R-18_Abe-SeedDestiny_安部高和_13

Last-modified: 2007-12-08 (土) 05:57:05

『これはどういう事だ!!我らを裏切る気か!?』
連合の艦から通信が入った。
「うるさい!おまえらも我が物顔でオーブにいるんじゃない!さっさと出て行け!!」
『な・・・!貴様、連合に刃向かう気か!?』
「ああそうさ!オーブは中立国だ!!連合がいていい場所じゃない!!」
『貴様・・・覚悟はしているのだろうな!?』
「当たり前だ!このユウナ・ロマ・セイラン、おまえらなんかに屈するものか!!」
『・・・・・・後悔するなよ』
そして通信が切られた。同時に、連合艦の主砲がタケミカヅチへと向けられる。
「総員退艦せよ!おまえ達はオーブの明日を守るんだ!こんな所で死ぬな!!」
クルーにそう命令し、ユウナは艦長席に座った。
「僕が死んでもカガリがいる・・・オーブは決して滅びないんだ!」
そして連合艦の主砲が火を吹こうした瞬間――
「え――?」
その主砲は、ビームの一撃を受けて沈黙した。
「な、何が・・・?」
気がつけば、タケミカヅチの周りを大多数のムラサメが飛んでいた。
主砲を破壊したのは、彼らの一撃。彼らは連合の艦に攻撃をかけていた。
「そこ!もっと左に寄れ!」
そして退艦命令を下したはずのクルー達も、それぞれ所定の位置についていた。
「な、なんで・・・・・・」
呆気に取られるユウナ。それに構う事なく、トダカの言葉はブリッジに響いた。
「なんとしてもユウナ様をお守りしろ!この方はオーブのためになくてはならないお方だ!」
「み、みんな・・・・・・」
ぽたぽたと、ユウナの拳に涙が零れた。
と――
「弾幕が薄いぞ!落とされたいのか!!」
「う、ウズミ様・・・!?」
監禁していたはずのウズミがブリッジに上がってきた。
「・・・・・・貴様の声、しかと届いたぞ」
ユウナとウナトはすぐに立ち上がり、そしてウズミに頭を下げた。
「ウズミ様・・・・・・数々のご無礼、申し訳ありませんでした」
そんな二人を見て、ウズミはこう言った。
「二人とも・・・・・・これからも私の補佐、よろしく頼むぞ」
「――!?し、しかし我々はウズミ様を地下に――」
ウズミは二人に背を向け、そしてこう言った。

「なんの事だ?・・・・・・私はただ、カガリの気に入りそうな石を探しに自分で地下へ潜っただけだ」

JPジョーンズ。
その甲板の上で、阿部が全裸で立っていた。
それだけなら別に気にする事でもないのだが(感覚がマヒしている、とも言う)、阿部はなにやら
ぐねぐねと妖しげな動きを見せていた。
「おい阿部・・・・・・ナニやってるんだ?」
ぐねぐねうねる阿部を不審に思い(そもそも全裸の時点で既に不審なのだが)、ネオは彼に声をかけた。
「ちょっと準備体操をね」
「それならラジオ体操に留めてくれ。艦のみんなが怯えている。で、どうしてまた体操なんかを?」
「ちゃんとほぐしとかないと足つっちゃうじゃないの」
「つるって・・・オイおまえ、まさか泳ぐ気か!?」
「ああ――ちょいとオーブまでな」
「ちょwww何百キロあると思って――」
「夕食までには帰る」
そして阿部は、自身の身を大海原へ投じた。

小一時間後。
「ふぅ」
オーブの海岸に辿り着いた阿部は、ぶるぶると体を振って海水を飛ばした。
「しっかしまぁ、相変わらず戦争がお好きな事で」
今のオーブ――正確にはオーブ近海だが――は、かつて阿部が来た時と同じく戦場になっていた。
そのおかげで泳いでる最中に流れ弾が当たり、阿部の頭には小さなコブが出来ていた。
「ま、もうじき終わりそうだけどね」
時はユウナが連合に啖呵を切った後。連合艦隊とオーブ艦隊が海上で戦闘をしているのだが、突如乱入した
一機のMSによって連合艦隊はまもなく壊滅しますという様相を見せていた。
――「マユの住んでるオーブを撃とうとしたな!!!!(ぱりーん)」
そんな声が聞こえたような聞こえなかったような。
「さて、さっさと用事を済ませますか」
阿部がオーブに来た理由・・・それは、ネオの新しいMSを調達するためだった。
ウィンダムは修理不能、JPジョーンズは解体するなという事だったので、阿部は技術力の高いオーブから
MSを盗もうとここまでやってきた。別にヘブンズベースのMSを回収、改修して『バビンダム』とか造ろうかとも
考えたのだが、設計の段階で瞬殺フラグが見えたのでお蔵入りとなった。
「でもムラサメとかじゃあ面白くないよな・・・」
どうせならワンオフ機。阿部は、なんとなくワンオフ機が置いてありそうなモルゲンレーテへと足を向けた。

オーブ首長国、モルゲンレーテ。
戦闘が始まったという事で、職員は皆非難していた。
これ幸いとあちこち歩き回る阿部。しかしあるのはパソコン類や資料だけで、阿部の望むものは見つからなかった。
「・・・しょうがない、格納庫にでも行ってみるか」
そして足を踏み出そうとした瞬間――
「アウチ!?」
コードに足を取られすっ転び、阿部は床とキスをしてしまった。
「――!?」
それは果たして天の啓示か。阿部は両手足を床にくっつけ、もう一度床を舐めた。
「この味は――地下室がある味だぜ」
呟くやいなや、阿部は床に向かって拳を突き出した。
「フンッッ!!」
脆くも崩れ去る床(厚さ5メートル)。その先に空洞を見つけ、阿部は穴の中に飛び込んだ。
「これはまた・・・・・・」
しばらく歩いていくと、やがて巨大な扉に突き当たった。
人が出入りするには大きすぎる扉。この扉はまるで、MSが出入りするかのような大きさだった。
その扉は厳重に封鎖されており、阿部の拳では壊れそうになかった。
「ふむ・・・・・・パスワードが必要か・・・」
扉横のパネルを適当にいじる阿部。
ゴゴゴゴゴ・・・・・・
「あ。開いた」
32ケタの暗証コードを偶然にも打ち込んだ阿部。
扉がゆっくりと開き、そして中のMSの姿が露になった。
「ひゅう♪イカすじゃないの」
ORB-01 アカツキ
全身金ぴかで、漂う高級感はムラサメ20機分はありそうな感じだった。
「アカツキ、ゲットだぜ!」

夜。JPジョーンズ、食堂。
「うぇ~いがつがつがつ!」
「くそっ、味噌汁の野郎・・・鰹出汁がきいてやがる!・・・っておいアウル!手づかみで飯を食うな!!」
「――!?い、今のは違うんだ!・・・・・・奴だ、影羅が出やがったんだ・・・!」
ゴンッッ!
お食事時のおふざけを許さないネオの拳がアウルの頭に振り下ろされた。
それ以降、影羅は出てこなかった。
「ただいま」
そして阿部さん登場。約束どおり、彼は晩飯時に帰ってきた。
「おう、おかえり。で、本当にオーブまで行ったのか?」

「ああ。MSデッキに行ってみな。おまえのMSが置いてあるぜ」

かくして、ジブリールはマスドライバーを使って宇宙に逃亡した。
ザフト軍はそれを追うために、連合軍はそれを護衛するために、それぞれも宇宙に上がった。
そしてアークエンジェル、ついでにクサナギもまた宇宙に上がる。戦争を止めるべく、エターナルと
合流するために。
そして当のエターナル、ブリッジ。
「・・・・・・・・・・・・、暇ですわ」
彼らより先に宇宙に上がっていたラクス様は、暇を持て余していた。
キラに和田ことストフリを渡し、赤雑魚25機を蹴散らした後。アークエンジェル、クサナギがこっちに来るまで、
ラクスは何もする事がなかった。
「でしたらラクス様。作曲の方でもされてはいかがですか?」
声をかけたのはモリタケ。ラクスの優秀なマネージャー件エターナルの操舵手だ。
「そんなもの、10年先の分まで済ませましたわ」
「でしたら知恵の輪などいかがでしょう?」
「わたくしをてこずらせたいのでしたらチタン製の物でも用意なさい。鉄では脆すぎてお話になりませんわ」
知恵の輪はそういう風に遊ぶものではありません。
「でしたらダイエットなどされてはどうですか?見たところお腹の肉付きが笑えないような状態になりつつ――」
「黙りなさい」
モリタケの顔面にハロ(シースルーちゃん)がめり込んだ。
「・・・・・・良い事思いつきましたわ。モリタケ、至急針路を月に取りなさい」
「月?しかし合流地点から離れるのは――」
「すぐに戻ります。いいからさっさとやりなさい」
「了解しました、ラクス様」
そしてエターナルは月に向かった。

月、自由都市コペルニクス。
「暇な時はショッピング、これに限りますわ♪」
私服に着替えたラクスは、暇つぶしのためにここコペルニクスへと降り立った。
「さぁキラ、参りましょうか」
共に降りたキラに振り向くラクス。しかし当のキラは、
「ガボッ、ガボガボッ」
「うわぁぁぁぁん!怖いよ~!!」
子供を泣かせていた。
「あらあら、ごめんなさいね坊や。このお兄さん、少し錯乱していますの」
「ギギギギギ・・・」
相変わらず酷い瞳をしてガボガボギギギと唸るキラ。錯乱というレベルではなかった。
「・・・・・・あれ?お姉ちゃん、ひょっとして・・・」
ラクスの顔を見て何かに思い至ったのか、子供はラクスに話しかけた。
「まぁ・・・有名人は辛いですわ♪仮面でも付けるべきでしたわね。そうです、わたくしが――」
「――ミーアさん?」
「変なおじ・・・じゃなくてミーア・キャンベルですわ♪――って、違いますわ!」
今やこの顔は、ラクスではなくミーアのものとなっていた。二年という期間、姿をくらましていた結果だった。
「・・・あ、本当だ。よく見れば違うや」
「でしょう?わたくしの名前はラク――」
「ミーアさんはもっとおっぱい大きいもんね。それにお腹出てないし」
「・・・・・・。キラ」
「ガボガボガボ!!」
「うわぁぁぁぁぁん!!怖いよ~!!」

コペルニクス、カフェテリア。
「まったく、失礼しちゃうわですわ!」
ぷんぷんと頭から煙を出して、ラクスはピザを食べていた。これで5枚目である。
『ハロ、ハロ!ピザ、コウカロリー!ラクス、フトル!ラクス、マタフトル!ラクス、ピザデ――』
「ふんっっ!!」
ハロ(コーラルレッドちゃん)を粉砕するラクス様。周囲の視線が集まった。
「さぁキラ、あなたもお食べなさいな。わたくしのピザは差し上げませんけど」
「分かったよ、ギギ、ラクス」
焦点の合わない瞳で、ハロの残骸をぼりぼり食べるキラ。周囲の視線が集まった。
「キラ、それは食べ物ではありませんわ。・・・仕方ありませんわね、断腸の思いでわたくしのピザを食べさせて
あげますわ。はい、あ~ん♪」
「ガボッ、がぶっ」
「いたたたた!?キラ、それはわたくしの手ですわよ!?わたくしの手はピザではありませんわ!」
ラクスの手にキラの歯型が付いた。
「ふーふー、おーいた・・・。少し洗脳が過ぎたようですわね・・・」
「おいしいよ、ガボス」
「そんな中ボスみたいな名前ではありません、ラクスです。さ、もう出ますわよ」
周囲の視線をこれでもかというくらい集めた二人は、カフェテリアから出た。

コペルニクス、ブティック。
「あら、これは可愛いお洋服ですわね♪」
ラクスはキラを連れて、ここに洋服を買いに来ていた。
「試着してもよろしいですか?」
「ええ、構いませんよ。ですが、サイズが・・・」
「わたくしがSSサイズを着る事に、何か問題でも?」
「いえ、それは、その、まぁ・・・・・・」
『ハロ、ハロ!ラクス、SSムリ!ラクス、Sモアヤウイ!フク、ヤブレル!ラクス、ミエハルナ!ラクス、ピザデ――』
「ふんっっ!!」
ハロ(アンバーちゃん)を粉砕するラクス様。店員が引いた。
「で、試着してもよろしいですか?」
「は、はい!どうぞお好きなように!」
「それでは試着してきますわ。・・・キラ、覗かないでくださいましね・・・・・・ポッ♪なんちゃって・・・・・・って」
「フヒヒヒヒ・・・」
「ああっ、お客様!パンティーは覆面ではありません!!」
キラは変態仮面になりつつあった。
「ほほほ、ごめんなさいね。この人、少~し頭のネジが消し飛んでいますもので・・・」
「ネジどころか人格が消し飛んでいるように見えるのですが」
「気のせいですわ。さぁキラ、良い子だからこっちにいらっしゃいな」
「分かったよ、ギギス」
「そんなドラクエのモンスターみたいな名前ではありません、ラクスです。さ、ジーンズでも見繕って差し上げますわ」
そしてキラのジーンズを買い、二人はブティックを出た。ラクスが試着した服は、廃棄処分となった。

エターナル、ブリッジ。
「ただいまですわ」
大量の紙袋を自室に置いて、ラクスはブリッジに上がった。
「おかえりなさいませ、ラクス様。して、一体何をされていたので?」
「まぁ色々と、ですわ。お食事をしたり、ショッピングをしたり、お散歩をしたり」
「左様ですか。しかし共に降りたキラ様はあの様子・・・何か問題でも起こされてはおりませんか?」
「黙りなさい。いいからさっさと合流地点へ向かいなさいですわ」
「は。失礼致しました」
そしてモリタケは、針路を合流ポイントへと向けた。
しばらくの間無言での航海が続き、やがてモリタケはラクスに訊いた。
「それで、楽しかったですか?キラ様とのデートは」
ラクスは今日の出来事を思い返し、そして満面の笑顔でこう答えた。

「ええ、とっても。最高の一日でしたわ♪」