Lnamaria-IF_LED GODDES_16

Last-modified: 2009-08-28 (金) 21:31:30

ラクスは一人、軟禁されていた。
手荒い事は別にされていないが、彼女と接する兵達の態度はごく事務的な物だった。
ハロも取り上げられた。
ラクスは寂しかった。
アークエンジェルで会ったミリアリア。彼女は何の気負いも無く接してくれた。
もう一人……
ルナマリア・ホーク。
彼女からは悲しみと怒りが伝わってきた。それでも、彼女が懐かしかった。
この基地に連れて来られてから、セキュリティの制限はあったがイントラネット環境を与えられた。
ラクスはむさぼる様にネットにのめり込んだ。そして知ったのだ。ザフトが何を引き起こしたのか……
父、シーゲルから、血のバレンタインの報復としてザラ国防委員長が提案した核による報復ではなく、ニュートロン・ジャマーの投下になったと聞いた時、ひどい事にならずに良かった……と思ったものだった。
だが……ニュートロン・ジャマーは、核以上の被害を地球に与えたらしかった。
核による一瞬の死より、餓死、凍死。それも核でもたらされる以上の被害で……
ラクスはモニターから顔を上げると小さな声で歌い始めた。
鎮魂の想いを込めて……

 
 

「皆さん、よろしくお願いしますね」
私の目の前に並んでいるのは、アークエンジェルに乗り組む事になる、大西洋連邦のスカイグラスパーのパイロット達だ。
基地の司令は、エースを集めたと言っていた。心強い。
そう言えば、地球軍に正式に義勇兵として参加するに当たって、ルナマリア・ホークとしての階級を決めた。私とカトーは三佐だ。カズイが三尉。
「私はウィリアム・ビショップ少佐だ。出身はニューヨークだ。よろしく頼むよ」
彼だけはモビルスーツパイロット。鹵獲したジンを与えられている。
「よろしく頼むよ。いやぁ私の祖父母はニューヨークに住んでいたんだ」
カトーも挨拶をする。
「おお!」
「奇遇ですなぁ」
「ご壮健でありますか?」
その台詞を聞いた時、カトーの顔が曇った。
「……エイプリルフール・クライシスで……」
「そうですか、いや、すまない事を聞きました」
「いや、いいんだ」
「絶対、ザフトの連中をやっつけましょうぜ!」
「ああ!」
「実は、言っておかなければならない事がある」
ビショップ少佐が顔を曇らせながら言った。
「私はコーディネイターだ」
「気にしませんよ、そんな事!」
私はきっぱり言った。
「同じ地球の仲間じゃないですか!」
私はビショップ少佐の手を握った。
「ああ、ザフトの糞野郎どもと一緒になどせんさ!」
カトーも断言した。
空気が暖かくなった。
「実は俺は宇宙人なんだが」
イェーガー少佐がおどけながら言った。
「俺も仲間に加えてもらえるかな?」
「へ?」
私は思わずぽかんとしてしまった。
「ははは」
笑い声が広がる。
「イェーガー少佐は、L1のスペースコロニー『世界樹』生まれなんだ」
ボング少佐が笑いながら説明した。
「もちろん! 仲間です!」
私はイェーガー少佐の手を握り、笑った。

 
 

「今更俺達になんの用があるってんだよ」
アメノミハシラに移送されたロウはふてくされた。なにしろ手錠を嵌められているのである。
「君に聞きたい事があるのよ」
三途乃川霊子博士は言った。
「ねぇ、あのハチってコンピュータ、どうやって手に入れたの?」
「んー宇宙空間を漂流していた宇宙戦闘機から発見したんだよ。発見時に付いていたパネルから辛うじて「8」の数字が読み取れたからハチって呼んでんだ」
「その戦闘機はどうしたの?」
「ぼろいから部品にばらして売っちまったぜ」
「はぁ」
霊子は頭に手を当てるとため息をついた。
「だから馬鹿なジャンク屋は……」
「なにぃ?」
「いい? あれは自分自身の意思を持ってるのよ? その技術力は……オーパーツだわ! それを乗せていた戦闘機だって、調べればどれだけの事がわかったか……はぁ」
「なぁなぁ、俺達、どうなるんだ? 早くジャンク屋再開したいんだが……」
「んぁ? ジャンク屋は廃業よ。当然でしょ?」
「なにぃ?」
「ジャンク屋組合は、貴方達を切り捨てたから。オーブのお好きなようにって。なにしろジャンク屋組合の義務破りまくりの殺人未遂犯だからね」
「ええー!」
ロウは項垂れた。
「はぁ、ともかく、エリカ・シモンズと貴方達のメンバーのミス・ローランド・バードが知り合いだったのを感謝するのね。刑務所に一生ぶち込まれる所だったんだから」
「……ローランド・バードって誰だ?」
「知らなかったの? 通称プロフェッサー・ロングヘア。有名じゃない」
「有名……だったのか……」
「はぁ、こんなのを助手にって、使い物になるのかしら」
「へ? 俺、何をするんだ?」
「ザフトで、佐野量子博士が、通称量子コンピュータを開発中なのは?」
「しらねー」
「はぁ。とにかく! 私はそれをも超える霊子コンピュータを開発中なのよ! 足を引っ張ったら承知しないからね!」

 
 

「やれやれ、護衛任務ってのは退屈だな」
「ずっと待機が続きますもんねぇ」
クルーゼ隊はL4からL5までのボアズ要塞を移送中の護衛任務で少々だらけ気味であった。
「ああ、こんな事ならいっそ敵が襲ってこねえかなぁ!」
ディアッカがぼやいた時だった。
艦内にアラート音が鳴り響く!
「馬鹿野郎! 余計な事を言うから!」
ミゲルがディアッカをぽかりとやりながら部屋から走り出す!

 

「敵機は!?」
自分のジンに乗り込みながらミゲルは聞く。
「……メビウス約10機に……モビルスーツ2機!」
「了解! ミゲル・アイマン、ジン、行くぞ!」
「ディアッカ・エルスマン、バスター、行くぜ!」
「ラスティ・マッケンジー、ジン、行きます!」
追っ付けアスラン達も出てくるだろうと、3人は先に出撃した。

 

「なんだ!? あれは!」
一機は、ジンの様であった。だがトリコロールに色分けされた機体は……
「ストライクか!?」
ディアッカの背中をぞくりとしたものが通り過ぎる。
「撃ってくる! 気をつけろ!」
「メビウス10機ぐらい!」
彼らの脇をビームが過ぎた!
「くそう!」
ディアッカは350mmガンランチャーと94mm高エネルギー収束火線ライフルで対抗しようとする!
「――!」
狙う面積を最大にしようと相手の後ろ正面に回り込もうとする……相手も機動性が高くできない。
その時、相手がビームライフルをビームサーベルに持ち替えた!
「馬鹿じゃねぇの? その距離で! チャンスだぜ!」
勇躍して正面に回り込む。
――!
二線の太いビームがバスターを掠る!
敵機は、胸部に装備された砲を撃ちながら向かってくる!
「ストライクじゃねぇ!?」
その敵機は、胸に2連の黄色い砲口を持ち背部に大型の赤いウィングを背負っている。黄色い六芒星マークのベルトをしている。
ストライクでは――なかった。
だが、その機動は、ディアッカに勝るとも劣らなかった。
ディアッカは慌てて避ける。
だが――敵機が取り出したビームサーベルによって右腕が切られた!
「ディアッカー!」
ミゲルのジンが駆けつけてきた!
「ミゲル、そっちは任せます! こっちのジンは僕でなんとか抑えられそうです!」
「了解! ラスティ!」
トリコロールカラーの機体に向かいながら、ミゲルはどこかで会った相手のような気が、ふとした。

 

「待たせたな!」
「イザーク!」
イザーク達3機も出撃してきた!
が、それを見ると襲撃者達は急速に撤退していった。
「なんだ、また腕やられたのかよ」
イザークがバスターを見ると言った。
「腕と砲、ここまでやられちゃあ元には戻らないな」
「面目ない。だが……強かった!」
「僕、見たんです」
「なんだ、ラスティ」
「あのジン、有名な傭兵部隊、『サーペントテール』のマーキングがしてありました!」
「な、なんだってー!?」

 
 

「ふぅ」
サーペントテイルの叢雲劾はヘルメットを脱いだ。
「なかなか一朝一夕と言う訳には行かんな、今回の依頼は。地球軍に増援を頼んでみるか……表向きは傭兵と言う事にしてもらって」
劾は独り語ちた。
「だが、すごいぞ! オーブ製のOSは! 俺でもコーディネーターと同じように戦える!」
ジンを操縦していたイライジャ・キールが興奮したように言った。彼は免疫系等だけのコーディネイト効果発現だった為、あまり自分がコーディネイターだと言う意識は無い。
ちなみにオーブ製のモビルスーツOSは前金としてオーブから渡された物である。
「そうか。なら、今回の依頼を受けた事は意味があったな」
劾は微笑んだ。

 
 

その知らせがプトレマイオス基地に飛び込んで来たのは、アークエンジェルの地上降下を1週間後に控えた日であった。
地球軍幹部の会議は紛糾した。
「北アフリカに、援軍が来るか……」
「どうする、こうなればアークエンジェルは……」
「とにかく余裕があるならマスドライバーを破壊される事は避けたい」
「そうだな。まず、その援軍が北アフリカを押さえ、退路を断ってからアークエンジェルがビクトリア基地に直接降下するというのはどうだ?」
「そうだな。ザフトの退路がマスドライバーしかない状態にしてしまうのだ」
「いいな。そうなれば、ミラージュコロイドを利用したモビルスーツと輸送機を作る方がいいかもしれない」
「時間があれば大気圏突入艇も作れるな。アークエンジェル単独で降ろさずに済む」
「その時間的余裕はできるな」
「……ところで」
緊急事態と言う事で途中から会議を聞いていた私、ルナマリア・ホークは尋ねた。
「その援軍というのはどこの軍なのです?」
そう聞いた私に基地司令官はおもしろそうに言った。
「オーブ義勇軍、だそうだ」

 
 

「へへ、修理もどうやら出来そうだな」
ディアッカは自分では残忍で狡猾だと思っている笑みを浮かべた。
先の戦闘でバスターは右腕と砲を破壊された。
その代わりに右腕はジンの物を。右肩部には115mmレールガン『シヴァ』、左肩部には220mm径5連装ミサイルポッドが装備された。
近接戦闘用に重斬刀も装備した。シールドもだ。
「これなら……今度は近くだって負けやしねぇ!」
不安を押し殺しながらディアッカはつぶやいた。

 
 
 

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