CCA-Seed_373 ◆lnWmmDoCR.氏_第21話

Last-modified: 2008-06-17 (火) 23:30:59

シンは朝から医務室でステラに着きっきりだった。相変わらずステラは苦しそうに呼吸をしている。
意識が朦朧とする中たまに”ネオ”とうわごとのように言う。シンはステラが何か言うたびに呼びかけていた。

 

「ステラ!大丈夫?ステラ!」

 

ステラは横のテーブルに置いてある貝殻が入った空き瓶を見るとそれに手を伸ばそうとするがその手ももう伸ばすだけの力が入っていない。
シンは空き瓶を取ってステラの手に渡すがそれを保持することも出来ずに落としてしまった。悲しそうな表情をするステラにシンは空き瓶を一緒に持ってやるようにまた渡して

 

「ステラ…覚えてる?これ海で貰った奴。ステラがきれいだからってくれた奴だよ…」

 

ステラは苦しそうにせきをしながらシンに訴える。

 

「ここ…怖い…ここ…ステラ…駄目…死ぬのはいや…死ぬのはいや…助けて…」

 

といいながら空き瓶を持った手では無い方の手をシンに伸ばす。その行為がシンに助けを求めているのは誰の目にも容易に分かる。
シンは手を取ると

 

「ステラ…大丈夫…俺が、俺がステラを守るから…約束は必ず守るから…」

 

とステラに言う。ステラは少しだけ笑顔を見せるとまた意識を失った。
シンは自分がここにステラを連れてきたからステラが苦しんでいると思い始めていた。そしてあることをこのとき決意する。
その夜シンは自室を抜け出すと医務室へと向かう。ちょうど看護士一人だ。シンは部屋に入ると

 

「すいません。少し寝付けなくて…何か睡眠薬みたいなのってあります?」

 

と聞いた。看護士は薬品の置いてある棚に向かうとシンに対し背中をむけ薬を探す。
シンは看護士の背後に立つと声をかけ振り向かせるとみぞおちを殴り気絶させた。

 

「ステラ、ステラ!起きて。君をおうちに帰してあげる。だから起きて。」

 

と言うとステラは少しまぶたを開け

 

「シン…?」

 

とつぶやく。シンはステラの拘束具をはずすとステラを抱きかかえ医務室を出ようとした。

 
 

ちょうど医務室の自動ドアが開いたとき
目の前にはレイが立っている。レイはさほど驚きもしないまま

 

「何をしている?そいつを逃がすのか?」

 

と聞いた。シンはそれに対し

 

「このままだとこの娘死んじゃうんだ。だから…ごめん、レイ、見逃してくれ。」

 

と言うとレイの横を横切ろうとした。そのときレイからは信じられない言葉がかけられた。

 

「そうか…なら俺が監視の目をそらしハッチを開けてやる。どんな形の命にしろ生き長らえられるなら生き長らえた方が良いに決まっている。」

 

シンはその言葉に涙が出そうになるのを我慢してステラを抱え例と共にデッキへと走る。だがもう少しでエレベーターと言うところで

 

「シン!」

 

と声がかかる。声の主はアムロだった。

 

「何をしている。まあその状況を見るとだいたい何をしようとしているかは想像付くがな…馬鹿なマネはよせ…と言っても君は行くんだろうな。」
「はい。このままステラを見殺しにするわけにはいきません。場合によってはあなたを気絶させてでも…」

 

と言うとアムロはため息をしてから

 

「そうか…そこまで考えているとはな。帰ってきたら2,3発の修正どころじゃすまないぞ。覚悟しておけ。」

 

と言うと”行け”とゼスチャーした。シンとレイはお辞儀すると走り去っていく。インパルスで強引に発進したシンに対しアムロとアスランにシンの探索命令が下った。
しかしアムロはその辺を”探すふり”をするとしばらくの後行き先がわからないためこれ以上の探索は無意味と言う理由で帰投した。
その後一時間ほど他経っただろうか、シンがインパルスで帰投した。

 
 

すでに警備兵に危害を加え強引にハッチを開けたレイは拘束されている。シンは両手を広げながらコックピットから降りてきた。
銃を突きつけながら警備兵は叫ぶ。

 

「シン・アスカ!軍法第三条G項他の違反により君を逮捕する!」

 

降りてきた無抵抗のシンに手錠をかけるとシンは営倉へと連行された。となりの営倉にはレイがいる。レイに何を言えばいいか考えていたときアムロが営倉を一人で訪れた。シンはアムロにまず頭を下げ謝った。

 

「隊長、このたびは多大なご迷惑をかけ申し訳ありませんでした!」

 

一緒にレイも

 

「申し訳ありませんでした。」

 

と言う。アムロは周りを見渡すと

 

「過ぎたことはいい。それより良く無事に帰ってきた。あの娘はちゃんと返したのか?」
「はい。相手の人も一人で来てくれましたし…約束してくれましたから。もうステラを戦争に使わないって。」

 

うれしそうに話すシン。アムロはその相手の言葉が間違いなく嘘になるだろうと言うことを経験上知っていた。しかし今のシンにはそのことを言っても全く意味をなさないだろう。アムロは

 

「良かったな。」

 

と言うと営倉を去っていった。
その後シンは艦長からも事情聴取を受け、評議会に報告書を送られた。数日後評議会の返答が来る。
シンは最悪銃殺かな。と考えもしていたが驚くことに処分なしとなった。
アムロとタリア、アーサーは艦長室でその処分なしの理由を報告書で知る。タリアが思わず声をあげた。

 

「何なのこの内容は!”束中のエクステンデッドが逃亡の末死亡したことは遺憾であるが、貴艦のこれまでの功績と現在の戦況を鑑み本件については不問に付す”?
冗談じゃないわ!報告書に何か改ざんがなされているわね…こんな事をするのはあの人しかいないわ。何を考えてるの一体!?」

 

報告書を叩きつけながら椅子へと腰を落とす。しかし評議会の決定に意義を唱えるわけにもいかず、シンとレイは営倉から出された。
二人はアムロから数日遅れの修正を食らうこととなったが逆にそれがシンとレイへの妬みなどを避ける作用をすることとなった。
シンはステラの無事を祈り、再会を願った。シンのその願いはすぐ叶えられる。最悪の状況で…