109◆NEO―GETTER―DESTINY_第05話2

Last-modified: 2007-12-02 (日) 17:43:32

第五話「後編」(改編版)



「“NISAR”の、“ジン=ハヤト”・・・・」

「はい、閣下。噂はかねがね・・・お会いできて光栄です。」

そう言って手をすっと前に出してくる。握手のようだ。

「あ・・・ああ・・・・」

とりあえず握手をしながら再び相手の様子を観察する。背は高い。長い特徴的な前髪をしており、

前にも言ったがかなりの美形だ。ただ、その目つきは蛇のように鋭く、それゆえにひどく酷薄そうな印象を受ける。

それだけでなく、何故かこちらを威圧するような空気をまとっているような気もする。

正直、カガリはこの男にあまりいい印象を得なかった。

「それで、確か代表閣下は私のゲッターが、どこかお気に召さぬようでしたが・・」

ハヤトは微笑―――それは、とても相手に嫌な印象与えるように計算された―――を浮かべながら慇懃(無礼)に言った。

「(この男・・・何か腹が立つな・・・)当然だっ!議長には前にも話したが、強すぎる力は争いを呼ぶ!

今度こそ我々は互いに手を取り合って進もうという時にこんなものを作るから、さきほどの「代表閣下は勘

違いをしていらっしゃる。」・・・何?」

「そもそもゲッターとは・・・・・」

カガリの言葉に途中で割り込んでくるハヤト。“勘違い”?ではあの赤いゲテモノはいったい何だいうのだ?

ハヤトがそれに何らかの回答をしようとしたその時だった。

<コンディションレッド発令!コンディションレッド発令!パイロットは各自の機体にて待機せよ!繰り返す・・・・>

「代表!失礼・・・話はまた後ほど・・・」

「・・・・あっ!」

「!・・・・自分も失礼いたします!」

突如鳴り出したアラート。それを聞くや否や、ハヤトは格納庫から飛び出す。それに続いて、

黒髪赤目で赤服の少年が、さらにレイ=ザ=バレルも後を追う。

肩すかしをくらったカガリはその場で呆然とするしかなかった。





「バート・・・・“オブジェクト”に動きは・・・・?」

「いえ、以前として本艦の進行方向に立ちふさがるようにして動いています。」

「・・・・いったい何者かしら・・・メイリン、通信はまだ繋がらないの?」

「それが・・・世界共通回線を含むありとあらゆる回線で呼びかけているんですけど・・・いっこうに応答が・・・・」

「そう・・・・バート、“オブジェクト”の正体・・・判別できたかしら?」

「本艦の熱紋ライブラリには、連合、ザフト、民間・・・その他いずれかにも該当するものはありません。

大きさから察するにMSだと思われますが・・・・」

「何なんだよ・・・いったい」

「それが解れば苦労しないわ・・・アーサー・・・」

そう言いながら心の中で溜息をつくタリア。

ただでさえ“ボギーワン”追撃でくそ忙しい時にまたわけのわからないアクシデントが起こる。

“厄介事は一気にやってくる”というのはどうも本当のことらしい。ことの起こりはつい五分ほど前である。

ミネルバの索敵範囲内に突如出現した謎の物体(恐らくMS)。最初は“ボギーワン”が時間稼ぎのために放ってきた

MSかと思ったがどうも様子がおかしい。

何をするでもなくミネルバの進行方向に立ちふさがるようにフヨフヨと動くだけで他には何もしてこない。

運悪く迷いこんで来た民間MSの可能性も考えられたが、だとすればいつまでたっても通信に応えないのは妙だ。

宇宙海賊のMSの可能性もあるが、だとすれば軍艦相手にこうどうどうとしているのは変だ。

全くもって意味不明な存在だ。それゆえに、便宜上“オブジェクト”と呼ぶほかはなかった。

「とにかく・・・本艦は“ボギーワン”追跡を最優先事項とします。“オブジェクト”はこの際できるだけ無視しなさい。

必要以上に本艦に接近するようなら威嚇射撃を。場合によっては撃墜してもかまいません」

「「「「「ハッ!」」」」」

タリアの命令にブリッジクルーたちの声が応えた。





暗闇の宇宙を無数のデブリが漂う。それは、MSの残骸であったり、朽ち果てた宇宙船のなれの果てであったりした。

“デブリベルト”。宇宙開発が始まって以来の宇宙ゴミや小惑星が集まる一帯。そんな宙域に一つの青緑色の影があった。

形は“一応”人型である。全高はおおよそ20メートル。青緑色の装甲で全身を覆われており、何故か猫背気味だ。

頭部は蜥蜴か蟷螂を思わせる鋭角的な形状をしており、赤いカメラアイが不気味に光っていた。

背部には羽根状のブースターが付いており、〓部には“尻尾”のようなものが付いていた。全体的な印象を簡単に表すならば、

爬虫類を無理やり擬人化して、さらにそれを機械化して背中に機械の羽をつけたといったところだろうか。

しかし、機械でありながらも、腕や足、間接といった部分は厭に有機体を感じさせるような雰囲気を醸し出していた。

このMS(なのだろうか?)の中、MSにおいてコックピットにあたる部分に二つの人影があった。

二人とも、ZAFT一般兵のものとよく似た緑のパイロットスーツを着ている。コックピットは前後の複座型で、

前の方に背の高い男が、後ろに低い男が乗っていた。ヘルメットで顔はよくうかがえないが、どうやら両方男のようだ。

「・・・・・ニオン隊長・・・・本当にいいんですか・・?」

二人のうち後部座席の背の低い方が背の高い方へ不安げな声で話しかけた。

「くどいぞ・・・デラ。・・・仕方なかろう。どのみちこのやり方ではあの艦を抑えるのに限界がある。

この“MZラド”の丁度いいテストにもなる・・・」

「し・・・・しかし・・・・」

背の高い方が後ろを振り向きながら、(恐らくヘルメットの内側で笑って)言った。

それでも、背の小さいほうの不安げな様子は変わらない。

「それにな・・・・確かめねばならんこともある」

「確かめねばならんこと・・?」

「ああ・・・・」

背の高い方―――ニオンと呼ばれた方―――が背の低い方―――デラというらしい――――に言った言葉にデラが聞き返すように言う。

「例の新型MS・・・・いや恐らくMSでは無いな。

この“MZシリーズ”と同様に・・・とにかく例の赤い変形ロボットの性能がいかほどのものかは確かめておかねばならぬだろう。

“アレ”に関する情報をこちらは一切つかんではいなかった。いずれ戦う相手の能力を把握しておかないのはマズイ。

せめて戦闘データぐらいは・・・・」

そういって彼はスロットルを全開にする。

「・・・・把握しておかんとなっ!」

そう言うや否や、彼らの乗る“MZラド”の背部にある翼型ブースターが一斉に火を噴く。

そして、凄まじいスピードで“MZラド”は一直線に飛び出して行った。

前方の白亜の戦艦へと向けて。





「!・・“オブジェクト”急速に本艦に接近!距離は・・コ、コイツ速い!」

「落ち着きなさいバート!“オブジェクト”との接触までの予想残り時間は!」

「は・・・はい!・・・おおよそ三分弱!」

「チェン!“オブジェクト”は敵性体の可能性があります。すぐに迎撃用意!対空砲火の準備を!」

「はっ!」

「メイリン!格納庫に通達。嫌な予感がするわ。ゲッターチームを出撃させて」

「はいっ!」

嫌な予感はあたるものだ、とタリアは胸の中で舌打ちする。急速接近をかけてきた“オブジェクト”。

正体は不明だが、恐らく碌な相手ではあるまい。下手をすると例の強奪部隊が時間稼ぎのために送り出してきた特攻兵かもしれない。

本当はこんな相手にかまっている場合ではないのだが、油断は禁物だ。

「本艦の射程圏内に入り次第威嚇射撃。それでも接近してくる場合は、かまいません迎撃ならびにゲッター出撃の援護を!」



「ククク・・・・見せてもらおうか。ZAFTの新型機動兵器の性能とやらを!」

ニオンはヘルメットの内側で獰猛な笑みを浮かべながら、前方の白亜の戦艦へと機体を走らせる。

そんな“MZラド”に向けて、白亜の戦艦、“ミネルバ”はビームの砲撃をこちらに加えてきた。

だが、ニオンはそれを無視し、さらに機体のスピードを上げる。射線から考えるに明らかに威嚇射撃だ。

むしろ重要なのは次だ。

「デラ!砲撃は俺が避ける。ミサイルはお前が撃ち落とせ!」

「了解!」







ニオンの予想通り、ミネルバがビーム砲撃、そしてそれに合わせてミサイルが、無数に押し寄せてくる。

ニオンは“MZラド”の機動性能と、何よりも彼のすぐれた操縦技術でそれらを避けていく。

そして避けきれなかったミサイルは、後部座席でガンナーを務めているデラが、背部に装着されている可動式ビームバルカンでミサイルを撃ち落としていく。

この“MZラド”は通常のMSよりも少し大きい程度だが、従来のMSとは違い、バッテリー駆動でも核分裂炉駆動でもない。

彼らの所属する組織が誇る天才、ガレリイ博士が開発した「ガレリイ式核融合炉」を搭載しているのだ。

CEの科学者達が夢にまで見た核融合炉であったが、予想されていた出力よりもかなり低い出力しか出なかった。

しかしそれでも、活動限界、出力ともにバッテリー駆動などとは段違いになっており、十分核分裂炉搭載MSに匹敵できるレベルだ。

この核融合炉と、やはりガレリイが開発した新型の人工筋肉組織が、従来のMSよりも遙かに力強く、なめらかで、有機的な動きを可能にしたのだ。

また、それ故に搭載可能な武装の幅も広がり、通常のMSよりも多くの武装を搭載可能になっていた。

「!・・ニオン隊長!」

「わかっている・・・・・奴だな」

ミネルバからの砲撃。その合間を縫って現れた三機の戦闘機。

それらは瞬く間に重なりあい、一匹の鬼となる。

「来い!貴様の力を見せてみろ!」

ニオンはヘルメットのバイザーの内側で獣のように獰猛な笑みを浮かべた。



「「「チェェェェェェンジゲッタァァァァァァァ、ワンッ!」」」

三人の叫びが木霊する。三機の戦闘機が結合する。手が出る、足が出る、翼が生える、角が生える。

一瞬の内に、そこに一匹の鬼が現れる。

「くそっ!何だっていうんだよ、コイツは!」

<知るか、それが解れば苦労はせん>

<MS・・・・・なのか・・・?>

<さあな。見た所構造的にはMSに近いが・・・・若干違うようだな>

シンの紅(アカ)い双眸がモニターに映る、ミネルバの攻撃を見事にいなす異形の機体に向けられる。

青緑色の奇妙な光沢を放つ赤い瞳の機体。

どこか、羽根の生えたトカゲを思い起こさせる。

<シン、聞こえるか?>

「は、はい!」

青緑色の蜥蜴もどきを睨みつけていたシンの耳に隼人の声が響く。

やはりどうもこの男に慣れきることは出来そうもない。

<敵は所属不明の未知の機体だ。出来れば捕獲したいが・・戦闘能力が未知数な上に、

なにより我々には他に優先事項がある。手間取るようなら撃墜してかまわん。レイもわかったな?>

<はっ!了解>

<よし・・・・シン行け・・・>

「行くって、ミネルバの艦砲射撃は・・・・」

<避けろ。それぐらいできなくてどうする>

「・・・・・・・・・へっ!いやでも・・・」

<シン・・・行け・・艦砲射撃を緩めれば敵に行動の自由を許す様なものだ>

「ちょ・・・レイ!お前何を・・・」

<つべこべ言ってないで行け。俺達には時間がない>

ハヤトのあんまりな指示にシンは反論しようとして・・・やめた。

この鉄面皮で鬼畜外道の輩に何言っても無駄なことは嫌というほど知っているからだ。

シンはため息を胸の中にしまいこむと、

「ゲッタァァァァァァァァトォマホォォォォォォクッ!」

肩からゲッタービームトマホークが飛び出る。

それを構えると蜥蜴もどきへと向けてシンは突撃した。



「隊長!奴が来ます!」

「!・・・ほう、艦砲射撃をものともせずにか・・・やるな」

バイザー下で舌なめずりをするニオン。敵はなかなかのやり手らしい。

「デラ!後続は!」

「今のところありません」

「奴単機か・・・・よし、来い!」

飛んできたビーム砲撃を避けながら、ニオンは腕に内蔵された大型ビームサーベルを起動する。

赤色のビームの刃が暗闇の中で閃いた。



「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

シンがゲッタービームトマホークを構えながら弾幕の中を潜り抜けて、蜥蜴もどきへと突撃する。

敵も此方へと向けて、器用にミネルバの攻撃を避けながら、

通常規格のものよりも遙かに大型のビームサーベルの光刃を閃かせて突進してくる。

「パワーがダンチなんだよっ!喰らええええええええええっ!」

シンは無造作に上段に構えたゲッタービームトマホークを振り下ろす。

現段階のCEの技術レベルにおいて、単純に出力でゲッターに匹敵できるのは核分裂炉搭載型MSか大型MAぐらいだ。

たとえ敵がビームサーベルでこちらの一撃を受け止めたとしてもそのまま押し切れる、“はず”、だった。

「っなあ!」

<受け止めただとっ!>

<やはりただのMSではないようだな・・・>





シン、レイの驚愕の声と、ハヤトの冷静な声が三つのコックピットの中で木霊する。

なんと目の前の蜥蜴もどきは、ゲッターの光の斧を、その光の剣で真っ向から受け止めたのだ。

しかも、そのまま拮抗している。この蜥蜴もどきはゲッターの同じだけの出力を持っているのだ。

<シン、うろたえるな!受け止められたからどうだと言うんだ。打ち返せ!>

「ハイッ!」

今まで受けてきた地獄のような訓練の賜物か、シンはハヤトの指示に素早くこたえると、

いったん刃を引き、それに合わせて蹴りを打ち込む。

敵はそれを素早く避けると、ビームサーベルでこちらの胸部を狙って突き出してくる。

それをビームトマホークで受け止め、そのまま刃をひねって敵の体勢を崩す。

そして、体勢の崩れた敵の胸部をトマホークの柄の先で突き飛ばし、続けてそれに追いすがりながら刃を振り下ろす。

だが、突き飛ばされた体勢から素早く姿勢制御し、翼のような形状のブースターに取り付けられたミサイルランチャーから、雨のようにミサイルを発射してくる。

すぐに反撃に転じた敵のパイロットも“さる者”だが、厳しいゲッターロボパイロットも訓練を潜り抜けてきたシンも、まだまだゲッター乗りとしては未熟とはいえ、それでもかなりの技量の持ち主だった。


ビームトマホークをまるで風車のように回転させて、ミサイルを次々と撃ち落とす。

そして、ミサイルに合わせて敵が撃ってきた腰部固定型の二連装ビームキャノンの攻撃も横に飛んで避ける。

敵の攻撃を避けた後、さらにもう一本のビームトマホークを取り出し、二本のトマホークを連結させると、





「トォマホォォォクブゥゥゥゥメランッッ!」

それを全力で敵に投げつけた。高速回転しながら迫る二連装型トマホークブーメラン。

まるで回転鋸のように飛来するそれを、蜥蜴もどきははじき返せないと思ったか上に飛んで避ける(厳密にいえば宇宙に上も下もないが)。

しかし、避けたところに新たなトマホークを構えて突撃するシン。

再び牽制にミサイルを放つ敵だが、

「そんな目くらましが食らうかぁぁぁぁぁぁっ!」

シンは最低限のミサイルだけ薙ぎ払いながら敵へと突進する。

一瞬たじろぐような様子を見せた蜥蜴もどきだが、すぐに体勢を戻して、

ビームサーベルを展開する。

そして、ギリギリのタイミングであったが、トマホークを受け止めていた。

「クソッ!」

機体の性能も凄いが、何より敵のパイロットの技量にシンは舌を巻いた。



「くうっ!恐るべき性能っ!とても軟弱者のデュランダルが作らせた物とは思えん!」

ゲッターと互角の戦闘を繰り広げていたニオンだが、内心、ゲッターの戦闘能力に寒気を覚えていた。

闘って解るが、このパイロットは才能はあるようだがまだ未熟で荒削りだ。

そうでありながらこの戦闘能力・・・・。末恐ろしいとしか言う他無い。

出力と、それに伴うマシンのパワーならびに直線的速度は比べ物にならない。

ただ、新機構の人工筋肉のおかげもあって、機動性に関してはこちらの方が上のようだ。

この機動性と、何よりもニオン自身の技量をもって、“MZラド”はゲッターと互角の戦闘を繰り広げているのだった。

(ふふ・・・こういう所は自分の生まれにも感謝だな・・・)

ヘルメットの内側でニオンは皮肉気に笑う。

ニオンはとある事情で、皮膚と頭髪に先天的異常を抱えている反面、コーディネーターとしてもずば抜けた動体視力と反射神経を持っていた。

この生まれ持って“才能”がニオンをすぐれた戦士たらしめている要因の一つでもあった。

「しかし、このままでは埒が・・・あかん・・・・なっ!」

赤い鬼の振るう光の斧の猛攻をビームサーベルで受け止め、切りはらい、ときに身をそらして牽制のビームやミサイルを放つ。敵はそれを受け止め、受け流し、切りはらう。さきほどからこのパターンの繰り返しであった。


「デラ!“テールユニット”起動!“赤いヤツ”に目にもの見せてやれ!」

「了解!」

MZラドの背中についた尻尾のような部分が突如外れる。

尻尾と本体は極細のワイヤーでつなげられており、さらに尻尾は三つに分かれ、尻尾の根元だった部分を起点にさらに三つに分かれた。

カオスと同じく、連合のガンバレルを参考にした遠隔兵器だ。

MZラドの場合、パイロットとガンナーが分かれているために、“空間認識能力”はパイロットに必要ないのだ。



「“ガンバレル”!?」

正面の蜥蜴もどきから伸びる三筋の軌跡。

ついさきほどやり合ったばかりの紫色のMAと同じタイプの攻撃である。しかも・・・

「くそっ!ただでさえやりずらい相手だってのに・・・・」

相手は脆弱なMAではなくMS。しかもこのゲッターと互角の戦闘を繰り広げていた相手である。

これ以上手数が増えるのは厄介なことこの上無い。三基のガンバレルがゲッター1を囲い込む。

「くっ、囲まれた!」

<シン!オープンゲットして回避しろ!そして俺に代われ。ゲッター2のスピードで蜥蜴もどきに片を付けてやる!>

「はいっ!・・・行きます!オォォォォプゥンゲットォォォォォ!!」

赤い鬼が瞬時に三つの戦闘機に変化する。

三方向バラバラに飛び去った三つの戦闘機がつい先ほどまであった空間を三筋の光線が通り抜ける。

三方向からの同時攻撃を三機に分離するという奇天烈な方法で避けられて一瞬面食らうMZラド。

その一瞬の内に、三機の戦闘機はMZラドの背後に回り込み、そして・・・

「「「チェェェェェェェェンジゲッタァァァァァァァ、トゥッ!」」」

白い巨人がMZラドの背後に出現する。振りむこうとしたMZラドの頭部を三本爪のアームが鷲掴みにし、

<死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!>

蜥蜴もどきの胸部にドリルを突き立てる。フェイズシフト装甲のおかげで貫通こそしないものの、その体はまるでミキサーのようにシェイクされる。

<うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!>

表目の装甲にこそ傷一つ見当たらないものの、どうやら内部機構にはダメージをくらっているらしく、間接部分などが火花を上げる。ガンバレルを使ってうまく場を切り抜けようとしているようだが、コックピットが凄まじい振動で揺さぶられている影響か攻撃はあらぬところを通り抜けるだけだ。


<とどめだぁぁぁっっっ!!>



敵の動きが見るからに悪くなった所で、ハヤトは右手で蜥蜴もどきを放り投げる。

MZラドはまるで木偶人形のように宙空に放り出される。そこへと向けて、ハヤトがゲッター2の額部分にあるビーム発射口からビームを打ち出す。

ピンク色の細い光が宇宙空間を引き裂いて飛んでいく。ビームは確実にMZラドを貫く軌道を取っていた。

しかし、

「なっ!」

<くっ!>

<ガンバレルで受け止めただとっ!>

ビームの射線上に突如割り込んでくる二基のガンバレルの端末。それらがビームの侵攻を食い止める。

「アイツ、ドリルの攻撃をあんだけくらっていてまだ動けるのかよっ!!」

<フン・・・・機体もだが、それに乗っているパイロットもなかなか頑丈なようだな・・・だが!!>

敵がミサイルの弾幕を張ってくる。それを、ゲッター2特有の超スピードと、ハヤトの操縦テクニックでことごとく避けていく。

<頑丈なだけでゲッターに・・・>

<隊長、上ですっ!!>

突然、レイの叫びが木霊する。レイの言葉にハヤトは反射的に反応し、とっさにゲッターに身をひねらせる。

つい一瞬前までゲッター2がいた空間を一筋のビームが切り裂く。

<くぅっ!!>

<次は真下からミサイルが来ます!!>

レイの言葉につられてシンもモニターを見る。いつの間にか数発のミサイルが、機体下方より迫ってきている。

ガンバレルの攻撃に合わせて打ち込んできていたようだ。

<小賢しい。ドリルハリケェェェェェェェェェン!!>

ハヤトの裂帛とともに、機体下方に向けたドリルが超高速で回転し、宇宙空間の粒子の流れを乱す。それは大きな竜巻となって、ミサイルに襲い掛かり、機動を狂わされたミサイルは互いにぶつかり合って爆散した。危機は回避した。


しかし、ミサイルを破壊するまでの時間は、MZラドにコチラの隙を提供することになった。

MZラドはこの隙に攻撃を・・・掛けてこなかった。

<なっ!!>「ウソだろ!!」<ちぃっ!!>

敵はこちらには攻撃を仕掛けてこずに・・・ミネルバへと向かって凄まじいスピードで襲いかかって行った。





「“オブジェクト”、本艦に急速接近!!」

「CIWS起動、“ディスパール”装填っ!敵の接近を許すな!」

バートの声と、タリアの号令がブリッジに響き渡る。モニターに映る、

まるで蜥蜴のような外見をした謎のMS(?)の動きを見て、つい数分ほど前に、議長、カガリとともにブリッジに入ってきていたアスランは冷や汗を浮かべていた。

モニターに映る蜥蜴もどきの性能は、はたから見ていても理解できるほどに高いものだった。

特にスピードに関して言えばあの“ジャスティス”にも勝るとも劣らない。

あの“ゲッター”とやらと互角に切り結んでいる所から推察するに、パワーも並のMSとは段違いのようである。

(いったいどこの所属だ・・・・・連合か・・・いや、あのMSの機構はどちらかと言えばZAFT系列の機体に近いが・・・・・・)

かつてZAFT赤服のトップガンと呼ばれ、電子工学に深い造形を持つアスラン=ザラの目から見て、目の前のミニターに映る蜥蜴もどきはとても奇異なものに見えていた。


動きがいように滑らかであり、動きが速く詳細には観察できないが、間接部分の構造が、通常のMSと明らかに違っていた。連合の新型?例の襲撃犯の仲間なのだろうか?


「・・・・マズイ!」

蜥蜴もどきは、こちらのCIWSの弾幕に対して無数のミサイルを放ってくる。

当然それは蜥蜴もどきとミネルバの間の何もない宙外で爆発四散する。

その時上がる凄まじい閃光の群れ。それは一瞬ミネルバ側の視界をふさぐ。

その一瞬の間に、敵はこちらの対空砲火を潜り抜けて、ミネルバの背部下方へ到達していた。

「い、いかん!!」

アーサーの狼狽した声がブリッジに響く。そして、



ドワヲォォォォォォォォォォォォッ!!!!



「左舷エンジン被弾っ!!」

爆音と共にブリッジが、いやミネルバの船体が大きく揺さぶられ、メイリンの悲鳴が木霊する。蜥蜴もどきは腰部の二連装ビームキャノンを放ったのだ。

緑色の閃光は、ミネルバの左舷エンジンを貫く。

蜥蜴もどきは、MZラドはさらに追い打ちをかけようとするが、

<トカゲ風情が、調子に乗るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!>

MZラドに文字通り目にもとまらぬ速さで突っ込んできた白い影がある。

ハヤトのゲッター2だ。

高速回転するドリルがMZラドにぶつかり、まるでブリキの玩具の様にMZラドは吹き飛ばされた。



<!逃げる気かっ!!>

吹き飛ばされた衝撃から立ち直り、そのまま、デブリベルトの中へと飛び込もうとする蜥蜴モドキを見てハヤトが叫ぶ。

「隊長、自分に任せてください」

<レイ?>

<できるのか?>

シンの戸惑いがちの声に、ハヤトの冷静な問い。

それに応えて、レイ=ザ=バレルは力強く言う。

「やれます」

<良し!シン、ゲッター3にチェンジだ。合わせろ!>

<は、はい>

「良し、行くぞ・・・

<<「オォォォォォォォォォォップゥンゲットォォォォォッ!!!」>>

ゲッター2は瞬く間に三機の戦闘機に分離し、猛スピードで蜥蜴モドキに追いすがる。

ゲットマシン状態では、スピードにおいてはあちらの方が上だ。

故に、回り込むことはできないため、背後に接近できる位置ギリギリの場所で、ゲッター3にチェンジした。

<<「チェェェェェェェンジ、ゲッタァァァァァァァスリィィィィィィッ!!!」>>








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