DS_第06話

Last-modified: 2007-11-18 (日) 15:58:13

「模擬戦……ですか?」
「うん。新人達に見てもらいたいなって思ってね。レイ君も、お願い出来るかな?」

そう言ったなのはに、シンは少し表情を真剣なものに変えた。

「別に俺は構いませんけど……、相手は?」
「私と、ヴィータちゃん」

そう言ったなのはに、何故かスバルが飛び上がった。

「な、なのはさんの戦いが見られるんですか!?」
「あ、う、うん」

瞳をきらきらと輝かせて詰め寄ってくるスバルに、なのはは冷汗を浮かべながら後ずさる。
と、そんななのはに、レイが声をかけた。

「……始めないんですか?」
「あ、そ、そうだね! シャーリー、お願い!」
「はいはーい♪」

レイのフォローにこれ幸いと乗っかり、シャーリーに声をかけるなのは。
それにシャーリーは答えると、あるスイッチを押す。
と、なのはの後ろ、ちょうど海の上にあたる部分がゆらめき、街が姿を現した。

「これが、なのはさん監修、海上訓練場です!」
「ここの、ポイントC-1にバリアジャケットに換装して移動してくれないかな?
 場所はシャーリーが誘導するから」
「全力で来いよ?」
「了解!」
「……了解」

そうシンとレイが答えると、なのはとヴィータはバリアジャケットに着替え、飛んで行く。
残されたシンとレイは、それぞれデバイスを構えると、叫んだ。

「デスティニー!」
「……レジェンド」
「「セットアップ!」」
『『スタンバイ・レディ』』

幼い少女と落ち着いた男性の声が聞こえ、シンとレイはそれぞれのバリアジャケットを身に纏った。
軽く動作チェックをすると、シンとレイはシャーリーの指示に従って飛んで行った。

それぞれの位置につき、思い思いの武装を構えるシンとレイに、レイジングハートを構えながらなのはが言った。

「制限時間は無制限、ペアのうち片方が落とされたらその時点で戦闘終了だよ。
 ……シャーリー、スタートのタイミング、任せるね!」
『はーい! ……じゃあ……スタートです!』

そうシャーリーが叫んだ瞬間、なのはの周りに光球が、ヴィータの周りに鉄球が展開された。

『アクセルシューター』
「シュート!」
『シュワルベフリーゲン』
「ぶっ飛べぇっ!」

同時に放たれた20条の光弾と4条の鉄弾。
それをシンとレイが散開して交わすと、光弾はレイを、鉄弾はシンを追尾する。

「デスティニー!」
『ソリドゥス・フルゴール』

両手の甲から展開させたシールドで鉄球を弾くと、ヴィータが追撃に突っ込んでくる。

「ラテーケン・ハンマー! らあああっ!」
『フラッシュエッジサーベルシフト』
「舐めるなっ!」

叩き付けてきたハンマーをサーベルに変化させたフラッシュエッジで受け、シンはそのままヴィータに肩から突っ込む。
何かむしょうに嫌な予感がしたヴィータは僅かに距離を取り、

「逃がすか!」
『ブーメランシフト!』
「ちっ!」

すかさず放たれたフラッシュエッジを、何とかハンマーで叩き落した。

「キリが無いな……」
「強え……なら!」
「「一気に……決める!」」

シンとヴィータは同時にそう叫ぶと、互いに相手に向かって突っ込んだ。

『ギガントフォーム!』
「轟天爆砕! ギガント・シュラーク!!」
『アロンダイト』
「っ……あああっ!」
『ミラージュスラスト!』

20条もの光弾に追い回され、レイは思わず舌打ちを一つ。

「ちいっ……! レジェンド! ブレイズモードに移行!」
『オーケー、ブレイズモード……ファイアビー』

バリアジャケットが変わると同時に撃ち出された無数の魔力弾に、アクセルシューターは次々と撃ち落される。
それによって生まれた煙を隠れ蓑にしながら突っ込んで来る残りのファイアビーに気付き、なのはは下がりながら自身の主砲を構える。

『シューティングモード、セットアップ』
「ディバイ―ン……バスター!」

撃ち出された砲撃は、ファイアビーを一つ残らず消し飛ばし、新たな煙を生む。と、その中から声が響いた。

「……行け!」
『ドラグーン』

その言葉と同時に、煙の中から多数の小さな何かが飛び出し、なのはの周りを囲んだ。
なのはも煙の中から薄っすらと現れたレイにレイジングハートを構え、魔力のチャージを開始する。
そして、二人が同時に動き出した瞬間。

『ヴィータちゃんの撃墜確認。模擬戦は終了です!』
「ええ!?」

シャーリーからの通信が入り、なのはとレイは思いっきり戦う気を削がれた。

「ちょっ……まだ5分くらいしか経ってないよ!?」
『あはは……ヴィータちゃん、勝負焦りすぎて自滅したみたいで……』

そう言ったシャーリーに、なのはは急に俯いて肩を震わせる。
それを怪訝に思い、レイはなのはの顔を覗き込み……、
覗き込んだ事を後悔した。

「久し振りで全力全開出来ると思ったのに……、ヴィータちゃん、後でSLBの的にしてあげようかな?」

そうくすくす笑いながら呟いたなのはの表情が、まさに「魔王」の物だったから。