アーモリー1、軍港
「……殺されるかも知れんな」
「シンにですか?」
「ああ、俺はそれだけの事をした。
事実を知ったと時、あいつがどう動くか分かっていながらな」
アーモリー1へと帰港したミネルバが接岸した区画の前で、
局長はコートニーと主にシンを待ち続けていた。
その顔に決意と覚悟を秘めながら。
「……よう」
「……局長」
ミネルバのタラップを降り、局長が顔を見せた瞬間、叫びと共にシンは局長へと掴みかかる。
「何で……なんであんな事を!」
「シン!」
「止めなさいシン!」
シンは何人かの制止を力ずくで振り切り、胸倉を掴むと首を締め上げた。
大柄の局長の足が地面から離れ、浮き上がる。
「他に、方法が無かった」
「それだけか! せめてもっとマシな言い訳をしてみろッ!」
言い訳をするでも無く、局長はじっとシンの目を見つめる。
「……罰ならば後で幾らでも受けるさ」
「何で……なんで……」
達観したような表情で呟く局長に、シンは涙さえ浮かべると手を緩め、局長はその場に崩れ落ちた。
「シン……」
久方ぶりにみる辛そうなシンの表情に、ルナマリアはギュと胸の前で手を握り締める。
「なんで、なんでよりにもよってレイなんだ! 何で脳みそなんだ!
男とニケツしても全然楽しくないよ! 普通AIだろ!
更に言うなら、AIの人格はクーデレの女の子(最初は機械的な反応だとなお良い)に決まってるだろ!
JK!」
沈黙が辺り一帯を支配した。
「……もう二、三発ぶん殴っとけば良かったかな?」
熱意溢れるシンの魂の咆哮に、その場にいた大多数が口を開け、呆れかえって物の言えない状態の中、
ルナマリアはどす黒いオーラを背後に浮かべ、吐き捨てるように笑顔で呟く。
「もう帰ってくんな! 馬鹿!
……あれ? ん?……なんだろ? 今、ものすごく腹が立ったような……」
その頃遠く離れたガルナハンでもお昼寝中に、怪しげな電波を受信したコニールが突如奇声を発し、
近隣住人に不安を与えていた。
アーモリー1ではようやく立ち直った局長がいきり立ち、シンを殴り飛ばしていた。
「この……大馬鹿野郎っ!」
「ぐっ!」
完全の腰の入った、手加減一切無しのストレートを顔面に受け、壁に叩きつけられるシン。
「馬鹿野郎! AIの人格はナ○トライダーのKITTの時代から
ジョークも言える頼りになる男の相棒って相場が決まってんだ!
第一、俺がどれだけ苦労して、何の為にコードネームを『アスラーダ』にしたと思ってやがる!
これだから今時の若い奴は……」
馬鹿野郎はあんただ。と言う周囲の視線を気にすることなく局長は吼える。
「なん……だと……!?」
ゆっくりと立ち上がったシンの顔は驚きを隠せない。
もっとも、何に驚いてるかは知らないが。
「シン、落ち着け。 局長も自重して下さい。 ナイトラ○ダーなんて一部の人間にしかわかりませんよ」
今にも喧嘩が始まりそうな二人の間にコートニーが割って入る。
まともな人間の介入でようやく事態が収まると、周囲の人間はほっと胸を撫で下ろした。
「二人とも、何馬鹿な事で言い争ってるんですか。
そもそも、AIは機械音声で最低限の会話だけできれば良いんです。
そんな事も分からないなんて、まるでド素人だな」
「外道だ!」
「なんて事言うんですか!」
吐き捨てるようなコートニーの暴言にシンと局長は怒りに肩を震わせる。
どうも元ヴェルヌ設計局の関係者にまともな人間はいないらしい。
誰もが(もう如何でも良いやと)諦め、(これ以上関わりたくないので)立ち去ろうとしたその時。
「 一 寸 待 て 」
アーモリー1中に響く男の声と、突如現れた崖、そして逆光。
「誰だ!」
小悪党じみた台詞と共に局長が叫ぶ。
「自分のみが正しいと思い込み、自分の価値観を人に押し付ける行為。 人、それを傲慢と言う!」
「あ、あんたは一体!?」
「貴様らに名乗る名はないっ! とうっ!」
男は崖から躊躇い無く飛び降りるとそのまま着地。 ぐるりとその場で回り始める。
クルクルシュピン!
その姿にシンは、局長は、シンは、コートニーは見覚えがあった。
「サーペントテール」
「叢雲劾!」
ゴゴゴゴ! と妙な雰囲気を纏いつつ戸田verで現れた最強の傭兵。
「クーデレ、無機質、頼りになる相棒? 分かってないな。
一週間、一週間後に本物のAIをお見せしますよ!」
「色々ごっちゃじゃねぇか! 一度整理して来い!」
「ってか余計なお世話だ! 帰れ!」
低レベル過ぎる喧嘩に呆れ果て、既に周囲の人間は誰もいなくなっている。
「アレ? なんかこっちに飛んで来たな」
ふと、上を見上げ、上空から飛来する何かに気付いたシンは声をあげる。
「ん? あれは……」
「デスティニーか?」
「なんでデスティニーが? しかも色が黒い」
突如飛来した黒いデスティニー(否オウガ)にその場にいた全員が上を見上げた。
「気のせいか? こっちに向かって来てる様n……」
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Nice Destiny
『知れば誰もが望むだろう、君のようになりたいと! 君のようでありたいと! 故に許されない、君という存在も!』
「あ!? 大きな星が点いたり消えたりしている。 はははは、大きい。 彗星かなぁ? いや、違うなあ。彗星はもっと、バーっと動くもんな。 暑っ苦しいなあ、ここ。 ふぅ、出られないかなぁ? おーい、出してくださいよ、ねえ!」
「どーするのよ。 これ……」
黒いデスティニーが消え去った後、転がっている3つのミンチより酷い何か。
シンとRBのあまりの惨状にルナマリアの口から溜息が漏れた。
BAD END!