話は少しさかのぼる
ザフトのヘリオポリス襲撃に伴いⅩ105ストライクに搭乗したキラ・ヤマトは
推進部の壊れた救命ポッドを抱えてアークエンジェルに戻ってきていた
この時、このままストライクに搭乗し戦い続けることになろうとは夢にも思っていなかった
抱えている救命ポッドについて一悶着あった後、二番MSデッキに着艦すると
そこには自らが乗り込むストライクとよく似た大型の機体が横たわっていた
「オゥ、よく無事で帰ってきたな、いいパイロットになれるぞ」
「えっと」
「マードックだ、コジロー・マードック、整備をやってるよろしくな」
「よ、よろしくお願いします」
「そう硬くなるなよ、みんなお前のやったことを正しいと…、開いたか?」
会話を交わしているうちに救命ポッドのハッチが開けられて中にいた人物が運び出されていた長い赤い髪の少女だ
「フ、フレイ!」
「おや、知り合いか?」
返事もせず慌ててフレイの元に駆け出したキラを笑って見送った
「若いねえ」
さほど多くも無い整備士たちを掻き分けるようにして駆け寄る
すでに担架に乗せられていて簡単な診察を受けているようだ
「すみません!あの…その…」
「知り合いかい?気を失っちゃ居るけど命に別状は無いよ、とりあえず医務室にいくけど一緒に…」
デッキ内にマリューの通りの良い声が響いた
「キラ君、いないの?ちょっといいかしら?」
「…行くのは後回しみたいだな、用が済んだら後でゆっくり見舞いに来るといいよ」
気の毒そうにそう言うと衛生兵らしき若い男は相方とともにフレイを運んでいく
「少し見てもらいたい物があるのよ」
「これは…」
マリューの後からMS中を覗き込んでキラは絶句した
球形のコクピットブロックの内部がほぼそのままのMSデッキを写している
GAT-Xシリーズ(といってもキラが知っているのはストライクだけだったが)が
乗用車の視界を狭めたような代物ならこちらはそこら航空機よりはるかに優れている
「驚いた?全周囲モニターとでも呼べばいいのかしら」
「凄い、連合の技術がここまで進んでたなんて!」
「そう言う訳じゃないの、そうだったら良かったんだけど…」