Lnamaria-IF_523第02話

Last-modified: 2007-11-17 (土) 07:03:34

「あ!? 危ない後ろ!」
オレンジの服の女性が撃たれそうになってのでつい声を上げてしまった。
その女性は振り向くとすかさず銃を放った。
……え、撃たれた人は、あれは? ザフトレッド? 味方の邪魔をしちゃった?
いえ、ザフトなんて知らない! 知り合いなんかいないし味方じゃない! 
だって中立のヘリオポリス攻められてるじゃない!
オレンジ服の女性が混乱している私に声をかけてきた。


「こっちへ来い!」
「……左ブロックのシェルターに行きます!お構いなく!」
「あそこはもうドアしかない!」
「え!? きゃー!」
また爆発が起こった!
「早くこっちへ!」
しかたないな。
爆発をやりすごして、モビルスーツ目指してラッタルから飛び降りた!
あ、あの人が撃たれた!
あわてて駆け寄ると、ザフトレッドがナイフを持ってこっちに来るのが見えた。


――! あれは……あれは――


「アス、ラン!?」
「っ!? ルナマリア!?」
「……アスラン……よくもメイリンを! この裏切り者!」


――! 私は、心の奥から突き動かされる感情のままアスランを殴打してしまった!
メイリンって誰よ? 裏切り者って!? 私の心と身体はどうなっちゃってるの!?
「あ、アスラン、だいじょう…きゃ」
アスランに声を掛けようとしたら、オレンジ服の女性に後ろから引っ張られてモビルスーツの中へ墜とされた!
「シートの後ろに! この機体だけでも! 私にだって動かすくらい!」
「……ガン、ダム?」
表示される画面に表示される文字が縦読みでそう見えた。インパルスと同じだ。
……だからインパルスってなによー!?
混乱している私をよそに、スクリーンにパッと周囲の光景が映し出され、このモビルスーツは立ち上がった!




「……ちょっと。ただ歩いてるだけじゃないの。大丈夫なの?」
「私は戦艦の副長よ! パイロットじゃないの! だから言ったじゃない、動かすぐらいならできるって! 無理に走って一般人巻き込むよりいいでしょう!?」
「あ、ちょっと! ふら付いた! 足元に人がいたわよ!」
「ちょっと、黙って!」
私をコクピットに押し込んだ女性は、コクピットのあちこちをいじっている。


――! あるスクリーンが拡大される!


「サイ! トール! カズイ! まだ避難し終わってなかったんだ!」


ガーン! 大きな音と共に突然モビルスーツがふら付き、コクピットを衝撃が襲う!
「きゃー!」
「下がってなさい!死にたいの!?」
正面のスクリーンには重突撃銃を構えたジンが映っていた。
このままじゃ! くやしい!あんな古臭い機体に! インパルス、いえ、ザクがあればあんな……
ううん、操縦するのが私なら……
(忘れてた? 私も赤なのよ?)




遠い記憶がうっすら蘇る。誇らしげに、私は誰に向かって言っていたんだろう?
私の回想をよそに、ジンは重斬刀を抜くと切りつけてくる!
「まだ終わらないわ!」
副長と名乗った女性は、ひとつのボタンを押し込んだ。


――ガシーン!


衝撃はあったけど、このモビルスーツはやられていなかった!
「PS装甲――フェイズシフト装甲よ。実体兵器ならほぼ完全に無力化できるわ!」
副長と名乗った女性――ああ、めんどくさい。副長は振り返り、誇らしげに、そして安心させるように微笑んだ。
……なら!
「余裕、出来ましたよね? ちょっといじらせてください!」
「な、なにを!?」
返事を聞く間も無く、私はキーボードを取り出し、OSの確認を始めた。




「……なんなの? このOS? こんなので動かそうなんて!」
「仕方ないでしょ、まだ未完成なんだから! あ!」
ジンは懲りずに重斬刀で切りつけて来た! このモビルスーツはふら付きながらなんとか受け止める。
ガシーン! 何度目か、とうとうこのモビルスーツは尻餅をついてしまった!
いくら装甲が硬いとはいえ、こうも何度も叩かれるとコクピットの中にいる私達が持たない!
あ。あれは、ミリィ! こんなところに、まだ!
「ちょっと、どいてください!」
操縦席の副長を無理やりどかす。
「あなた、何を! 何者?」
すばやく操縦席に滑り込むと、スラスターを吹かしてカウンター気味にジンを殴りつける!
ジンは大きな響きを立てて倒れこんだ!
私は振り向いて言った。
「私はルナマリア・ホーク。オーブのコーディネイターです!」


「……そう。オーブのコーディネイター。わかったわ。任せる」
「いいんですか? キャリブレーション取りつつ、ゼロ・モーメント・ポイント及びCPGを再設定……」
私は再びキーボードを手にしてOSをいじりだす。
「コーディネイターにはコーディネイターと思っただけよ。私じゃ、もう限界だったし、あなたに賭けてみたくなったの」
「OS終わり! 武器は? 何かないの? ビームサーベルとか」
「――! ……今は、ないわ。頭部の対空自動バルカン砲塔システム、イーゲルシュテルンと……」
副長の手が後ろから伸びあるスイッチを押すと、このモビルスーツの頭部から、起き上がったジン目掛けて弾丸が飛んで行く!
「左右の腰にコンバットナイフのアーマーシュナイダーが格納されているだけよ。それでなんとかして頂戴」
「しょうがないわね!」




ジンと最後に戦ったのはいつだったろう。ふと思い浮かんできた考え。普通ならまた混乱しただろうそれを、今の私は自然に受け入れていた。
「ユニウスセブンの時か……」
「なんですって?」
「なんでもない! 落とさせやしないわ、空を!」
私には、頭部CIWSの弾幕を抜けてくるジンが、あの時のテロリストとだぶって見えた。
ジンは再び重突撃銃を手にすると放ってくる! 着弾!
「ええい、いつまでも思い通りになんかさせるもんですか!」
両腕にアーマーシュナイダーを装備し、スラスターを吹かしジンに向かって行く! このスピードならそうそう当たるもんですか!
重突撃銃の銃撃を切り抜け、私は一気にジンの右腕付け根にアーマーシュナイダーを突き刺した!
そして! 右腕のアーマーシュナイダーをジンのコクピットに突き入れた。
あの、黒いのなんだろう。油かな。はは。は……私は意識を失う事を自分に許した。










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