SCA-Seed傭兵 ◆WV8ZgR8.FM 氏_古城の傭兵(仮)_第10話

Last-modified: 2009-09-23 (水) 23:42:02

アルテミス周辺宙域でモーガンのハンドレッドダガーが
最新鋭モビルアーマー、デザルグと交戦し始めたのと丁度同じ頃、
深夜の帳が下りた地球、大ブリテン島はロンドン・クレーター周辺に建設された中規模な宿泊施設を、
常とは違う重々しい雰囲気が覆っていた。

 

この施設は本来、ロンドン・クレーターの王宮跡に建てられた慰霊碑を訪れる遺族の為の宿泊施設だが、
現在は貸し切られている。
三階建ての宿泊棟を囲むように王室近衛MS隊仕様の漆黒に塗装された四機のハイペリオンタイプ――
――ハイペリオン・レイヴンカスタムが整列し
その巨大な足元を絶えず物々しい武装を携えた兵士が行き来している。
上空では徹底的なステルス処理が施された警戒機が満点の星空――
――皮肉にも、大都市の消滅によってよく見えるようになった――が静かに地上を睨み、
施設周辺を巡回している兵士からは数分おきに連絡が行われ、
異変があれば即座に対応した動きが取れるようになっていた。
宿泊棟の内部にも多数の警備兵が詰めており、施設全体の空気を張り詰めさせている。
その最上階、最も厳重な警備体制が敷かれた階層の最奥の部屋で、
机に山積みされた書類に向かう少女の姿があった。

 

瑞々しい白金の髪を後頭部でシニヨンにまとめ、実用性を重視した質素ながらも上品な
執務用ドレスを纏った少女の右手が万年筆と判子を繰り、
書類に「許可」を指す言葉や少女の名前を書き記していく。
カリカリと書類の表面を万年筆の先端が滑る音とパラパラという書類をめくる音、
そして西暦時代のオーケストラの演奏を収録した復刻ディスクを搭載したオーディオのごく小さな音のみが
響く室内に、それらとは全く異質なアラームが響き渡った。

 

「ん……ああ、時間ですね」
アラーム音に手を留めた少女が書類の傍らに置かれた黒い鶏型のタイマーのスイッチを押し込むと、
アラーム音はピタリと止んだ。
んー、と身体を伸ばした少女が机の端に手を伸ばし、ティーポットの脇に置かれていた
発泡スチロールのカップをつかむ。
手元に引き寄せたそれの蓋の上に乗っていたフォークを下ろし、薄紙でできた蓋を剥がした。
湯気と香ばしい香りが立ち上がり、少女の顔が緩む。
フォークをカップの中に差し入れ、中身――黄金色に輝く麺を掬い出して口元まで持っていく。
淡い色合いの唇が開き、麺を受け入れる。
白く健康的な歯並びが覗いた。
はむ、と口の中に含んだ麺をずぞぞ、と啜る少女。
大きなハシバミ色の瞳に喜悦の光が宿る。
一口目をもきゅもきゅと噛んで飲み下し、

 

「――はふ。美味しいです」

 

息をつく。
ばら色の頬が更に緩んだ。

 

二口目にフォークを伸ばしたところで、ノックの音が響いた。
「……どなたですか?」
カップの中に入れていたフォークをそのままに細い指先を離して一言。
このままでは麺がのびてしまう。
「執務中失礼します、陛下」
「……入りなさい」
一瞬の間の後、がちゃりと扉が開き、
廊下から天を衝くような筋骨隆々とした大男が入ってきた。
扉の上につっかえない様に身をかがめて。

 

深々と頭を下げる大男。
綺麗に撫で付けられ、束ねられた赤毛が揺れた。
鍛え上げられた筋肉で盛り上がった赤い制服に留められた鴉と獅子を象ったブローチと
それに付け足された赤いリボンが、王室近衛MS隊――通称レイヴン――の隊長であることを示していた。
「大佐、顔を上げなさい。いったいどうしたのです?」
先ほどカップ麺を味わっていたときと一変した凛とした表情で言う少女――
――否、女王に大佐がしゃんと背筋を伸ばす。
豊かな髪の頭頂部が天井近くまで持ち上がった。
「は、大西洋連邦政府ならびにマンチェスターからの連絡をお持ちしました」
「大西洋連邦はわかりますが……暫定首都からですか?
 私がいなくても政治機能に問題は無い筈ですが……」
「……陛下、例の件について、であります」
首を傾げた女王に小声で言う大佐。
それを聞いた途端、女王の顔が曇る。
「追悼式典の依頼についてですね……あの方は、レッドアイは受けてくださったのですか?」
「――左様に御座います。快諾されたと」
明瞭な言葉で告げられた言葉に、女王表情が一瞬空白になり、
「――そうですか……よかった」
安堵の溜息と共に、まるで花が咲いたような笑顔を浮かべる女王。
十代前半という年齢に相応しい純粋な笑顔につられた様に、大佐も僅かに笑みを浮かべた。
同年代の子供が見たら恐怖でひきつけを起こしかねない笑みを全く気にせず、
女王はそのスレンダーな身体を窓へと向けた。

 

「……また、名前で呼んでくれると良いのですが……」
ポツリと呟かれた自らの言葉を契機に、女王は思考の海に沈んでいく。

 
 

『……陛下、女王陛下。ご無事ですか?』
『ええ、貴方の御蔭で大事ありません。それよりも.……レッドアイ、いえ、シン。
 名前で、いっそ愛称で呼んでください……ね?』
『……わかった。セラ』
『シン、シン――』

 
 

「陛下、セラフィーナ陛下! 大丈夫ですか?」
唇を歪めて少女らしい妄想に浸っていた女王――セラフィーナが正気に帰ると、
大佐の猛虎の如き顔が真正面にあった。
「……あ、ああ? すみません大佐、少し疲れているみたいです」
真っ赤に染まった顔を隠すように窓に向かったセラフィーナ。
それが、あれ、という疑問譜に変わった。
「大佐、外が――」
「ええ、嵐が近付いているようです……特にシェフィールドの辺りは酷くなると」

 

黒い雲が、満点の星空を覆い隠し始めていた。

 
 
 

エグザスをそのまま大型化して、ユークリッドに近づけたようなデザルグの
背面ミサイルポッドから放たれた大型のミサイル二発が、モーガンのハンドレッドダガーに迫る。
全身のスラスターをふかしてそれを回避しようとするハンドレッドダガー。
数秒前までその機体があった空間を虚しく通り過ぎるミサイル。
このまま無意味に終るかと見えたが。
「……ち、拡散か!」
ハンドレッドダガーの数百メートル後方にまで過ぎ去った大型ミサイルの前部カバーが弾け、
内部から十数発のマイクロミサイルが飛び出した。
方向を転換して襲い掛かってきたそれに対して、モーガンの舌打ちと共に撃ち出された
イーゲルシュテルンが火を噴く。
が、コンピューターが弾き出した予想コースに向けて打ち込まれた弾丸は、
計二十数発のうち幾つかを撃ち落すに終った。
互いにそれなり以上の損傷を受けているこの状況で、下手にダメージを受けるのは痛い。
既にハンドレッドダガーのガンバレルは駆動不能に陥っていた。
「コンマ単位で軌道を変えている――だと? 成る程、最新鋭の名は伊達じゃないってことか!」
僅かに焦りが滲んだモーガンの台詞。
それを遮るようにミサイルとは別の方向、モーガンから見て右から、閃光が雪崩を打って押し寄せる。
デザルグの下部――エグザスではレールガンが装備されていた場所に設置された大型ビームマシンガン。
そこから放たれたビームの弾雨がハンドレッドダガーに降り注いでいる。
正面からは追尾するミサイル、右からは旋回砲塔のビーム。
モーガンが選んだ回避方向は――

 

「ちょっとばかり痛いかっ!?」
真正面だった。

 

ミサイルの只中にシールドを構えた機体を飛び込ませる。
間近に迫った一発目のミサイルの近接信管が作動し、爆光が閃くその直前、
ハンドレッドダガーを追尾し旋回したビームマシンガンのビームがそれに直撃する。
それに続いて突っ込んできた後続のミサイルにビームが次々と直撃し、爆発が巻き起こる。
右足のスラスターを全開にし、そこから逃れるハンドレッドダガー。
更にそこに向かって打ち込まれ続けるビームの雨を回避しながら、デザルグに向かって直進する。
ほぼ零にまで縮められたた距離に、デザルグに搭載されたAIが設定どおりにエラーを叩き出す。
一瞬ではあるが、機体の動きが完全に停止する。
それを見逃すモーガンではない。

 

「――終わりだ」

 

デザルグの真下に潜り込み、動力部にビームサーベルを叩き込む。
白熱した火花が飛び散り、デザルグのスラスターと外部メインカメラから光が消えた。
ビームサーベルを引き抜き、デザルグから距離をとるハンドレッドダガー。
同時にハンドレッドダガーのメインモニターに状況終了を示す文字が躍り、
オペレーターとの通信ウィンドウが開いた。
『最終レベル終了です、少佐。お疲れ様でした。機体は大丈夫ですか?』
「ああ……少しばかり食らい過ぎちまったみたいだな」
『そうですか。では、アルテミスに戻ってください。デザルグは放って置いて結構ですので』
そうかい、と返し通信を切るモーガン。
機体を反転させ、アルテミスへと向く。
と、モニターに丁度アルテミスへと入港する紺と黒の戦闘艦が映った。

 

「……デメテルが帰ってきたか。また忙しくなりそうだな」
その呟きを残し、ハンドレッドダガーがスラスター光を曳いて加速した。

 
 

「シン、間も無く入港です。移動の準備はできてますか?」
「ああ、何時でも動ける……アビー、コニールとファッターフは?」
「既にハッチに移動してます。ジュール隊の面々は矢張り別の艦になったらしいですね」
黒のスニーキングスーツから黒く染めた連合の制服に着替えたシンが、荷物を纏めたアビーに答えた。
灰色の鞄に密封処理を施したスーツのパックを放り込み、
鞄の一番底に入れておいた桃色の携帯電話を右のポケットに滑り込ませ、
胸ポケットに掛けていたサングラスで特徴的な赤目を隠す。
多少肌が白すぎることをのぞけば、何処にでも居る兵士と同じ格好だった。
制帽を被ればさらに完璧だろう。
対するアビーも似たようなもので、違いがあるとすれば
制服が連合ではなくザフトの物だということだろうか。
が、彼女は任務中、殆ど常にこの格好なので大して変わらない。
――私服はこの傭兵集団の中で最も多いが。

 

「そうか……やっぱり急には動かせないか」
「ですね……私たちが乗る艦は高速船ですし」
此処からアメノハシラまで二時間ですし、と纏めるアビー。
シンよりも先に扉を開いて通路へと出る。
「三番ハッチだったっけか」
「はい。……あ、後十分です。急いで」
確認のうえで歩き出す。
壁越しに何処からか、重い音が響いてきた。
艦内放送で、間も無く到着と流れる。

 

「でえっ!? もう来るのかよシンの奴!」
アメノミハシラ、第三整備ブロック。
そのモビルスーツ用の区画で、茶色い髪にド派手なオレンジ色のメッシュを入れた男が叫びを上げた。
悲鳴に近いそれに周りの整備スタッフが目を向けるが、すぐに何時ものことと作業に戻る。
現在このハンガーに収まっているモビルスーツは五機。
そのうち一機は装甲の所々が赤く塗装されたウィンダムで、
その装甲を取り外しオーバーホールの真っ最中だった。
言うまでもなく傭兵レッドアイことシンの機体なのだが、
部品が丁度切れていたり整備員が連合系の機体に不慣れだったりと
本来三日で終るはずの作業が預けられて一週間以上たった現在ようやく終わりに差し掛かった程度。
メッシュの整備兵が悲鳴をあげるのも仕方が無いのかもしれない。

 

「ああもう、何でこんなときに限ってジャンさんもおやっさんもいないんだぁっ!」
『デュプレ副主任、叫んでないで作業を続けたほうが良いのでは?
  叫ぼうが喚こうがエイブス主任もキャリー博士も来ませんよ』
叫びを上げ続ける整備兵の目の前にあるモニターに映し出されたマリーン・Aが顔をしかめる。
完全徹夜三日目の耳に、この甲高い声は痛かった。
「わかってるって! でもなんで丁度あっちのも整備中なんだよ!?」
手が足りないっての、と悲鳴を上げるその視線の先に、残る四機のモビルスーツがあった。
一機は数週間前に回収されたジャンク同然のザクだが、残る三機はほぼ新品に近い外観だった。

 

それぞれ青、緑、黒を基調とした機体たちは胴体のフレーム、
特に腰から上はほぼ共通したデザインだが、そこ以外は全く別の機体と言って良いものだった。
青い機体は両腕を覆い隠すほどの大きさのショルダーアーマーがめだち、
その末端からは砲身がのぞいている。
その左のハンガーに納まっている緑色の機体は、バックパックにアームで
ガンバレルのような円筒が四基備えられている。
最も左に鎮座する黒い機体は、特に異質な雰囲気を放っている。
四肢のフレーム全てが換装され、他の二機との互換性が見られない。
よく見ると所々に嘗てのガイアと似たような武装が見受けられるが。
「インパルスのミハシラ製後継機ってのはわかるけどさ、
 パイロットはあの三人で決定なんだろ? だったら――」
メッシュの男――ヴィーノの愚痴は続く。
が、既にマリーン・Aの姿はモニターから消えていた。
それに気づくまでの五分間、ヴィーノは喋り続けたが。

 
 
 

それとほぼ同時刻。
テイレニア海沿岸のとある基地――まだそこかしこにモビルスーツの残骸が転がった――の通信室で、
蠢く影があった。
基地の内部ネットワークを通じて複数の端末を経由し、機密事項である機動兵器のデータを映し出した
大型のモニターを見つめながら、せわしなく両腕を動かす影。
通常とは違うローテーションの隙を衝き、最も人気が少ない真夜中を選んで
そんなことを行っている影の目的は一つ。

 

――地球連合軍が密やかに行っている新型機動兵器のデータ収集と実機の奪取、
そして連合軍に存在するその機体群のデータ抹消。
プラントが擁するとある組織に所属する間諜の一人である影は、
数ヶ月間待った絶好の機会を見逃さず、決行に移したのだった。

 

影にとって幸いなことに、昼間から夕方に掛けての長時間に及ぶ戦闘の結果、
基地の人員の七割強が休息を取っていた。
今現在行っている作業――データの収集が完了し次第、影は機体のうち一機を強奪、
残る機体と基地施設を全て破壊してプラントの部隊と合流する。
そういう流れになっているのだが――。

 

「なんなんだこのデータは……
 プランα? ドリル? 合体? 超弩級決戦級MSプレリュードブリッツ?
 馬鹿馬鹿しい。これだからナチュラルは……」
画面に表示されるあまりにもふざけた――少なくとも影の感覚では――データに
苛立ちを隠さずに吐き捨てる影。
そのデータは、白衣の男が個人的に進めていた改修プランの一つの結果たちだったのだが、
影にとってはどうでもいいことだった。
まともなデータは何処だ――そう呟きながら画面を切り替える影を、じっと見つめる者が居た。
「次のデータフォルダ、ロック解除……完了。これか――?」

 

「ねえ、君。何をやってるのかな?」

 

薄暗い声が、影のすぐ後ろから聞こえた。
ゾッと背筋に走った寒気と化物じみた殺気に影がたまらず振り向くと、そこには。

 

「おや、君か」
――白衣の男が、煙草を右手に立っていた。
モニターの光が銀縁の眼鏡に反射して、その奥の表情を読み取ることは出来ない。
ヒッ、と影の喉から僅かに悲鳴が漏れた。

 

「しゅ、主任、これは――」
「おや、それは私の……まったく、しょうがない子だね、君は」
影の弁解を遮り、白衣の男が苦笑する。
思わぬ展開にきょとんとなる影を無視して、白衣の男は再び口を開く。
「まあ、君くらいの年頃だとこういうロボットに興味があるものだよねぇ……私もそうだった」
うんうん、と勝手に語って勝手に納得する、左手を白衣のポケットに突っ込んだ白衣の男に、
思わず呆然とする影――少年技師。

 

「ま、今日はもう遅いから寝なさい。いいね?」
「は、はあ……」
ほっと、胸をなでおろす少年技師。
僅かに俯き、小さく舌打ちする。
――こんな奴、殺しても構わないよな――と。
が、顔を上げて袖口に隠し持ったナイフに指先で触れた瞬間、少年技師は再び凍りつく。

 

目が合った。
位置が変わった為か、眼鏡の反射が治まった白衣の男と。
その眼鏡の奥の銀の瞳は、全くといっていいほど笑っていなかった。

 

「じゃあ――おやすみ」

 

チャキ、という音がした。
白衣の男の軽い呟きと共に、その左手がポケットから引き抜かれた音。
その左手の先に握られていた黒光りする鉄が、少年技師の鼻先に突きつけられ。
「な、待っ――」

 

その最期の言葉は、その顔を打ち貫いた灼熱に遮られた。

 
 

仰向けにばったりと倒れた顔のない死体に目をやった白衣の男が、再び左手をポケットに突っ込む。
その手に握られていた大型拳銃と入れ違いに引っ張り出された無骨な塊のスイッチを押し込みながら
口元に運ぶ。
「あー、聞こえるかい? ネズミを一匹やった。場所は南棟の通信室。以上」
相手の返事を待たずに通信機の電源を切り、煙草を口に咥える白衣の男。
「――ち。点かないか」

 

飛び散った赤い液体でぐっしょりと濡れていたそれに、火が点くわけもなかった。

 
 
 

『以上で定時連絡は終了です。閣下』
「そうか、ご苦労だったな」
プラント、ザフト本部司令室。
その中央の豪華な椅子に巨体を押し込んだ名誉顧問の男が身じろぎし、その度にはみ出した肉が震える。
「では、さっさと結果を出したまえ。 もうゆりかごの準備は整っている。
 一年前のような失敗は許されんぞ」
『……お言葉ですが閣下、あれはあの傭兵の介入さえなければ……』
「言い訳が通ると思っているのか? あれは無能だった君の責任だ。
 移送の直前に奪回された上に投入人員の半数を殺される失態を犯したのだからね」
苛立ちを隠そうともせずに言う名誉顧問。
通信の相手である野戦服を纏ったテロリスト風の男が、ますます縮こまる。

 

「第一たかがナチュラルの傭兵一匹相手に我々コーディネーターが殺されるということはだ。
 君が余程おかしい部隊運用を行っていたのだろう?」
『……調査の結果ですが、あの傭兵はコーディネーターと……』
「君は本当に馬鹿だな。地球のしかも滅亡寸前の旧国家のお飾り王女の奪回に
 コーディネーターが動くわけがないだろう?」
嘲りも露に言う名誉顧問。
野戦服の男が何か言いかけるが、それを無視して通信を閉じる。

 

「さて、今度こそまともにやってくれるだろうな……
 まあ、今回はバーサーカーも一匹いるから問題ないな」
王女から女王となった今、あの小娘の利用価値は以前の比ではない。
ゆりかごで人形にしてしまえば、地球に大きな動揺を与えられる。
そこまで思考を巡らせ、喉の奥で笑う名誉顧問。

 

「……全てが終わったあとは適当に、あの聖剣の玩具に加えてやるとしようか」

 
 
 

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