DEMONBANE-SEED_獣と種の人_02

Last-modified: 2013-12-22 (日) 19:34:45

「ミゲルがこれを持って帰ってくれて助かったよ。でなければ、いくら言い訳したところで、地球軍のモビルスーツ相手に機体を損ねた私は大笑いされていたかもしれん」


ストライクの動きを捉えたミゲルのジンの映像を、ブリッジで見ながら言う

「我々がこんな物をこのまま残し、放っておく訳にはいかんと言う事ははっきりしている。捕獲できぬとなれば、今ここで破壊する。戦艦もだ、侮らずにかかれよ」

「「「「はいっ!」」」」

クルーゼの言葉に、集められていたジンのパイロット達は大きな声で返事をしてブリッジから出て行く

「(もう一つのデータに映っていた謎の巨大MS。あれはなんだ?映像に残っていたデータを見ただけだと言うのに、私が恐怖する程の存在感。一体?)」

そして、ブリッジで未だに残されているアスランに眼を向ける

「(まぁ良い。ギルが好きそうな物だからな、渡しておけば意外と何かわかるかもしれん)」

「アデス艦長!私も出撃させて下さい!」

アスランがクルーゼの隣に居た、アデスに向かって進言する

「機体がないだろ。それに君は、あの機体の奪取という重要任務を既に果たした…」

「ですが…」

何かを言おうとするが、言葉が出ずにアスランは黙り込む

「今回は譲れ、アスラン。ミゲル達の悔しさも、君に引けは取らん」

「……」







キラがコーディネイターかと問われ、それに対してそうだと答え、アレイスター達は否と答えた事で、兵士達はキラにだけマシンガンを向けていた

「な、なんなんだよそれは?」

それを見かねたトールがキラの壁になるように立ちながら、兵士達に向かって言う

「トール…」

「コーディネイターでもキラは敵じゃねぇよ!さっきの見てなかったのか?銃を向けるなら機体に乗らないで、影で座りながら俺達を見てただけのアレイスターって奴に向けろよ」


キラ達を見世物でも見ているような態度で見ているアレイスターを指差しながら、銃を持つ兵士達に向かって言う

「…銃を下ろしなさい」

トール達や銃を持つ兵士の両方を見ながら、ラミアスが言う

「ラミアス大尉、これは一体?」

どう言う事なのかを聞こうとして、ナタルはラミアスの方を見る

「ヘリオポリスは中立国のコロニーですもの。戦禍に巻き込まれるのが嫌で、ここに移ったコーディネイターが居ても、不思議じゃないわ。違う?キラ君」

「ええ、僕は一世代目のコーディネイターですから」

「両親がナチュラルってことか。悪かったな、とんだ騒ぎにしちまって」

ラミアスの言葉に対するキラの返答を聞いたフラガは頭をガリガリと書きながら、キラに向かって謝罪するとメビウスに向かって歩いて行く

「フラガ大尉…どちらへ?」

「どちらって、俺は被弾して降りたんだし、それに外に居るのはクルーゼ隊だぜ?あいつはしつこいぞ~。のんびりしてる暇は無いと思うがね」

そう言ってメビウスに向かって歩いていくのを見て、皆が持ち場に戻って行く

「で、アンタ。何も言い返さないのかよ」

その言葉に、やっとトール達に気付いたように眼を向ける

「…トールと言ったか?余興に水を差す程、余は愚かではないのでな」

その言葉を聞いて、トールは服を掴み引っ張りながら睨み付ける

「お前、人の命を何だと思ってんだ」

「…邪魔だ」

軽く腕でトールの身体を払っただけで、トールの身体が面白いように吹っ飛びトールは気絶した

「なんて事をするんですか、貴方は…」

吹き飛ばされるトールを見たキラは、急いでアレイスターに詰め寄りながら言う

「キラと言ったな。貴公は豚や鶏を見て何か思うのか?」

「えっ?」

アレイスターが言っている事の意味が解らずに、首を傾げる。それを見かねたエセルドレーダがアレイスターの隣に達、口を開く

「簡単な事です。貴方達があの場で死のうとも、私やマスターにとってはなんら関係ありません」

「なっ!!」

エセルの声を聞いて全員が驚愕の表情を露にする

「アンタ、それがどう言う意味かわかってんのか?」

「言い方を変えよう。すまない、地を這う虫けらの為に行動をする程、余は神経質では無くてな。何より、貴公等の生き足掻く様を見るのも余の娯楽に過ぎん」

サイの言葉に対して、アレイスターはそれだけ言うと、格納庫から通路に向かって歩いていく

「アイツ、本当に俺等と一緒の人間かよ」

カズィの言葉が聞こえたエセルが立ち止まり、振り返る

「貴方達をマスターと同等にするなど、マスターに対する侮辱以外の何物でもありません」

「「「「なっ!!」」」」

エセルの言葉を聞いた者達が再び驚愕の表情をするが、それを完全に無視しながらエセルはアレイスターの斜め後ろに向かって走って行く。

「おい、待てよ!2人共!!」

そして、その様子にサイが声をかけるが完全にアレイスター達は無視していた







格納庫でそんなやりとりがあって半時間後

「ストライクの力も必要になると思うのですけど」

同じ部屋に居る、フラガとナタルを見ながらラミアスはそう提案した

「アレをまた実戦で使われると!?」

「使わなきゃ、脱出は無理でしょ?」

「……」

ストライクを使うと言うラミアスの言葉に、ビックリするように言うナタルに向かってフラガ正論とも思えるような事を言うと、ナタルは黙った

「ボウズは了解してるのかい?」

「今度はフラガ大尉が乗られれば…」

フラガが乗ろうとしないのを、変に思ったナタルがそう提案する

「おいおい、無茶言うなよ!あんなもんが俺に扱えるわけないだろ!」

「ええ…?」

キラが乗れたのに、何故フラガが乗れないんだ?と言った感じでナタルはビックリする

「ボウズが書き換えたOSのデータ、見てないのか?あんなもんが、普通の人間に扱えるかよ」

「ならば、あのジンのOSを使えば!」

キラの乗るストライクのOSがダメならと、ナチュラルだと言うアレイスターのジンのOSを使えば良いと思い、殆ど反射的にそう言う

「それなら時間を掛ければ乗れるだろうが、今すぐってのは絶対に無理だぜ」

「そうなんですか!?」

「さっき遊びで、あの機体のOSをつかってシュミレーションしてみたんだがな…」

「勝手に何をやっているんですか!大尉。アレは一応個人の所有物なんですよ!!」

フラガが勝手に他人の所有物を弄った事に対して、ラミアスは文句を言う

「まあ聞けって。確かにナチュラルでも使えるように設定はされてたが、操縦に癖がありすぎてかなり操縦しにくかったぜ」

「それ程までに、操縦しにくかったんですか?」

フラガのその言葉を聞いて、ナタルはビックリしながら呟き、ラミアスは驚愕している感じの表情をする

「癖が無けりゃあ、一週間もシュミレーションすればそれなりに乗れると思うんだが…」

それに対してフラガは、自分の思った感想を正直に2人に聞こえるように言う

「それだけのOSを積めるなんて、本当にナチュラルなんですか?」

「それは嘘じゃないと思うがね。もしかしたら、俺よりも動体視力が良いかもしれんがね…」

「……このまま考えていても何も出来ません。それよりも今の事を考えましょう」







マリュー達がそうしている頃、キラ達はラジオを聞いていた

【余の異母兄弟が世話になったな、ヘンリー・アーミティッジ】

【フッ、気づいておったか。ヨグ=ソトースの、落し子よ】

突然キチ○イじみた声から、老人の声に変化する

【それなりに愉快な見世物であったが、さて、これからどうする?】

【フン、知れた事。ウェイトリー兄弟と同じく、お前もまた世界に大きな災いをもたらす。ミスカトニック大学特殊資料室として、それを見逃すわけにはいかんのだ】

【それは困る。それでは楽しめぬではないか、デモンベインとの闘争が。余の乾きを唯一慰める、愛しい愛しい闘争が…。無粋な真似をしてくれるな、老賢者】

【戯言を】

【書き直させて貰う】

【ヌゥゥ。こっこれは、ヨグソトースの力! 貴様、因果律に干渉いして!!】

【この物語に貴公は無用。そうこの物語は、一人の英雄が愛と勇気の力で絶望に勝つ。そんな完全懲悪の物語でなくてはならないのだ。邪魔をするなヘンリー・アーミティッジ。貴公が甘やかしては、英雄が育たぬ】


【ぬぅ、マスターテリオン】

【別の物語で会う事もあろう、それまでは今日の出会いは無かった事にしよう】

【やれやれ、本当に退屈だな・・・】

【ん~~ふふふふふっふっふっふふふっふ、ははははは、あひゃ~ひゃひゃひゃっひゃっひゃ。そ~~んなアンニュイな貴方を救うべく、正義の大、天、才こと、我輩ドクターウェストが魔法の世界ダイガスリンから非常な時間と空間の感動を超えて22世紀の未来からからやーって来ました~~】


【………はは、そうだな………じゃあ、パン買って来い】

【…………パン…?】

そして、ラジオを全部聴き終わると全員が一度深呼吸をする

「ドクターウェストは最高だよね。なっ、キラ!」

「えっ、僕?」

カズィから急に話しをふられたキラがビックリしたような声をあげ、カズィの方を見る

「でもさ、軍のラジオでなんでこんな変なラジオが流れてんだ?」

「知らないわよ。それにしても、マスターテリオンの声がアレイスターさんに似てなかった?」

一番マトモな事を言ってるサイに対して、そっけなく答えながら自分が感じた疑問を呟く

「幾らなんでも、気のせいだろ。ミリアリア」

トールはアレイスターの名前が出た事に気分を悪くしながら、ミリアリアに向かってそう答えていた







同じ頃、アレイスター達

「……あの、マスター」

恐る恐るといった感じでアレイスターを、エセルドレーダは見る

「フム、前回の余とアーミティッジ老のやりとりだな……」

「本当に、カブト虫やクワガタを食べたのですか?」

「………中々美味であった」

「マスター………」

エセルドレーダは、アレイスターの言葉を聞いて顔を逸らし涙を少し流していた。

五分後。

「誰か来たようだな」

アレイスターがそう言って少しすると、ラミアスが近づいて来た

「少し良いかしら?」

アレイスターとエセルの姿を確認しながらラミアスが言う

「なんでしょうか?機体のOSのコピーを無断で盗った事は気にしていませんよ」

エセルがラミアスの方を向いて淡々と言う

「そうなの?ごめんなさいね。それとまた戦闘になるわ、シェルターはレベル9で今はあなた達を降ろしてあげることもできないの」

エセルに気圧されながら、ヘリオポリスに降ろせない事をラミアスは伝える

「つまり、ジンに乗って連合の為に戦えと言う事ですね」

「そのようだな。コロニーに大穴を空けたのはキラ・ヤマトだが、奴らには余とエセルドレーダの平穏を邪魔した礼をせねばなるまい。勿論、貴公等連合やキラ・ヤマトにもいずれせねばなるまいがな」


その言葉を聞いてラミアスの額に冷や汗が流れ、顔が引きつる

「行くぞ、エセルドレーダ」

「……はい、マスター」

2人がラミアスの横を通って通路に出て行く

「ちょっと、何処に行くの!」

「そろそろ、ザフトの者達が来ても良い頃合いなのでな、挨拶をせねばなるまい」

ラミアスにそう言うと、アレイスターはエセルと一緒に格納庫向かって歩いていった

「えっと、次はキラ君ね。それにしても、礼って何をするつもりなのかしら?」

呟きながらキラ達の居る方に向かって早足で向かって行った





アレイスター達はキラがストライクに乗るより先にジンに乗っていた

「エセルドレーダ、武器は剣だけで構わん」

「イエス、マスター」

ジンはその場に重斬刀以外の武器を放置しながらカタパルトに移動していく

「コロニーに…」

「気にしなくとも、剣しか装備していない。貴公等こそ、コロニーに傷を付けてくれるなよ」

「「「なっ!」」」

「痛い事を言ってくれるじゃないの、全くさぁ」

その様子を全く気にしない

「行くぞ、エセルドレーダ」

「…イエス、マイマスター」

そして、ジンが発進した

「……オイ、今、あの女の子も乗ってなかったか?」

発進したジンとの会話を思い出しながら、ブリッジの面々は少し沈黙し、フラガの言葉で静寂は破られた

「確かに膝の上に乗ってましたね」

「「「「えっ!!Σ」」」

フラガの言葉に対するナタルの言葉に、ナタルとフラガを除く全員が驚愕の叫びをあげた。

それから少しして、キラの乗るストライクも発進していく





続く…



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