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Last-modified: 2007-12-27 (木) 10:11:49

竜宮レナはヤンデレではない。

 

最近はあちこちでヤンデレヤンデレ言っているが、こいつをわからないパンピーが増えていて困る。
ヤンデレ萌えというものは、純粋な恋する乙女が愛ゆえに病むっつー過程を愛でるもんで、
テキトーに刃物もってカタカナ言葉連発してりゃ、はいこれヤンデレヒロインです萌えるだろお前らってわけじゃねえんだよ。
その点、言葉様は実によろしいヤンデレだ。浮気三昧のMの字を責めたりなんかせずに、
周りにいるヤツを誘惑する泥棒猫どもに刃を向ける。

 

あの人が他の女を見てる……私はこんなに愛しているのに、どうして?……でも、愛するあの人を責めたりなんか出来ない……なら、この胸の痛みは誰のせいなんだろう?……あの女に決まってる!

 

実に素晴らしい論理の飛躍。この独善的で愛情に満ちた思考こそ究極の愛に相応しいだろう?

 
 

「つまりだなお前ら、ヤンデレは愛なくしてヤンデレたりえないってわけだ。
 むしろ愛とはヤンデレ、泥棒猫への憎しみも愛しい彼への胸が焼け付くような愛ゆえに発現するものなんだよ。
 どっかの神父だってヤンデレ=LOVEって言ってただろ?」
「はぁ、そうなんすか……」

 

AEU軍事演習場の休憩室にて、新兵たちにヤンデレのなんたるかを熱く語り聞かせている男の名は、パトリック・コーラサワー。
AEU軍所属のMSパイロットで、演習でも負け知らずのエースである。
28歳でありながらスネオ風の前髪という、別の意味においても猛者である。

 

「どっかの出版社がヤンデレ大全とかいう本を出したが、俺から言わせてもらうなら、アレを書いたやつは何もわかっちゃいないね。
 刃物持った女を表紙にするなんて、俺たちヤンデレマイスターに喧嘩売ってるとしか思えねえ。
 インパクト狙いっつーのが見え見えだろ?」
「さすがパトリックさんだぜ!萌えの本質を解っていらっしゃる!」
「AEUのエースって、やっぱすげえんだな!」
「フッ……おだてたって何も出やしねえよ。お前らも俺みたいなエースになりたきゃ、本質を見極めるんだ。
 萌えも、MSのテクも、な」
「かっけ~!」
「やっぱりパトリックさんは最高だぜ!」
エースパイロットがさりげなく放つ、ありがたいお言葉の一語一句に歓喜する新兵達。
大学生の飲み会で一番年上の先輩が芸をやったときのような空気が休憩所にただよっていた。

 

「じゃ、じゃあ、緑の子はヤンデレなんスかね?」
「俺にしてみればありゃアウトだな。マナマナは元からアレだ」
「で、ではアニメ版楓は……」
「簡単に諦めたのはいただけねえが、『様』を付けるに相応しいヤンデレの一つには数えられる」
「さすがパトリックさんだぜ!萌えの本質を解っていらっしゃる!」
「AEUのエースって、やっぱすげえんだな!」
「な、なら、うちのいもうt」
「その話題を止めろNTR厨が!」
「……」
「……」
「……す、すみません」
途端に静寂に満ちる休憩室。気まずい空気が漂い、新兵たちは失言をした男に責めるような視線をおくる。

 

『モビルスーツ・イナクトのテストパイロット、パトリック・コーラサワー、至急、本部まで出頭してください。繰り返します……』

 

「……やれやれ。小うるせえ上司がエースの到着をお待ちのようだ。じゃあなお前ら。俺は行くぜ」
放送で呼び出しがかかり、この会合はしらけた空気のままお開きとなった。
パトリック・コーラサワーは不愉快そうにやたら長い襟足をかき上げて、休憩所を後にする。

 

「……」
「……」
「……行った、か?」
「……コーラ行った?」
「……行ったみたいだな」
「「「「はぁ~」」」」

 

エースの姿が見えなくなったことを確認すると、新兵たちは一斉にため息を吐いた。
ソファの上で正座していた脚を崩し、寝そべるような姿勢になって、だらけはじめる。
「コーラマジうぜぇwww」
「つーかきめぇwwww」
「フッ、おだてたって何も出やしねえよ……って、いい年こいたオッサンが何言ってんのw」
「フッ、が許されるのは十代までだよなww」
「だいたいアイツのどこがエースなんだよ。演習しかしたことねえくせにw」
「リミカキンゲしか使わねえくせに調子こきすぎだw」
「あんなん誰でもエース取れるっつーのwww」
「なあなあ、知ってるか?コーラがいつも言ってる2000回ヤったとかいう話」
「フカしだろ?そんなんこの基地の人間なら誰でも知ってんじゃんw」
「それだけじゃねえんだって……コーラって実はな……」

 

「「「「……ちょ、マジかよwww」」」」

 

「アイツもう三十だろ?魔法使い確定じゃんwww」
「どうりでエロゲーに詳しいわけだw」
「エースのパトリックさ~ん!俺たちに魔法の使い方教えてくださ~い!」
「「「「「ぎゃははははははは」」」」」

 

AEUのエースパイロット、パトリック・コーラサワーにじゅうはっさい。
彼は今だに実戦経験ゼロであった(性的な意味で)

 
 
 
 

AEU軌道エレベータが見渡せる丘に、一人の男が立っていた。
その男は丹精な顔立ちをしていて、どこか優しげな光を湛えた眼の上には太く男らしい眉毛が乗っかり、
黒い髪は短く刈り込まれていた。
作業着姿のその男は何を思ったのか、軌道エレベーターをひとしきり眺めると、
年季の入った作業着のジッパーを下ろして、股間を乾いた外気に晒す。

 

「フッ……まだまだだな」

 

天に延びる軌道エレベーターと自分の一物とを見比べて、作業着姿の男――阿部高和は男くさい笑みを浮かべた。
男くさい笑みとはどのようなものなのか、作者にはよくわからないが。

 
 
 

客席では、栗色の長髪を丁髷風にまとめて眼鏡をかけた男が、空を飛び回る緑色のMSを眺めていた。
「ES・イナクト、AEU初の太陽エネルギー対応型か」
これからポニーテール萌えと眼鏡っ男萌えのご婦人たちの妄想回路を刺激するであろう運命を持つ男は、解説をするように呟いた。
これで誰も彼の声に答えなければ、人が集まるなか突然独り言を呟くアイタタタな癖とファッションをもつ男として、
どっかのオレンジ頭くらいに悲惨なキャラになっていただろうが、幸いにも相槌を打ってくれるお友達がいた。
「AEUは、軌道エレベーターの開発で遅れを取っている。せめてモビルスーツだけでも、どうにかしたいのだろう…
 …つーかESって何だよ。あれはMSだろう?」
「なんとなくアニマの器とか入ってそうじゃね?」
「入ってるわけないだろうが。たとえモノリスが許してもナムコが許さんよ。アレは著作権にうるさい会社だからな」
金髪の天然パーマを持つ、スーツ姿のおともだち――ユニオン所属のエースパイロット、グラハム・エーカーは、
あざといゲーム会社について愚痴りながら席に腰を下ろす。
「どうみる?あの機体を」
「どうもこうも、うちのフラッグの猿真似だよ。人革連の企業じゃあるまいし、
 アレの開発者は自国が起源だと主張すればなんでも許されると思ってるのかねぇ……」
人革連が二十一世紀、何と呼ばれる国だったのかお察しください。

 

『そこォ!聞こえてっぞ!今なんつった、コラ!』

 

今回の演習のエースポイントを確認しつつ、観客席の賞賛の声を聞いて悦に浸っていた矢先、
人革連とかいう不愉快な単語が聞こえて、コーラサワーは思わずそう叫んだ。
「集音性は、高いようだな」
「みたいだね」
自国のMSを特定アジア産だと侮辱されて、今度は直に怒鳴りつけてやろうとコックピットから出たとき、
管制塔から彼に通信が入る。
「はぁ?アンノウンだぁ?どうしてこんなときに……」

 

コーラサワーは思った。この演習を華麗に成功させて、観客席の婦人たちに自分の勇姿を見せ付け、
晴れて自分は大人のナイスガイになるという計画が台無しになったと。

 

ちなみに彼の脳内では、

 
 

ご婦人がた、パトリック様ステキー!と黄色い歓声。

 
 

演習を終えて、エースパイロットお披露目。女たちは美形のパトリックにもうメロメロ。

 
 

偶然目が合って、逸らしてしまう深窓の令嬢。そこから生まれる二人の恋。

 
 

――俺は行かなきゃなんねえ……戦場で死ぬことになろうとも、お前を守るために、戦わなきゃなんねえんだ……!
  ――待ってパトリックさん!私、私……!
  ――すまねえな……
  ――一度だけでいいんです。私に、貴方の思い出を下さい――

 
 

あなたと、合体したい。

 

という具合の、見るからにエロゲ脳が生み出したありえねー妄想である。パチンコでいい笑顔になるくらいありえねー。
もちろん、こんな場所に彼の妄想するお嬢さんなど存在していようはずもない。いるのは軍関係者のむさい男たちばかりである。
しかし、二十八歳のパトリック・コーラサワー――その若さでトライアングルメイジの称号(脳内)を獲得した大魔法使いは、

 

げんじつ が あらわれた

 

ニア テレポ で にげる

 

という超一級の現実スルースキルを所持していた。

 
 

『イナクト!聞こえるか、イナクト!パトリック!』
コーラサワーは端末を操作して通信を切る。五月蝿い外野には黙ってもらう。
「ユニオンか?人革か?どっちにしろ俺のワンマンステージに土足で踏み込んだんだ……ただで済むわけねえよなァッ!」
そうとも、ただで済ませるわけにはいかない。そこにいる無粋な乱入者は、自分の幸せ家族計画を邪魔したのだ。

 
 

ありったけの憎悪を込めて、コーラサワーは目の前の『肉色MS』に宣言した。

 
 

「あの馬鹿、何をする気だ!あの機体にどれだけの開発費を……」
「いいチャンスですよ。これでイナクトの価値は上がる。パトリック……えーと、パトリック・クリームソーダ?」
「たしかパトリック・コーラフロートじゃなかったか?」
「ああ、そうでしたね。パトリック・コーラフロートは、わが軍のエースではないですか。
 性格に少々問題は在りますが……ところで、知っていますか?実は彼が……だという噂」
「ちょwwwwマジかよwwwww」

 

イナクトの集音マイクは非常に高性能である。
だから客席で馬鹿笑いしている上司の声も、一語一句逃さず彼の耳に届いていた。
「き、貴様ァ、俺が誰だかわかってんのか」
ここで上司を怒鳴りつけてやりたいところだが、コーラサワーは基本的にへたれである。
だから後で誤魔化せるよう、外部音声で敵に聞かせる感じに言い放ってみた。
「AEUのパトリック・コーラサワーだ!模擬戦でも負け知らずの、スペシャル様なんだよ!」
自己アピールも忘れないところが、彼がエースたる所以だろう。
「知らねえとは言わせねえぞ!」
プログレッシブナイフじゃなくてとにかく振動するっぽいナイフを取り出して、イナクトは構えた。
この武器のチョイスは、振動による音波で上司に嫌がらせをするためだ。流石はエースである。

 

『ええ?おい!』
マイクで拾った外部音声が、インモラルのコックピットに響いた。
モニターの中には、刃物を構えて元気に突っ込んでくる緑色の細っこいMSの姿が映っている。

 

「ンフフフフフフフフ……」

 

やはり、イイ。久方ぶりの獲物に、阿部さんは不適な笑み浮かべた。

 

CEのMSパイロットも、AWのバルチャーたちも、阿部さんが戦場を荒らすようになってニ・三年も経つと、
腑抜けぞろいになってしまった。
掘られる以前のように必死で抵抗する素振りも見せず、適当にバンクを使った射撃を数発するだけで、
捕まってもじっと動かずにやってくるであろう快感を待ちわびているという有様だった。
しまいには自らケツを差し出すMSさえいた。
阿部さんの望むMSプレイは、そこには無い。
掘りつ掘られつ、俺TUEEEE!しすぎない程度の難易度でノンケを狩るのが醍醐味なのだ。

 

もっとも、CEでジェネシス、AWでサテライトキャノンのエネルギーを吸収したインモラルは
ターンシリーズ並みのチート機体なんですがね。

 

「ンフフフフフフフ……」
無謀にも真っ直ぐ突っ込んでくる緑色MSを眺めて、ハジメテこの相棒に乗った時を思い出す。
新鮮な、初々しい敵MS。未知の恐怖に襲われて、震え上がるネコちゃん。
そして、ゲイ・ボルクに貫かれ一瞬にしてそれが快感に変わるとき、一気に脱力する受け手の肢体。
「ンフフフフフフフ……」
先走りがはしたなく股間を濡らしている。今回は、いつものようにオムツは付けていない。
やはり久しぶりのMSプレイは生のまま心行くまで味わいたいという、阿部さんの自分へのご褒美だ。
寂しいOLみたく、特に理由がなくても自分へのご褒美なのだ。
モニターのみどり君も、阿部さんの興奮に呼応するように、いきりたっている。
元気があって非常によろしい。キミの勇気に敬意を表して、はじめは受けに回ってあげよう。
全力で打ち込みなさい。全身全霊で、キミの全てを賭けた一撃を阿部さんに放ちなさい。
魂と肉のぶつかり合いこそ、阿部さんの望むものなのだから。

 

だが、キミの牙が折れ、心が屈したときは……

 

「ンフフフフフフフ……」

 

このインモラルガンダムで、新たなシアワセを味わわせてあげよう。

 
 
 

「うおおおおおおおッ!肉色ォッ!貴様をォッ!」
腰だめに、憎い泥棒猫を刺し殺すような構えで、ナイフを伸ばす。
肉色は全く動かない。一瞬先の光景は、ナカに誰もいないじゃないですか、だ。
「斬刑に処……なにぃ!?」

 

装甲に触れたと思った瞬間、ナイフを構えた左腕が、ぽっきりとへし折れた。

 

「な……」
コックピット内の計器の情報は、とんでもなく硬いものを突き刺したためだと表示していた。
ありえない。振動ナイフはダイヤモンドでさえ切り裂けるはずだ。
いくらあのMSが見た目のように肉厚であろうと、刺した腕ごと砕けるなんて、常識的に考えてありえない。
「ててててててめえ……わわかってねえだろ!」
コーラサワーは既に少し半泣きだった。緩んだ膀胱から流れる液体をパイロットスーツが吸収した。
演習(ACE3)で、ダメージ受けたら即効リトライを繰り返すタイプだったコーラサワーは、戦意を喪失していた。
「おおお俺はァッ!」
必死に自分を鼓舞して、右腕のライフルを一発放つが、常識はずれの装甲には傷一つつけられない。
「すすすスペシャルで!」
破れかぶれに、ライフルを持った右腕で肉色を殴りつける。しかしよろかせることも出来ず、その細腕ごとライフルは砕け散った。

 

両腕を失い、勝ち目は完全に無くなった。
どうして俺はいつもこう上手くいかないのだと、コーラサワーの脳裏には今までの悲惨な人生模様が走馬灯のように駆け巡っていた。

 

幼少時代、勇気を出して告白したミヨちゃんに雑巾臭いといわれた。

 

学生時代、合コンで狙っていた女の子をアキバ系の後輩に寝取られた。

 

新兵時代、無愛想でちょっと素直クールっぽいところがツボだったオペレーターが、剥げ頭の上司とホテルから出てくるところを目撃した。

 

そして現在、同期のやつが出世してゆく中、自分だけが未だに一パイロットのまま、お情けでエースという称号を貰った。

 

目は涙であふれて、使い物にならない。手探りでレバーを動かすが、機体が反応しない。イナクトの胴体が、肉色のMSに掴まれた。

 

『ンフフフフフフフフ……』

 

お肌の触れ合い回線から、男の笑い声が響いている。まるでパトリック・コーラサワーの人生を嘲笑っているかのようだった。

 

彼の心は、完全に折れてしまった。

 

「二千回で……」
だが、彼の肉体はまだ諦めていなかった。
コーラサワーの心が絶望しきっていても、精いっぱい虚勢を張ろうと、勝手に声を出していた。
そうだ。まだ俺は終わっちゃいない。俺はAEUのエース、パトリック・コーラサワーだ。
せめて、俺の人生で唯一誇れるものを叫んでから散ってやろう。
俺が誇れるもの。胸を張ってこれだけは誰にも負けないといえるもの。
それは……

 

「模擬戦なんだよォ―――ッ!」

 

『フンッ!!!』

 

「アッー!」

 

目の前が、真っ白な光に包まれた。

 

とても優しく、きもちいい、新たな世界の光がコーラサワーの視界に広がった。

 
 
 

会場の男達は、目の前で広がる惨劇に、一言もものを言えなくなってしまっていた。
未知のものへの恐怖、あっけなく敗退した最新鋭機イナクトへの失望、
肉色MSの股間からのびるピンク色の光を見たときに感じた、尻の穴がむずむずするような感覚。
様々な想いが入り組み、会場を静寂で満たしていた。

 

(あの肉色の光、どこかで……)
グラハム・エーカーには、肉色MSの臀部から放たれる光について、思い当たるふしがあった。
記憶のどこかに、隅の隅の隅っこくらいに、その記憶が引っかかっていた。
しかし、どうしても思い出せない。バンガードソニックの後継マシンの名前と同じくらい、思い出せない。
「失礼」
「な、なにを」
ともかく、もっと良く見て確認しなければと、目の前にいる緑ワイシャツの男から双眼鏡を奪い取った。
「失礼だと言った!」
「ぁあ!?ワレ、舐めたことぬかしてんじゃねえぞ!」
「し、失礼しました……」
グラハム君はDQNな言動で無理を通そうとしましたが、残念ながら相手はもっと無理を通すような職種のお方でした。
服装は地味ながら、大小様々な傷で彩られたおサレフェイスを持つヤのつく方は、グラハム君の肩を掴んで、こういいます。
「ちょっと兄ちゃんよぉ、いきなり人のモンをギっといて、謝って済むと思ってんのかい?え?」
「……」
「ウチら人革連ってのは、ナメられたら終わりの商売なんよ。そこんところ解るか兄ちゃん?」
「……」
「兄ちゃんには、誠意見せてもらわんとなぁ……」
「……」
「ちぃっとばかし、一緒に向こう行こうや」
「……はい」

 
 
 

――尻の穴から広がる、心地よい痛み。前ではなく後ろの貞操を先に失ってしまったのだと、今更ながら認識する。
結局俺は、一度もおにゃのことにゃんにゃんすることなく、雄としての人生を終えてしまった。
これからは、異性との生殖という概念を捨て去った、同性と交合する歪な人間として、生きてゆくことになるだろう。
その先に待っているのは、仲間たちに迫害され、同性に恐れられ、ノンケに忌み嫌われるという茨の道だ。

 

だが、悪い気分じゃない。コーラサワーはそう思った。

 

この快楽さえあれば、耐えていける。胸の内に芽生えた、いい男へのあこがれさえあれば、なんだって出来る。
良い男には、不可能などないのだから。
「俺の名は、パトリック・コーラサワーだ!覚えてやがれ!次に会うときは、俺がアンタを掘ってやるからな!」
パトリック・コーラサワー、28歳非処女は、最後にそう叫んで意識を手放した。

 
 

「大丈夫かい?お尻が随分と痛そうだけれど」
「フッ……ユニオンじゃこの程度の荒事は日常茶飯事さ…
 …そうさ、日常茶飯事なのさ……ううっ……」
「……お大事に」
股座にナニか太いモノが挟まれているような歩き方をしつつ、グラハムは席に着いた。
「ところで、あのMSはなんだ?AEUはもう一機新型を開発していたのか?それに、例の肉色の姿が見えないようだが……」
「あの卑猥な機体は、イナクトを倒すとどこかに行ってしまったよ。そこにいるMSは……」

 

演習場の中、スクラップになったイナクトの目の前に、ぽつんとMSが立っていた。
ソレスタルビーイングの所有するガンダムの一機、『ガンダムエクシア』である。

 

GNドライブ(太陽炉)から発生するGN粒子により、無限に近いエネルギーと驚異的な機動性を実現するという、
ぱっと見厨スペックMSなのだが、今回の作戦で達磨にするはずだったイナクトを阿部さんに食われたことで、
そのスペシャルな性能のお披露目も出来ずに、ただ突っ立っているだけだった。
手持ち無沙汰なのか、がしょがしょとGNソードを出したりしまったりする動作を繰り返している姿は、見ていてどこかもの悲しい。

 

「……何しに来たんだろうね?」