Lnamaria-IF_LED GODDES_04

Last-modified: 2009-06-06 (土) 00:08:15

無様だ! 着艦などと言えるものではなかった。シグーの両脚、片手を失い、かろうじて着艦補助ネットに受け止められただけだった!
クルーゼは胸の中で歯噛みした。
「隊長、ご無事ですか!? 早く降りてください!」
「ああ! わかっている!」
『クルーゼ隊長機帰還。被弾による損傷あり。消火班、救護班はBデッキへ』
クルーゼは機体から降りると、つい膝を突いてしまう。胸が酸素を求めてあえぐ。
なんなのだ、あれは! メビウス・ゼロのパイロット。ムゥとは感じるプレッシャーが段違いだ! ザフトの次期主力機として開発されたシグーとこの私を持ってすらこの始末とは!
ざわっと背筋が凍るようなあのプレッシャー……それはクルーゼに過去の幸福だった日々と裏切られた日を思い出させた。
まさか! 父、いや、彼は自分が……焼死したはずだ! それに生きていてもパイロットなどが務まる歳ではないはずだ。
ふと思いついてしまった考えを理性で打ち消す。
……ふ。埒もない事を考えた物だ。地球軍は層が厚い。ムゥ以外にもパイロットは居ようよ。
思わぬ強者に出会って気弱になってしまったか。
クルーゼは苦笑して気持ちを切り替えた。
それにしても、地球軍の新型モビルスーツ。すでにあれだけの動きが出来るとは!
「ヴェサリウスの動けるパイロット全員に招集をかけろ! すぐにブリーフィングだ! 奴らを逃せばプラント百年の禍根になるかも知れん!」

 

「ブリーフィングを始める。言い訳はせん。大笑いしてくれてもかまわんよ
しかし、シグーの記録画像を見た者で笑う者は誰一人としていなかった。
「だがメビウス・ゼロのパイロット、ここで逃せば先々どんな災いをザフトにもたらすか判らん。それもモビルスーツもだ! オリジナルのOSについては、君らも既に知っての通りだ。ナチュラルでは碌な動きは出来んはずだ! なのに何故! この機体だけがこんなに動けるのかは分からん。だが我々がこんなものをこのまま残し、放っておく訳にはいかんと言う事は、はっきりしている。捕獲できぬとなれば、今ここで破壊する。戦艦もな。侮らずにかかれよ!」
「は!」
「オーブが出てくるかも知れんが遠慮はいらん。地球軍のモビルスーツを開発していた奴らだ。中立など嘘ごとだ!」
「はっ」
「フクダ、モロサワ、タケダは直ちに出撃準備! D装備の許可を出す。今度こそ完全に息の根を止めてやれ!」
「「はい!」」
「アデス艦長!私も出撃させて下さい!」
「ん? アスラン、君は機体が無いだろう」
「いいだろう、アスラン。機体は君が奪取したイージスを使え。君ならできるな? 確実に仕留めて来い」
「……は!」
キラ……
アスランは思った。きっとキラが乗っているんだ、あのストライクには。
幼年学校いらい何年が経つだろう。
キラと再会した時の様子を思い出す。
私服で、モビルスーツの上にいて。
たぶん、あいつ気がいいからそのまま……
だって、モビルスーツでクルーゼ隊長を追い詰めるなんてナチュラルにはできやしない!
きっとナチュラルにたぶらかされているんだ!
俺が……話せばきっと……

 
 

「これで、概ね運び込んだかな」
教授が言った。
「そうですね。予備パーツ状態の二体分も収容できました。なにかあっても、安心は出来ます」
「ああ」
「ですが、ゴールドフレームが……片腕だけしか見つからなかったのが変ですね」
「もしかしたら……サハク様が持ってザフトの襲撃の前に脱出したのかも知れません」
「サハクが?」
「ああ、よくここを訪れていた。最初に地球軍との提携の話を進めたのはサハク家ですから」
「ふむ」
「いい事を思いついた! この際だ、いっそゴールドフレームのように連合規格のプラグを使えるように改造して、規格も地球軍用のに合わせてしまおう。つぶしがきく」
「ああ、それは構いませんが、これからどうします? ザフトがこのままあきらめると思いますか?」
「いや、あきらめんだろうなぁ」
「しかし、このままではヘリオポリスに被害が及びます。ラミアス大尉と話してみましょう。カトー、着いて来て下さい」
「はっ姫様!」

 

「あ、カトー教授、ルナマリアさん」
ブリッジにラミアス大尉を見つけると、私はにこっと笑った。
「モルゲンレーテの、価値ある物も大方運び込む事ができました。礼を言います」
「そんな……こちらこそカトー教授とルナマリアさんのおかげでストライクだけでも守れる事ができました」
「で、さっそくですが。ザフトはこのまま襲撃をあきらめると思いますか?」
「……いいえ!」
「でしょうね。このままこの艦がヘリオポリスにいては、コロニーに害が及びます。出航の準備を……」
「わかりました。ちょうど出航しようと思っていた所です」
「それで、相談なのですが、この艦、接収させて頂いてもよろしいですか?」
「え? せ、接収!?」
「名目上だけでも、オーブ艦だと言う事にすればザフトは攻撃を躊躇うかもしれません」
「……」
「いい手かも知れんな。やってみて損な事は何もない」
隣で聞いていたフラガ少佐が言った。
「しかし、接収させてもらうだとか、君は一体何者だ?」
フラガ少佐が鋭い目で見つめてくる。
「……ここではなんですから艦長室へ。あ、バジルール少尉も呼んでください」

 

「え!?」
「ほう、オーブのお姫様とはねぇ」
私がルナマリア・ホーク・アスハだと打ち明けた時、フラガ少佐とバジルール少尉はさすがに驚いた。
「信じていただけますか?」
「ああ、信じる」
「しかし、そう言う事であればもう戦闘には出ないで頂きたいのですが」
バジルール少尉だ。
「ご心配なく。オーブは私がいなくなったところでつぶれるような国ではありません」
「しかし」
「『羊として100年生きるか、それとも獅子として一日か』ですわ、あなた――」
その時、オペレーターから艦内通信が入った!
『オーブ防衛軍より連絡あり! シャフトより敵モビルスーツ侵入!』
マリューはきっとなって命令する。
「第一戦闘配備! アークエンジェル発進! ……と、で、いいかしら? フラガ少佐?」
「ああ。私はパイロットだ。気にせず艦の指揮を取ってくれ」
「了解しました」
そしてマリューはルナマリアに振り返ると言った。
「すまないけど、戦闘、お願いできるかしら?」
「もちろんです。カトー!」
「はっ」
私達はモビルスーツデッキに向かって走り出した。

 

「あ、ルナマリアさん」
「カズイか」
「ま、またザフトが襲ってくるって!」
「ああ。……また、一緒に戦ってくれるか?」
「え……」
「無理には頼まん。時間が無い。行くぞ!」
「ええい、畜生! 俺も男だ!」
カズイはルナマリアの後を着いて走り出した。

 
 

「く、こいつ、動きが! うあわぁぁ!」
また一つもはや残り少なくなったヘリオポリス防衛隊のメビウスは爆散した。
「くはははは! やはり私は強いのだ!」
クルーゼは哄笑した。
予備のシグーを駆り、メビウスを次々に葬っていく。
「クルーゼ隊長!」
「ん、アスラン、君も早くコロニーの中へ行き給え」
「はっ」

 

「くそう、中にはルナマリア姫様が! やらせるかー! 皆、命を捨てろ!」
「「おおー!」」

 

「む。これは!」
四方八方から、シグー目掛けて、衝突の怖れなど無いように、メビウスが突進する!
「うが! こいつら!」
クルーゼは焦った。
「く、上に! 足はくれてやる!」
すばやく頭上のメビウスを破壊すると、両足をパージして脱出を図る。
「仕方が無い、帰還するとしよう。ふ……また足を失ってしまうとは。ほんとに飾りだな……」

 
 

私はコクピットに入って、状況を把握する。
アークエンジェルからミサイルが放たれ始めたようだ。敵のモビルスーツはそれを躱し……ミサイルは皮肉にもコロニーのシャフトに当たっている! このままじゃコロニーが!
『ストライク! 敵のジンは拠点攻撃用の、重爆撃装備だ。コロニーに遠慮する気は無いらしい。頼むぞ!』
「はい!」
『更に別部隊侵入! 一機はX-303、イージスだ。ストライクと同じくPS装甲でビームライフルにビームサーベルも持っている! 気をつけろ!』
「じゃ、ルナマリア・ホーク、ストライク、出るわよ!」

 

「ホーク義勇兵」
戦場に出ると、冷静な声が私を迎えた。
「え、私の事?」
「ふ。なんと呼べばよいのかな。呼び方が無いと面倒なのでな。とりあえずだ」
フラガ少佐だ。
「私のメビウス・ゼロは実体兵器しかない。X-303イージスとは相性が悪い。そちらは任せる」
「はい!」
「ふ。残りは任せろ!」
「言いますね!」
大丈夫だ。フラガ少佐なら大丈夫。そんな気がした。
私はPS装甲を赤く発光させているイージスに突っ込む!

 

『ザフトに告ぐ! こちらはオーブ艦、アークエンジェルである! ザフトに告ぐ! こちらはオーブ、ルナマリア・ホーク・アスハ姫座乗のオーブ艦アークエンジェルである! 攻撃を即刻止められたし!』
アークエンジェルからの緊急帯域を使った通信がザフト、地球軍関わりなく響く。

 

「へ、騙されるかよ!」
フクダはM69バルルス改特火重粒子砲を構え、ビーム砲を放つ。
しかし、その威力は取り回しの悪さに比して弱い。アークエンジェルのラミネート装甲ならば耐えきってしまえる物だった。
だが……流れ弾がコロニーに被害を及ぼすには十分の威力でもあった。

 

「これで、先に手を出したのはザフトだな。遠慮なくやらせてもらう!」
フラガはカッと目を見開くとそのジンの方に向かって行った。

 

「うわあ!」
フクダは悲鳴を上げた。
敵艦から発進してきたメビウス・ゼロはモビルスーツには不可能な速度でフクダのジンの後に回り込む。
慌てて後ろを振り返る。
しかし、バルルス改特火重粒子砲で対抗しようにも、なんとも取り回しが悪い。

 

「さぁ、豚のような悲鳴を上げろ!」
いったん後ろへ回った事でアークエンジェルを安全にしたフラガは、急速にジンに突っ込んでいく。
すれ違いざま、瞬間ガンバレルを分離し、四方八方から攻撃する!
「まずは一匹」
再びガンバレルを合体し、速度を上げる。
肉食獣のような笑みを浮かべながら、フラガは次の獲物を探した。

 

「ひぃぃ!」
モロサワは悲鳴を上げた。
M69 バルルス改特火重粒子砲を構えた僚機が、瞬く間にあのメビウス・ゼロにやられてしまったのだ。
「こんな重いもん持ってる場合じゃない! 来るなぁ!」
モロサワは装備した大型ミサイルを次々に発射した。
だがそれらは、敵艦に躱され、コロニーのシャフトに向かって突き進む!
――!
大きな衝撃がコロニー全体を襲う!
「これだ、これだよ!」
モロサワは敵艦とコロニーのシャフトが重なる位置に移動すると、残りのミサイルも発射する!
「ほうら、逃げるとコロニーが壊れるぞ!」

 

「回避!」
ナタルが叫ぶ。
「ふぅ、なんとか避けたか」
ブリッジに安堵の溜息が聞こえる。
「ああ!?」
「どうした!?」
「外れたミサイルが! コロニーのシャフトに!」
「なにぃ!?」
「敵、大型ミサイル、本艦を狙ってきます!」
「くっ」
マリューは歯軋りした。
そして戦闘が始まってから初めて命令を出した。
「今度は避けるな! イーゲルシュテルンにて敵ミサイルを破壊せよ」
「ええ!?」
「命令よ!」

 

「卑怯者めが!」
「あ」
自分の策に悦に入ってアークエンジェルを眺めていたモロサワが気がついた時、モロサワはガンバレルに包囲され、機体の爆散と共に意識を虚空に散らせた。
「さぁ、残り一匹!」

 

「こいつ、すばやい! アスラン! アスラン! どこにいる!」
タケダは必死になって援軍を探した。
「キラ! キラ!」
「アスラン! 何を訳のわからない事を言っている! 早く助けろ!」
「キラ! キラ!」
「ちっくしょう! ええい、こんなもの! アスランなんか知るか!」
タケダは大型ミサイルを発射し、身軽になって逃走を図る。

 

「ふ……」
フラガは機首のリニアガンと4つのガンバレルを駆使し、大型ミサイルを破壊する事に成功する。
「さぁ、お帰りはまだまだ早いが……」
ガンバレルを合体してブースターとして使用する!

 

「ひいぃぃ!」
必死に進入してきたシャフトまで逃走を図るタケダ。
しかし、シャフトからメビウスが数機現れた!
タケダのジンのスピードが鈍る。
ヘリオポリス防衛隊のわずかな生き残りの意地であった!

 

フラガは急加速して、逃げようとしているジンに追いつく!
「そんなに帰りたいなら地獄へどうぞ」
リニアガンとガンバレルが無防備なタケダのジンの背中を狙う!
タケダのジンは爆散した!

 

私はイージスに向かって突っ込む!
相手は全身ビームサーベルだ。近づきたくは無いが、なかなかビームライフルが当たってくれない。
『キラ! キラ・ヤマトだろう! 答えてくれ! キラ!』
ん? キラヤマト?
イージスから通信が入った。私は咄嗟に音声オンリーに切り替えた。
『俺だよ、俺俺』
オレオレ詐欺かよ。
『コペルニクスの幼年学校で一緒だったアスラン・ザラだよ!」
ザラ!?
『俺達が戦わなきゃいけない事なんてないはずだ! 一緒にプラントに行こう! お前はナチュラルに騙されてるんだ!』
なんだこいつ。
「……おい、イージスのパイロット!」
『な、女? キラじゃないのか!?』
キラ、あなたの名前を利用させてもらうわ……
「キラは死んだ!」
『なにぃ!?』
「お前達ザフトに殺された! ジンに殺された! 先程の襲撃の時にな!」
私はさっぱり当たらないビームライフルを仕舞うと、ビームサーベルを抜き放ち、イージスに切り付けた!
見事、私はイージスの片腕を切り落とした!
『ちっくしょーーーーー!!!!』
変形!?
あ……
変形されたイージスから放たれた光は、もうぼろぼろになっていたメインシャフトに最後の打撃を与えた――

 
 
 

】【戻る】【