女性、否ロミナ・アマルフィにとっつかまり連行されようとする我らがシン・アスカ。
ロミナが表に停められた黒塗りの乗用車の扉に手を掛けた瞬間、
“それ”は舞い降りた。 轟音と共に。
『ちょっと待ちなよオバサン! 私の相棒を何処に連れて行くつもり!?』
エールストライカーを装着した赤いスローターダガー。
赤いウィンダムの相棒として、一部で有名な傭兵だった。
「ちっ……思ったよりも早いわね……」
「コ、コニールゥッ!? なんでお前まで!」
ロミナの顔が焦燥に、シンの顔が驚愕に歪められた。
『早くて悪いかっ! シン、ほらこっちに!』
スローターダガーがライフルを持っていない左腕を伸ばす。
それを見て、反射的に身を乗り出そうとするシン。だが――
「そう簡単に持っていかせるものですか! 子供は家に帰ってアニメでも見ていなさい!」
シンの左腕をがっしりと掴み、離そうとしないロミナ。
豊満な胸が腕全体に押し付けられ、シンの顔が真紅に染まった。
『このッ! 色仕掛けなんか卑怯だ!』
パイロットの叫びと共にスローターダガーの指先が、シンの右半身を万力のごとく掴み、引っ張る。
身を引き千切られかねない激痛に、シンの顔が蒼白になった。
「離しなさい小娘! 私の旦那様を殺すつもり!?」
『それはこっちの台詞だ年増! シンを離せ!』
双方全く退かず、シンの身体が真っ二つになるか否か――。
そんなタイミングで、その機体は現れた。
『三次元の存在が何をやってるんですか。シンは私のものでしょう?』
真紅の翼を広げ、双眼をぎらつかせる漆黒のデスティニー。
その内部に搭載された人工知能が、言った。