GUNDAM EXSEED_EB_8

Last-modified: 2016-01-12 (火) 20:20:21

リヒトは血塗れの姿で、レイノルズ宅に帰って来た。誰もが、血塗れのリヒトを見ると、ホッと胸をなでおろしたが、そのほとんどが返り血や意図的に自分の身体に塗った血であることを理解すると。グランパとグランマは渋い顔になった。
「狂気はつかうなよ」
グランパが言うが、リヒトは首を横に振る。
「それは無理。使わないと勝てない奴がいる」
そう言って、リヒトはシャワーを浴びに浴室に入る。シャワーを頭からかぶり、血汚れが排水溝から流れていくのを見ながら、リヒトは笑いをこらえられなかった。
「ヒ、ヒヒ――」
人か獣か分からない生き物の声が浴室から漏れてくる。
リヒトは全身の汚れを落とすと、必要な装備を全てバッグに詰めて、ミリアムに言う。
「もう出っから。グランパとグランマにお別れの挨拶」
リヒトの言葉はあまりに急だったが、リヒトについていくことが契約にあるミリアムは従うしかなかった。
「じゃ、ありがとうね。グランパ、グランマ」
リヒトはそれだけ言うと、さっさと家の外に出る。対してミリアムはグランパとグランマに抱きしめられ、引き留められている様子だったが、リヒトは興味がなかった。すこし待っているとミリアムが涙ぐんだ表情で家から出てくる。
リヒトはそれも完全に無視して、ジェネシスガンダムを呼ぶと、二人をコックピット内に転送させた。
「こんなに急に出発させたんだから、何かあるんでしょ、お兄ちゃん」
「ないよ」
リヒトは一言で切って捨てる。
「ただ、ユウキ・クラインのカーボンヒューマンにボコボコにされた。今の装備じゃ奴は殺せないから、装備を整えに行く。とりあえず中近東な」
ジェネシスガンダムは通常のスラスター移動で、中近東地域の某所を目指す。
「正確にはプロメテウス機関の武器開発を行ってる施設。宇宙じゃないと作れない兵器があるのと同じで、重力がないと作れない兵器もある」
リヒトをそうミリアムに説明し、とりあえず眠りについた。あんまりきちんと寝てないことを思いだしたからだ。何かあればミリアムが起こすし、アテネも起こす。
そう思っている内にミリアムに肩を叩かれ、リヒトは起こされた。
「おしっこが……」
顔を真っ赤にして言うミリアムに対し、リヒトはコックピットの中で立ち上がる。ジェネシスガンダムのコックピットは常識外の広さと収納を持っている。リヒトが取り出したのは、オムツであった。
「それ履いてすればいい。着替えの最中は見ないから。とにかく小便まみれになったら、キミを7分ほど海水につけるから、変な羞恥心は捨てろよ」
そう言って、リヒトは再びねるのだった。
それから、特に問題はなく、ジェネシスガンダムは中近東のプロメテウス機関所有の兵器開発施設に到着した。
到着するなり、施設の駐車場らしき場所が開き、地下への通路になり、ジェネシスガンダムはそこへと降りていく。100m近く降下した後、ジェネシスガンダムはMSハンガーに出たが、ハンガーにMSの姿は一機もなかった。

 
 

「基本的にはセーフハウスと同じ扱いだからな。この場所は。やばかったり、必要なものがない限りは基本的にプロメテウス機関のMSを使うようなオールラウンドのエージェントは寄らない」
リヒトはそう言って、コックピットのハッチを開けて、外へ出ると、大きな声で出迎えがあった。
「よう、リヒト!今日はどうした!」
金髪を後ろで束ね、眼鏡をかけているのは、この施設でも屈指の技術者、トーマスだった。
リヒトはなんのてらいもなく答える。
「がっつり負けた。装備が欲しいのと、俺の機体にナノマシンの供給をしてくれ」
トーマスは問題なしという表現で親指をたて、サムズアップするのだった。
リヒトとミリアムは、ハンガーの床におり、トーマスの後を追いながら、話しを聞く。
「いくつか新製品があるが、それに関してはリヒトに見てもらうとして、そっちの女の子はどうする?」
「手が空いている人間にコンピュータ関係の技術を、コイツに教えてやってくれ」
トーマスはあまり興味の無い様子でミリアムを見ると、適当に頷き、リヒトの申し出を受けた。そして、トーマスは人を呼ぶと、ミリアムを連れていかせるのだった。
「……それで、ガッツリ負けたってどんな感じ?」
「生身では文字通り手も足も出ず。完全に俺の攻撃を封殺されてやられた。直後にMS戦に移ったが、ゴーストムーブを完全に見切られた上に四神剣もモードの2までは理解された」
それって相当ヤバいんじゃない?トーマスはそんな表情を浮かべながら、試作の武器が大量に保管されている、部屋へとリヒトを案内した。
「そいつ、接近戦型?」
トーマスの質問にリヒトは頷くと、トーマスは部屋の隅からコートを取り出し、リヒトに見せる。
「クレイモアコート。名前で機能は想像。殺せるほどの威力は持たせられなかったけど、近寄ってくる相手には良いと思う」
そしてトーマスは近くにあった武器を手に取る。
「連射式クロスボウ。ベルト上で固定されたボルトを一つでもクロスボウ上に乗っけると、クロスボウがマガジンのように認識して、連射してくれる」
リヒトは見せられたクロスボウと、そのボルトを見て違和感を覚えた。
「少し太くないか」
ボルトの太さに関してである。明らかにクロスボウの矢にしては太すぎるとリヒトは思ったが、それについても、トーマスは笑いながら一発撃ってみろとリヒトに、クロスボウを渡すのだった。
リヒトは渡されたクロスボウとベルト上に複数つけられたボルトをクロスボウの上に乗せると。クロスボウがベルトをロックし、クロスボウの本体に巻き付くようにベルトを固定する。
リヒトは片手、クロスボウを構えると、試作品部屋につきもののターゲットに撃つ。クロスボウは凄まじい速度発射され、鋼鉄製のターゲットを貫くと、直後に爆発した。
トーマスは説明する。
「太くしたのは爆薬を入れるため、矢自体には神経毒が塗られているから、使用前に解毒剤は必須。装弾数は12発。これはどうかな?」
リヒトは頷いて言う。

 
 

「気に入った、貰うよ」
そう言ったあとで、リヒトはクレイモアコートも着る。
「あまり、収納が無いな」
「そりゃあね、用途が用途だから。でもアンダーアーマーに良いのを開発してあるんだよね」
そう言うと、トーマスは急いで動きながら、服を取り出す。それは黒のフード付きシャツと、黒のカーゴパンツであった。
「コイツはどうかな?」
リヒトはそう言われたので、とりあえず、パンツ以外を脱ぎ、トーマスに渡された服を着る。着心地は悪くないとリヒトは思った。シャツは厚手に見えたが通気性も完璧だし、カーゴパンツもちょうどいい。
リヒトはその上にコートを羽織り、シャツのフードを外に出し、被ると、リヒトの顔は完全に闇に消えた。
「カーゴパンツの方は万能ジョイントを大量に備えているから、どれだけでも武装の懸架が可能。上のシャツも、プロメテウス機関で使われている装備の仕様の基本は全部抑えているから問題ないと思う」
なるほど、良いかもなとリヒトは思う。
「とは言っても、弾が当たった時に痛いって感覚までは消せない。どんな弾を食らっても打撲で済むだけだから、過信しないように」
分かってますよ、と思いながら、リヒトは武器庫同然の部屋を見て回る。その中で気になるものがあった。銃口は1cmもない癖にやけに巨大なマガジンを持ったサブマシンガンである。
「いいのに目が行った!それはエッジガン。取り敢えず撃ってみてよ」
リヒトはトーマスに推されエッジガンを手に取ると、片手で、その引き金を引くと、銃口から出たのは、小型のナイフであった。それがフルオートで発射される。
「面白いだろ?防弾装備を貫通する威力がある。弾数はマガジン1つ300発。ナイフを極限まで薄く、殺傷力を上げた結果こうなったっていう武器だ。欲しいならあげるよ」
リヒトは右手に持つエッジガンを見て悪くないかもしれないと思い受け取ることにした。
「じゃ、次はロッドブレードだ近接戦が得意な相手には一本持っていても悪くはないと思うね」
そうトーマスに見せられたのは、四つの鋭利なでっぱりがある警棒だった。リヒトは手に取ってみるが、何とも不思議な武器だった。鋭利なでっぱりは切れ味があるかと思ったがそんなことはなかった。
「スイッチを押すと世界が変わる」
言われた通り、スイッチを押すと、武器の形状が瞬時に変わる、対角線にあるでっぱりが急に伸び、斜めに僅かに回転すると先端に鋭利な刃が現れ、もとのでっぱりも、この形態だと切れ味を持つようだった。
「殺傷モードと非殺傷モードを切り替えられる、ショートソードって感じだな。殺したくない時はロッドモードで殺す時はソードモードという感じだ。変形機構突っ込んだせいで、強度が落ちたと思うかもしれないが、そんなことはない。
特殊合金製で人間の頭蓋を砕くのも骨を斬るのも楽々だ。ついでにスタン機能も加えたので、安易に接近戦を挑んでくる奴に思い知らせてやれ」
面白いし、結構気に入ったので貰っておくことにしようとリヒトは思うのだった。
そして最後にあったのは、単発式の大型拳銃が二丁。リヒトはデザインが気に入ったので手に取ってみたが、トーマスはバツの悪い表情を浮かべていた。
「トンプソンのコンテンダーが手に入ったんで、ちょっと悪乗りした銃なんだ、それ」
どこら辺が、と思いリヒトは弾薬の入っていない銃をターゲットに向けて引き金を引く。

 
 

「あ」
トーマスが間の抜けた表情をした瞬間、凄まじい爆発音が、銃から発生した。そして、鋼鉄製のターゲットが僅かにへこむ。トーマスは申し訳ないという顔で言う。
「武器名は、ノンセレクター。用途は、基本的に何でも銃弾に出来ること。小石でも何でも銃の中に入れれば、発射して人間を殺せるって武器を考えた結果、そうなった武器。見た目は古い銃だけど、高度なコンピュータ制御で、弾体を把握し、最高性能で発射する。
火薬が無ければ、周囲の空気を圧縮し撃ちだす。ちなみに、弾はこの世の全ての弾丸が使用可能。弾薬無しでも、引き金引けばマトモな人間は、空気圧で10m近く吹っ飛ぶけど、いる?」
もちろんとリヒトは言って、これで装備が一通り整った。少し重いかもしれないが、もともとユウキ・カーボンには速度で負けているのだから、大した問題ではないと思うことにし、リヒトは全ての装備を受け取り、部屋を出る。
あとは自分用に調整だけだ。それが終われば、当座、ユウキ・カーボンを仕留めるのに十分な装備が整う。そう思いながら、装備類を持ちつつ、リヒトはあてがわれた自室に向かうと、すぐに装備を作成する。
45口径オートマチックピストル二丁にカービン、そしてエッジライフル。緊急時用ということでピストルは腰にホルスターを用意。マガジンも近い位置にセット。
クロスボウのサイズは多少大きめだが、弓の部分の折り畳みが効くので、鞘のような大型ホルスターを腰に吊り下げる。エッジライフルも似たような形でクロスボウの反対側にカーゴパンツのベルト部に吊り下げる
ロッドブレードはピストルに近い位置にセットし、とにかく抜きやすさを重視。そして問題のノンセレクターだが、これに関しては、両胸のサスペンダー状にみえるガンベルト装着することにした。
ガンベルトの左側は50口径リボルバー。右側はノンセレクター二丁に、ユウキ・クラインの銃であるピースメーカー。そして、服の各所に銃弾を束にして収納することにした。
当然、リストブレードも忘れてはいない。
ユウキ・カーボンと戦える装備。多少、不安はあったが、リヒトはそう思うことにしたのだった。
「入って良いか?」
トーマスが扉をノックする。リヒトは応じて、扉を開けると、トーマスは用事を端的に言う。
「一応、機体用の武装も装備させてみた。気に入らなければ。外すから言ってくれ」
そう言って、トーマスはさっさとMSハンガーに向かう。それに続いてリヒトもMSハンガーに向かい、新装備を装着した機体を見る。
リヒトはあまり期待してなかったが、実際、機体を見てもパッとした感想を抱くことは出来なかった。
ジェネシスガンダムに大幅な改造は加えられておらず、適当に武装を装備しただけというのも、リヒトがそんな感想を抱く原因だったかもしれない。
そんなリヒトの感想など思いもせず、トーマスはノンビリ説明する。
「左腕の前腕部に装備させたのはマンティスエッジ。一応“ギフト”だが、どこの施設も持て余して内に回ってきたシロモノだ」
リヒトはジェネシスガンダムの左腕にショーテルを思わせる刃が装着されていることを理解したが、単純にショーテルではないのだろうなと、予想がついた。
「後は両の手首、手のひら側な。そこに、スパイダーブレードを付けてみた。素材部分は“ギフト”を使ってるが全体では“ギフト”じゃない。うちのテストパイロットは誰にも使えなかったものだけど、リヒトなら使えるだろ」
リヒトはジェネシスガンダムの掌の付け根に小さな爪の付いたボックスが装備されていることを確認し、次に移る。
リヒトが気になったのは、右ひじに装備された、小型のランスであった。
「スコーピオランス。これも、練習が必要な武器だな。あとついでに、両脚と腰に絡まってるような装備が見えるだろ?」
リヒトはそれも気になっていた、ジェネシスガンダムの腰を一周したうえで、両端が両脚に巻き付き、つま先まで伸びている、虫の頭部をした装備だ。

 
 

「センチピードバイト。これも武装だ。多分、練習しないとマトモに動かせない武装ばかりだから、テスト場は自由に使っていいぞ」
トーマスはそう言って、リヒトにマニュアルを渡すと、さっさと帰ってしまったのだった。
リヒトは仕方ないと思い、とりあえず虫の名前を付けられた全ての武装を試すことにしたのだった。

 

全ての武装のテストを終えたリヒトの感想は、まぁまぁであった。基本的にどの武装も使用に関しては問題はないが、有効活用するには工夫が必要だとリヒトは考えた。特にユウキ・カーボンが相手なら尚更だ。
リヒトは武器の性能テストが終わると、ミリアムの様子を見に、施設内へ入る。多分情報処理センターだと思い、そこへ行ってみると、人だかりが出来ていた。その中心にいるのは端末に向かい合うミリアム。
そして周囲の人々はミリアムの教師役の人間たちだった。
全員がごちゃごちゃと言っていて、リヒトだったら、全員をいったん殴り倒して、一人ずつ喋れとやりたくなるような状況だったが、流石はスーパーコーディネーターというべきか、ミリアムは全員の言葉を聞きとり、課題を処理していく。
まぁ馴染んでいるようで何よりだが、リヒトもミリアムに用事があった。しかし、この状況では、声が聞こえそうもないし、そもそも大声を出したくなかったので、リヒトは、懐からノンセレクターを抜くと真上に向けて弾を込めずに引き金を引く。
直後、爆発音がし、天井がへこむ。その轟音によって全員が黙る中、リヒトは悠々と歩きながら、人混みを抜けてミリアムのそばに行くと、指示する。
「ワシントン・スクエアの監視カメラの映像を数日分出して、そこにユウキ・クラインの二十代半ばごろの姿が映っていたら、それを保存して、検索にかけて見つけ出せ。全ての場所に検索をかけるんだぞ」
そう言って、リヒトはミリアムの頭をポンと叩くと、去って行った。仕事上の相棒なだけだから、もともとそんなに気を使う必要も無いわけだ。とにかくユウキ・カーボンを見つけ出してもらえればそれで良い。
そう思い、リヒトは適当に施設を歩いていると、偶然にジェシカに出会った。プロメテウス機関というより、プロメテウスPMCのほうに所属している感が強い女性だ。
少しくすんだブロンドの髪を、後でまとめている。少したれ目だが、優しそうな顔立ちの女性だった。実際、戦闘員ではなく、孤児の保護などを主任務にしている。
「やぁ」
「お久しぶりです。リヒト君」
リヒトより年上だが、言葉遣いは丁寧だった。リヒトとしてはまぁそれもいいのだが、とにもかくにも、少しムラムラしてきた。何せジェシカは巨乳だからだ。
「ちょっと、話しでもしない。大人な話し」
リヒトは少し、強引に距離を詰める。別にしたことがない関係ではないので、部屋に連れ込むのは簡単だった。もともと押しに弱い方でもあるし、楽であるとも言えた。
リヒトはジェシカを部屋に連れ込むと、優しくベッドに押し倒した。押し倒したのは良いが、装備が重いと思い、リヒトは急いで全ての装備を外し、ジェシカの胸に顔をうずめる。
「うーん、負けちゃったよー」
とりあえず甘えてみる。さすが巨乳というか包容感が違う。そうやって、リヒトが胸に顔をうずめると、ジェシカは何も言わず頭を撫でてくれる。幼児退行も悪くないなとリヒトは思いながら、ジェシカの服の胸元だけをはだけさせ、下着を露わにさせる。
下着は色気の無いシンプルなものだったが、ジェシカの活動範囲が中近東から北アフリカであることを考えると仕方ないかとも思ったが、とりあえず、こんど素敵な下着をプレゼントしようとリヒトは思うのだった。
リヒトは下着をずらすと、ジェシカの胸に吸い付く、ジェシカは優しい表情でリヒトの頭を撫でながら、言う。
「赤ちゃんみたいですね」
そりゃあねぇ、父さんとかオジサンとかから愛情を受けて育ったのは確かだけど、おっぱいには縁がなかったから、乳離れできてないのよね、僕。と馬鹿なことを考えながら、リヒトは、ジェシカの下半身に手を伸ばした。
――以下18禁――

 
 

「お兄ちゃん、調べるのには時間がかかるから、しばらくここに――」
ミリアムはノックせず、リヒトの部屋に入った。すると、リヒトがミリアムの見知らぬ裸の女性に対して犬の交尾のようにのしかかっていた。
「少し、外で待ってろ、とりあえず、終わるから」
リヒトはそう言って、怒るでもなく、淡々とミリアムを部屋から追い払う。そうして十分ほどしてから、上半身裸に、ズボンをはいたリヒトがドアから顔を出してミリアムに言う。
「用があるなら、入りなよ」
いや、なんか、それは嫌だとミリアムは思い。ドアの所でリヒトに言う。
「えーと、調べるのには時間がかかるから、少し待ってほしいというか、しばらく、ここで調査する時間が欲しいかも」
なんだ、そんなことかと思い、リヒトは了承の頷きをしながら言う。
「ミーちゃんが必要だと思うなら、いくらでも調べていいよ。それにここの空気もあってそうだし、場合によってはここに住むって選択肢も考慮にいれておきなよ。じゃ、僕は続きがあるので」
続き?ミリアムはどういうことだと思い、ミリアムはチラッと部屋を覗くと、優しげな顔立ちの女性が困った顔で目があったミリアムに手を振った。
ミリアムは自分には早い世界だと思い、さっさとその場から、去るのだった。
それから、シャワーを浴びたりしてインターバルを入れながら、リヒトは溜まってたものを全て吐き出した。そう言えば、のっぺらぼうにした女性調査官も美人な方だったが、食指が動かなかったなぁと、どうでもいいこと思い出した。
とりあえず、一通りことが終わったので、甘いピロートークでもしようかと思った瞬間、ジェシカが言いだす。
「何かありましたか?」
ジェシカは優しい目でリヒトを見ながら言う。
「べつにー、なんでそう思ったわけ?」
「今日は、いつもよりも甘えてきましたから」
そうかぁ?と思いながら、リヒトはベッドから出るとシャワーを浴び、身体の表面を湯で流す。
さっさとユウキの野郎を見つけてどうにかしないとプライベートでも支障が出そうな気がしてリヒトは拳を握りしめ、意志を強くするのだった

 

しかし、そう簡単にユウキ・カーボンの行方が見つかるわけもなく、リヒトはしばらくの待機を余儀なくされていた。その時である。
トーマスが命令書を持って、リヒトのもとを訪れた。
「ほれ、上から。機関じゃなくてPMCの方の仕事だ」
そう言ってトーマスはぞんざいに命令書をリヒトに投げ渡す。書いてある内容は極めて簡単。地球連合軍と所定の位置にて合流し、クライン公国のMS部隊を撃破せよ。それだけである。
「アテネ、場所は?」
(アフリカ大陸中央です)
つまりはいつもの小競り合いで、適当にビームやら何やらを撃ったら帰るって感じの茶番かとリヒトは思った。
ここ十年の間に戦争の形は大きく変わった。何が変わったかというと、マトモに戦わなくなったのだ。

 
 

軍人はトップ同士が談合でもしているのではないかというくらい、攻める気力が少ない。ただまぁ、何もしないわけにもいかないから、相手の領土圏に侵入して、何をどうこうしたぐらいのことはやっており、今回の小競り合いもそんなものだろうとリヒトは思った。
まぁ暇つぶしには良いだろうと思うと、リヒトは適当に装備を整える。
機関の任務の時は使わないプロメテウスPMCの戦闘員服を着て、機関の任務の時の装備は全て置いていく。プロメテウスPMCの制式採用拳銃とコンバットナイフを収納し、制式採用小銃を片手にリヒトは部屋を出て任務の地に向かうのだった。

 

武器か。とにかく武器にはこだわる男だったことをエルヴィオは思い出す。本人はたいしたことがないと言っていたが、リヒトは完全な両利きであり、どちらの手でも恐ろしく精密な作業ができた。そして、その器用さはMSの操縦にも存分に生かされていた。
とにかく、リヒトは良い武器、カッコいい武器、面白い武器など、武器に関しての興味関心は尋常ではなかった。それはついぞ変わらなかったとエルヴィオは思い返す。
とはいえ、リヒトが武器にこだわるのは理由がある。リヒトは良い武器を持っている人間が勝つという哲学を持っていた。そして、遊びをなしにしたリヒトは高性能の武器を完全に使いこなし、敵を圧倒し続けていた。
その様は時々、エルヴィオの目には卑怯にも映ったが、リヒト曰く、計画的に戦いの時まで良い武器を用意しきれない奴の努力不足と、相手の武器を理解し、瞬時に対策する技量が無いのが悪いと切って捨てていた。
とにもかくにも、武器にこだわり続けていた男、それがリヒト・グレンだった。

 
 

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