
「あんたなら、これが何かわかるだろう」
「ああ。これは一般に流通している規格品じゃないね。ある一定の用途にのみ使われる特殊な代物だ。端的にいえば、兵器とか」
「俺たちは急いで荷主について調べてみた。これを差し出した業者自体は兵器製造となんら関係のない企業だったが、更に調べてみると、このベアリングはいくつもの企業間で転送を繰り返してここまで辿り着いたものだったらしい」
「そんな回りくどいことをするのはつまり、足取りを掴めないようにするためですね」
「だろうな。だが、俺たちマイスター運送の捜査力を甘く見られては困る」
「え、ちょっと、なんでたかが一運送業者がそんな捜査網持ってんのさ」
デュオが思わずツッコミを入れるが、「それは企業秘密だ」と、一言で切り捨てられてしまった。
ビリーが一つ咳払いをする。
「実は、君たちプリベンターも無視できないであろう出来事があってね。ねえグラハム」
「うむ、これは私も今朝方知らされた話だが。
恐らくは元ユニオン軍所属という伝手からだろう、カタギリの研究所を経由して私とジョシュアにも勧誘が来たそうだ。
内容は、モビルスーツパイロットとしての腕を買いたい、と」
グラハムの言葉に、その場にいた大半の者が目を剥いた。
とりわけ大袈裟に反応したのが、元AEU軍パイロットのパトリック・コーラサワーである。
「なんでスペシャルエースの俺様を差し置いて!」
「こらそこ、残念がる状況じゃねえだろ!」
便所サンダルを握り締めてデュオがコーラサワーの頭を思い切り叩くと、室内に小気味良い音がこだました。
ちなみにこの便所サンダル、ビリー・カタギリが今現在まで履いていた脱ぎたてほやほやの生暖かさが最大の特徴であったりする。
「使い終わったなら返してくれるかな」
「あっ、悪い悪い。すいませんでしたねえ」
「くだらん話は後にしろ。とにかく大体の事情は把握した。それで、その肝心の企業の名は何という」
五飛が先を促すと、ビリーと刹那は顔を見合わせ頷いてから、異口同音にその名を発した。
「キ○ヤマ重工」
一瞬の空白。
そして場は荒れた。
「とうとう他所のネタ引っ張ってきちまった──────────っ!」
「いくらなんでもこっちの世界とあっちの世界に関係しないネタはやばいですって!」
「だが、これならグラハムとジョシュアがヘッドハントされた理由がわかる」
「ああ、中の人ネタか」
簡単に説明すると、現在絶賛放映中の某ロボットアニメおよび原作漫画のことである。
ちなみにそちらではグラハムが初期LV99というチート設定の無痛症パイロットだったり、ジョシュアが反則なまでのスーパー中学生だったりする。
「いいんですか、このネタやっちゃっていいんですか!?」
「私に訊かないで! と、とにかく、なるようになるしかないわ」
サリィが痛む頭を押さえながら、どうにか口を開いた。
「とりあえず、そのキリ○マ重工とやらを調べてみることにしましょ。
さあ、ここからは作戦会議よ、皆頭を切り替えて」
ビリーと刹那も引き続き出席して、これからの動き方について徹底的に話し合われたのだった。
(続……く?)
【あとがき】
12話のコーラさんのにやり笑いが格好良すぎてどうしましょう皆様ご機嫌麗しゅう。
反則ネタ出してすいません。極力この設定は引きずらないようにします。00およびWの設定を重視しますのでご容赦を。
それにしても宗美さん……原作では岩手編が一番好きなエピソードなんだけどなぁ。
それでは。