SCA-Seed_GSCI ◆2nhjas48dA氏_第07話

Last-modified: 2007-11-30 (金) 19:22:48

『輸送船1、MS2。ラルディンに向かってくる。結構な速度だ。まだ視認出来ない』

 MAに変形したオオツキガタが、デブリ海の只中に機首を向けた。

「デブリの海をまともに進める輸送船なんてあるんだな……」
『船の方はデータベースで照合できた。こいつだ』

 デルタ4から送られた船舶データにシンが目を走らせる。背骨の両端にエンジンと推進剤タンクを取り付けたような形に、1つ頷いた。

「MSを繋留して運んでたわけだ。それで、どうする?」
『識別信号が出てない上に、2度の呼びかけに答えなかったから、敵だ。船から叩く』
「即決だな。威嚇射撃は?」
『しない。俺達は正規軍じゃなくて海賊だからな。アルファ3、後部熱源を頼む』
『了解。ナメられたもんだなあ。たった2機で来るか? 普通。 こっちも3機だけどよ』

 アポジモーターの光と共に、センサーに連動した長距離用レールガンを突き出した2機が姿勢を微調整した。

『3、2、1、発射』
『発射』

 淡々とした指示と復唱と共に、レールガンの砲口から微弱な電光が漏れる。一瞬後、デブリ海の中で光が2つ生まれた。

『命中。でかい方の反応が消えた。航行不能状態だろう……残り2つ、加速!』
『母船をやったってのに……ミスった、ただの海賊じゃねえ! ラルディンに通信しろ!』

 狙撃させないよう、デブリの中をジグザグに動く敵機の観測を僚機に任せ、シンは通信回線を開いた。

「ミハシラ軍だ。ラルディン、応答してくれ!」
『此方ブリッジ。どうした?』
「海賊がデブリ海方面から来る。出来るだけの防御策を取って、連合軍にも救難信号を!」
『分った。だが、何とかそっちで迎撃してくれ! 連合軍の役立たず加減は知ってるだろ!?』
「ああ……!」

 船長の言葉に嘆息し、返答の代わりとしたシンは通信を切った。公的に認知されているはずの連合軍。
彼らに対する一般的な評判を垣間見た気分になってしまったからである。

「おい……聞いたかアスハ……今は『アンタ』の連合軍だろ……」
『敵機識別。ザクファントム2機!』

 アルファ3からの報告に、遠く離れていたシンの意識が一気に現実へと復帰した。

「ザクファントム!? 警備隊にいたころは、まだゲイツRが主力だったぞ!」
『ブレイズウィザード1、スラッシュウィザード1、視認距離に入った! 来るぞ!』

 デブリ海を抜けた、ダークグレーのザクファントムが2機、シン達を挟み込むような軌道で急接近する。
背面と脚部からのスラスター光を反射し、頭部のブレードアンテナが鈍く輝いた。

『シン! ブレイズを2機がかりで止める! お前はスラッシュをやれ!』

 オオツキガタがMS形態に変形し、レールガンを背面に畳んで接近戦モードに移行した。
 ブレイズウィザードのファイアビーは火力が高い小型のミサイルを大量に放出する武装である。船尾に取り付かれ、エンジンに斉射されてはひとたまりもない。船を狙わせる事自体、危険だ。

『そのザクウォーリアより高性能らしいが……一対一だ。やれるな!?』
「ああ、やってやる!」

 アルファ3に叫び返し、シンは機体を僅かに後退させた。その場所を2機の僚機がカバーする。
 ブレイズザクのコンテナが開き、中に詰め込まれた連装ミサイルを発射。頭部機関砲で弾幕を張りつつ、オオツキガタが避け、開けたその空間をスラッシュザクが突破しようとする。撒かれた機銃弾にミサイル群が突っ込んで爆発が連なり、アルファ3の機体が構えたビームライフルの照準がずれた。光熱が虚空に消えるも、鼻先にビームを撃ち込まれたスラッシュザクの動きが鈍る。

『行け! 食らいつけ!』

 デルタ4の通信に後押しされ、オオツキガタの援護でミサイルをしのいだシンのザクが、再加速して船へと向かったスラッシュザクを追う。ビーム突撃銃を構え、3連射した。敵機が左右に揺れ、タイミングを読まれて防御された。

「まだだっ!」

 速度を落とさないまま突撃銃を持ち替え、右手は左肩のシールドからビームトマホークを抜き放つ。
 丁度その時、背中を向けていたスラッシュザクが姿勢を反転させた。両肩に背負ったビームガトリングが、その回転銃身が、僅かに動いて星明かりを受け、シンの瞳に光を映す。

「っ!!」

 浴びせられるビームの嵐を、機体を90度傾け、背部スラスターを全開し真横にかわす。
一発が右肩をかすり、装甲表面を焼いて鈍い灰色の痕となった。尚も撃ち込まれ、反撃の機会を逸し続ける。

「まずい……」

 そしてスラッシュザクを追えば、当然船に近づく。船体の細部まで見え始めた時、シンは腹を決めた。
旋回しながら、右手のビームトマホークを起動させて敵機に投げつける。ガトリングでそれが破壊されるのを横目で追いつつ、フラッシュグレネードを投げつけて逆方面に逃げた。
 辺りが閃光で真っ白に染め上げられる中、スラッシュザクのいた所目掛けてビーム突撃銃を連射しつつ、弧を描くように迫る。
 光が収まり、右肩のシールドと左のガトリングを破壊されたスラッシュザクがシンの機体を振り向いた瞬間、その頭部メインカメラにシールドのスパイクが突き刺さった。モノアイの破片が散る。
 ショルダータックルを見舞われ、吹き飛んだスラッシュザクを更に追う。メインカメラを押し潰されたスラッシュザクが、後退しつつビーム突撃銃を撃った。突き出した左肩のシールドに当たって弾かれる。
2発目は、ザクが猛然と加速し、相対的上方に移動されて回避された。

「ここまでだっ!」

 そして3発目の引き金を引く寸前、シンのザクからの1発が、突撃銃を貫通し腰部に直撃。動きが鈍った所で追い越される。斜め後ろに回りこんだザクのモノアイがレール上を滑ってスラッシュザクを睨みつける。左手のビーム突撃銃が、腰部背面に折り畳まれたビームアックスの真上に突きつけられていた。

「機体を停止させて降りろ! ……ハイドラに頼り過ぎたな。」
『シン、無事か! こちらは片付いた』
「無事だ、デルタ4! そっちは!?」
『無傷とはいかなかったが、同じく。生きているのは見りゃ、もとい聞きゃ分るだろ?』

 アルファ3の軽口に一瞬笑みが漏れてしまったシンが、表情を引き締め直す。スラッシュザクから通信を入れられたからだ。受信すると、白煙を噴く機内にパイロットの姿が映る。

『サハクの犬め! それほどの腕を持ちながら、貴様は!』
「犬呼ばわりもだいぶ慣れたよ……それより、さっさと指示に従え!」

 しかし敵は従わず、更に言い募った。

『ミハシラ軍が海賊を攻撃するのは、治安維持の為の筈だ! 何故邪魔をした!?』
「ハァ!? ……アンタ達が何やろうとしたか、分ってて言ってんのか!」

 苛立ちに任せたその言葉に、敵は軽蔑の表情で応えた。

『無論だ。我々の標的は、他ならぬアズラエルなのだ! 争いを呼び秩序を乱す根源だ!』

 その名に、トリガーに掛かっていたシンの指先に力が篭る。

「……そうか。アンタの容疑が1個増えたな」

 努めて冷静に、冷淡に聞こえるように言葉を返す。

『デュランダルは失敗し、ロゴスは蘇った! 我々は彼の失敗を取り返さねばならん!』
「それでアズラエルを殺すのか。同乗者も犠牲にして!」
『プラントの脅威を排除する為だ! 止むを得ない!』
「乗客にはコーディネイターだっているんだぞ!」
『ロゴスの汚れた金に関与するコーディネイターなど、同胞ではない!』

 噛み締めた歯が擦れ合う音が、自分の鼓膜に伝わってきた。

「……アズラエルがどんな悪人か、俺は知らない。だが、1人を殺す為に149人も殺すようなアンタ達を、しかもしょうがないの一言で済ませようとアンタ達も、俺は絶対に理解できない!!」
『その内に貴様のような飼い犬にも理解できるだろう。我々は至る所にいるのだからな』
「戦時中のクライン派みたいにか」

 シンの口から出た単語に、敵パイロットは滑稽なほどにうろたえた。

『何故……そこでクライン派の名を出す?』
「『ターミナル』に、『ファクトリー』だっけ? 戦いに勝ちさえすりゃ、テロリストも立派な英雄って事か」

 シンの瞳に冷酷な光が差し込み、ザクのモノアイが強く輝いた。

『言いがかりをつけるな! ラクス様の御名前に傷が付く!』

<彼らの偽善が暴かれ、公正がもたらされる日が、きっと来る事でしょう>

 胸の内に蘇った声が命じるまま、シンはトリガーにかけた指をほんの僅か押し込む。

「じゃあアンタがこれ以上、妙な事を口走らないようにしてやる」
『な、何を、するつもりで……』
「こうするんだ……!」
『おいシン!』

 アルファ3のオオツキガタに接触されて回線が開き、シンは弾かれたようにトリガーから指を離した。

「ぁ……ああ、何だよ?」
『なにこいつ? まだ降りないの? こういうのは……こうしてやれば万事OKだ!』

 オオツキガタのビームサーベルがスラッシュザクのコクピットハッチを浅く撫で、溶接してしまう。

『ラルディンに連絡して、セレブの皆様を安心させてやろうぜ』
「……そうだな」

 シンはそれだけ答え、ザクのスラスターを噴かしてその場を離脱した。

『船を守って頂いて感謝致します、シン』

 ミハシラ軍のMSを運んでいた輸送船内で報告を終えたシンに、アズラエルはあどけない笑みと共に告げる。

「ま、良かったですね。万一死者でも出たら、次から金持ちが乗らなくなるでしょ?」

 素っ気無く、視線を逸らしてシンが答え、少女は小首を傾げる。

『あら、別にお金持ちに乗って頂かなくとも、次からはお怪我やご病気をなさった方に乗って頂きますけれど』
「えっ?」
『ラルディンは元々、病院船として開発されました。今回はレセプション目的の航海ですが。軍艦で培った装甲技術や、MSハンガーなど、スペースを確保するノウハウが還元できると思って』
「そうだったのか……すみません」

 謝罪するシンに、アズラエルはかぶりを振ってみせた。

『いいえ。……ところでシン、私はこれから地球に降下し、オーブが主催する式典に出席せねばなりません。
一緒に来られませんか?』
「は? いや、俺はこのまま帰還しないと。司れ……サハク代表に、次の指示を受けなきゃ」

 怪訝な顔をするシンに、アズラエルは笑みを深める。

『既に、サハク様へお話を通してあります。シン次第だと、仰っておられました』
「そんな事言われたって……」
『地球にもミハシラ軍の活動拠点はありますし、むしろ地球の方が御多忙かも』

 アズラエルの言葉は事実である。Nジャマーによって起こされたエイプリルフール・クライシスの後遺症が癒えようとした矢先の、ユニウスセブン落下事件『ブレイク ザ ワールド』である。地球上のいたる所で未だライフラインが寸断されており、主要都市部以外での治安はまさに壊滅的であった。

『それともシンは、治安が守られるべきは宇宙のみとお考えですか?』
「そうは言ってませんよ!」

 シンがむきになって通信モニターに食って掛かると、アズラエルは声を上げて笑った。

『では是非お越しになって。必要ならば地上用のMSも手配致しましょう』
「……一応、サハク代表と相談して決めます。あの人の時間が今あれば、ですけど」
『どうぞ? 地球降下まで4時間はあります。充分、ご相談なさってくださいませ。では』

 彼女との通信が切れた後、シンは眉間に皺を寄せ、無重力状態に任せて身体を漂わせた。

「地球……か」

 真横の小窓一杯に、白い大気の渦を描く青の星が広がっていた。

 ラルディンに設けられた私室にて、アズラエルは通信モニターの前に腰掛けていた。

『チーフ・エンジニアのカリウスです。どういった御用件でしょうか、お嬢様』

 先程までヘルメットに押し込められていた柔らかいプラチナブロンドを撫でつつ、少女は笑顔を作る。

「連合軍から落札した、次期量産MSの開発状況はいかがです? チーフ・カリウス」
『ベイオウルフですか? ……あ、いや、これは正式名称じゃありませんがね。開発部隊の中でのコードネームなんです。で、状況は一応、計画通りですよ。試作量産機が7機出来てます』

 作業の最中だったか、機械油に汚れた顔を怪訝そうにしかめ、彼は訊ね返す。

『ま、軍に採用されたらウィンダムⅡとか名前付けられるんでしょうが。でも、何で?』
「1機だけ、別の開発プランを作って頂きたいと思って。今までの量産型も、派生モデルがあったでしょう?」
『1機だけ、ねえ……出来るとは思いますよ。最終コンペは3年後ですし、けどねえ』

 彼は尚も渋り、笑顔を崩さぬアズラエルの表情を幾度か見遣った。

『お嬢様、少し前までのワンオフ機ブームは軍需産業の癌だ、とか仰ってたような……』
「状況は変わるものですわ、チーフ・カリウス。それに、我社の特色を最大限に活かした兵器を造る、というのは、エンジニアとして興味深い課題ではなくて?」
『特色、ね……他人様には申し上げられない特色ですが、確かに誘惑には勝てませんなぁ』

 50を過ぎ、日に焼けた赤ら顔を綻ばせつつチーフは苦笑する。

『で? 具体的には何をやれと?』
「2年前の戦争で使われ、我社が残骸の一部を回収したMSがあります。お解りですね」
『さて、この通信が傍受されておらん保証がないので、言えませんな。見当はつきますが』

 父親と娘ほども離れた2人が、画面越しに薄っすらと笑い合った。

「そのリファインをやって頂きたいのです。無論、我社の特色を活かして」
『なるほど。確かに我社の特色を活かせば、予算をうるさく言われずに出来そうですな。
……あーですが、今すぐにとはいきませんよ? お遊びの前に仕事を片付けなくちゃあ』
「ええ、急ぎはしません。では、よしなにお願い致します」

 アズラエルが通信を切った直ぐ後で、横のドアが開いて秘書が入ってきた。

「お嬢様。たった今、ユニウス条約の全廃が連合、プラント合同議会にて決定しました」
「あの形骸に……随分と時間が掛かったものですね。アプリリウスの方は如何です?」
「『弾は込めた』と。発砲には最後の一押しを要する、との事です」

 その言葉に、少女はおとがいに指を当てて目を細めた。

「ふうん……そうですか」
「急がせますか?」
「いいえ、結構です。彼が待つというなら、それは必要な期間なのでしょう」

 パックに入ったフルーツジュースをストローで吸い上げて、満足げに息を吐いた。

「それに、待った分だけ愉しめる事もあると、最近気が付きましたから」

『護衛任務は無事に終了したのだな。よくやった』

 言葉少なく成功を評価したミナは、笑みを浮かべて頷いた。通信状況の所為か、映像に乱れが生じている。

「ああ、どうも。……アズラエルさんと、会って話しましたよ」
『そうか。どうだった?』
「……あの人が何考えてるか、分りません。今は、司令官の事も分らなくなりました」
『つまり?』

 俯き加減に答えるシンに、ミナは片方の眉を上げる。

「司令官は、俺に地球へ行って欲しいんですか?」
『と、いうより。お前には様々な選択を試行錯誤できる状況に居て貰いたいのだ』

 通信モニターを覗き込んだシンが首を捻る。

「選択……」
『お前が予に身を寄せたのは、今の所は成り行きに過ぎぬ。誤解を恐れず敢えて言えば、予はお前を未だ信用できてはおらぬ。あくまで、お前の中に予を利用する価値を認めたに過ぎぬ』

 淡々としたミナの言葉に、少し鼻白んだシンが頷いた。

「そ、それは……そうですよね。当然だと、思いますよ」
『かといって、甘い言葉を連ねてお前を傀儡にするつもりも無い。そういう真似は好かぬ』
「司令官は、自分の言葉を信じるな、って言うんですか?」

 シンの言葉に、ミナは小さく溜息をつく。

『少なくともお前に限って言うならば、そうだ。予も、アズラエルも、お前に対し本心で語っているなどと思ってはいけない。とある目的を持ち、お前に何かをさせようとしている。そう思え』
「はい。……なら、地球へ行こうと思います。『選択』できるように」

 緊張感をみなぎらせ、シンは頷いた。

『フ、そう硬くなる必要も無いがな。力を持った者は、皆そういう状況に置かれる……それよりシン、賊の引渡しは済んだのか?』
「ええ。デルタ4とアルファ3が連合軍に渡しましたよ。……あの、司令官」

 思い切った様子で、シンは顔を上げた。

「連合軍とザフトが役に立ってないっていうのは、結構一般的な評価なんですか?」
『そうだな。少なくとも、中立地帯における治安維持に対しては、そうだ』
「じゃあ……ミハシラ軍が公式に認知されないっていうのは、おかしいんでしょうか?」

 その言葉に、ミナは視線を鋭くさせ、冷ややかな笑みを浮かべる。

『フン、どうした……功名心でも芽生えたか』
「違います!そうじゃなくて!」

 慌てて、目の前で両手を振り否定する。シン自身、何故こんな事を口走ったのか分らなかった。アズラエルとの会話の影響は、それだけ、シンの自意識以上に深く根を降ろしていたのだ。
その様子に、ミナは声をあげて笑う。

『ハハハハッ! 冗談だ。……その理由はな、シン。ミハシラ軍の体質にある』
「体質、ですか?」
『ミハシラ軍にあるのは、実働部隊、中継基地、情報網そして賊を短期間収容するスペースと最低限の事務員だけだ。正規軍となるには、足らぬ物が多すぎる。仮に認知されても、予らにその準備は出来ん』

 ミハシラ軍が、その高機動性、高水準の人材、潤沢とは言えないまでも充分な物資、その全てを両立していられるのは、単にそれ以外を切り捨てたからに過ぎない。正規軍の体裁を整えようとすれば、上手く回っていたシステムはたちどころに機能障害を起こし、物資不足、人不足、資金不足の全てが襲い掛かってくる。そうなれば必然的に連合、プラントからの資金援助を受けざるを得なくなり、ミナは双方から同時に送られ、しかも断れないオブザーバーや軍隊間の調和に煩わされる事になるだろう。

『良いか、シン……1つだけ、見誤ってはならぬ事がある』

 一転して重苦しくなったミナの口調に、シンはつい背筋を伸ばした。

『ミハシラ軍は現在の、歴史上極めて特異な状況にのみ存在を許されている、極めて特殊な武装組織だ。
確かに、ミハシラ軍こそ連合軍、ザフトに代わる新しい治安維持部隊であるとか、彼らはミハシラ軍の能力を認め、正規軍として扱うべきだとか、そのような声はある。だが、その美辞麗句に踊らされるな。
ミハシラ軍はあくまで非合法であり、そう自覚すべきだ。それを踏み外す事があれば……』

 シンの喉が鳴った。連合と、プラント。その両者の均衡の上でバランスを取り続けてきたミナの言葉には、得体の知れぬ説得力が篭っていたからである。

『いや、言うまい……さて、地球に降りるのだな。許可する。変わらず任務に励むように』

 ミナの言葉に、シンはただ頷くばかりだった。

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