KtKs◆SEED―BIZARRE_第44話

Last-modified: 2011-03-11 (金) 00:05:47

 『PHASE 44:復讐するは我にあり』

 
 

 まず、現状についての描写をしよう。
 ブチャラティとセッコの二人の間にある距離は、およそ5メートル。互いにスタンドの射程距離の外にある。
 セッコは前回の戦い同様、全身を包むダイバースーツのような、奇妙な服をまとっている。
 対してブチャラティはいつもとは異なる。普段の彼のお気に入りは、円の下側に突起をつけた、鍵穴の形に似た模様が並ぶ、たくさんのジッパーをつけたスーツの上下である。前にルナマリアと共に、セッコと戦った時もその服を着ていた。
 しかし今はであり、会場警備を担当している身だ。そのような奇抜な服を着るわけにはいかず、先ほどまでは黒いスーツにネクタイを締めた姿をしていた。そして今現在は迷彩服の上に防弾チョッキ、ヘルメットをまとう、実戦的な特殊部隊の姿に着替えている。
 装備はレナ・イメリアも同様だ。銃弾、刃物、冷熱などに対する防御は中々のものである。とはいえそういった質の高い防御も、セッコのスタンド能力『オアシス』の『触れたものを泥化させる能力』の前には無力だが。
 次に語るべきはブチャラティの右足だ。ヴァニラ・アイスとの戦いで、足首から先を失ったそれは、今は精巧な義足となっている。ただ形だけの義足ではない。戦闘を行うには、力強く走り、跳び、踏み込み、踏み堪えることができなければならない。
 シュトロハイムの体を形作るサイボーグ技術を発展させた、連合軍の義手義足の技術力は、まさしく世界一である。指一本一本まで細かく造られ、神経からの電気信号を読み取り、本物同様に動かせる。内蔵されたバッテリーは激しく動かしても三日は持つ。
 精密な電子機器でありながら、頑丈さも折り紙つきであり、並みの拳銃に撃たれたくらいでは穴も開かない。現在の技術でできる最高峰の義足なのである。ゆえに、ブチャラティの力は足を失う前に比べて、まったく落ちてはいないと言っていい。
 ブチャラティの両腕に抱えられたレナ・イメリアはさきほど描写したように、特殊部隊としての基本装備をまとっている。だがルナマリア・ホークはパイロットスーツに、護身用の拳銃がせいぜいである。
 そしてブチャラティたちの背後、彼らから10メートルほど離れた位置には、先ほど爆発したコアスプレンダーの残骸が燃えている。そこから更に10メートル先には、ブチャラティがここまで駆けつけるのに使った軍用車があった。

 

「今日が来るのをず~っと待っていたんだぜぇ? てめえをブチ殺す日を夢見てなぁ!!」
 セッコが動く。足元を泥化させ、スケートをするように滑り、急速に間合いをつめて殴りかかろうとする。
「待っていた。そうか………」
 自分のスタンドよりも強く速く、危険な拳が迫るのを、しかしブチャラティは怯むことなく見つめながら言い放った。

 

「こっちもだ」

 

 その言葉の一瞬後、レナ・イメリアがセッコに向けて、拳銃のグリップほどの大きさの何かを投げた。セッコは戸惑うが、自分にぶつかったところで溶けてしまうだけだと考え、突進をやめなかった。
 だがセッコはすぐに気付くべきであった。ブチャラティがルナマリアの耳と目を両手で抱え込むようにして塞ぎ、自分の耳もスティッキー・フィンガーズに塞がせ、目を閉じたことを。それを投げてすぐ、レナも自分の耳と目を塞いだことに。
 しかし、セッコがそのことに気付く前に、それは発動した。目を潰す閃光と、耳を破る爆音が撒き散らされる。聴覚に優れるセッコは、余りにも巨大過ぎる轟音の直撃を受け、叫び声をあげた。
「オバアアアアアアアアアア!!」

 

 悲鳴を聞いてから、ブチャラティは閉じていた目を開ける。
「スタングレネード………聞いたことくらいないか? 暴徒鎮圧用の手榴弾だ。破壊力は無いが、音と光によって敵を無力化させる。スタンド使いにも通用する武器としては手ごろだ。結構効くだろう?」
 心臓の弱い人間ならショック死する可能性があるほどの大音量と大光量。拳打や銃弾以上に、セッコにとっては凶悪だ。鼓膜は破れなかったようだが、まだまともに音は聞こえていないだろう。
「ぐががっ………て、てめえ、ぐうううう………」
 耳を押さえ、悶えるセッコには、ブチャラティを罵る余裕も無いようだった。それでもどうにか後方に下がり、距離を開けて攻撃されないように避難している。
「お前がこの世界に来ていると知ってから………何も準備していないと思ったか? レナにもお前のことや、能力について教えてある。お前の泥化する能力に対抗する装備も整えた。今のは序の口だ。火炎放射機に催涙ガス、音響兵器………まだこれからだぞセッコ」
 その時には既に、レナは背後の軍用車に走っていた。敵がラクスやヴェルサスであるとわかってから、セッコの登場は予測がついていた。当然、そのための装備も積んである。
 今や状況はセッコに相当に不利だ。
「フクッ、グフ、クケケケケッ」
 にも関わらず、セッコは笑った。
「ハア、ハア、調子に乗ってるんじゃねえぞブチャラティ。こっちだってなぁ」
 セッコが右手を地面に突き入れる。ドボリと地中に沈んだ腕が引き抜かれた時、右手には一抱えほどもあるボックスの取っ手が握られていた。

 

「『秘密兵器』は、あるんだぜぇ~。ククククッ」

 

 ボックスは金属でできており、完全に密閉されていて内部は見えない。何かの武器だろうか。

 

 セッコの指が、ボックスのスイッチを押す。ボックスの蓋が開くと同時に、目にも止まらぬ速度で、内部からそれが飛び出した。
 上空高く舞い上がったそれの周囲に、急速に円錐状の何かが形作られ、そして急速に、発射された。
「! 危ないレナ! 避けろっ!!」
 ブチャラティの切羽詰まった声を聞き、レナは反射的に右方向に飛び退く。それで正解だった。彼女がいた場所を、円錐状の何かがミサイルのように貫き、大地に突き刺さって風を巻き起こしながら砕け散った。
 同時に軍用車にも円錐が炸裂する。軍用車の鋼鉄の装甲に穴を開いた。しかしそれでは終わらず、八つの円錐が次々に軍用車に突き刺さり、軍用車はあっという間に、積んだ装備ごとスクラップにされた。
 しかし、積まれた装備には爆発物もあったはずなのに、一つも爆発しない。よく見れば、破壊された軍用車には、白く霜が被さっており、周囲には鉄片などだけでなく、透明の氷の破片がばら撒かれている。あの円錐の正体は、氷だったのだ。
 それゆえに熱量が発生せず、爆発物に着火することもなかった。そして、その氷のミサイルを発射した存在とは。

 

「あれは………鳥?」
 ルナマリアの呟き通り、ボックスから放たれたのは一羽の鳥。鋭い爪に、曲がった嘴。俊敏に空を舞うそれは、鳥類の中でも最速の域にある猛禽類――ハヤブサだった。獰猛な視線でブチャラティたちを睨みつけ、突き刺さりそうな殺意を向けている。
 それだけでなく、ブチャラティの目には、ハヤブサの周囲に翼竜の化石のような像が浮かんでいるのが見えた。それの体は背骨と何本もの肋骨と足のみで、翼はなく、肋骨の先には小さな手がついていた。
 まぎれもなくスタンド。
「スタンド使いの………鳥」

 

「そうさ。奴の名はペットショップ。スタンドは『ホルス神』。今見ての通り、凶悪なスタンド使いだぜ。さあ、もう一度さっきの余裕面を見せてみろよぉ~、グヒャヒャヒャ!!」

 

 笑うセッコと、睨むペットショップ。ここから、ようやくこの戦いの本番が始まる。

 

   ◆

 

 銀の剣が振り回され、一瞬後、壁が切り砕かれて大の男が3人まとめて通れるほどの大穴が開く。その穴の向こう側を穴を開けた張本人であるポルナレフが確認する。そして、
「よし、ようやく外に出られる。敵はいないようだが、注意しながら落ち着いて出てくれ」
 後ろに引き連れてきた各国の要人たちと花京院、アヴドゥル、イギーに向けて、指図する。要人たちはポルナレフの乱暴な言葉使いにやや顔をしかめる者もいたが、この危機的状況でそんな些細なことに文句を言う愚か者もいなかった。
 皆、大人しく外に出ていく。そうしている間にも、ハーヴェストを通じて抜け穴の場所を知った重ちーから連絡を受けたのだろう。迎えの増援がやってくる。この分なら今いる要人たちは安心だと判断し、花京院は息をつく。
 増援部隊に連れられて、避難場所に向かい遠ざかってうく要人たちを見送りながら、護衛の増援として来た軍人の一人に、現状の詳しい話を聞く。
「ふーん、するとデュランダル議長やカガリ代表らを含めた十数名以外は、ほぼ脱出させることができたわけか」
 スピードワゴンは上手く脱出できたらしく、一度外に出ていたが、すぐにまた救出活動のため内部に入っていったそうだ。
「だが一番の重要人物であるデュランダル議長がまだ中にいるというのはまずいな。僕らももう一度探しに入ろう」
「うむ。イギーの鼻なら、探し出せるかもしれないしな」
 花京院の言葉に、アヴドゥルも頷く。ポルナレフはもちろん反論などせず、むしろ早く助けにいこうと急かしている。イギーは面倒くさそうな空気を漂わせているが、強く反対してもいないようだ。
「ということで、要人たちは君らに任せた」
「ハッ、責任を持って護衛させていただきます」
 花京院に向かって敬礼する軍人の返事を聞きながら、ふと、アヴドゥルの眼にかつて一度見たことのあるものが見え、すぐに軍人を突き倒した。
「うわっ! な、何を………うっ!」
 文句を言おうとした軍人の言葉が途切れた。アヴドゥルの左肩が切れ、血が流れているのを見たためだ。
「アヴドゥル!」
「大したことない! 早くスタンドを!」
 花京院、ポルナレフ、イギーも、今アヴドゥルを襲ったものを見た。その場の全員が、それを見たことがあった。彼らはすぐにスタンドを出し、体勢を整える。
「ちい! 早く逃げな! こいつは俺たちじゃなきゃ無理だ!」
「ひ、は、ハイィィィィィ!!」
 ポルナレフの促しに、悲鳴と入り混じった返事をし、軍人は転がるように逃げていく。その後ろ姿を見送る余裕もなく、3人と1匹は、敵の姿を見据える。4対1でも油断はしない。敵はかつて6対1で彼らと戦い、2人を戦闘不能に追い込んだ強敵なのだ。
 アヴドゥルに傷を負わせた後、素早く地表を滑って移動した物体は、今は花京院たちから離れた場所で静かにたゆたっている水だった。
 誰もが認める勇者たちの戦闘態勢を前に、スタンド『ゲブ神』はゆっくりと身を持ち上げ、鉄をも切り裂く爪を向けた。

 

 ◆

 

 ハヤブサはエジプト全土で崇められた神の鳥である。最も古い王権のシンボルであり、魂(バァ)のイメージであった。数km先の虫さえ確認できる鋭い眼は、『ウジャト』と呼ばれる、幸運と栄光を象徴し、邪を払う守りのまじないとさえなった。
 そのハヤブサの姿を与えられた神が、ホルスだ。エジプトで最も古く、最も偉大な神とされている。エジプトの言葉ではヘルと呼ばれ、その名は『遠方にいる者』『上にいる者』を意味する。
 ホルス神。その神格は、まず天空の神である。更にその翼で大地を守り、天を覆う、宇宙の神であり、戦いの神であり、そして、王(ファラオ)を護る玉座の神であった。

 

 そして、そのホルス神の名を、スタンドにつけられた魔鳥ペットショップもまた、王を護る者であった。王の敵を討ち滅ぼす者であった。そのためには自らの傷など厭いもせず、死ぬことなど恐れもしない。その能力同様に冷たい闘志に満ちた、殺戮兵器であった。

 

 その恐るべき地獄の門番が、今再び、力強く羽ばたいていた。左右に建ち並ぶ高いビルに挟まれた車道を、悠然と見下ろしている。
「ルナマリア。俺に近づくな。巻き添えを食うぞ」
「! ブチャラティさん!」
 ブチャラティは隣のルナマリアにそう伝えると、前に向かって走り出す。10歩ほどの助走をつけ、腰から手榴弾を抜き、ペットショップに向けて投げ放つ。こちらはスタングレネードなどではなく、パイナップルなどと称される、殺傷性の高い本物の爆弾だ。
 しかし、その爆弾はペットショップの間近まで距離を詰めたところで、空中に生み出された氷に包まれてしまう。そして手榴弾入りの氷の槍として投げ返された。

 

 ドズオオォォォォン!!

 

 幸い、その槍はブチャラティに到達する前に爆発したが、これで手榴弾による攻撃は下手に行えないことが確定した。

 

「ギェエエエエエ!!」

 

 ペットショップが鳴き声一つあげると同時に、氷の槍が生み出され、次々に発射される。
「クッ!! 『スティッキー・フィンガーズ』!!」
 ブチャラティを狙った氷の槍を、彼はスタンドを使って弾き返す。スティッキー・フィンガーズの拳を持ってすれば、難しいことではない。速度は銃弾以上ではないし、威力も強力とはいえ、対処できないほどではない。
 ホルス神の腕の数が6本であることから、一度に放てる氷の槍は、6本が限度のようだ。そこまで推測するブチャラティだが、対処法は見出せなかった。
(攻撃は俺にとってそこまで危険な能力ではない。だが、俺のスタンドの射程距離では、奴まで攻撃が届かない。こちらの方が不利。しかも)
「オアシィィィィス!!」
「チィッ!」
 光と音のダメージから覚めたセッコが、その危険な拳をついに振り下ろしてきた。それをかろうじてさばくブチャラティだが、この状況はまずい。オアシスと近接戦闘力がスティッキー・フィンガーズを上回ることは確定している。
(スタングレネードは……2度も食らってはくれないだろうな。それでも防ぐという動作分の時間を稼ぐくらいにはなるか?)
 必死で策を練るブチャラティだったが、強く風を切る音が近づいてくることに気付いた。セッコはより早く気付いたらしく、素早く地中に沈み込み姿を消す。ブチャラティもまた横に跳んで、地面を転がる。そのかいあって、氷の槍の直撃を回避することができた。
「ギエッギエッ」
 どこか忌々しそうに鳴くハヤブサの声を聞きながら、ブチャラティは、セッコがハヤブサを完璧に操っているわけではないと確信した。
(今の攻撃はセッコへの支援ではない。着弾点から見て、あのままならセッコの方がより被害を受けていた。セッコは奴の主人ではない。あの鳥の目的は俺たちを殺すことであって、セッコを助けることは全く考えていない。つまり、チームワークは皆無!)
 ブチャラティの考えは正しかった。もしもペットショップの額の毛を掻き分けたら、そこに芽のように生えた肉のデキモノが発見できるだろう。
 それは『肉の芽』。吸血鬼の能力の一つで、吸血鬼の細胞を元につくったものである。これを額から脳へと差し込み、差し込んだ相手への強い忠誠心を起こさせる、強力な『洗脳装置』なのである。
 かつてDIOが使ったものだが、今回ヴェルサスも使用した。まだ不慣れであるため、的確に操ることはできなかったが、ある程度は命令に従うようにすることはできた。
 今回の命令は『味方の陣営の者以外は皆殺しにすること』である。もっとも、味方の陣営に対しても積極的に殺すことは無いだけで、命令を遂行する中で邪魔であれば、巻き込んで殺すこともためらわない。
 ヴェルサスにも予想外なほどに、このハヤブサの殺戮への執念は激し過ぎた。このペットショップはこちらの世界に来てからは、とある廃墟を縄張りにし、近づく者を襲って殺して食らうことしかせずにいた。別に喰うわけでなくても、生き物は全て皆殺しにした。
 この鳥の生前の存在理由は『主であるDIOの居城を護ること』であった。こちらの世界に来てから、その使命を果たせなかったことへの怒りが、殺戮として発散されたのだ。
 要は八つ当たりに過ぎないが、迷惑が過ぎる。ペットショップの中に縄張りの本能が残されていたのは幸いであった。それが無ければ、縄張りを無視して翼が向かうまま、どこまでも殺戮は広がっていただろう。
(圧倒的に不利なのは確かだが、2対1ではなく、1+1対1だ。その隙間に勝機はある。例え1パーセントにも満たないものでも)
 冷静に判断し、絶望の中でかすかな光明を見据えるブチャラティ。その光明を叩き潰そうと、ペットショップもまた、新たな手段に打って出た。

 

「ギュオオオオオン!!」
 いななくペットショップの鋭い爪の生えた足の下に、氷が形成される。今までのような鋭い槍ではない。コップに入れられて、上からウイスキーが注がれる氷のような、デコボコした塊だ。
 だが大きさが尋常ではない。自動車一つ押し潰すことも容易いだろうそれが、重力に従ってブチャラティへと迫っていく。
「クッ!」
 立ちあがってすぐのブチャラティは、瞬時に動くことができなかった。迫る氷塊が、妙にゆっくりと近づいてくるように感じる。実際には、ブチャラティの姿が氷の大質量に呑み込まれるのに、一秒とかかりはしなかった。

 

   ◆

 

「おぬしたち………宗教についての知識はあるかな?」
 ケンゾーはミーアたちに向けて、日常会話を始めるような口調で言葉を紡ぐ。たった今、皆殺しにすると予告した相手に対する口調とは思えない。
 それは、皆殺しにするというのが本気ではないということではなく、彼にとって人を殺すということが日常、世間話をするのと同様何気ない行為に等しいということなのだろう。
「キリスト教の新約聖書を、読んだことはないかね?」
「………いいえ。既に滅んだ宗教の教本など、興味はありません。アダムとイブの話や、ノアの箱舟程度なら、おとぎ話として聞いたことはありますが」
 ミーアを護るように立ち、銃を抜きながらサラが答える。このコズミック・イラの時代、宇宙開発や遺伝子調整といった、技術の躍進についていけなかったかつての世界宗教は既に廃れている。
「そうか。まあ確かにあのような異教のことは知らないままでも別にいいが、その聖書には、『ローマ人への手紙』という章があってな、そこにはこういった意味合いのことが書かれている。
『信者たちよ、復讐のために罪を犯すな。神は言っている。【復讐するは我にあり】、と。神自身が天罰をくだされる』というようなことがじゃ」
 ケンゾーは言いながら、手を捻り、腕を曲げる。柔軟体操のつもりだろうが、その動きは、普通の人間の関節でできそうな動きではなかった。
「………何が言いたいのです?」
「逆に言えば、じゃ。人間には復讐の権限は無い。目には目を、歯には歯を、はしてはならない。どのような理由があろうと戦うこと、傷つけること、殺すことは罪ということじゃ。これは異教の言葉ながら、中々正しいとは思わんか?」
 ハンムラビ法典の一節を口にしつつ、聖書の教えを讃えるケンゾーに、サラたちは違和感を覚える。復讐を否定し、敵を許すというキリスト教の精神を語る言葉に、この不気味な男が賛同するとは思えなかったからだ。
 そして、その印象は正しかったと、次に彼が放った言葉によって確認された。

 

「人間に罪を犯す権利は無い。そう………その権利は神にこそある。神の代理人として生殺与奪の権限を持つは、新たなる世界宗教の教祖となる、このケンゾーにこそ相応しい。おぬしたちをここで殺すことは、神のなす『正義』じゃ! だから………謹んで、死ね」

 

 シュボッ!

 

 空気を切り裂くがごとく鋭さで、信じられない速度の拳が、サラに向けて放たれた。引き金を引く暇さえ与えられなかったサラは、それでも反射的にその拳を銃身で受け止めて防御する。
「ハアッ!」
 だがケンゾーは動きを止めず、蹴りを突き入れる。腹を打たれたサラは肺から息を噴き出しながら吹っ飛び、地面を転がらされる羽目になる。
「ゲホッゴホッ!」
「サラ!!」
「………ふう~~~、あなた、女のお腹を蹴るなんて、随分美しくない真似をしてくれるじゃない」
 サラに駆け寄るミーアと、ケンゾーを蔑んだ目つきで見る彩。しかしケンゾーは微塵も動じない。
「いやいや、それはその女の罪じゃ。教祖は神の地上代行者。神に等しい。神に対しての邪魔は当然、罪に値する。罪には罰を、復讐を。そう、『復讐するは、我にあり』じゃよ。フハハハ」
 どこまでも身勝手なことを言うケンゾーであったが、その時の彼ははっきり言って調子に乗っていた。つまりは、油断していたのであり、それは戦場において致命的なことだった。
 ケンゾーの死角を縫うように、鈍く輝く金属の切っ先が、無防備な背中へと投げられた。
「ハッ!」
 風を切る音を聞きつけたケンゾーが振り向くが、小さくとも良く磨き上げられたナイフは、彼の右肩に突き刺さる。
「き、貴様!」
 痛みに顔を引きつらせながらも、ケンゾーは襲撃者の姿を認めて睨みつける。『彼女』はナイフを投げたと同時に走り込んでいたらしく、すでにケンゾーの間際にまで来ていた。
 金髪をたなびかせ、美貌の中に敵意を宿し、その手にある、ワインの瓶3本分ほどの大きさの円筒形の物体を振りかぶる。細く白い、小動物を撫でて愛でるのが似合いそうな腕には、見た目以上の力があるらしく、ケンゾーに浴びせかけられる殴打の勢いは速かった。
「おのれぇ!!」
 されどケンゾーは、巧みな足さばきで振り下ろされた攻撃をかわし、反撃の拳を見舞う。少女は身を退いて拳をすかし、円筒状の物体を捨て、銃を抜く。その銃がケンゾーに向けられたのなら、引き金を引くよりも前に、少女は打撃をくらっていただろう。
 だが、少女が撃ったのは、今手を放して地に転がった、円筒状の物質。すなわち、消火器だった。
「くおッ!!」
 穴の開いた消火器から、白い煙幕が噴出する。あっという間に、辺り一帯が白く染まり、視界が塞がれる。ケンゾーは少女が身を退いたのを見て、すぐに攻撃が来ることは無いと判断する。
 そして粉末の消火薬剤を噴き出し続ける消火器を掴み、より遠くへ投げ飛ばした。そして周囲を探るが、もはや近くに人の気配は無い。動く音も、息遣いさえ感じられない。
「逃げたか………だが遠くへは行っておらんじゃろう」
 ケンゾーは、肩に刺さったままのナイフを引き抜いて投げ捨て、壮絶な殺気を発する。
「ナイフを投げてきた小童(こわっぱ)………ヴェルサスからの情報にもあった。ステラ・ルーシェと言ったか。この傷のお返しは必ずする」
 痛みも薄れるほどの怒りに、身を震わせ、
「復讐するは………『神』にあり、じゃ」
 神に傷をつけた不遜極まる少女戦士への、報復を誓うのだった。

 

   ◆

 

「ブチャラティさん!!」
 ルナマリアがブチャラティに向けて悲鳴をあげた。避ける間もなく彼が氷に押し潰されたと思い、心が絶望に落とされる。だが、心が壊れるよりも前に、氷塊の外面にジッパーが生まれ、開かれる。そして中から無傷のブチャラティが現れた。
 どうやら氷に押し潰される前に、落ちてくる氷を殴ってジッパーを張り付け、空間を作り出し、その中に逃げ込んだらしい。
 ホッと安堵するルナマリアだったが、まだ状況が酷く悪いことに変わりは無い。
「何か援護しなきゃ………って、あれ?」
 ルナマリアは、いつの間にかレナ・イメリアの姿が見えなくなっていることに気付いた。軍用車を破壊した氷の槍の攻撃をかわしてから、どこへ行ってしまったのか。
「………そっか」
 ルナマリアは理解する。
「私一人でやるしかないってことね」
 彼女は決意を込めて呟き、銃を抜く。ルナマリアの手には、少しばかり大きすぎるように思える銃だった。だが、セッコとの戦いを経験してから、より強力な武器を使いたいと考えて練習していたのだ。

 もっと強く、もっと速く、もっと正確に。愛する男と共に、戦えるようにと。
「だからこれは」
 その手は恐怖に震えていない。その足は怯惰に竦んでいない。まっすぐに狙いをつけて、
「望むところよ!!」
 引き金を引いた。

 

 ペットショップの傍らを、銃弾が通り過ぎて行った。この猛禽はそれを認めて驚き、今まで気にも留めなかったザフトレッドの少女に対して、初めて意識を向ける。
 そして少女が、ただならぬ眼光を自らに向けていることを認めると、ペットショップは鳥離れした表情を浮かべた。嘴の先を吊り上げ、笑みを形作ったのだ。
「! 気のせいかしら。鳥が笑うなんて………」
 パイロットに相応しい高い視力で、ペットショップの顔を見てとり、ルナマリアはその不気味さに寒気を覚えた。
 だが、ルナマリアの目論見は成功したと言っていい。ペットショップは確実に、ルナマリアに関心を持ったのだから。
「ギョアアアアアッ!!」
 一鳴きすると、ペットショップはまたも氷の槍を生み出し、撃ち放った。
「キャア!」
 ルナマリアはその攻撃を、悲鳴をあげながらも避ける。ホルス神の攻撃が、スタンド使いでなくても見ることができる、氷によるものであることは不幸中の幸いであった。それでも一つかわし損ねたら死ぬものであることに変わりは無いが。
「ルナマリア!!」
 ブチャラティが駆け出そうとするが、
「おっと! てめえの相手は俺だぁぁぁ」
 地中から這い出てきたセッコが立ち塞がり、邪魔をする。ブチャラティが焦燥の表情を浮かべているのが楽しいらしく、その目は愉悦に染まっていた。
「どけ………馬鹿の相手をしている暇は無い」
「減らず口を………てめえは、女も救えずに情けなく殺されるんだよォ!!」
 セッコはアスファルトの道路に向けて、掬い上げるように弧を描く拳を放った。それによって泥化したアスファルトに波が生まれた。波の高さは2mほどで、ブチャラティに向かい進んでいく。
「『スティッキー・フィンガーズ』!!」
 ブチャラティはその波にラッシュをくらわせ、大部分は拳の衝撃で粉砕し、押し戻す。だが、無数の飛沫がセッコから離れたことで再び硬質化し、針や槍となってブチャラティの体に食い込んだ。
「ぐう!」
「ゲハハハハ! ざまぁねえなぁ!!」
 小さいとはいえ、たくさんの傷を一度に負い、さすがのブチャラティも焦りを深める。そのブチャラティの様子に、セッコは心の底から爽やかな気分になっていた。

 

 一方、氷の槍の攻撃を受け続けるルナマリアは、既に息も絶え絶えであった。いくらコーディネイターであり、軍人としての訓練も受けているとはいえ、いつ死んでもおかしくない状況下での緊張は、予想以上に早くスタミナを消耗させる。
 ただ、ペットショップはどうも本気とはいえないようだ。どうにも緊迫感が無い。戦力差が相当にあるがゆえに、本気になる気にもなれないのだろう。人間が蠅を叩こうとするのに、本気を出さないのと同じようなものだ。
 もしルナマリアがスタンド使いであったら、より苛烈な攻撃を仕掛けていただろう。
(あいつが飛んでいるのは目算で大体、14、5mほどの高さ………命中させられないような距離じゃない。けど撃ち返す余裕は流石に無いわね。初弾を外したのは、まずかったな)
 そう思うものの、もはや仕方ない。どうにか隙を見てもう一度撃とうと考えていると、足が酷く冷たく、しかもまったく動かないことに気付いた。
「ッ!!」
 下を見ると、ルナマリアの足は地面にツタのように蔓延る氷によって、繋ぎ止められていた。
(やばっ! 外れて地面に当たった氷の槍が、地面を凍らせてこんなふうに足を押さえるなんて!!)
 囚人を縛る鎖のように、多少力を入れたところで、氷の束縛は壊れない。ペットショップはもがくルナマリアを見下ろしながら、もう一度ニヤリと笑い、氷の槍を作っていく。

 

「ギェエエッ!!」

 

 とどめを宣告するかのように一鳴きが響いた直後、

 

 ドウンッ!!

 

 鳥の鳴き声より遥かに強く、良く響く轟音が走った。

 

「ギャアアアアアアアッ!!」

 

 そして悲鳴だ。だがその悲鳴はルナマリアのものではないし、その前の轟音も氷の槍によるものではなかった。氷の槍は、完成する前にスタンド能力が途切れたことで、雲散霧消していた。
 何者かが、ペットショップの右足を破壊したのだ。

 

「ウギャグ、ギャア!?」
 ペットショップは自らの右足を撃ち抜き、ちぎり取った存在を探した。あまりの激痛にスタンド能力を解除してしまったが、すぐに羽ばたいて移動し、追撃をくらわないようにする配慮をしたのは流石と言える。
 彼が、右足を奪った犯人を見つけたのはすぐだった。建ち並ぶビルの5階、さっきまでペットショップが飛んでいた位置より少しばかり高い階の窓に、人の姿があった。黒く長い髪を束ねて揺らしている、厳しくも美しい顔立ちの女性。
 いつの間にか姿を消していた、レナ・イメリアその人だった。

 

「へへ、上手くやってくれたみたいね」
 ルナマリアは、九死に一生を得て、一息つく。ルナマリアは、レナの姿が見えなくなった時、逃げたとは微塵も思わなかった。助けを呼びに行ったにせよ、武器を取りに行ったにせよ、何かしら、この戦況をどうにかするために行動を起こしたに違いない。
 そう思った。だから、レナが何かをするまでの時間を稼ぐために、ペットショップの注意を引く囮になった。
「私、あなたのこと、気に食わないと思っているけどさ」
 ルナマリアは、銃で氷の枷を撃ち抜き、砕きながら呟く。

 

「惚れた男を死んでも見捨てないくらいには、手強い恋敵(ライバル)だって評価もしてるのよ」

 

 本当にむかつくけれども、確かに尊敬に値する女性だと、ルナマリアは信じているのだ。そして、その信頼は正しかった。
 けれど、

 

「ギョワッ! ギィッ!!」

 

 ペットショップの怒りは、荒れ狂う嵐のようだった。よりにもよって、頭上からの攻撃をくらったのだ。天上から大地を見下ろし、高き場所から、弱者を撃ちすえる、空の覇者としての誇りがズタズタにされたのだ。
 それは、かつてイギーの策にはまり、ザ・フールが擬態したイギーの偽物を破壊して、勝利と勘違いしているところを、頭上から攻められたとき以来の屈辱だった。
 ペットショップは断たれた右足から流れる血を、凍らせて止血すると、レナのいた窓を睨む。その場所からは既に離脱したらしく、レナの姿はもう見えない。
「ギュオオオオオオオオッ!!」
 翼が猛々しく振るわれた。神の名を冠するスタンドを持つ殺戮兵器は、復讐を開始した。

 

「キュオオオオオオオオン!!」

 

 レナは自分の背後で、爆音が響くのを聞いた。
(早くも攻撃してきたか!)
 先ほど自分が撃った弾丸は、ハヤブサの腰の右寄りの位置に命中し、右足を付け根からもぎ取ったが、そこまでだ。並みの野生動物なら、それでもショックで行動不能になるはずだが、生憎とペットショップは並みではない。
 痛みを怒りでねじ伏せ、羽ばたく翼を休ませることはなく、攻撃を止めることはない。
(今となっては、逃げ場の無い屋内はそのまま棺桶になってしまう! 一刻も早く抜け出さなければ!)
 鍛えられた両足で階段を駆け下り、すぐに5階から3階にまでたどり着く。だが、そこで彼女は足を止めた。
「……………ギャギッ」
 3階の窓の向こうに、ペットショップが笑っていた。直後に窓ガラスが砕かれ、寒風が流れ込んでくる。その空気は凍えるほどに冷たいのに、レナからは嫌な汗が流れる。今まで、何度も戦場を潜り抜けてきた彼女をして、この敵は異常過ぎた。
 蛇に睨まれた蛙の気持ちが、初めてわかる。相手の前に、何をすることもできないことが本能でわかり、肉体が心よりも先に絶望し、楽に死ぬために抵抗もせず動きを止める。そんな感覚。だが、
「負けて、たまるか!」
 レナは敵と、自分自身に向けてそう叫ぶ。無様に諦める女など、ブチャラティの隣にはいられない。そんな自分は認められない。ゆえに、彼女は立ち向かう。銃口をペットショップに向ける。
 だが放たれた弾丸は、ペットショップの前に生み出された氷の障壁に阻まれた。ペットショップは笑う。無駄な足掻きを楽しむように。

 

 一方、ブチャラティはセッコから放たれるアスファルトの波に、さらされ続けていた。

 

 ゴジャッ!!

 

「がふうっ!」
 ブチャラティは吹き飛ばされ、さきほどペットショップが落とした氷塊に背中から叩きつけられる。

 

「ケケケ、無様だなぁ。ええ? 先生よぉ」
 嘲笑うセッコに、ブチャラティは視線を向ける。隙を探るために。動きを読むために。この敵を切り抜け、レナを助けるために。
「………むかつくぞオイ」
 そのブチャラティの目つきが、激しくセッコの気に障った。
「もっと怯えたウサギみてえな目をしろ。諦めろよ。絶望しろよ! 命乞いして鳴き叫べぇ!!」
 拳を握りしめ、再び波を起こそうと道路を殴りつけようとした時、
「ッ!」
 銃の発射音と、弾丸が空気を切る音とを、セッコの耳は聞きつけた。その場で体を反転させながら、迫っていた弾丸を2発、両の手でキャッチする。
 振り向いたセッコの目に、震える手で銃を構えるルナマリアの姿があった。
(はん、この前もいたメスガキがぁ。こんな豆鉄砲で何ができるかって)
 とりあえず、手に掴んだ弾丸を投げ返して、その体を傷ものにしてやろうかと考えていると、またも背後で空気が揺らぐ気配を感じた。
(おいおい、この俺が背中を見せたのを隙と見たかぁ? 馬鹿が! 返り討ちだ!)
 振り返ると、セッコの目は迫りくるブチャラティの姿があった。
「ボケが!」
 オアシスの力を乗せた、渾身の拳が放たれる。スティッキー・フィンガーズの戦闘力では、決して防げない威力の攻撃だった。それがブチャラティの心臓部に突き刺さり、そして、
「なぁにぃ!?」
 ブチャラティの全身が、周囲の背景ごと粉々に砕け散った。欠片がセッコの足元に落ちる。

 

「鏡………いや、氷か! ということは!」

 

 セッコが気付いた時には既に遅し。ブチャラティはセッコの脇を走り抜け、レナとペットショップが対峙する、ビルへと向かっていた。
 ブチャラティは、セッコが背を向けた時、大氷塊をスティッキー・フィンガーズで解体し、ブチャラティの体より二回り大きな、円形の氷の鏡を造り、放り投げたのだ。そこにブチャラティを映し、セッコが鏡像を攻撃しているうちにすり抜けた。
 セッコの姿が映らぬよう角度を調節し、セッコが左右どちらに振り向くかも予測しての作戦。それが見事に嵌った。

 

 そして、ブチャラティはセッコに追いつかれる前に、ビルまでたどり着くと、外壁に触れる。
「『スティッキー・フィンガーズ』!!」
 外壁に、穴の開いた、3メートルほどの長さのジッパーが縦に張り付けられる。そしてブチャラティは金具の部分を掴み、
「閉じろジッパー!!」
 ジッパーの穴を閉ざしていく。金具は上へと昇っていき、それに引っ張られてブチャラティの体も上がっていく。あと3、4回ほど、これを繰り返せばレナのいる位置に着くだろう。だが、セッコもまた、ビルの外壁にまで到着していた。
「行かせやしねえぞ。クソがぁ………『オアシス』!!」

 

 レナの足元は、『ホルス神』の能力によって凍りついていた。蔦のように伸びた氷の触手が、レナの足を捕らえており、逃れることはできない。
 レナの手の中の銃は、もはやカチカチと音をたてるのみで、弾丸を吐き出すことは無い。
「くっ………」
 ペットショップは床に止まり、レナの悔しそうにしかめられる顔を、楽しそうに見つめながら、ついに周囲に氷の槍を形成しはじめる。遊びの時間は終わりということなのだろう。それでもレナは銃の弾丸を交換し、せめて一矢報いることができればと行動する。
 それを嘲笑い、ペットショップが氷を放つ直前、
「おい鳥公! こっちを向きな!!」
 割れた窓の向こうに、ブチャラティが顔を覗かせた。
「ブチャラティ!!」
 レナの顔が輝く。もしレナが簡単に諦めていたら、ペットショップは弄ぶ気にもなれず、さっさと殺していたことだろう。だがレナが抵抗したからこそ、ブチャラティの救援が間に合った。最後まで諦めないレナの姿勢は、報われたのだ。
 逆にペットショップは面白くなさそうに彼を睨み、先にスタンド使いであるブチャラティを優先して倒すべきと判断した。ハヤブサが翼を打ち鳴らして舞い上がると、氷の槍の先端がブチャラティへと向き、そして投げられる。
「ちいっ!」
 ブチャラティは一度窓から顔を下げる。轟音をたて、氷の槍がブチャラティの体スレスレを通過していく。これではそう簡単にビル内に乗り込むこともできない。だが、これでひとまず、レナがすぐに殺されることは免れた。

 

 だが、いつまでもそうさせている敵ではない。

 

「いつまでもぶら下がってねえで、降りて来やがれぇ!! 降りてこねえならぁ………こうだぜ!!」
 セッコが触れて続けていたことで、既に鉄筋コンクリートは、箸を差し込んだら突き刺さるくらいの脆弱さになっていた。
「『オォォォアシィィィィィス』ッ!!」
 セッコは壁に向けて、アッパーカットを見舞った。外壁は波打ち、波紋がブチャラティのしがみついている3階にまで届く。そして、ギチリと軋む音がたち、次の瞬間には3階から下の外壁が、雪崩のように砕け落ちていく。
 もちろん、ブチャラティも一緒に落下を始めた。落ち方によっては充分に死ねる高さから落ちながら、ブチャラティは薄く笑った。その目は、壁が砕けたことで、よく見えるようになったビル内の、レナとペットショップを映していた。

 

「ギ?」
 ペットショップは首を傾げた。ブチャラティの笑みは、諦めた者の自嘲の笑みではない、勝利を確信した力強い笑みであったことが、この異様な賢さを持った魔鳥にはわかった。だが何を持って勝利としたのかがわからない。
 その答えは、激しい音によってもたらされた。

「ギエエエエエエ!!」

 

 ペットショップの右の翼が、付け根から千切り抜かれ、吹き飛んだ。

 

 今までの戦いでわかったこと。レナの不意打ちによって右足を破壊できたことから、ペットショップは、同じ冷気の使い手であるギアッチョのように、氷を鎧として纏うことはできない。
 それも当然だ。空を飛ぶためには身軽でなくてはならない。重い氷を背負ってはいられない。まして翼なら尚更だ。重いだけでなく、翼の形が変わってしまうし、羽ばたくのにも邪魔だ。
 ゆえに、狙うなら翼である。それが、ルナマリアの考えであり、それが正しかったことに彼女は安堵する。弾丸を命中させられるかどうかは、まったく不安は無かった。
 落ち行くブチャラティの笑みを見て、その笑みの意味をはっきりと悟ることができたからだ。

 

 ブチャラティは外壁が砕けたがために笑ったのだ。レナとペットショップは壁の向こう側に隠れている状態ではなく、はっきりと目で見ることができるようになったから。
 目で見え、銃弾が届くようになったから。
(つまり、私が奴を撃てるようになったから!)
 ルナマリアの心が躍る。ブチャラティに頼られたことに。ブチャラティに任されたことに。
 命中させられるかという心配は無い。撃つ時はただ、思い出せばいい。ブチャラティの手の、心安らかにする、優しい温もりを。震えを止める、力強い支えを。共に戦ってくれる、気高い魂を。
「中らない、わけが無い!」
 2度目の弾丸は、ペットショップの心臓部へと吸い込まれていく。
「ギ、ギ、ガアッ!!」
 最も大切なものを失いながら、それでもペットショップは戦闘を諦めることはしなかった。『ホルス神』を浮かび上がらせ、弾丸を弾き飛ばし、更に氷の槍を生む。だがそれを放つ前に、3発目がペットショップの脳天を砕いた。
「鳥頭だけあって、忘れっぽいわね。最初にあなたに傷を負わせたのは私でしょうに」
 横合いから3発目を放ったレナ・イメリアは、冷たい足の痛みを感じさせぬ強さを持って、言い放った。そしてルナマリアの姿を見下ろし、
「やるじゃないお嬢ちゃん」
 皮肉とも取れる口調だったが、その顔は言葉よりもずっと素直で確かな、称賛があった。
「さて」
 落ちていったブチャラティへと、意識を切り替える。まだ戦いは終わっていない。レナは氷の足枷を壊すため、銃を向けた。

 

   ◆

 

 ウェザー・リポートは3体のドムトルーパーと戦っていた。ドムトルーパーは縦一直線に並び、ウェザーのアカツキに向かって真っ直ぐに突進してくる。ウェザーは戦闘を走るドムトルーパーに向けて、ビーム砲を放つ。
 しかしその攻撃は、ドムトルーパーのまとう衝撃波のシールドによって弾き飛ばされた。それは、ドムトルーパーの胸部より放出される高エネルギー粒子によって発生したビームフィールドである。
 ただ防御用に使われるシールドとは違い、触れた物を破壊する攻守両用のシールドだ。ただし、このフィールドを発生させるには3機分の出力と、激しく動きながらも位置関係を保つチームプレイを必要とする。並みのパイロットたちではできないことだ。
「腕自体は、おそらく俺よりも上だろうな」
 ウェザー・リポートは悔しがるでもなく、そう認める。まず状況を正確に認識することが必要だ。それでこそ、打つべき手が見つかる。
(このアカツキの対ビーム装甲『ヤタノカガミ』は、計算上ではミネルバの陽電子砲でさえ弾き返すことができる。だが、ビームサーベルのように圧縮された武器には耐えられない。このシールドにも触るのはまずいかもしれん)
 ウェザーは突進してくる敵を、闘牛士のようにヒラリとかわした。すれ違いざま、中央のドムがビームを放ってくる。ウェザー・リポートの能力で大気を歪め、ビームを屈折させて狙いをそらす。ビームは見当違いの方向へ飛んでいき、ビルを一つ崩した。
(今のも、このビームフィールドには通用しないだろう。天気程度でどうにかなるような甘いフィールドと考えるのは、危険と見るべきだ)
 結局、ビームフィールド自体は突破できそうにない。ならば、

 

「連携を崩すところから始めるか」

 

 ウェザーは冷静に勝利に向けて行動する。その声には、恐怖や動揺の一欠片も無かった。

 

   ◆

 

 落下を始めたブチャラティは、これからどうするかを冷静に考えていた。
 レナの心配はいらない。外壁が取り払われた今、ルナマリアの援護射撃でペットショップは倒せるだろう。
 ペットショップのスタンドは、氷による攻撃の威力は高いが、防御力、格闘能力は低い。
 
 屋内にいることで、飛行能力を低下させている今なら、不意さえ打てば、狙撃が決まることも楽観ではない。
 セッコが外壁を破壊したのも、ブチャラティの狙い通りである。壁をよじ登れば、短絡的なセッコの思考なら、単純に落とすために壊してくるだろうと期待してのことだ。もし上手くいかなければ隙を見せることになっても、壁をジッパーで解体するしかなかった。

 

 結果的にはセッコがペットショップの足を引っ張った結果だが、能力的な相性は悪いものではないはずだった。片や、上空からの長距離攻撃型。片や、地中からの直接攻撃型。どちらも、普通なら手の届かないところから、挟み撃ちになるように攻撃できる。
 そして、互いの攻撃が当たってしまう可能性は少ない。また、攻撃の種類が互いに異なっているというのもいい。近距離戦を得意とする敵には、離れた位置からペットショップが氷の槍を撃ち、単純な力技が通用しない特殊な敵、防御が硬い敵は、セッコが溶かす。
 連携さえ取れれば、いくらでも攻撃パターンを生み出せるし、苦手な分野をフォローしあえる、強力なタッグのはずだった。
 だが、セッコはペットショップをただの『露払い用自動攻撃装置』としか見ておらず、ペットショップはセッコを『どうでもいいもの』とだけとらえていた。どちらも連携を取る気が無かったというのが、最大最悪最低の敗因であった。

 

(上手くいったのだから、これ以上考える意味はないことだ。それより、後はどうやってセッコを倒すか………)
 ブチャラティには落ちる前にすでに、ある程度組み立てていた計画があった。まず、スタンドの足でもって、崩れる壁を強く蹴りつけた。その反動で、ブチャラティの体は軌道を変え、弧を描いてブチャラティの狙った場所へと落下した。
 ガッシャァンという大きく耳障りな音がたつ。ブチャラティが落下したのは、ペットショップに見る影も無く破壊された、軍用車の残骸だった。
 砕け折れ、凍りついた車体の金属の切っ先が、ブチャラティの肌を裂く。ところどころから血をにじませながらも、致命傷になるような傷は負わなかった。ブチャラティは落下により全身を貫いた衝撃に悶えながらも、必死に体を起こし、戦闘態勢を取る。
 起き上った時にはすでに、セッコが死神のような不気味な殺気を撒きながら、迫って来ていた。
「『スティッキー・フィンガーズ』!!」
 ブチャラティはスタンドの腕で、凍った車体の中に転がっていた、人の頭ほどの体積はある、砕けた金属と氷の塊を掴み取り、自分まで3メートルの距離にまで近付いてきているセッコに向けて投げつけた。

 

「はん!『オアシス』!!」
 セッコは、投げられた金属片が混じった氷塊を叩き潰した。氷塊は粉々に砕けて飛び散る。そこに更にブチャラティは、セッコの顔、より正確に言えば目に向かい、時間経過によって、やや溶けた氷を、掬い取って投げつける。
 しかしその目潰しも、すぐさま戻した手で払い飛ばす。
「ヘッ! こんな程度が何になるかってんだ!!」
 セッコは鼻で笑い、さっさとブチャラティを始末しようと、足を進める。すぐに目を瞑ったため、目が見えなくなるようなことはなかった。そして、距離間1メートルを切り、互いに拳を当てられる距離になる。
 ブチャラティは車体に乗ったまま、道路に立つセッコをほんの少し見下ろすような形だった。
「………………」
「………………」
 二人は一言も発さない。ただ睨みあい、地響きが聞こえるような、重苦しい空気を発生させる。
 そして、何がきっかけだったのかは二人にしかわからないが、

 

「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!」
「オオオォォォォォアシスウウウウゥゥゥゥッ!!」

 

 ラッシュの応酬がはじまった。嵐のような激しさで、寒気がするほど鋭い一撃が連打されている。空気が唸り、風が生まれる。

 

 グジャアッ!!

 

 逸れた拳が、軍用車の残骸を溶解させ、

 

 ズパァッ!!

 

 あるいはアスファルトの道路を切り裂いた。
 あまりに濃密な戦いは、一秒が何分にも感じられるようだった。いつ終わるとも知れぬ、永劫に続きそうなほどに拮抗した勝負だった。
 だが、終わりは唐突に訪れた。

 

 ドグゥッ!!

 

 セッコの拳が、ブチャラティの胸の中央に入った。ブチャラティのまとう、頑丈な防弾服が溶解して穴が開き、ブチャラティ自身の皮膚も薄くただれる。拳の衝撃で吹っ飛ばされ、車体から突き落とされて道路に倒れ込む。
 しかしそのおかげで、オアシスの拳と長時間は触れあわず、ブチャラティの怪我は軽傷ですんだ。だが、立ち上がることは許されなかった。

 

 ダンッ!

 

「ごふぅっ!」
 ブチャラティの腹に、セッコの足が乗る。セッコはその足でグリグリと踏みにじりながら、ご機嫌な様子で口を開いた。
「うへへへへ………もうおしまいかぁ? つまんねぇなぁ。グフヘホ、さぁて、どうやって溶かしてやろうかなぁ~。グヘロホハ!!」
 手をワキワキと動かし、恍惚となるセッコに、ブチャラティの静かな声が水を差した。
「………俺の右足だが」
「あん?」
「先の戦いで失われ、今は高性能の義足になっている。動きは本物同様。バッテリーも充分。どんなに動きまわっても壊れない頑丈さを誇る、まさに最高の逸品だ。現に、今まであれほど戦って、傷一つ無いし、少しも機能が衰えていない」
 セッコは唐突に始まったブチャラティの義足の解説に、怒るより前に首を捻る。
「おいぃ? 何言ってんだ………お前。いかれたのか?」
「いや、頭の方はすこぶるしっかりしている。本題はここからだ。今、義足はしっかりしているが、もし壊れたらどうなるか」
 言って、ブチャラティは横になったまま右足を浮かせ、そしてアスファルトに向けて振り下ろす。カツンという音がしたと同時に、義足が綺麗に砕けてバラバラと破片が落ちる。内部の機械が見え、切断された導線からバチバチと放電している。
 倒れた時、すでにスティッキー・フィンガーズで義足を切断していた。形は保っていても、ちょいとショックを与えるだけでバラバラになるように。
「結局………それが何だぁ? 随分、火花が飛んでいるようだがよぉ………スタンガン代わりにでもするつもりだったのか? ええ?」
「なあ、お前、耳はいいようだが鼻はどうだ?」
「鼻?」
 気付いてみれば、周囲は妙な異臭で満ちている。セッコがよく嗅いでみると、セッコ自身の体にも、その匂いが染み付いていた。
「確かにクセエが………毒とかってわけでもねえな。なぁんだってんだぁ?」
 答えたセッコに対し、ブチャラティは自分の腹を踏んでいる足を掴む。

 

「まだ気付かないのか? 鈍い奴だ………。さっきお前にぶつけた氷はな、ペットショップの氷の槍で凍らされた………『火炎放射器』の燃料だよ」

 

「………あ、ああ!?」
 ようやく気付いたセッコの声が一変する。余裕の響きが焦燥に染まるが、もう逃げられない。
「時間がたったうえに暴れまわったおかげで、充分に燃料も溶けて零れ出し、辺り一面に広がり、気化さえしている。こんな状況で火花が散っていたら、どうなるか」
「や、止めろ! 離しやがれぇ!!」
「おいおい、押さえつけてきたのはテメエだろうがよ」
 ブチャラティは静かに、燃料の液溜まりに、砕けた義足を押し付けた。

 

 バグオオオオオオオオオオンッ!!

 

 バチリという音がたった直後、一瞬にして、周囲は炎に埋め尽くされた。

 

「オバァァアアアアアアアァァァアア!!」

 

 二人の全身が灼熱に飲み込まれるが、絶叫をあげたのはセッコだけだった。ブチャラティはむしろ、セッコの足首を握る手をより強める。そしてスタンドを現わし、横倒しになったまま、完全に我を忘れたセッコへと、下から上に向けて拳を打ち出す。

 

「アリィッ!」

 

 焼死することへの恐怖に捕らわれたセッコに、その渾身の拳を防ぐことはできなかった。セッコの右腕が、かつてブチャラティに切り離されたのと、ほぼ同じようにまた切り離された。
「ヒ、ヒィ、や、やめろぉぉ!!」
「………駄目だね」
 自分自身が焼けていく中で、ブチャラティはセッコを力強く睨みつけ、体をかばうことも身をよじることもせず、腕を振るった。

 

「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!」

 

 猛烈なラッシュが、セッコに叩きつけられる。セッコは懸命に左腕一本で拳を防ごうとするが、到底間に合うものではない。左耳が弾け、右鎖骨が圧し折れる。

 

「あぐえっ、おごっ、ヒ、ヒイ、うぎぁっ、うぐぎブげッ!!」

 

 右太股が切り裂かれ、左脇腹が浅く抉れ、右眼が潰れる。そして更にラッシュは続く。

 

「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!」

 

 もはや叫ぶこともできなくなり、セッコの意識は完全に途絶えた。そこでブチャラティは足首を握る手を離す。

 

「アリーヴェデルチ(さよならだ)!!」

 

 そして、炎をもみ消すほどの勢いで放たれたラッシュの衝撃で、セッコの体は吹き飛んでいった。破られ丸められた包装紙のようにクシャクシャになったセッコは、天高く飛んでいき、弧を描いて落下する。落ちた場所は、彼に相応しい場所だった。

 

 ドズゥゥン!!

 

 その場にかけられた看板が落下の衝撃で揺れる。看板に書かれていた文字は『燃えるゴミは月・水・金』。そのゴミ捨て場の回収日は、奇しくも、前の世界で落ちたゴミ収集車に書かれたものと、同じ回収日であった。

 
 

(………勝った。が、俺ももう、無理か)
 火に包まれながら、起き上がる力もなく、ブチャラティは静かにそう思う。煙で呼吸もままならないが、もはや熱さや痛みは麻痺しており、感じられなくなっていた。
 やがて、意識が暗闇に落ちていく。だが、完全にその闇に飲み込まれる前に、

 

 ガシィッ!

 

 彼の両腕が、同時に二人の手に掴まれた。そして一気に炎の中から引きずり出される。
「クハァッ!」
 新鮮な空気に触れ、ブチャラティは深く呼吸をすると共に、意識を覚醒させる。
 晴れた視界に、二人の女性の顔が見えた。二人とも泣き顔だった。
「勝ったのに、何を泣いているんだ」
 ブチャラティは、まだあまり回らない頭で、そんな冴えない台詞を口にした。

 

「何を、じゃないでしょう! なんて無茶するんですか!!」
「私たちが運ばなければ焼け死んでいたところだぞ! このバカ!!」

 

 二人同時に怒声が飛ぶ。だが、その怒声はブチャラティを心底想う温かいもので、彼は思わず微笑んでしまった。
 それを見た二人は、つい顔を赤く染めて黙ってしまう。この男は人当たりが良く、無表情というわけでもないが、常に冷静で真面目な人間だ。社交辞令でも演技でも無く、こうした自然な笑顔を浮かべるのはごく珍しいことなのだ。
「む、むう。まあ、あなたが無茶なのは知っているし、その辺は私がフォローしてあげるけど、もう少し自分を大切にすることをね」
「『私』だけじゃないでしょう。『私たち』、です!」
 ルナマリアがレナの言葉にふくれっ面で抗議する。喧嘩を始めそうな二人にブチャラティは、今度は少しつくった苦笑と共に口を出す。
「こんなときに言い争うのは勘弁してくれ。それより、手を貸してくれないか、義足がこれじゃあ、思うように歩けない」
 そう頼んだブチャラティに、ルナマリアとレナは我先に飛びつき、ルナマリアが右腕を、レナが左腕を、自らの肩にまわして担ぐ。
「応急手当をした後、司令部に向かう。まだ休むわけにはいかないからな」
 激戦が終わってからも、一息つくつもりは無いブチャラティに、ルナマリアもレナもため息をつく。だが、もう止める気はない。
「ええわかっていましたよ。あなたがそういう人だってことは」
「でもまあ、それをフォローするのが、私たちの仕事なんですよね。まったく」
「「やれやれです」」
 二人はそう言いながらも、どこか嬉しそうだった。好きな人の力になれることが嬉しいのだろう。ましてや、普段は他人の手を借りず、自分を犠牲にするタイプであるブチャラティであるから尚更だ。
 死力を尽くした戦いはいまだに続いているが、それでも彼女たちの中にはかけらも不安や絶望は無い。あるとしたら、今肩を貸している男が、手の届かないところに行ってしまうということへの恐れだけだ。
 恋する乙女は無敵である。大して新鮮味のない言葉であるが、おそらく真実なのだろう。スタンド戦に限らず、戦いの根底にあるものは精神力。ならば、彼女には神であっても勝てはすまい。

 

 
 

TO BE CONTINUED