R-18_Abe-SeedDestiny_安部高和_11

Last-modified: 2007-11-06 (火) 21:36:21

インモラルとインパルス。
彼らの戦いは、周りの兵が思わず目を奪われてしまうようなものだった。
「なかなか、やるじゃないのっ!」
インパルスに接近するインモラル。
『させるかッ!!』
明らかに視角外からの接近に、しかしインパルスは身を翻してそれをかわした。
『いい加減に落ちろ、サッカー部のくせに!!』
「サッカー部か・・・・・・懐かしいな。高校の頃はよく部室巡りをしたものさ。・・・ああ、ラグビー部
のあの汗臭い部屋、思い出しただけで股間がビンビンだ・・・」
阿部がかつて在学していた『九祖御祖高校』では、割とシャレにならないインモラルハザードが
発生していた。詳しくは語るまい・・・・・・
「じゃあ、そろそろホンキでイかせてもらうよ!」
阿部の言葉と同時に、インモラルの姿が増えた。
――良い男の為せる業、『質量を持った残像』である。
『くそっ、小癪なマネを!!』
どれが本物か分からずに、しかし見える敵機全てにライフルを叩き込むシン。どれかが本物ならば、
全てを撃ち落せばいい・・・そうシンは考えていた。
だが忘れてはならない。インモラルは超高速で移動出来るMSだ。
むしろ見えるインモラルは全て、単なる目くらましに過ぎなかったのだ。
「ンフフフフフ、捕まえた♪」
『――!?』
まんまと策に嵌ったシンは、背後から組み付かれてしまった。
「それじゃ早速・・・・・・フンッッ!」
そしてゲイ・ボルグ展開――
「・・・・・・?」
しかし、阿部の股間にはあの快楽は伝わってこなかった。
『そう簡単にやられるか!!』
「おやおや・・・・・・つれないねぇ」
その声に目を送ると、インパルスは上半身だけでインモラルから離れていた。
シンは貫かれる直前、レッグフライヤーを切り離していたのだ。
「そうこなくっちゃ――」
そして仕切りなおそうかという時に、阿部はとても不吉な感覚に襲われた。
「これは・・・・・・まずいんじゃないの!」
そう言って阿部は、インパルスに背中を向けて飛び去っていった。
『待て!・・・くそっ、エネルギーが・・・!ミネルバ、デュートリオンビームだ!!あと足も!!』

スティングも、その不吉な予感を感じ取っていた。
「くそっ、冗談じゃないぜ!!」
毒づいて操縦桿を握る。しかしインパルスにやられたダメージが大きくて、カオスは動く事すら出来なかった。
「ちっくしょう、こんな時に!!」
パネルを殴りつけるスティング。しかし、そんな事をしてもカオスは動いてくれなかった。
「死なせられるかよ・・・・・・こんな所で、アイツを!!」

そしてアウルもまた、それを感じ取っていた。
「な、なんなんだよ、コレは・・・!」
既にMSから降りていたアウルは、今まさに爆散しつつあるウィンダムの元へ駆けていった。
「ふざけんな・・・・・・ふざけんなよちくしょう!勝手に死ぬんじゃねぇよ!!」
絶望的な距離。そして、自分は生身。
自分には何も出来ない。そうは理解していても、アウルは走るのをやめなかった。
「ちくしょう!ちくしょう!誰か、誰かネオを助けろよ!!」

コクピット内のあらゆる機器は火花を散らしていた。
ウィンダム、コクピット。ステラを守り通したこの機体はとうにその機能を失っており、あとは死を待つだけの身となっていた。
『ネオ!ネオォォォォォ!!』
ステラの悲痛な叫びが聞こえる。
「はは・・・・・・ステラ、無事だったか・・・」
ネオ自身も怪我を負っていた。もはや元が何だったのか分からないような金属片が、脇腹に深く刺さっていた。
「ったく、ざまぁないね。サボってたツケってやつかい・・・?」
『死んじゃイヤァァァァァ!ネオォォォォォ!!』
「そんなぴーぴー泣くなって、ステラ・・・」
目を閉じる。残された刹那の時間、ネオはスティング達の事を想っていた。
「あーくそ・・・死にたくねぇよな、やっぱ・・・」
スティング、アウル、ステラ。彼らを残して死ぬのは、ネオにとっては酷く心残りだった。
「三人の事・・・よろしく頼むぜ、阿部・・・」
そして覚悟を決めた時、彼の声がコクピットに響いた。
『悪いが、それは聞けないな』
――阿部高和。
「・・・・・・阿部」
『よ、ネオ。知ってるか?良い男にはな、不可能はないんだぜ?』

その時のインモラルの速度は、音速を超えていた。
彼の通った道には突風が吹き荒れた。まだ損壊していない建物ですら、その風に破壊されていった。
その結果、インモラルはネオのウィンダムが爆散する前に彼の元へ辿り着いた。
「よ、ネオ。知ってるか?良い男にはな、不可能はないんだぜ?」
そうネオに告げるやいなや、阿部はゲイ・ボルグ射出口をウィンダムに押し付けた。
そして――
「フンッッ!!」
ゲイ・ボルグとは、知っての通り相手MSのコクピットシートを変形させるものだ。
今回はそれの応用編。阿部はゲイ・ボルグの出力を巧みに調整し、そしてウィンダムのコクピットブロック
を機体から引き剥がすという芸当をやってのけた。
「ほい、完了っと」
その結果、ウィンダムが爆散する前に、ネオの体はインモラルの手の平の上に乗せられた。
「生きてるか?」
「ああ、なんとかな。それより阿部、ステラを――」
「女は助けない主義なんだが・・・今回はおまえに免じよう」
「すまない、恩に着る」
そして阿部はインモラルの手をデストロイのコクピットの中に突っ込ませ、ステラを救い出した。
「で、撤退命令は?」
「頼む」
阿部は連合軍に撤退を告げ、ベルリンでの戦いは終わった。

JPジョーンズ、MSデッキ。
「ネオ!!」
インモラルの手から降りたネオに、ステラは真っ先に駆け寄って抱きついた。
「ぐおおおお!?す、ステラステラ!俺怪我がヤバイんだって!ヤバイ死ぬ死ぬ!今死ぬ俺!!」
「ネオ!ネオ!!」
しかしステラは一向に離れようとしなかった。
「・・・ったく、しょーがないな」
痛みを堪えつつ、ネオはステラの頭を撫でた。
「しかし、一時はどうなる事かと思ったぜ・・・」
「ああ・・・・・・そうだな・・・・・・」
「ん?なんだアウル?おまえ泣いてんのか?」
「ば、バカヤロウ!泣いてなんて・・・泣いてなんていねぇよ!」
何はともあれ一件落着。インパルスとフリーダムが交戦しているようだが、それはファントムペインには
関係のない事だった。
「阿部。本当に助かった、礼を言う」
「なぁに、いいって事よ。そんなの気にする間柄じゃないだろ?」
「そうか・・・・・・ほらステラ。おまえもちゃんとお礼を言え」
「・・・・・・」
ステラは阿部の顔をちらりと見て、そして視線を逸らしつつ言った。

「ありがと・・・阿部。ネオ・・・・・・助けてくれて・・・」

かくして、連合はベルリンから撤退した。
しかし、そこにはまだミネルバとアークエンジェルが存在している。
だがミネルバを含むザフト軍の大半は、デストロイとフリーダムの手によって無力化されていた。
「エネルギーチャージ完了!!」
そしてその中の例外――インパルスガンダムは、戦場に降り立った天使に向かっていった。

アークエンジェル、ブリッジ。
ラクス様は、心の中で荒れていた。
「・・・・・・」
――どういう事ですのよ、これは!?どうしてあんなMSにローエングリンが止められるのです!!
四方八方手を尽くしてジブリにデストロイを渡したのに、これじゃあわたくしはただのおマヌケさんじゃ
ありませんか!どいつもこいつも人の計画を台無しにしてくれて!ああ腹の虫が治まりませんわ!!
ハロ、ちょっといらっしゃい!粉砕して差し上げますわ!!
「ラクス嬢!!」
脳内でハロを粉砕していると、緊迫したナタルの声にラクスははっと我に返った。
「な、なんでしょうナタル様?」
「例のあのMSがフリーダムに向かっています!」
「そうですか。でも心配する事はありません。キラなら大丈夫です」
――そう、わたくしの施した再洗脳はバッチリですわ。キラ、わたくしの腹の虫のためにあのMSを
落としてくださいね♪

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
エクスカリバーでフリーダムに斬りかかるインパルス。フォースシルエットにエクスカリバーという武装の
インパルスは、ソードシルエットの立場を若干危ういものとしていた。
『この前はやられたけど、でもっ!』
しかしそんなインパルス相手に、フリーダムは一歩も譲っていなかった。
ラクス脅威の洗脳術、である。
「おまえが・・・おまえがマユをーーーッ!!」
『僕はマユなんて人知らない!!』
「馴れ馴れしくマユって呼ぶなぁぁぁぁぁぁぁ!!」
一進一退の攻防。互いの機体は、互いの有効射程に入らないように身を入れ替えつつ戦っていた。
と、その時――
ぴるるるる ぴるるるる
シンのコクピットに、携帯電話の着信音が響き渡った。
「ま・・・・・・マユ!!」
ぴっ
「もしもし!マユか!?」
『・・・・・・うん、マユだよ』
聞きたくて止まなかったその声は、マユ・アスカのものだった。

「マユ!この前は――」
『この前はごめんなさい、お兄ちゃん!その、大嫌いなんて言っちゃって・・・』
「い、いやいや!!こっちこそ怒鳴ってごめん!!」
『私、あの話断る事にしたから』
「サッカー部の奴のか!?」
『うん。確かにその子格好良かったんだけど、実はその子マザコンでさ・・・。授業参観の時にその子が「ママン」って
呼んだ時、私の中で何かが弾けちゃった』
「そ、そうか・・・断ったんだ・・・」
『うん。用件はそれだけ。どうしてもお兄ちゃんに謝りたかったんだ。それじゃ、ピアノのお稽古あるから』
ぴっ
電話を切った後。シンは頬を緩めて呟いた。
「マユ・・・・・・断ったんだ・・・・・・それに、ごめんなさいって・・・」
シンの心に花が咲く。
「完全に嫌われたのかと思ってたけど、マユ・・・」
同時に、さっきまでのアブナイ瞳が通常の色に戻った。
「・・・・・・ぃやったぁぁぁぁぁぁぁ!!」
両腕を上げてのガッツポーズ。
シン・アスカの精神は、ここに甦った。
『ええい!これでっ!!』
と、喜びも束の間。インパルスはフリーダムの砲撃を浴び、コクピットが大きく揺れた。
「うわっ!?・・・・・・って、なんだあいつは!?」
シンは、憎悪に駆られていた時の事をすっかり忘れていた。
『よし、もう一発!!』
「ってちょ、やめ――」
慌てて回避するも、フリーダムの砲撃からは逃れられなかった。
「やべっあいつ超強い――」
今のシンは、通常の――ラクス曰く『赤服の名に恥じない程度のパイロット』――状態に戻っていた。
憎悪によりぱりーんしていたシン。しかしその憎悪が消えた今、そのぱりーんも共に消えていた。
マイナス100の状態で、マユの言葉によってプラス100。差し引きゼロでこの結果だった。
『とどめだ!!』
「いやちょ待ってうわなにをするやめr――」
再洗脳で強化されたキラに敵うはずもなく、インパルスは瞬く間にダルマにされた。

ミネルバ、レクリエーションルーム。
本来ならば憩いの場であるここは今、重苦しい空気に包まれていた。
結論から言うと、シンは無事だった。インパルスをダルマにして満足したのかAAは戦場を去り、
シンはほぼ無傷のままミネルバに回収された。
では何故こんなにも空気が重いのか?
それは、シン、レイ、ルナマリアに囲まれ、その中央で正座している男のせいだった。
名をアスラン・ザラ。ルナマリアの誤射によって撃墜された彼は、半壊したガズウートと共に
ミネルバに回収されていたのだ。
「あの、みなさん・・・?」
――ギロリ!
上目遣いで問い掛けるアスラン。しかしレイの睨みによって、アスランはまた下を向いてしまった。
「まったく、あなたにはほとほと呆れ果てましたよ、アスラン。まさか二度もザフトを脱走したなんて」
「ホントよ。おかげでこっちは大変だったんだから」
「俺が知らない間に脱走してたなんて・・・・・・見損ないましたよ、アスランさん」
「いや、その、ホント、すみませんでした・・・・・・」
上から口々に言われ、縮こまるアスラン。元からなかった威厳がさらに失われた。
そして更に追い討ち。
「脱走兵には重い刑が処される・・・・・・そうだったなルナマリア?」
「そうね。確か禁固刑20年だったかしら?」
「俺が聞いたのは銃殺刑だったけどなぁ」
彼らの一言一言に肩をびくっと震わせるアスラン・ザラ。彼は泣きそうだった。
「だが今は戦時下・・・わざわざ本国から人を呼ぶのは手間というものだ」
「そうよね。だったらミネルバで裁いちゃいましょっか?」
「それなら簡単にカタが付くしな」
「・・・・・・!?」
はっと見上げるアスラン。彼の目には、怖い顔をした三人が映った。
――ダメだ、俺は今日、ここで死ぬ・・・
「ではアスラン。判決を言い渡します」
レイが告げる。
「ミネルバ脱走犯、アスラン・ザラ。あなたを・・・・・・トイレ掃除一週間の刑に処します!」
「・・・・・・・・・・・・え?」
アスランは目を丸くした。
「さて、と。じゃあ私は部屋に戻るわね。あー疲れた」
「アスランさん、しっかり掃除してくださいよ」
そう言って、シンとルナマリアは部屋を出て行った。
「あの・・・あれ?禁固刑とか、銃殺とか・・・?」
当のアスランは事情が飲み込めずおろおろしていた。
「アスラン。罰は罰です。しっかりやってください。あと言うまでもない事ですが、トイレをハッテン場にしよう
などとは考えない事です。そうしたら次はハイネ隊長の看護に回します」
そしてレイは部屋の出口に向かった。
「れ、レイ!これは一体――」
アスランの言葉を遮って、レイは背中越しにアスランに告げた。

「あなたはミネルバ隊の一員なのです。自覚を持って行動してください。あなたにいなくなられると、正直困ります」

ミネルバ、艦長室。
ガズウートに替わるアスランの機体を用意してもらうため、レイはタリアを訪ねていた。
部屋の中はディオキアで買い込んだと思われるブランド物のバッグや化粧品、貴金属で溢れ返っている。
全て合わせればMS数機くらいは軽く買えそうな額である。
「困ったわね・・・もう新しい機体に回す予算はミネルバには全然ないのよ」
「では、ルナマリアのザクに乗せますか?また壊されるかもしれませんが、アスランなら少なくとも味方を
撃ったりはしないでしょうし」
「いえ、それよりもハイネがグフの他にザクを持ってたはずだわ。できるなら彼に借りてみて」

ミネルバ、MSデッキ。
「よかったですね、アスラン。ザクならガズウートよりレベルアップですよ」
「仕方ねぇなあ、壊すんじゃねぇぞ?もし壊したりしたら体で払ってもらうからな」
全身包帯ぐるぐる巻きでもはや誰だかわからないハイネ。
絶対安静のはずだが事情を話すと無理矢理ここまで付いてきてしまったのである。
「それは勘弁してください。ところでこのザク、ビーム突撃銃は?色も変なんですけど」
ハイネのザクは見事なまでのショッキングピンクだった。心なしか内股である。
「そいつは親衛隊仕様だぜ。ビームなんて無粋なもんあるわけないだろう。
おっと、勝手に装備や塗装を変えたりするんじゃねぇぞ。こいつはグフより金がかかってるんだからな」
「じゃあどうやって戦えば――」
「クラッカーだ。あと特殊格闘ボタンを押せばミアミアナースが流れてダンスができる。
まっ、こいつはこんなもんだと思って割り切れよ。でないと死ぬぞ」
「・・・・・・・よかったですね、アスラン」
「・・・・じゃあお前の白ザクと交換してくれ」
「それは正直困ります」

JPジョーンズ。
阿部とスティングは連合兵に囲まれているアウルを見付けた。
「アウルのケツはなかなか人気のようだな」
「ケツ?何言ってるんだ。アイツよく絡まれるんだよ。ガキだからって馬鹿にされてんのかな」
「ふむ――助けるかい?」
「ほっとけ。アウルなら自分で何とかするさ」
しかし、アウルの表情は緊張しているようであった。
「やめてくれよ。僕に近付いたらおっさんたち、死ぬよ?」
「ガキのくせに大佐に気に入られやがって!俺はまだ二回しか相手してもらってないんだぞ!」
「俺なんか一回だ!」
「はあ?何言ってんの」
二年前に阿部が暴れたおかげで連合における感染者は凄まじい数になっていた。
トールのように二次感染したものも少なくはない。
すると、突然アウルが腕を抑えて苦しみだした。
「っぐわ!・・・くそ!・・・また暴れだしやがった・・・」
「なんだこいつ?」
「邪気眼を持たぬ者にはわからんだろう・・・」
「はあ?」
「が・・・あ・・・離れろ・・・死にたくなかったら早く俺から離れろ!!」
「一体なんなんだ・・・・・」
「っは・・・し、静まれ・・・俺の腕よ・・・怒りを静めろ!!」
「おい、こいつなんかやべーんじゃねぇのか?」
「あ、ああ行くぞ!くそっ、生体CPUなんかに関わるんじゃなかったぜ!」
去っていく連合兵たち。彼らはあらゆる意味でアウルのことを「ヤバい」と感じていた。
「な?自分で何とかしたろ。アウルにはすげぇ超能力があるんだよ。
見たら死ぬからって俺も見せてもらったことはないんだがエターナルフォース何とかって必殺技も持ってるらしいぜ」
「・・・・・・・・・・・・・」
目を付けた相手を食っちまっていいのか、初めて阿部が躊躇した瞬間であった。

JPジョーンズ、医務室。
三人はネオの見舞いにやってきた。ステラは既に到着している。
「ネオは身も心も俺が癒してやる。ステラはとっとと帰れ」
「お前が帰れ」
阿部に向かって中指を立てるステラ。
「・・・・・・ビキビキ(♯^ω^)」
「・・・・・・ビキビキ(♯^ω^)」
「お前ら和解したんじゃなかったのか・・・頼むからここで暴れるなよ」
リンゴの皮を剥きながら、ぼやくネオ。誰も剥いてくれないので自分で皮を剥いているのだ。
ちなみに見舞い品ではなく、自分の持込みである。せっかく皮を剥いても全てステラに瞬殺されてしまうので
ネオ自身はまだ一口も食べていないのだが。
「ネオ・・・・・・・次はウサギさん作って」
「へいへい、お嬢様の仰せの通りに」
アウルとスティングは何やら薬品棚を漁ったりしている。
「へぇ・・・なかなか良いものを使ってるんだな」
「俺は薬のことはよくわからんが、そうなのか?アウルは詳しいんだな」
「ははっ!これはちょっと調合の具合がおかしいかな。ま、これくらいなら許容範囲か」
「なるほど、こいつぁ勉強になるぜ」
そう言いながら薬品棚の奥まで漁っていたアウルは急に表情を変えた。
「!!これは!この艦は一体・・・・・!なんて物を!何をしようとしてるんだ!」
「なんだ?そいつはそんなにヤバいのか?」
「こんなの黒の教科書の挿絵でしかみたことないぜ・・・・それなら、もしかしてこっちのビンは!?」
そう言ってビンを開けて匂いをかぐアウル。
「ア ッ ー !」
アウルは突然鼻血を噴き出しながら倒れた。どうやらヤバい薬品だったようだ。
「大変だ!アウルが黒の教科書に載ってる毒物に感染した!しっかりしろアウル!
ステラ、先生を呼んできてくれ!」
「わかったうぇ~い!」
「なあ、ネオ・・・・アウルは何か具合でも悪いのかい?」
「ああ・・・・・・あいつ、中二病なんだ・・・・・・・・」