Lnamaria-IF_523第30話

Last-modified: 2007-12-08 (土) 07:05:44

ロンド・ギナ・サハクはビクトリア奪回から程なくして宇宙に上がり、オーブの宇宙ステーション「アメノミハシラ」を拠点に宙域のザフト軍に対して通商破壊活動を行っていた。
「ふん! 他愛もない。新装備の訓練にもならんではないか」
その台詞を聞く人は誰もいない。その日、ギナは大胆にも一人でザフト軍を攻撃していた。
PO1――ゴールドフレームは外見が一変していた。
背部に装備された翼状のデバイス――ミラージュコロイド技術の応用で、接触した相手のバッテリーを強制放電させ自機のエネルギーとして吸収できるマガノイクタチと言うオーブで開発した武器がある。
この装備により、現在のモビールスーツとは格段の稼働時間の長さを誇っている。
そのほかにネックガードなど細かい部分が改修されている。
「ん? あれは……これはこれは」
PO2――レッドフレームが、こちらに向かって来る。
『ゴールドフレームか!? ずいぶん形が変わっているじゃないか! なんでもかんでも壊しやがって!』
「ふん。私は地球軍だ。ザフトの軍艦を攻撃して何が悪い!」
「…くっ。もう相手に戦う意志などない! 救難ポッドまであんたは破壊している!」
「まだ相手は残っている! 2隻もな! 降伏もせず反撃してくるのだ! 攻撃を止める理由などない!」
「それにしたって、救難ポッドを! やめろ!」
「こちらは一人だ。一人で捕虜など取っていられる余裕なぞあるものか! ここで見逃せば彼らは程なく新たな武器を手にこちらに襲い掛かってくる! 敵に情けを掛けて味方を殺せとでも言うか! 貴様は!」
「くっ。それでも俺は!」
ロウはビームライフルを撃つ。
「下賎な者が……所詮理解できぬか」
ギナはロウが撃ったビームライフルをシールドで軽く受け流すとマガノシラホコと言う、マガノイクタチに付属する射出武器を射出する。
マガノシラホコはまるで2匹の生き物のようにレーッドフレームを襲い、ビームライフルとシールドを弾き飛ばす。
「――消えた!?」
P01が姿を消した。ロウが驚愕の叫び声を上げる。ガーベラストレートを抜き放ち、辺りの気配を探る。
「うわあぁぁ!」
「ふふふ。私はここだよ」
レッドフレームの後ろから、マガノクイタチがレードフレームを締め上げ、レッドフレームのバッテリーを強制放電させる!
「やらせないわ!」
「ん?」
ギナが見やると輸送船がこちらに突っ込んでくる。
「無駄な事を!」
攻盾システム「トリケロス改」のランサーダートを輸送船の艦橋目掛けて射出する。
「なにぃ!」
ギナは思わず叫んだ。輸送船は上部のアームを動かしてランサーダートの艦橋への直撃を避けたのだ。
「おのれ!」
ギナはビームライフルを連射する。
再び輸送船のアームが動きシールドのような物を展開する。それはビームをたやすく吸収した。
「ラミネート装甲か! 小ざかしい真似を!」
「隙有り!」
レッドフレームはなんとかマガノイクタチのあぎとから逃れるとカーベラストレートを振りかぶった。
「反撃行くぜえ! でやあぁぁ!」
「それは一度見た。効かぬ!」
ギナは一瞬の間左手でガーベラストレートを支えると、トリケロス改の硬化処理された刃をガーベラストレートに思い切り横合いから叩き付けた!
ガーベラストレートは、一瞬その力に耐え……そして折れた。
「……嘘だろ? ガーベラストレートが折れるなんて……」
「これで終わりだな!」
「くそう、くそう。まだだ! まだ終わらんよ! だがどうする……どうしたらいいんだ……」


その時、近づいて来る一揆のもビルスーツがあった。
「――戦う気力がある限り、負けたとは言えない!」
「あ、あんたは!」
「ちっ。乱入者か。……なんと、PO3ではないか!」
「ロウ・ギュール。お前の信念を貫け! お前の作ったタクティカルアームズ! これを使え!」
タクティカルアームズ――それはロウ・ギュールがブルーフレームのために作ったラミネート装甲を持つ巨大な実体剣である。
「おっしゃあ!」
「虚仮脅しが! PO3共々葬ってやるわ!」
「この! もう止めてくれ! ゴールドフレームだって無意味な破壊は望んじゃいないはずだ!」
「なにをほざく! 先程私が言った事をちっとも理解していないではないか! やはりお前達ジャンク屋は下賎な豚だ! その豚どもによって豚小屋のように汚された社会を、高貴な人間のための理想社会として建て直すのだっ!!」
「何が理想社会だっ! お前のすることは、世の人々を虐げ、冷酷に支配することではないか!!」
「私をよく知りもしないくせに言うわ!」
細身のカーベラストレートから大きな広刃のタクティカルアームズ……その取り回しには差異がある。慣れるまでの若干のタイムラグ。
ギナはその隙を見逃さず、トリケロス改をレッドフレームの左腕に叩き付けた!
レッドフレームの腕はちぎれ飛ぶ。
「これで終わりだ……!」
ギナはレッドフレームに止めを刺そうとした。
――! ギナはコクピットに衝撃を覚えた。見ると、PO3が横から組み付きPO1のコクピットにアーマーシュナイダーを突き刺そうとしていた。
「敵は倒せる時に倒す――それが傭兵のやり方だ――」
……あれ!?
珍しい事に劾は焦った。このアーマーシュナイダーはモビルスーツの装甲など、アストレイの装甲など容易く突き通すはず。それが――突き立たない。
とっさにギナはブルーフレームを振り払う。
「ふ……はははは! 無意味と思っていたPS装甲に助けられたか!」
その時、こちらに向かって来る戦艦があった。
「ロンド様! 無事ですか!」
「くっ! イズモ級まで出て来られては! ロウ・ギュール、悪運を祈る!」
劾はすばやくタクティカルアームズを回収すると、撤退して行った。
「ちぃ! すばやい奴!」


「もう止めて! ロウを殺さないで!」
「なんだ!?」
女の子の声がするとザフトのバクゥのようなモビルスーツが輸送艦から出て来た。そしてレッドフレームを守るかの様に立ちふさがる。
ふと。前にもこんな事があったような――既視感を感じる。
「興が削がれてしまったな……おい! ジャンク屋! 船の責任者は誰だ?」
「私、かしらね」
プロフェッサーが答える。
「そうか。さあ、選ばせてやろう。
1、ジャンク屋ギルドは地球軍とザフトの戦いに介入したばかりでなく一方的にザフト軍に肩入れをする行動を取った。
2、ジャンク屋ロウ・ギュール一味は地球軍とザフトの戦いに介入したばかりでなく一方的にザフト軍に肩入れをする行動を取った。
さあ、どちらで報告されたい?」
プロフェッサーは困り果てていた。
PO1――ゴールドフレームがおそらくオーブのマスドライバーの価値を上げるため、ギガフロートの破壊に来た事があった。その時の様にゴールドフレームが謎の存在なら、戦闘してもなんとでも言い訳は立った。
だが、今やオーブは地球連合に組し、PO1ははっきりと地球軍であると言って戦闘をしていたのだ。ごまかしようがなかった。
プロフェッサーの額を冷や汗が流れる。
どっちにしろ私達は終わり、規則を破った犯罪人となるだろう。ジャンク屋ギルド全体を巻き込む事などできない。なら……
「に、2番を……」
「ふふ」
ギナは薄く笑った。
「3番目の道を教えてやろう」
「え!?」
「私に従え。そうすれば不問にしてやる。とりあえずは……ザフト艦も逃げたようだしな。そこらへんに漂っている救命ポッドを回収しろ。助けたかったのだろう? アメノミハシラまで捕虜として連行して来い。逃げれば……わかっているな?」
プロフェッサーはうなづくしかなかった。


「馬鹿馬鹿馬鹿! ロウが死んじゃったらどうしようと思ったじゃない!」
「悪い、樹里。でも、俺ってつくづく悪運強いよなぁ。ははは……」
「笑い事じゃありませんよ!」
リーアムが珍しく怒っている。
「ジャンク屋ギルドは中立。その原則があるから権利も守られるんですよ? それを考え無しに戦いの中に飛び込んで! あなた一人の行動でジャンク屋ギルド全体に迷惑が掛かるんですよ? わかってるんですか?」
「うー、黙って見てられなくてさぁ。悪かったよ。反省してる」
「……『私に従え』って、どう言う意味かしらね」
「うーん、ジャンク屋廃業して部下になれ、とか?」
「もしそうならずいぶん高く評価されたものね、私達」
「なぁ、プロフェッサー。オーブのエリカ・シモンズさんとは知り合いなんだろ? なんとかならないのかよ」
「無理ね」
プロフェッサーはにべも無く断言した。
「彼女だってただのモビルスーツ開発主任なだけよ。立場があるし、やれる事にも限界があるわ。それに……私の判断からすると、アメノミハシラに来いって事はゴールドフレームに乗っていたのは、オーブののサハク家の人間よ? エリカがどうにかできる相手じゃないわ」
「はぁ……命があっただけでもめっけもんよ。ロウ、これに懲りて考えなしに勢いで首突っ込むのやめてよね」
「そうですね。じゃあ、救命ポッド回収始めましょうか」
彼らは渋々作業に取り掛かった。




7月20日――地球軍は大洋州攻略作戦を発動する。オーブからカーペンタリア攻略部隊が出発、同時にマスドライバーからいったん宇宙に上がったモビルスーツ部隊がオーストラリア大陸中央部への降下作戦を実施し、オーストラリア東・北岸の攻略を目指す。


「いよいよかぁ。カーペンタリアは地上のザフトの本拠地だろ? やっぱり抵抗厳しいだろうな」
休憩室にはパイロットが全員集まり、出動まで待機している。
「そうだな。でも、今の地球軍には勢いがあるからな。攻められる立場より気が楽だよ」
サイがトールに答える。
「もしかしたら、今回は戦わずに済むかも知れんぞ。ザフトの新型が出てこなければな」
「いつかは戦わなきゃいけないけどな」
そうなのだ。アークエンジェル隊とドミニオン隊は、カーペンタリア攻略には加わらない。ザフトの新型モビルスーツ――ジャスティスとフリーダムの捕獲あるいは撃破が任務だ。
如何にザフトの新型であろうと、これだけの数に掛かられれば撃破出来ようと言う考えからだ。
アスラン……出てくるのかな。出てこなければいいけど。戦いたくないよ。


――ルナマリアの希望は叶えられた。
「そうですか。例のザフトの新型は出てきませんか……」
地球軍がカーペンタリア攻略作戦を発動してから二日目。
アズラエルはドミニオンでカーペンタリア攻撃の様子を観戦していた。
「は。しかし、ビームライフルを装備したザフトの新型モビルスーツと思われる物が少数ですが確認されています。ビクトリアで少数見られた物と一緒かと」
「見せてください」
「は!」
しばし、映し出された画面をアズラエルは見入った。
「……確かに新型のようですね。ストライクダガーよりも性能も良いようです」
「まぁ、ストライクダガーはあくまで量産までの期間短縮を優先させた簡易量産機ですから。ダガー(通称105ダガー)の量産も進んでおりますし、ストライクダガーにつきましても現在ストライカーパックを使用可能な改良型、ダガーLの量産が始まっておりますので、その数が揃えば対応は出来る物と……」
「いいでしょう。見た所、オーブで確認された2機程の圧倒的なパワーは無いようですし、おそらく通常のバッテリー動力機でしょう。ああ、一応捕獲は心がけて置くように司令部に伝えてください」
「はっ」
「では、後は攻略艦隊司令部に任せてドミニオンとアークエンジェルは一旦オーブまで下がらせてください」
「はっ」


結局、私達は何にもせずにオーブに戻った。
アスランと戦わずに済んで、私はほっとした。
「これから俺達どうするんだろうな」
今まで訓練に回っていた、オーブに集まった地球軍のモビルスーツ部隊もカーペンタリア攻略に出撃して、私達は久しぶりに暇な時間を過ごしていた。
「ねぇ! ザフトがジブラルタルを放棄したって!」
ミューディーが休憩室に駆け込んで来た。
「ほんと!?」
「そうかぁ。これは、いよいよ次は宇宙かな」
「宇宙かぁ。私地球しか経験ないのよね。頼りにしてるわよ、ルナ」
そうか、そう言えばこの中で宇宙でモビルスーツ動かした事あるのって、私だけじゃん!
「ふふふ。宇宙に行っても、しばらくは特訓ね」


アークエンジェルが宇宙へ行く準備は着々と進んでいる。
ジェットストライカーは降ろされ、出力を強化されたエールストライカー改が積み込まれる。
今日は、フラガさん専用の新しいストライカー――ビームガンバレルストライカーが運ばれて来た。
スカイグラスパーも降ろされ、コスモグラスパーが積み込まれる。
そんなある日……






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