RA_第03話

Last-modified: 2007-11-18 (日) 15:47:16

「へぇ~、なるほど。デバイスを使うのって魔法を使うって事なんだな……」『この間のリンディの話の何を聞いてたんだ?』

「うん、つまりはそういう事だ。」

ここは時空巡航艦『アースラ』。
そして、今アースラの実習室においてロウ・ギュールは先日に時空管理局臨時局員に志願してから日々、執務官クロノ・ハラウオンから魔法の使い方を一から教え込まれ、今では最終段階の転送魔法を学ぶまでに至っていた。
そんな彼の魔法教育を受けている姿勢をリンディは関心していた。
最初の頃と比べれば驚くぐらい強くなったわねロウ君……、それに数日の間で転送魔法まで覚えるようになるなんて。

そこである事を思いついたリンディは授業が一段落着いた折をみて、クロノとロウを艦内に設けられている荼室に呼び寄せる。

…………

そいつは授業が一息着いた時だった。
8と今まで習った魔法をどう闘いに活かせるか作戦を練っていたら、リンディ艦長が何時もよりニコニコして俺に「クロノと荼室に来てほしいの」と言って立ち去る。クロノは「解りました艦長。」と答える。

なんだ?俺何かしたかな?『多分、リンディの大切にしていた湯呑を昨日割った事がばれたんじゃないのか?』
いや、それは素直に謝ったぜ?『なら、とりあえず言ってみるしか解らないな。』

ロウは8のその言葉に「そうだなぁ……」と答えてから、クロノと荼室に向かう。

そしてロウがクロノと訪れた部屋はSFチックな艦とは異質空気を醸し出すものであった。
赤い絨毯の上に靴を脱いで正座していたリンディが二人を出迎える。

「クロノ、ロウ君。さあ座って座って。」

そう勧められ、クロノは何時ものように靴を脱ぎ、赤い絨毯の上で正座をする。ロウもつられてクロノに続く。
「さて、単刀直入に言います。クロノとロウ君を呼んだのは他でもありません、貴方達に一度模擬戦をして貰いたいの。」

『ほう……興味深いな』
と8のディスプレイにそう表示される中、ロウは驚いていた。

「ちょっ、ちょっと待ってくれよリンディ艦長さん。俺はまだ魔法覚えた所だぜ?そんな急に……」

だが、その言葉にリンディは首を横に振る。
「いいえ、貴方の成長は目覚ましいものがあります。本来、普通なら魔法を始めて転送魔法までたどり着くのに一ヶ月は掛かるの、だからこの際、貴方の本気の力を見ておきたいの。」

するとクロノもリンディの言葉に同意し、ロウに声をかける。

「ロウ、僕も一度、君達と手合わせしてみたかったんだ。僕からも頼むよ」

二人にそう言われたロウはしばらく考え込むが直ぐに顔をあげて答える。

「まあ、そこまで見たいって言うんなら、仕方ねぇな。良いぜ、見せてやるよ♪な、8?」『私は既に準備万端だぞ?』

「なら、決まりね♪それじゃあ、十分後に模擬室で始めます。遅れないようにお願いします。」

「了解です、艦長。」
「ああ、解ったぜ。」
…………

そして、十分後。
模擬室においてバリアジャケットに着替えたクロノとロウが対峙していた。
リンディはその二人の姿をモニターで見ている。
「それじゃあ、時間無制限で一本勝負とします。二人共準備は良いかしら?」

それにクロノはデバイスを起動しながら「何時でも」と答え、ロウも8をガーベラストレートに展開して「ああ、大丈夫だ♪」と答える。

「それでは……始め!!」

合図と共に駆け出したのはクロノであった。
「はあぁぁぁ!!」『スティンガ・スナイプ』

一定まで距離を縮めると同時にクロノはS2Uから魔法刃をロウに放つ。
だが、ロウはガーベラを鞘に納めたまま刃を避けきる。
だが、ロウはそれが囮だと気付いていた。
そしてそれは的中する。
魔法刃は直ぐさま反転し再びロウを襲うが、それもまた回避する。
だが、魔法刃を放った場所にクロノの姿は無く、彼は真上からロウにS2Uを振りかざす。そこでロウはついにガーベラを抜き、S2Uを受け止めてクロノを押し返す。
が、クロノは直ぐに態勢を立て直してしまう。

「……やっぱ、速いなクロノの奴。」『今の反応速度、並の人間の数値を超えてるぞ。』

「僕はこれでも時空管理局の執務官だからね。まだ……終わっちゃいない!!」

そう言い切ったクロノはロウの周囲を走り出す。

「今の状態なら、クロノの攻撃を捌いて打ち込むしか出来ねえ、あいつと同等の速さが今は必要だ……ならアレしかねぇな。8、フライト・ユニットだ!」『了解だ!』

一方モニターではリンディはエイミィにロウの魔力解析をさせていた。

「艦長、解析終わりました。」

エイミィは報告すると共にリンディにロウの魔力数値のデータを送る。

「ありがとうエイミィ。」
そして次の瞬間、リンディはロウの解析結果に目を開かせて驚く。
こ、この数値……どんどん上がっていってる。

その表情から意を汲んだエイミィはロウの解析を説明していく。

「最初、模擬戦が開始した時のロウさんの魔力はクロノ君より大きく下回ってました。ですが、ロウさんはクロノ君の攻撃を見る度、避ける度に徐々にその魔力を相手の力量に合わせて数値は上がっていっています。
そして今ロウさんの魔力はクロノ君とほぼ同等にまで強くなっています。」

その説明を聞いたリンディは改めてモニターに映るロウを見遣る。
すると先程まで受け流していただけだったロウは今、フライトユニットを展開した状態でクロノのスピードを超えるまでになっていた。

「ロウ君……。」

く、最初よりも大分魔力が上昇して速くなってる……。このままだと僕の方が攻撃を当てる事が出来なくなる……なら今のうちに当てるしか。
そう考えたクロノは魔法でロウを攻撃する事を止める。

なら、アレで一気に!!

『スティンガ・スナイプ』

再び、S2Uから魔法刃が放たれる。だが、最初と違うのは刃がより範囲を広くしていたものであった。

「また、あれか!?」『最初よりも速い、回避したらまた後ろからくるぞ!!』
「ああ!!」

8の指示に従い、ロウは魔法刃を避ける事を止めてガーベラで打ち払う。

「まだだ、スナイプ・ショット!!」

クロノのその言葉に反応し、打ち払われた魔法刃が反転し、ロウに迫る。
だが、ロウは返す刀でまたもや魔法刃を受け止め、今度はそれをガーベラの刃に吸収させる。
だが、それはクロノにとって作戦内であった。今の動作でロウは背中をクロノに向ける形になっていた。
その機会をクロノは見過ごさずに一気に踏み込む。ロウに勝つにはこの瞬間しかなかった。

「ロウ、これでチェックメイトだ!!」

「しまった!!8、ラケットを展開しろ」『待ってたぞ!!』

そう指示するとガーベラはラケット状の刃に変化する。
クロノが接近する刹那、ロウは左手に魔力を篭める。するとロウの手の中には魔力の固まりがボール状に形成されていく。
そしてロウは高く飛び上がりクロノの突撃を回避してしまう。

「な、しまった。くっ!!」

そしてロウは言い放つ。

「これが俺の、ダンク光電球だ!!」『まだまだ、だね』

ラケットで打ち込まれた光電球は速度をプラスしてクロノに真っ直ぐ向かっていく。

「く。そう簡単には!!『ディフェンサー』
クロノの目の前に円形の魔法陣が現れ、光電球を防ぐ。
そしてその光景はリンディとエイミィも見ていた。

「凄い、魔力の塊ね……見るだけであの小さな球体からロウ君の力が感じられるわ……。」

(クロノ君、……そこは甲高い声でリョーマ君とモモシロ先輩って言わなきゃ!!)

だが、光電球は勢いを失う事無く、ついにはクロノの障壁を突き破ってしまう。

…………

気付けばクロノは模擬室の天井を見上げていた。
そこでクロノは実感する。自分は負けたんだと……。
しかし、クロノの心はどこか晴れやかであった。最後に喰らった光電球が心身の疲れを取ってくれたのだろうか。
「大丈夫か?クロノ、S2U」

倒れているクロノの耳にロウの声が聞こえる。
「それよりも、すっきりしたぜ♪な、8?」『ああ、久しぶりに全国大会に出たくなった。』

「「何のだよ」」

とついツッコミを入れてしまった互いを見遣り、クロノとロウは吹き出してしまう。

そこにリンディとエイミィが駆け寄る。

「クロノ、ロウ君お疲れ様。大丈夫?怪我は無い?」
起き上がったクロノはリンディに大丈夫そうに腕をぐるぐる回して言う。

「なーんか男の友情って感じだね、クロノ君」

「ははは♪うん……そうかもしれないね。」
そう言い、笑うクロノを微笑ましく見ていたリンディはコホンと咳ばらいしてからロウに向き直る。

「ロウ君。初心者にしては上等過ぎるくらい貴方の魔力と戦いは凄かったわ。入ったばかりの貴方に任せるのも気が引けるのだけど。
貴方の体力が回復したら直ちに海鳴市に向かってロストロギアを見つけて貰いたいの……」

「もう、場所は見つかってんか?」

「うん、このエイミィに任せたら、ちょちょいのちょいだよ♪」

ふふんっ♪と胸を張るエイミィに8は『死語だな。』とツッコミを入れる。

「い、痛い一撃だよ~8くん……。」

「行って貰えるかしら、ロウ君?」

「ああ、良いぜ。あんたらも後でくるんだろ?」

「その時は僕が出る事になるよ。」

クロノのその言葉に納得したロウは覚えたての転送魔法でアースラから海鳴市を目指す。

それは調度、海鳴市にて劾がフェイトと接触した時であった。

そして、ロウとなのはが出会うのはもうすぐである。