Ace-Seed_626氏_第04話

Last-modified: 2013-12-25 (水) 20:39:07

――プラント・議長室

「ありがとう、これでジブリールの野望を止められるよ。これも君のおかげだ。」
「いえ、プラントのためならば当然のことです。」

そう言い合う二人、片方は黒い長髪の男プラント評議会議長、ギルバート・デュランダル
もう一人はザフト諜報部、ロレンズ・リーデル―――行方不明になったはずのゴルト隊の7番機
彼だけはゴルト隊が行方不明になった日に"たまたま"兼任していたこちら側の任務で外れていたためこうしている

そのロレンズに渡されたディスクをパソコンに入れデータを確認していた
議長自身が用意した"歌姫の影武者"の正体が暴露された事は少し前だがかげりはまったくない
つい先日のオーブ攻防戦にて寸でのところでロゴスの頭・ジブリールを逃がしてしまったため
その逃亡先"ダイダロス"の詳細を調べた報告をしていたところだった

「ふむ、大変興味深い報告だった。ジュール隊を監視に向かわせよう。」
そういってロレンズを追い払った。去っていくのを見送り呟く
「――あと少しだ…あと少しでプランが実行される」
それは何かに憑かれている笑みだった。

一方、ロレンズは廊下を歩くその途中、憤っていた
『あのデータを見れば即、先制攻撃を打つべきと考えるだろうが…やはり』
「…やはり"隊長"の言ったとおりか…例のことを含めて報告するべきだな…」
考えていたことをいつの間にか呟いていた

――ユーラシア連邦所属ヴァレー基地

オーブでの攻防戦は終わり、プラント・カーペンタリア基地から空に上がり、
ガルム隊、クロウ隊の面々はヴァレー基地に戻ってきた。
世間ではオーブの代表が演説を行い。その最中にプラントとオーブのラクス・クラインが乱入するという珍事があった。
基地の面々は本物はアドリブが出来ているオーブのほうだろうが、ただ根拠のない疑問を述べただけ…。
そんな認識が大半で関わりなし、世界の指導者はプラントの議長だろうというスタンスは変わらずだった。

一方で俺はコトの裏をおぼろげながら理解しているので腹を立てているのみだった。
オーブにはマルキオのヤツが住んでいたはずだ。
今頃、"シードを持つ者"とやらがヤツの望んだように救世主として国の頭を取った、
そう悦んでいるのだろうと思うと…胸糞悪い。――そのために何人を駒とした?
感情を表に出さないようにしつつ、相部屋となっている自室に戻る。

「――?何をやってるんだ」
その演説に対し、まったく興味を示さず、自室で別のことをしている同室の相棒、ガルム1番機のパイロット…
コンピューターに映し出されるのは現在使っている機体ハイペリオンの設計図
よく見るとところどころ変更点があるようだ。

「ピクシー…か?ああ、先の戦闘で機体に不満を感じたからな。改修案を練っているところ…。
 報酬を使って作ってみようかとな。これでもカレッジでは機械工学をだったからな。…どうだ?」
「…『どうだ?』そういわれてもな…。俺は乗るだけでそっちは門外漢だ。使いやすそうだということは分かる。」

パイロットとしての経験で答え、ベットにもぐりこもうとしたところで

「…ピクシー、例の"騎士団"にいたそうだが、あそこで戦ったフリーダムのパイロット、わかるか?」

いやなことを聞いてくる…この業界では有名なのだが知らないのか?
「…キラ・ヤマトってやつだ。」

そう言うと少し黙り込み

「アイツが…皮肉か…」
と苦笑を浮かべ呟き作業に戻った。…どうしたものか。
気になるがタブーであるし、何より調べる時間などもうないだろう。次の作戦まで休むことにしよう。

――L4メンデル はずれの宙域

男は目の前に表示されているデータを見ている。
内容は最近ロールアウトされた"デスティニー"とそのパイロット――『Sin Asuka』のデータであった。
データにはパイロットが"特定条件"を満たすと機体の性能が数割り増しで開放される設定がなされているとあった。

それを見ている男、行方不明になったはずのゴルト隊隊長。
彼はユーラシア連邦時代に大西洋連邦をはじめ、各国軍隊のエースと親交を持ち。
後年、プラント・ザフトアカデミー教官をしつつ、兵器開発に携わり、先の大戦では新型機の補給部隊と動いていた。
そのためザフト、技術開発部、はては地球連合軍のものからも信頼は厚く、並みの政治家よりはるかに広く深い人脈をもっていた。

ラクス・クラインのカリスマだけでは政治的にはともかく。
軍備の維持は半ば隠居しているバルトフェルト、まだ若いダコスタの両名だけおこなうは到底無理であり。
とうに廃れていてもおかしくないものだったが、その組織がこうして持っているのは影にこの男、
アントン・カプチェンコがいたからだ。――カリスマだけでは組織も人もついてはこない。

結果クライン派は、ラクス信者、日和見者、カプチェンコ派と2:1:2と分かれていた。
これは"クライン派"コーディネーターのみで、ナチュラルを入れた"国境なき世界"ならばこのバランスは崩れるものだ。
さらに付け加えるならラクス・クラインの軍隊のみならず、ザフト全体を見れば彼のシンパはザフトの4割近くはあった

そんな彼が今まで組織の維持に手を貸してきたのは、プラント及びラクス・クラインへの疑問からだ。
先の大戦の根本的な理由である。"特別なもの"だから好き勝手が許される。そのゆがみに気付けたのかと…。

故に、それへの危惧から横流しをしつつ情報をかき集め、先のノートとこのデータ…いや、マルキオの思想を入れて三つ。
ノートの内容などとうに知っていた。エセ導師の思想も…。そしてプランのために戦争を引き起こしたデュランダル。
――二つまでならただの推測。動きはしなかった。だが、この三つで…これらで確信した。世界は変わっていないと…。
…だから動く決意をした。彼は開戦直後の核攻撃で戦死を装い、ここに身を隠した。
さいわいファントム・ペインに知り合いである"ウィザード隊"がいたため容易な事だった。

…コンコン
ノックと共にその音に似合わない機械的な開閉音で1人、部屋に入ってきた

「またあのデータか?熱心だな…カプチェンコ」

そういって入ってきたのはナチュラル側の"国境なき世界"の頭。ウィザード隊1番機:ジョシュア・ブリストー
ロゴスを『世界の敵』と位置づけたあの演説の直前にファントム・ペインを抜け行方をくらまし、
偽装ルートをいくつも通った末に、先日やっと着いたところであった。――当然MSは持ってきてなどいない。

「…君たちに渡すMSのことだろう?一区切りついたところだ。格納庫へ行くか。」
そういって二人は部屋を出て行った

――格納庫

「ZGMF-A23S・セイバー改、α型、β型。詳しくはそこの彼に聞いてくれ。」

そういって紹介されたコートニー・ヒエムロスは端的に

「基本はザフト・ミネルバにあったセイバーと同じになっている。
 君たちのリクエストどおり、α型は敵のコンピューターにウイルスを送り込み、そのモニター・レーダーに虚像を映す。
 β型はミラージュコロイドデテクターに反応しない程度のコロイドを纏いレーダーなどに映りにくくなっている。」

その説明が言い終わったのを確認し。

「リクエストどおりのものができたと思うがどうかな?"魔術師"」
「あんたの部隊にも勝てそうだな"啄木鳥"。…いや、無理か…あんたには昔から勝てなかった。」

ナチュラル最強を誇っているウィザード隊、彼らは大抵の部隊には勝てたがゴルト隊のみに勝てないでいた。
カプチェンコがユーラシアにいるときに戦闘機で行った合同演習。
先の大戦では分隊した"ソーサラー"とともに、MSに乗り挑んだがいなされるばかりだった。

もっともゴルト隊は、自らの部隊の倍~三倍の数を相手に正攻法のMS戦を行うのが強いのに対し
ウィザード隊は戦艦を含めた大隊を相手にして、それを混乱させることで生まれる乱戦を生き残る部隊であり。質が違う。

ブリストーは何か思い出したように
「そういえばアレの攻撃が始まってもおかしくないな…微調整をかねてヤツを迎えに出掛けることにする。」
そういって機体を小型艇に積み込み出て宇宙に出て行った。

分隊の"ソーサラー"そして、あの"片羽"が来る。数で攻めてくる以外に"国境なき世界"に敵はないだろう。
彼らの準備は着々と進んでいる……

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