CCA-Seed_373 ◆lnWmmDoCR.氏_第20話

Last-modified: 2008-06-17 (火) 23:28:14

翌日の朝、アムロはMSデッキにいた。昨日の戦闘で出た被害はかなり大きい。
ザクウォーリア大破、ザクファントム中破、セイバー中破。かろうじて動けるのはインパルスとプロトセイバーだけだ。
しかも度重なる戦闘で二機ともほぼノーメンテの状態に近かった。アムロは昨日から夜通し作業しているメカニックたちを少しでも負担が軽くなるよう作業を手伝うこととした。プロトセイバーの各関節にオイルを注入したり、ベアリングを交換したりとこういう作業はお手の物だった。片足の作業を終え逆がわに回ろうとするとアムロはかなり真剣な表情で悩んでいるヨウランに気付き話し掛けた。

 

「ヨウラン、お疲れさん。どうしたんだ?かなり悩んでいるようだが。」
「あ、アムロ隊長、お疲れ様です。いや、セイバーの頭部なんですけど…」

 

二人はセイバーを見上げると見事に頭がなくなっている。

 

「これ、どうするかと思いまして…」
「パーツが無いのか?」
「いえ、あるにはあるんです。プロトセイバーの分もありますし…ただ部品が全てバラで来てるんですよ。組み立ててたらジブラルタルに先に着いちゃうくらい時間がかかりますよ…ああ、完成品の頭部があればいいのに…」

 

真剣に悩むヨウラン。どうにかしてあげたいのは山々だがこればっかりはどうにもならない。ふとアムロの目に大破したザクウォーリアが入る。はっとすると

 

「ヨウラン、いい方法がある。」

 

と指差した。

 
 

それからしばらくして艦の状況を見て回っていたアスランがデッキに来た。
やはりMSの状況が気になるのか、デッキを見て回る。
ふとルナマリア用のザクを見ると頭部が無いのに気付いた。

 

(ん?ルナマリアのザクって胸部にミサイルを受けたんじゃなかったか?)

 

そう思うとあたりをぐるっと見回す。

 

(ザクファントム…プロトセイバー、セイバー…インパルスは専用のカタパルトだからここには無いとして…)

 

ギョッとして自分の機体であるセイバーを見るとそこにはザクの頭を乗っけたセイバーがあるではないか。
アスランは走って近寄ると作業中のヨウランにつめかかる。

 

「なんだこれは!何故ザクの頭が乗っている!」
「えっと…それは…ちょっとまってください!隊長~!すいませ~ん!」

 

と言うとコックピットからアムロが顔を出す。

 

「どうしたヨウラン。」
「隊長、アスランさんが…」
「おはよう、アスラン。ちょっと待っててくれ。すぐ降りる。」

 

と言うとコックピットを降りてきた。アスランは興奮気味にアムロに聞いた。

 

「これはどういうことなんです!何故ザクの頭が!」
「しょうがないじゃないか。部品を組み上げている途中に敵が来るかも知れないし。大体君の機体だろう。
君がフリーダムにやられたからこうなったんだぞ。」
「うっ…それはそうですが…しかし!」
「まあ言わんとすることは分かる。しかし見てみろ。かっこいいじゃないか。」

 

いつのまにか近くにいたヴィーノとヨウランはアムロの後ろでうんうん頷いている。アスランははらわたが煮え繰り返る思いをしている。どう見てもかっこ悪い。この人の美的センスはどうなってるんだと正直疑う。しかし後ろの二人もかっこいいと言っている。

 
 

アスランは

 

(もしかすると美的センスが無いのは俺?そういえば歌も駄目だし…芸術方面に関して俺はかなり弱いのか?)

 

と考えている。アムロはアスランが何を考えているかなんとなく分かった。それをフォローするようにさらにアムロが続ける。

 

「どうだ?アスラン。かっこいいじゃないか。うらやましくなるよ。俺もこんなにして出撃してみたいよ。」
「本当にそう思いますか…?」
「あたりまえじゃないか!これを見たら敵も士気を落とすくらいかっこいいぞ。」
「そうですか…良かった。ならプロトセイバーの頭部と交換してください!」

 

そうアスランが懇願するがアムロは冷たく

 

「だめだ。」

 

と言うとヨウランが

 

「そうですよ。だめです。」

 

と言った。アスランは落ち込みながらデッキから去っていった。ヨウランはお構いなしにアムロに聞く。

 

「そういえばこの機体の名前どうしましょう。ザク頭?ザクヘッドとか…」
「そうだな…”ザクセイバー”がいいだろう。」

 

アムロの鶴の一声でセイバーはザクセイバーと呼ばれることとなった。
しかし変形の際頭がつっかっかることが判明。メカニックがフル回転で頭部を組み立て無事セイバーの本来の頭部と
なった。