GUNDAM EXSEED_EB_3

Last-modified: 2016-01-12 (火) 20:07:31

エリュシオンを出たリヒトは取り敢えず命令通り、アフリカに向かうことにした。アフリカと言っても北アフリカにある研究所ということが命令書に記載されていたので、クライン公国の施設かなとリヒトは見当をつけた。
リヒトは適当に命令書を見ると、最後の方に手書きの文字があった。
「危なくなったらすぐに帰ってくること、任務に失敗してもオジサン怒らないし、任務なんかしなくていいんだよ。アフリカ観光して帰って来るだけでもいいし、それよりも、オジサンはリヒト君が良い大学に入って良い会社に入ってエリートになってくれる方が嬉しい。
別に会社に入らなくてもいいよ、起業しても良いし、オジサンが全部お金は出すから、任務なんかやめても良いんだよ」
というような内容の、ロウマ・アンドーの直筆のメッセージが命令書の最後に書いてあった。
つくづく僕には甘いなぁと、リヒトは思う。
前に任務に失敗した人間は、両手足を斬りおとされた上で切断面を焼かれて、しばらく放っておかれた上で、切断面に釘やらボールペンやら、先が尖ったものを全力で突き刺され、殺してくださいと言うようになるまで、いたぶった上で首をはねて殺したんだよな。
それに比べて自分には甘いことこの上ないとリヒトは思うが、別にそれが悪いことだとも思わなかった。これはオジサンの家族である自分に与えられた特権であるからだ。
まぁ、色々とオジサンは心配してくれているし、父さんも心配してくれているが、僕自身も父さんたちが心配だし、父さん達の手助けになりたいから、こうやって任務に励んでいる。
やっぱり家族は大事にしないとな。母さんがいない分、父さんのことは、僕が心配したり寂しくないようにしないといけないし、父さんだけじゃ大変なことを手伝うのも当然だ。オジサンに関しても同じことだとリヒトは思う。
リヒトはそんな風に、二人の家族のことを考えながら、アテネの自動操縦に任せて大気圏に突入するのだった。
苦も無く大気圏を突入したジェネシスガンダムは、アフリカ大陸の遥か上空にいた。そう言えば、この機体どうやって飛んでるんだっけ、とリヒトは不思議に思い、アテネに聞く。
「アテネさぁ、この機体ってどうやって、飛んでるの?」
(……私にも分かりません)
すげぇなぁ、原理不明で飛んでんのか。思えば、この機体も父さんとオジサンに十五歳の誕生日に凄いMSが欲しいと頼んだら、二人が必死の表情で持ってきてくれたから出所不明なんだよなぁ。
「アテネって、どこ製?」
(分かりません。私に記憶があるのはリヒトと初めて会った時からですので)
ふーん、と思いながら、リヒトはアテネの自動操縦に任せてアフリカの大地にジェネシスガンダムを降りたたせる。
アフリカ大陸、現在は北の方がクライン公国の領土で、南側が地球連合の領土だ。ちなみにアフリカの北側をクライン公国の領土にしたのはオジサンの功績らしい。
クライン公国は今は貴族が実権を握る良く分からない国になっているが、オジサンがクライン公国の軍人だった頃は、極めてナチス的だったらしい。
ちなみにクライン公国がナチス的になったのは全部オジサンのせいらしいが、オジサン曰く、八割くらいは自分のせいだが、残り二割はそうすることで得をする奴らが大勢いたからしい。
まぁ、政治に関しては興味ないんだよなぁ、とリヒトは思いながら、機体を目的地まで進める。
(カメラジャミングを使いますか)
「うん。よろしく」
リヒトはアテネの提案に乗った。ジェネシスガンダムに搭載されているカメラジャミングの機能は、MSなどのメインカメラの光学情報にジャミングを加え、こちらを正しく認識できなくする機能である。
とは言っても、完全に無効化できるわけではなく、ジェネシスガンダムの姿にモザイクがかかって見えるようになる程度だが、こちらの身元を判別しにくくしたり、相手を混乱させる効果は充分以上にある。
それに、遠距離だと極端に判別しにくくなる効果もあるので、目的地に秘密裏に接近するには、極めて効果的な機能だった。
そうやってジェネシスガンダムは監視の目をかいくぐり、目的の研究所まで辿り着く。研究所が目視できる距離入ると、リヒトは言う。

 
 

「どうやって、任務を達成するかは別にして、とりあえずはルールを決めようか」
そう言って、リヒトはサイコロを取り出す。
(奇数)
アテネが完全にランダムで宣言すると、リヒトはサイコロを宙に投げ、掌に乗せる。出た目は2であった。
「ということで、今回は殺しはなし。そして、生身での潜入もこの間、やったので、今回はワイルドに行こうか」
そうリヒトが言うと、リヒトは顔を隠す機能を持ったハーフコートと銃などを装備するとジェネシスガンダムを、自身が操り、研究所に突進させる。やけにガードが薄いと思いつつ、リヒトはジェネシスガンダムの拳を研究所に叩き込む。
研究所の壁が崩れ、研究所内へ侵入する入り口を無理矢理作ると、リヒトはコックピットハッチを開けると同時にハーフコートのフードをかぶり、顔を完全に隠し、研究所内に拳を埋め込んだ、ジェネシスガンダムの腕を伝って走り、研究所内に突入する。
「アテネは待機。しばらく下がってろ」
(了解、必要な時はいつでも呼んでください)
オーケー、パートナーそう思い、リヒトは右腕に持った、任務の相棒であるオーダーメイドの45口径カービンをいつでも撃てるように体勢を整えた。その時である。
「ノックもしないとは、礼儀を知らない奴だ。いや、したのか?少し乱暴だったが」
少女の声が聞こえリヒトはカービンを向けるが、即座に銃を下ろした。無礼を働いたのは。こちらだから、まずは謝るべきとリヒトは思い、頭を下げて謝罪する。
「ごめんなさい。許して」
少女のため息が聞こえ、少女は言う。
「わかった。許す」
それはありがたいと思い、リヒトが頭を上げると、そこには十代に入ったばかりとしか思えない少女がいた。
くすんだストレートの金髪をツインテールにした少し不機嫌そうな表情だが間違いなく可愛い顔の少女である。年の割には手足が長いと思い、将来的にはモデル体型だろうなと思い、リヒトは後五年くらいしたら、美味しくいただきたいと思うのだった。
しかし、今はいただくわけにはいかない。法律的にも倫理的にも問題があるし、そもそも物理的に入らない。ナニがとは言わないが。だから我慢で。
「言っておくけど、ロリコンではないのであしからず」
そう言うと、リヒトは部屋の入り口を見つけ、そのドアに、ボディバッグから取り出したスプレーをかける。
「それは、なんだ?」
少女は好奇心が旺盛らしく、リヒトの行為に興味を持った。リヒトは聞かれたので答える。円滑な人間関係は、そういう所から始まるのだ。
「瞬間接着剤と硬化スプレーの混ぜものみたいなもの。これをドアにかけると、ドアを爆破するくらいしか開ける手段がなくなる。ちなみに僕は融解剤入りのスプレー持ち」
とりあえず、これで、この少女と話す時間は確保できた。さて、この少女は何なのかなと思い、リヒトは左目をつぶると、少女の姿が老賢者に見えた。
ついでに、両目をつぶりテレパシーを試してみるが、何の反応も無し。つまりはEXSEEDである可能性は限りなくゼロに近いわけだ。
「賢いみたいだね」
「世間的には、そういうことになっている。世間と言っても私はこの研究所で生まれ育ったので、ここ以外の世間を知らないが」
そりゃ可哀想だとリヒトは思ったが、口には出さなかった。可哀想かどうかは本人の気持ち次第なので、自分が口を出すことではないからだ。
それよりも、少女はリヒトの姿に興味を示していた。
「聞きたいのだが、そのフードは何だ?外部から完全に中を見えなくする技術なのか?カメラなどの映像解析も無効化できる?」
リヒトはそう言えば、フードをかぶったままだったことを思い出したが、まぁいいかと思い答える。
「うん。外からはフードの中は完全に暗闇にしか見えない。どんな映像解析ソフトでも、この状態なら僕の顔は分からない。だから、まぁ」
リヒトは言いながら、腰のホルスターの45口径オートマチックピストルを抜き放つと、部屋の隠しカメラを撃ちぬいた。
少女は急なことで、耳を抑えながら驚いた表情を浮かべている。
「ちょっと、うるさくなるよ」
リヒトはそう言うと、一旦カービンを肩にかけ、懐から大型のリボルバーを抜くと残った二基の監視カメラを撃ちぬいた。
少女はちょっとどころではないと、思った。そして監視カメラの位置は全て把握しているつもりだったが、フードの男が撃った二基について全く知らなかった。
「右目のコンタクトでだいたいの機械類は判別できるんだ。って言っても、顔見えないから、あんまりわかんないか。でもまぁ、これで顔を見せられるかな」
そう言って、フードの男は拳銃をしまうとフードに手をかけ、素顔を表す。

 
 

「リヒト・グレン。世間的には悪い奴の部類です」
そう言って、リヒトはカービンを左手に持つと右手を少女に差し出す。
「ミリアムだ。苗字は実験体なのでない。世間的には天才と呼ばれている」
そう言って少女――ミリアムは手を出してリヒトの手を握り、二人は握手をした。
リヒトは握手を終えると、ジェネシスガンダムの腕によって、半ば破壊された状態の部屋の中で、適当に座れる場所を見つけ、座る。
「実験体って何の?」
別に気を使う必要も無いと思ったので、リヒトは尋ねてみた。
「スーパーコーディネーターと、まぁ人造人間だな。私は世界一の頭脳を持つ男の精子と世界一の頭脳を持つ女の卵子を組み合わせて作られた半ば人造人間だ」
リヒトは、ふーん、と思いながら自分のことも言う。
「僕も同じかな、とは言っても精子も卵子も普通の人間で、ナチュラルとして産まれたけど」
よくよく考えれば、自分は面倒なことをしている割には最後のツメが甘いなぁとリヒトは思うのだった。
「その顔も自然のものなのか?」
ミリアムは僅かに驚いたように言う。
「父さんはイケメンだし、母さんも美人だから普通だよ」
リヒトが、そう言うのでミリアムは少し動揺していた。リヒトの美しい顔もコーディネートによる人工物だと思っていたから、動揺を抑えられたが、自然にその美しさとなると、ミリアムは自分の胸に今までに感じたことない何かが去来するのを感じた。
「まぁ、お互いの生まれの話しはどうでも良いよ。多分、ミーちゃんは、研究用の頭脳としてここに飼われてたんでしょ?だったら、研究している物をちょっと教えてよ」
飼われているという言い方は気に入らなかった、ミリアムはリヒトを直視できず、言いなりになるように自分の研究物をリヒトに投げ渡した。
「はい、どうもね」
リヒトがキャッチしたそれは化石のような何かだ。だが、それは欠片だった。
「言っておくが、どんなに調べても無理だぞ。色々と手を尽くして調べたが、どうしても、その化石からは情報の断片しか得られない」
いや、それで正解だろうとリヒトは化石を受け取り思った。
「これは欠片だからね、きちんと情報を得るなら、他のパーツも集めなきゃいけないんだ。アテネ」
(間違いありません。化石の一片です。それも確保している部分に、はまるものです)
「ビンゴって感じかな、良いね」
リヒトはそう言うとミリアムを見て言う。
「ねぇ、ミーちゃん。これ貰っても良い?」
「っ駄目に決まっているだろう!それはこの研究所で重要とされるものだぞ!それとミーちゃんはやめろ!」
恥ずかしいから、とミリアムは言えなかったが。しかし、駄目だと言うとリヒトは、簡単にミリアムに化石を返した。
「簡単に渡してくれないっていうならさ。ゲームをしよう。実際のところ、ミーちゃんをイジメて、化石を取るってのが、僕には一番簡単だけどよ。それじゃフェアじゃないし、遊びがなさすぎる、だからゲームだ。一方的に強い人間だけが許されるゲームの提案だ」
リヒトは笑みを浮かべながら、サイコロを取り出す。
「それじゃ、ルールを決めようか」
リヒトはサイコロを宙に上げてはキャッチをしながら提案する。ミリアムは理解していた、拒否すれば、この男は単純に暴力を振るい、ミリアムから化石を奪っていくことを。
ミリアム自身に化石の価値は分からないが、全てがリヒトの勝手にされるのは気に入らなかった。そのために勝負に乗ることにした。
リヒトは目でミリアムが勝負に乗ることを理解して説明する。
「基本は単純、出る目ごとに得るもの失うものを設定する。こっち側の提案はそれだけ、そっちが有利に設定しても良いし何でもいいけど、僕の勝ち目がない設定はノーだ。それを言った瞬間にゲームは無しになる。オーケー?」
ミリアムは問題なしと頷いて、宣言する。
「1と2が出たら、化石はあげる。3から5だったら、化石はあげない、そして……6が出たら化石をあげるかわりに渡しに、少しでも外の世界を見せる」
正直ウンザリだ。ここは、何も変わらず自由もない。ただ知識を詰め込まれ、都合の良い道具として扱われる日々。特別に嫌な思いをしたことはないが、籠の鳥は嫌だ。けれど、籠の外に一人で飛び出す勇気もない。
それに、外のことは何も分からず怖い、だから、一番確率が低くなるようにした。出られなくても仕方なかったと思えるように。
「確率的には五分五分でフェアに俺が得するけど、そんなに外は怖いかい?」

 
 

「うるさい!さっさとサイコロを振れ」
なんともまぁ、難しいことで、と思いながらリヒトはサイコロを宙に投げた。あえて掌には落とさず少女の前に落とすように。
少女は食い入るように転がるサイコロを見つめ、そしてサイコロは転がることを止め、天に向かって、その点を示す。
「2か。どうも、偶数に好かれている日だね」
そう言うとリヒトはサイコロを拾い上げ、ポケットに入れ、呆然とする少女の手から化石を取る。
「アテネ、化石だけエリュシオンに転送できるか?メッセージ付きで」
(問題ありません。すぐに行いますか。メッセージは私が作成します)
「うん、頼むよ」
そう言った、瞬間、リヒトの手から化石は姿を消した。だが、無事にエリュシオンに転送されたはずとリヒトは思う。さて、これでこちらの用事は片付いた。まぁ呆然と立ち尽くす少女を除けばだが。
「籠の鳥は自分で、籠の外へ飛び出す力を持てないし、籠の外へ出る選択はできないってことかな」
まぁ人間色々と難しいということだなぁとリヒトは思った。ここは多分ミリアムにとっては楽な場所なのだろう。だから、無茶な条件を選択できなかった。
勝ち目がない選択はなしと言ったが、リヒトにとっての勝ち目は化石を得ることなので、全ての条件に自分を連れ出すことと言えば、後悔をしなくても済んだのに。
そんなことを思いながら、リヒトは、そこらに積んであった本から適当に手を取ってページをパラパラとめくる。量子力学の話しか、父さんに教わったなぁと思いながら、つまらないと思い本を置き、呆然とする少女に言う。
「最近、僕は仕事の相棒を失っていてね、頭の良い人が欲しいんだけど。決めかねている。ミーちゃんはちょうどいいと思うけどどうかな」
ミリアムは同情されたようで、その言葉に対して拒否の態度を目で示す。言葉が多くないのは嫌いじゃないよ。と思い、あと何年か経ったら絶対に美味しくいただこうと思いながらサイコロを見せる。
「ルールを決めよう」
「1が出たらアナタの仕事の相棒になる。それ以外の数字なら、私をここから出して!」
あらまぁ、極端だ。でも基本的なルールにはのっとている。リヒトの勝ち目は、仕事の相棒を得ることなのだから、それが一つの目しかなくても構わない。そう思いリヒトはサイコロを振る。宙に舞うサイコロは床に落ち、更に転がりミリアムの目の前で回転する。
ミリアムは余裕を持って見ていた。大丈夫、今度こそ外に出られるそう思った瞬間だった。サイコロが不自然な動きをした。
何がと思い、リヒトを見るとリヒトの足元には小さな石がいくつも転がっていた。イカサマ?ミリアムがそう思った瞬間には遅かった。サイコロの回転は止まり、天に一つの目を示していた。
「俺の相棒決定。良かったね」
リヒトはそう言うと、ミリアムの肩を抱く。ミリアムは即座にリヒトをはねのける。
「イカサマをした!」
その言葉を言われた瞬間、リヒトは参ったなという表情を浮かべたあとで、恐ろしく冷たい表情を浮かべた。その表情は美しさと相まって見るもの全てに死の恐怖を与えるものだった。
「サイコロの勝負は出た目が出るまでだ。出た目にケチをつけるなら、俺はこの世の誰でも殺すぞ。絶対に」
そう言った後で、リヒトは軽く笑い、冗談のようにふるまうがミリアムは本気だと思い、リヒトに恐怖した。
「まぁ、良かったと思ったほうが良いよ。キミみたいな可愛い女の子がアフリカに一人で放り出されたら長生きできないし、ロクな目にも合わない。僕といる方が楽だと思うよ」
まぁ確かに、そうかとミリアムは思うのだったが、釈然としない思いがあるのも事実だった。
「まぁ、そう言う時はサイコロで」
リヒトはサイコロを宙に投げ掌に落とす。出た目は4だった。
「僕が四回仕事を完遂するまで相棒として働いてくれたら、僕も君が世間一般に馴染めるように努力するということで、よろしく」
「……じゃあ、よろしく」
あまりよろしくしたくないなと思いながらも、この美少年がミリアムの唯一の頼りなのは間違いなかった。

 
 

先ほどから独り言が多いし、今も独り言を言っており、色々と不安ではあるが。しかし、そんな風に思っていると、急にMSが姿を現し、リヒトはミリアムを抱え、ジェネシスガンダムのコックピットに乗り込むのだった。
「ミーちゃんは後ろのシートでシートベルト。エアバッグを最大にしろ」
リヒトはそう言うと、ジェネシスガンダムを飛翔させる。すると研究所の周囲に異形が姿を現した。
それは蛇のようにも見えるがリヒトは巨大なミミズのようにも見えた。
「ワームってやつ?」
ファンタジーの世界に出てくる生き物で、何だか良く分からないが蛇のような龍のようなミミズのような生き物だ。とにかく長い身体を持っていたとリヒトが思い出すと、ミリアムが補足し説明する。
「ワームは合っている。正確にはMG(モビルギガント)グランワームだ」
リヒトは、そのグランワームの長い身体から発射される大量の砲弾を回避しながら尋ねる。
「モビルギガントって何?」
「人工EXSEEDと機体への感覚同化の技術が秘密裏ではあるが一般的になった結果、各国の軍は、人体の改造と兵器の巨大化を行った。
感覚同化が可能ならば、戦艦以上の機体でも人間一人でも意のままに動かせるからな。とはいえ、人体とは明らかに構造が違う物体だ。感覚同化を行うためには、人間側の方も相当な改造が加えられていると思った方が良い」
ジェネシスガンダムを縦横無尽に動かし、危なげなく砲撃を躱しながらリヒトはミリアムに確信を持ちながらも尋ねる。
「中のパイロットも、機体みたくワーム型になっているかな?」
「パイロットで済めばいいが、機体に組み込まれた部品と同じかもしれない。ただ、確実に言えるのは、中の人間の体は既に私たちの想像もつかないものに改造されているということだ」
そりゃ可哀想だ。リヒトはジェネシスガンダムのビームトンファーを展開させながら、グランワームの装甲を切り裂く。その瞬間、グランワームが身悶える。そんな風になっても痛みは感じるんだな、リヒトはパイロットというか乗せられた人間が哀れに思えた。
「アテネ、俺の剣は出せるか?」
(出せますが良いんですか、パイロットを殺してしまいますよ)
「こうなっちゃ、生きてるのか死んでるのか分かんねぇよ、人間としてはな」
そうリヒトが言うと、ジェネシスガンダムの右手に鍔のない大剣が現れ、ジェネシスガンダムはそれを握る。
同時にグランワームは、その頭部をジェネシスガンダムにぶつけようとするが、ジェネシスガンダムは、その体当たりを左手だけで受け止めると、砂漠の中に埋まるグランワームの全身を力任せに引き上げた。
(左腕に負荷をかけすぎです。当分、左腕は使えませんよ)
アテネが言うが、それは理解した上でやったことだ。リヒトはジェネシスガンダムに無理をさせているのを承知で、右手の大剣を横一線に振りぬく。その直後、グランワームがバラバラに斬り裂かれる。
(無理をさせすぎです。戦闘中の回復は不可能だということを忘れないでください)
了解了解、リヒトは適当に返事をしながらバラバラになった、グランワームの中から、パイロットがいる場所を探すために両目をつぶる。
その瞬間、ゾワッとした感覚がリヒトを襲った、これが天然のEXSEEDと人工EXSEEDの違いだ。人工は金属質の質感が背中を撫でる。
リヒトはジェネシスガンダムを操り、その感覚の根元に向けて機体を突っ込ませ、大剣を突き立てる。それは頭でも何でもない、長い胴体の一部だった。
「気持ちわりぃ……」
リヒトは大剣についた嫌な感触を洗い流したくて仕方なかった。そんなリヒトに対してミリアムは驚愕していた。
「MG(モビルギガント)は艦隊を相手にするために建造された機体だぞ。それをこんな簡単に」
「この程度なら、それなりの腕のMSパイロットがいれば、問題なく倒せるよ」
リヒトはそう言って、とにかく大剣を洗うために、海を目指してジェネシスガンダムを発進させるのだった。
ミリアムはリヒトの言葉に関して、否定的な意見を持っていた。そもそもMGは有象無象のMSパイロットの育成の無駄をなくし、単機で敵戦力を制圧するという目的で、開発された物だ。
リヒトは分かっていないとミリアムは思う。MGを単機のMSで撃破したことで、リヒトは世界中のMGの開発者とそれを推進するものを敵に回したことを。今後、余計なトラブルが舞い込んでくるのは目に見えていた。
このままでは自分も無事では済まないと、ミリアムはどうやってリヒトから逃れるかを考える羽目になるのだった。

 
 

しかし、現実的に考えてリヒトから逃げてどうするのかという問題があり、ミリアムは結局、リヒトから逃げることもできず、南アフリカのハンバーガーチェーン店で、一緒に食事をするという状況になっていた。
「僕は小さい頃はアメリカのニューヨークの近くに住んでてね、一応アメリカンていう意識があるわけだ。だからハンバーガーは大好きだ。
しかし、悲しいことに、ここの店で出しているのはハンバーガーとは言えない。アメリカンな僕はビーフ100%のパティをバンズで挟んだもの以外をハンバーガーとは認めたくない。
ぶっちゃけると、僕はスゲーイライラしてる。その気持ちを抑えるためにこんなに多弁になっているわけだ。本音を言うと、ハンバーグを挟んだからハンバーガーとかぬかしてる、この店のスタッフを今すぐ皆殺しにしたいくらいイラついているわけだ」
リヒトの人差し指が凄まじい速度で机を叩いているのを見て、ミリアムは危険な予感しかしなかった。
「しかし、イラついても、ハンバーガーとは言えなくても、食わないと腹は減る。厄介なことに。だから、食う」
そう言ってリヒトはハンバーガーの包み紙を開いて、ハンバーガーに噛り付き、なんとも言えない表情になるが、ミリアムからすれば、そんなにマズイものでもなかった。そもそも研究所で出される味気ない食事よりはよっぽどマシだと思うのだった。
「コーラもペプシだし、フレンチフライも厚切りだし、気に入らねぇ、気に入らねぇ」
リヒトはブツブツ言うが、ミリアムは全体的に満足であった。なるほど炭酸飲料とはこういうものかという感動があったし、塩気の強いポテトも生まれて初めて食べるものだった。
「ニューヨークに行く機会があったら、最高のハンバーガーを食わせてあげるから勘弁ね。許してよ、こんなクソみたいな店につれてきてさぁ!」
リヒトは店長の方を見ながら、大声で言う。店長の表情がひくひくと動くのをミリアムは確認したが、別にどうでもよく、とりあえずコーラを飲んで、完食した。うん満足だミリアムは、それなりに満腹感を抱くとリヒトの方を見る。
リヒトも食事が終わっており、妙に気だるげにしている。ミリアムはここで一応聞いておいた方が良いこと、そして言っておいた方が良いことがあると思い、口を開く。
「私はキミの相棒になる気はないんだが」
リヒトはだらけた姿勢のまま首だけミリアムに向けて言う。
「ああ、そう。じゃあ、施設行きだね。でも、つまんないよ施設なんて、自由はそんなにないし、メシもそこそこだし。その点、俺の相棒になると特典がいっぱいある」
そう言うとリヒトは右手を掲げる。すると、急にその手に携帯情報端末が現れる。どういう手品だろうとミリアムは思ったが、それよりも渡された情報端末のモニターに表示された情報に興味が湧いた。
「僕が個人的に雇うことになるから、給料は応相談だけど、とりあえず四回の任務完遂まで頑張ってくれたら全寮制の名門校の学費は溜まるし、大学だって余裕で行ける。
つまりは自分で生き方を選べるチャンスが得られるわけだ。そしてモニターに書いてある僕の私有財産も欲しいものがあったらあげよう。
家もクルーザーも車もあるし、保証人なんかも用意してあげられるし、それよりも仕事とはいえ、世界各地に行けるっていうのがミーちゃんには魅力的じゃない?」
確かに施設に入るよりは、この男と一緒にいた方が利益を得られるのは間違いないがリスクも大きいような気がしていた。しかし、ここでチャンスを逃すともう二度とないとミリアムは思いながら、リヒトに尋ねる。
「相棒の仕事とは?」
「情報収集と分析、手段は問わないし、収集の仕方や集める情報の範囲について、僕はグチャグチャとは言わない。ミーちゃんが出来る範囲を申告し、その範囲内でミスのない仕事をしてくれたら、俺は怒らない」
随分と楽そうに聞こえるが、何か裏がありそうな気がしていた。だが、それならば良いかもしれないとミリアムは思うのだった。ただまぁ、相棒がどうとか言う、根本的に重要なことを聞かなければならないが。
「ところで、リヒト。キミはどこの組織の所属なんだ?」
だいぶ今更の質問だが、話しを聞くタイミングを逃し続けていたため、ミリアムはようやく聞けて、胸のつかえがとれたような気がした。

 
 

「プロメテウスPMC、よくある民間軍事会社。地球連合でもクライン公国でもコロニー同盟でも、金さえ出してくれれば、傭兵をやってあげるっていう優しい殺し屋集団」
そう言うと、リヒトは懐から社員証を出し、ミリアムに見せる。ミリアムは胡散臭いとしか思えなかった。
ただの民間軍事会社が、訳の分からない化石を手に入れるためだけに、研究所を襲撃はしないだろうし、MG(モビルギガント)を単機で撃破するMSを保有しているはずが無い。
「何か隠してないか」
ミリアムは疑いの視線をリヒトに向ける。リヒトは普通に頷いた。
「うん、隠してる」
そう言うと、リヒトはミリアムには信じられない話しを始めた。
「本当は金儲けと世界平和と世界征服を企む秘密結社。プロメテウス機関」
「……私を馬鹿にしているのか?」
ミリアムは不機嫌な表情になるが、リヒトはこれが真実なのだから仕方ないので、お手上げといった仕草を見せる。
「僕がミーちゃんに嘘をつく意味ないでしょ」
まぁ確かにそうだが、イマイチ納得しきれないものがミリアムにはあった。
「まぁ、昔はもっと大層な目的があったらしいんだけど、僕の父さんとオジサンがマジギレして、組織を潰して乗っ取りをしてからは、色々と俗な組織になったし、表の顔も持つようになった。と言っても裏の顔も、まだ色々と続いてるけど」
そう言うと、リヒトは情報端末を操作し、プロメテウスPMCではないプロメテウス機関の組織メンバー専用のページを開き、情報端末をミリアムに渡す。
「ミーちゃんも色々と興味のあるものがあるかもよ」
言われて、ミリアムはページ内の開発中というアイコン部分をタッチすると、開発途中の科学技術のデータが大量にモニター上に表示される。
「……すごいな。私の感覚からすると、このプロメテウス機関の技術は一般に流通している技術と比べて20年以上は進んでいる」
ミリアムは好奇心を露わに色々と調べる。リヒトは机に肘をつき、その様子を微笑ましく眺めながら口を開く。
「多少は信じて貰えたかな」
「ああ、信じても良い」
「僕の手伝いをしてくれたら、その内になるけど技術局に案内しても良いよ。場合によっては技術局で働けるように口利きしても良い」
そのリヒトの言葉にミリアムの表情がパッと明るくなる。
「本当か」
「うん、相棒になってくれたらだけど」
とりあえず美味しいエサは出したから食いつくだろうとリヒトは思い、そして案の定となる。
「分かった。相棒になろう」
リヒトは良い返事がいただけたことに満足し、手を差し伸べると、ミリアムはリヒトの手を握り、二人は握手するのだった。

 

「さて、じゃあ、相棒となったことだし、僕の任務を説明しておこうか」
リヒトは変わらずハンバーガーチェーン店の椅子に座りながら、話し始める。
「基本的に僕というか、プロメテウス機関の特務隊員の仕事は大まかに三つ。ユウキ・クラインの確保、聖杯、聖槍、聖釘、聖骸布の四つの入手、そして化石の欠片を集める」
ミリアムは話しを聞かされても、頭の中には疑問符しか湧かなかった。
「少し待って欲しいんだが、ユウキ・クラインと言うのはクライン公国の初代公王か?」
「うん、本人」
ミリアムは少し待って欲しいと思った。
「とっくの昔に死んだ人間を確保というのはなんだ?遺体を掘り返すのか」
「いや、死んでないよ」
ミリアムは何を言っているのか分からなかった。
「生きてたし、今も生きてる。公式で死んだことになっているのは影武者で本人は干からびるくらいまでの爺さんになって生きてた。そして今は若い肉体になって、どこかに隠れている」
ミリアムは頭がクラクラしてきた。訳の分からない話が多すぎると。
「僕の父さんたちがプロメテウス機関をぶっ潰しに行った際にプロメテウス機関の総帥の椅子にはユウキ・クラインの死体が座っていた。そして、父さんたちをあざ笑うように若かりし頃のユウキ・クラインがモニターに映った。
父さんたちは何かの悪戯だと思ったけど、ユウキ・クラインは間違いなく生きているのが、その後の調査で分かった。
謎が多すぎて父さんたちも正しい判断が下せないところはあったけどユウキ・クラインは生きているってのがプロメテウス機関という組織に所属する全員の共通見解。納得できないのは分かるけど、まぁそんな感じだと思ってればいいから」
全く納得できないが、とりあえず言われた通りそういうものなのだと、ミリアムは思うことにした。

 
 

「で、次に聖杯とかの話しに移るわけだけど、これは神話の話しじゃなくて、テクノロジーの話しになる。ミーちゃんは“ギフト”って何か知ってる?単純に贈り物って意味じゃないよ」
ミリアムは首を横に振る。
「すごく簡単に言うと、羽クジラの化石あるじゃない。アレを特殊な分析法にかけると色々と暗号みたいなのが出て、それを解読すると色んなテクノロジーのデータが手に入る。常識外のね。僕も一個持ってるから試してみようか」
そう言うと、リヒトは店の注文カウンターを見る。
「じゃ、何かゴミを僕に投げてみて」
言われてミリアムは躊躇いなく、ストローが入っていた細長い袋を丸めてリヒトに投げた。袋は間違いなく当たる。そう思った瞬間、リヒトは注文カウンターに立っていた。注文カウンターの店員も目の前に急に人間が現れたことを理解できない様子だった。
リヒトはコーラを二つ注文するとトレイに乗せて、ミリアムの元に戻って来ようとするが、訳の分からないミリアムはもう一度、試しにごみを投げつけてみた。やはり当たる。そう思った瞬間、リヒトの姿が再び消える。
今度はどこに、そう思った瞬間、ミリアムの首筋に冷たいものが当たり、ミリアムは思わず小さな悲鳴をあげる。そして、誰がやったのかを振り返って見ようとした、そこにはリヒトがいた。
「これが、僕の“ギフト”。本当の名前は別だけど、僕はゴーストムーブと呼んで、他の人には、僕自身の技や特殊能力だと誤解させている」
そう言うと、リヒトは再びミリアムと向かい合う席に座る。
「さて、ここでクイズ。僕の“ギフト”の能力が何か当ててみなよ。当たったら、ミーちゃんの言うことを何でも聞くよ」
そう言われても、ミリアムには全く見当がつかなかった。正直言って魔法か何かとしか思えなかったからだ。
「……テレポート」
我ながらバカげた答えだと思ったが、それしか思いつかなかった。
「残念、外れ。悪いけど、テレポートとは全く関係ない。ヒントは僕自身が本当に移動しているってことだけど、答えは相棒にも教えられない。タネが割れるとエースパイロットとかには効かなくなる能力だから」
僕自身が移動?高速移動能力か?しかし、周囲に全く影響を与えず、あんな高速移動は不可能だ。ただ、常識外の物ならば、周囲に影響を与えず高速移動も可能だ。だが、それでも何か違う気がする。
それに見せ方自体がおかしい。高速移動が能力なら、ゴミを投げつける必要は無いはずだと。ミリアムは、とにかくリヒトの持つ“ギフト”が気になって仕方なかった。思考がリヒトの“ギフト”にばかり行ってしまう。
「ミーちゃん、僕の話し聞いてー」
リヒトに言われ、ミリアムはハッとして、新しいコーラに手を伸ばし、それを飲んで頭を冷やした。
「で、さっき言った、聖杯とかも“ギフト”。ユウキ・クラインが持ちだして逃げた物。これの回収が結構、重要な任務になる。どれも結構ヤバい品らしい」
ミリアムはそう言われても好奇心しか湧かなかった。ワクワクする心を抑えられず、リヒトに尋ねる。
「効果は?」
「分かっているのは聖杯だけかな。聖杯はとりあえず、凄く楽ちんな延命装置って感じだけど。興味ある?」
ミリアムは何度も頷くのでリヒトは説明する。
「形状はまんま杯、設計上こうするしかないって話しらしいけど、僕には良く分からんね。取り敢えず、聖杯に自分の血をそれなりに入れる。そして聖杯に入れた血をそのまま誰かに飲ませると、その相手の意識を奪い、身体を乗っ取れる。そして同時に元の身体は死ぬ」
ミリアムは考え、まとめてみる。
「意識のコピーではなく、純粋に相手の意識を奪う道具なわけか。コピーだと元の自分が残り、不安になるから、ある意味では、そういう形式の方が安心は安心なのだろうか」
「まぁ、そうなんじゃない。とにかく、ユウキ・クラインは自分のクローンを作って、聖杯を使って、若いクローンの肉体を手に入れた。と言っても、それも十年前くらい前の話しだから、今の身体は分からない。
聖杯を今もユウキ・クラインが保持しているなら。頻繁に肉体を変えている可能性もある。まぁ世界平和を目標に掲げる組織としては、そういうヤバいシロモノを放っておくわけにはいかないし、自分たちで管理しておきたいのよ」
ミリアムは少し気になったので聞いてみる。

 
 

「話しを聞く感じだと、プロメテウス機関は羽クジラの化石を確保している様子だが、聖杯以外の“ギフト”については分からないのか?」
ミリアムの質問に対して、リヒトは良い質問だと思い、口を開く。
「そこが化石集めに繋がる話しなんだな。“ギフト”に関してはプロメテウス機関の持っている化石から作れるものはだいたい判明しているが、その中に聖槍なんかはなかった。
そして、色々と調べてみると、ユウキ・クラインは極秘に木星に調査船団を派遣していたことが分かった。
機関の予測ではユウキ・クラインは他の羽クジラの化石も入手して、そこから聖槍なんかの“ギフト”を作った可能性があり、そして、僕の父さんたちがプロメテウス機関を襲撃した際に、その化石を粉砕して、各地にばら撒いた。
というよりも誰かに渡して、世界中に配らせたか隠したって感じかな、後で回収するために。ミーちゃんが持っていた化石もユウキ・クラインの化石の欠片だったわけだ」
なんとも、とんでもない話しになってきたぞと思いながら、ミリアムは話しを聞きながら思ったことを尋ねる。
「聖槍なんかもユウキ・クラインが持っているということは」
そういうとリヒトは即座に首を振る。
「それはない。ユウキ・クラインしか開けることの出来なかった保管庫に形状だけ残っているデータだと聖槍は、MSじゃないと持てないサイズで、聖釘は数が複数の上、重さが一つで数百トンもある訳の分からないシロモノだ。
聖骸布に関しては、全く分からないが、とにかく、父さんたちがプロメテウス機関を襲撃した際、三つの物体がどこかに射出されたデータだけはある。どこを目的地に射出されたのかまでの情報はないけど」
なんとも荒唐無稽な話だと、ミリアムは思ったが、とりあえず信じていれば、自分の将来の安全は約束されることは確実なので一応信じることにした。そしてミリアムはリヒトに聞く。
「とりあえずは、化石集めということか。消息の全く分からないユウキ・クラインや聖槍などより、研究機関に保管されている可能性が高い、ユウキ・クラインの羽クジラの化石集めを優先ということか」
リヒトはその通りといった感じで頷く。
「とりあえず、化石を全部集めて封印が、プロメテウス機関の目標だしね。“ギフト”なんか作ってはいるから説得力無しだけど」
まぁそこら辺は気にしないようにしようとミリアムは思った。とりあえず、将来の安定を得るためにリヒトを手伝おうと思うのだった。
「んじゃ、ニューヨークにでも行こうか」
ミリアムは脈絡が全く分からず、リヒトを見る。
「ユウキ・クラインはニューヨーク大学に留学していたことがあって、ニューヨークで色々と刺激を受けたって話しがあるし、ニューヨークに行こうか」
そう言って、リヒトは相棒になったミリアムを連れ出したのだった。

 

C.E.2XX しかし、こうして見ると、初めて自分があった時のミリアムとは別人だなとエルヴィオは思った。
初対面の時には既に、女の子の言葉づかいでリヒトをお兄ちゃんと呼んでいたわけだが、なんともまぁ色々あったんだよなぁとリヒトから直接聞いた話を思い出す。
しかし、本当に会った当初からミリアムはツインテールだったのかエルヴィオは疑問に思った。だいたい研究所の人間が、研究対象にそんな可愛げのある格好をさせるのか?
疑問は絶えないな。エルヴィオは考えても仕方ないと思い、ミリアムに直接連絡して確認でもするかと、一瞬思ったが、それも面倒な気がした。
とりあえず、さっさと完成させてしまった方が気が楽だと思い、エルヴィオは文章を再び打ち込むのだった。

 
 

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