CCA-Seed_373 ◆lnWmmDoCR.氏_第27話

Last-modified: 2008-06-18 (水) 00:01:02

アムロと主任はとなりのハンガーへと向かう。そこは先ほどと同じように暗闇に包まれていた。
主任が何も言わずに電気をつけると目前にνガンダムがそびえ立っている。主任はあえて何も説明せずにコックピットに乗るよう促した。
気にはしながらも言われるがままに機体へと向かう。νガンダムのハッチを開けようとしたが、その前にハッチの装甲をなでる。何か考えてそうした訳ではない。無意識にそのような行動をとっていた。νガンダムは何も言わずにたたずむ。その外見は綺麗に直っているように見えた。
アムロはハッチを開け、コックピットへと乗り込み、OSを立ち上げると携帯火器の確認を行った。

 

「ビームライフル…状態良好…ハイパーバズーカ装弾数FULL、シールド破損無し。ビームキャノン待機中、状態異常なし…マイクロミサイル安全装置ロック中…背部ビームサーベル…スタンバイ、同じく腕部サーベルスタンバイ中…良くここまで復元できたな…後は…」

 

アムロはファンネルのチェックへと作業を進める。

 

「!?ファンネルラック?フィンファンネルのエネルギー充填だと?」

 

ちょうどその時、コックピットへと通信が入る。

 

「どうです?大尉。良く仕上がっているでしょう?」
「すごいな…ファンネルが復元できたのか?それにエネルギー充填など…」

 

主任はあらかじめ質問がわかっていたかのように淡々と答え始めた。

 

「ええ。復元、と言うよりは模造、ですが。順を追って説明しますね。お預かりして修理作業を進めるうちにこの機体の装甲、及び火器をどうするか、と言う問題に当たりました。
この機体に使われている装甲材はもう未知の材料でした。こちらの世界のどんな材料よりも硬くて軽い、もうお手上げだったんですがね、戦闘データから殆ど大尉は被弾していないと言う結果が出ていましたので、当たらなければ、と言うことで発泡金属を使用しました。
携帯火器は基本的にビームライフルや、サーベル、バズーカなどはこちらの技術でも復元は難しくありませんでした。むしろ機体に合わせて大型化することができ、出力も上げることができましたし、バズーカの特殊弾も数種作ることも出来ました。しかし…」

 

主任は更に続ける。

 

「そうしている内に機体のデータベースに残っている装備で一番の問題が出て来ました。それはデータを解析していくうちにドラグーンと同じような無線誘導式の攻撃端末だと言うことが分かりました。しかもドラグーンと同じく機体から発される通信を受信することにより端末が操作される、と言うことも。そこで、攻撃端末はドラグーンで代用し、機体から発される無線を量子通信に変更することで何とかすることが出来ました。そして攻撃端末は姿勢制御用のスラスターを配置の上、使用時に折れ曲がった際に筒状の磁場を形成するようにし、そこをビームを通すことで砲身の代わりとして使用。更に使い捨てではなく再使用できるようにラックを付けさせて貰い、バランス面からバックパックの両側に三枚づつ格納されるようにしています。」

 

「…要は通信方法を変えた、と言うことと、ビームの発生方法を変えた、と言うことか。ほんとに使えるのか。」
「…試して見ますか?」

 

自身ありげにそう言うと主任はクレーンでファンネルを一枚だけはずし、板状にしたまま少しはなれた所へと運んだ。

 

「では、動作確認どうぞ!」

 

その言葉を聞くとアムロはファンネルがコの字型に変形するようにイメージする。バクン!と言う音と共にファンネルは変形した。アムロは無意識に驚きの声を上げていた。数回に渡ってアムロは動作を確認しその動作が全く異常が無く行われることを確認するとファンネルをラックへと取り付けた。
アムロはコックピットから出ると改めてνガンダムの姿を見上げた。その姿はかつてアムロがνガンダムの完成形として思い描いていた姿に似通っている。まさか異世界で自分が設計したMSが完成に近づくとは思ってもいなかった。アムロは主任に近づくと

 

「いい仕事をしてくれた。礼を言うよ。ありがとう。」

 

主任の目が少し潤む。その言葉はメカニックにとってこれ以上無い感謝の言葉だった。
アムロはその後、主任から細かな説明を受けると握手を交わし、機体へと乗り込んだ。

 

(また頼むぞ…)

 

そう頭の中で言うとνガンダムのメインスイッチを入れ、操作を確認しながら機体をハンガーから出す。ハンガーの出口近くで主任が手を振っているのに気付き、シールドを振り上げることで返事をするとメインスラスターを点火させ、ミネルヴァへと戻っていった。

 
 

ミネルヴァへと戻ると既にデスティニー、レジェンドは既にミネルヴァへと搭載されていた。そこには勿論シン、アスランも機体の最終調整を手伝っている。
アムロは機体から降りるとマッド・エイブスにメンテナンスマニュアルを渡すとデスティニ―、レジェンドを眺めていたところにレイがやってきた。

 

「隊長、ご苦労様です。」

 

軍人としては当たり前だが相変わらずの堅苦しい挨拶をすると敬礼した。アムロはそれに対し、敬礼はせずに

 

「レイか、どうしたんだ?」

 

と聞く。

 

「いえ、新型が来ると聞いたもので…少し興味がありまして。」

 

レイがそういう風に自分が興味があるものとかについて語ることは今まで無かったため、アムロは少し戸惑いながら

 

「そうか…」

 

と短い返事をした。レイは新型の二機のほうへと視線を移すと一瞬体が強張った。何故なら自分が親密にしていた人が最後に乗っていたMSと瓜二つのMSが立っていることに気付いたからだ。その瞬間脳裏によぎる仮面をした男と、デュランダル、それに幼き日の自分。兄弟のように、時には親子のように扱ってくれた人が乗っていたMSと似ていると言うだけで気付けばレイはふらふらとレジェンドへと近づいていた。アスランがそれに気付き、声をかけた。

 

「レイ!何をしている、そんなところで?」

 

レイははっとするとアスランのほうへと視線を移し、まごまごしている。まるで何か言いたいが言い出せないでいる、そんな感じだった。
アスランは自分の方からレイへと近寄っていく。レイは目の前に来たアスランに対して

 

「アスラン…この…機体ですが…」
「俺の搭乗機にさせてください。」

 

と言いたいのに言葉を出せない。そんな私情でどうにかなる問題ではないことは理解している。しかし、レイはそれを言葉にしないのを理性で必死に抑えていた。
しばらくの沈黙の後、衝動が収まると

 

「いえ、何でもありません。いい機体ですね、と言おうとしただけです。では。」

 

といつもの口調で話すとアスランに敬礼し、踵を返した。

 
 

アスランはいつものレイと比べ違和感を感じたのか、レイを呼び止めると

 

「レイ、そういえば君がセイバーに乗るらしいな。」

 

と話し掛ける。レイは振り向くと

 

「アスラン。確かにセイバーとプロトセイバー、二機をひとつにしましたが、あれはあくまで『プロトセイバー』です。誤解しないで下さい。」

 

と答えた。いつものレイに戻ったようだが、その主張に納得できないアスランは

 

「ええ?いや、しかし、アムフォルタスもついているし…色が白いと言うだけでそれ以外の外見はセイバーじゃないか。」

 

「いいえ、あれはプロトセイバーです。アスラン。何度も言わせないで下さい。」
「いや…しかし…ええ?」
「アスラン。あまり気にしすぎるといくらコーディネーターとはいえストレスで禿げますよ。気にしないで下さい。俺は気にしない。」

 

そう言うとレイは微笑み、本人曰く、プロトセイバーの元へと歩いていく。アスランはそんな軽口を叩くレイを不思議に感じながらもいい変化かな、と思いレイと同様に少しだけ、微笑んだ。そんな二人の心境とは裏腹に戦いの幕はもうすぐ、開こうとしていた。