SDガンダム大外伝 伝説の再臨・第一章_04話

Last-modified: 2014-03-10 (月) 15:50:22
 

SDガンダム大外伝 伝説の再臨
第一章 ~混乱のラクロア~

 

4.

 

 闘士デュエルが繰り出したハンマーを騎士ストライクは盾で受け止める。
 左手に痺れを感じつつも、右手の剣で反撃を試みるが、デュエルは重たげなハンマーを素早く、再度振るう。

 

「そんな大剣を片手で扱おうなど!!」

 

 武器同士がぶつかりあう。力と勢いでデュエルが勝り、炎帝の剣はストライクの手から弾き飛ばされた。

 

「フンッ! 戦場では貴様の方が功績をあげていても、個々の力で劣るつもりはないぞ!」

 

 ハンマーを肩に担ぎあげるように構えなおしながら、息をまくデュエル。

 

「一対一の決闘においては負け知らずというのは伊達ではないようだな……」

 

 対しストライクは、盾に納めらた騎士の剣を引き抜いた。

 

「何故、この場所の事が分かった!?」

 

 シーゲル村長が口を割ったとは思えない。

 

「俺達は見ての通りだからさ、お前らの仲間だと勘違いして教えてくれたんだよ。そういうそっちはなんでジオン族の村にいるんだよ? ザフトについた俺らが言う事じゃないかも知んないけど」

 

 返答は戦士バスターがした。

 

「互いに平和的解決を求め、交渉した結果だ。村に争いを持ちこむ結果になってしまったがな……」
「フン、こそこそと逃げ隠れするような臆病者には良い薬だ!」
「だが、ユニオン族とジオン族の関係を考え直すきっかけを得たんだ! この希望をそう簡単に消されてたまるか!」
「ほう、ザフト帝国との戦いも和平交渉で終わらせるつもりか? ま、俺にはどうでもいい! 先も言ったとおり、俺が貴様より強いと証明するだけだ! バスター、お前はフレイ姫を確保していろ!」
「クッ……」

 

 ここで負けるわけにも、フレイ姫を捕えられるわけにもいかない。だが、デュエルを前に迂闊な行動はとれない。

 

「了解、了解。あっちの決着がつく前に確保するとしますか」

 

 万が一デュエルが敗れたとしても、フレイを人質に取ってしまえばストライクは何もできないだろう、とバスターは考えた。
 小屋の方へ向きなおると、何時の間にか入り口前に傭兵ブルーアストレイが立っていた。

 

「お? 先に出てきた奴……って、事は……」

 

 見渡すと5人いた兵士が既に全滅していた。よく見るとそのうち一人の持っていた剣をブルーアストレイは手にしている。

 

「早過ぎだっつーの! おたく、何もんだよ?」
「傭兵部隊サーペントテールの……ブルーアストレイだ!」

 

 問いに対し、剣を手元で軽く回した後、ビシッと突きつけながら答える。

 

「傭兵かよ。着の身着のままでラクロア出てきたから金あんま持ってないんだよなぁ……幾らで雇われてんだよ?」
「残念だが、サーペントテールに買収は通じない」
「チッ! 面倒な話だぜ」

 

 バスターは背負っていた槍を右手に持つ。先にストライクに仕掛けた時の斧が左手にある、珍しい組み合わせの構えだ。

 

「それじゃ、こっちも本気の勝負と行きますか!」

 

 バスターはまず槍で突きを繰り出すが、ブルーアストレイは剣を片手で持つと、ナイフでこれを受け流す。
 続いて斧を横から振るわれるが、こちらは剣で受け止めた。
 特性の違う二つの武器に対し、同様に特性の違う二つの武器で適切に対処する。巧みな戦い方である。
 ブルーアストレイがナイフで突き、剣で斬撃と、反撃する。バスターはギリギリの所で避け、槍を振るって間合いをとる。

 

「小手先の技術じゃそっちが上か……なら、パワー勝負と行きますかね!」
「フッ。力には剣、と昔から言うがな」

 

 バスターのモノ言いに挑発するように返答する。

 

「さて、どうかね。こいつの威力を見て驚くなよ!」

 

 バスターのそれぞれの手にある武器が展開する。そこから二つの武器が組み合わされ、一本のハルバード(槍斧)となった。
 牽制するように穂先を突き出す。ブルーアストレイが身をかわすと、素早く翻らせて斧の刃で斬りつける。
 斬撃を剣で防がれると、今度は足元に払いをかける。軽く飛ぶ事で避けた所を、武器をそのまま回転させて石突の部分で打ちかかった。
 ブルーアストレイは剣とナイフを交差させてハルバードの柄を受け止めたが、踏んばることのできない空中であるため弾き飛ばされた。

 

「くぉ……ッ!」

 

 地に落ちて僅かな呻き声をあげるが、すぐに起き上がる。
 斬りかかろうとするものの、バスターは突きと払いを駆使して間合いに入るのを防ぐ。

 

「なるほど……パワー勝負と口では言っても、技を捨てるわけじゃないという事か」

 

 リーチの優位性を最大限に活かす、慎重で、技術的な動きだ。

 

(厄介だな……隙が無い)

 

 敬愛するサーペントテールのリーダーの戦いぶりと、彼の教えを思い出す。焦らず、冷静に相手の動き見極め、隙を見つけ出す。
 しかし、今は長期戦になると、ストライクとデュエルの勝敗が直接こちらの勝敗につながるかも知れない。
 ストライクを信じないわけではないが、そんな博打はできる限り避けたい。こちらが先に決着をつけて向こうを手助けする方が確実だ。
 隙を見つけるのでなければ、取るべき手段は――

 

(こちらから相手に隙を作り出すしかない!)

 

 バスターの攻撃にあわせ、剣を下から強く振り上げ、ハルバードを弾き上げる。上に跳ね上がった所で、一歩踏み込む姿勢を見せる。

 

「それで崩したつもりかよ!」

 

 バスターは素早く態勢を立て直すと、引力に任せるかのように武器を振り下ろす。

 

(やはりそう来たか!)

 

 踏み込むと見せかけた動きから、逆に一歩下がる。
 目の前で、風を切りながら刃が落ちる。ブルーアストレイはそのハルバードめがけて、力一杯剣を上から叩きつけた。
 激しい金属音が鳴り、安物の剣は途中から折れ、先が宙を舞った。

 

「なッ!? ぶ、武器を狙って!?」

 

 剣は砕けたが、目的は達した。バスターのハルバードは刃の部分が地面に埋まるように深々と刺さっている。
 引っこ抜く暇は与えない。今度こそ自分の間合いへと入るべく踏み込む。
 バスターは慌ててハルバードの連結を外し、斧をあきらめ槍で迎撃を試みる。
 だが、それがブルーアストレイの次の狙いだった。

 

「げッ! また武器かよ!?」

 

 槍の接合部分。斧から外され、展開状態になってまま元に戻り切っていない場所を、折れた剣の残りで砕かれた。
 斧を迎え入れるために開いていた部分はもちろん、脆い。

 

「やれやれ。油断しちまったな」

 

 槍の柄の部分だけを構えながら、バスターは溜息をつく。
 ブルーアストレイは地面に深く刺さった斧を強く蹴りあげ、浮き上がった所を手に取った。

 

「それではもはや勝ち目はあるまい」
「さて、どうしたもんかね……」

 

 バスターは隙を見せないように注意しながら視線を僅かに横へ走らせる。
 同様に注意を払いつつその視線の先を見ると、そちらではストライクとデュエルの戦いが続いていた。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「ふんッ!!」

 

 デュエルが気合を入れながらハンマーを振り回す。
 ストライクは大振りの攻撃は避け、確実に当てにきた小ぶりな攻撃は盾で防ぐ。強い一撃を無理に受けると、盾を握る力に影響されてしまう。

 

「せいやッ!!」

 

 時折、反撃を繰り出す。デュエルも流石にそうそう大きな隙は見せず、これらの攻撃を防いで見せる。

 

「流石に鋭い攻撃だな! 訓練で戦った時とはわけが違う!!」

 

 ハンマーの強烈な振り下ろしの一撃。かわしたものの、打ちつけられた地面から土砂が撒き散らされ、たまらず距離をとる。

 

「そちらこそ、全力の一撃がこれほど重いとは思わなかったぞ!」

 

 大型のモンスターすら一撃で打ち倒す威力があるのは知っていたが、打撃武器には精通していないのでそれがどれ程のものかは知らなかった。

 

「パワーなら絶対に負けん! だが、貴様の技はまだ本気を出していないな?」
「むっ……」

 

 確かに、本気とは言えない。これ以上の力で挑めば、勝った時は相手の命を奪う危険性が高い。元は仲間である相手にそこまでするのは躊躇われた。

 

「貴様! それは闘士でる俺への侮辱であり、騎士である貴様自身の恥だ! これは決闘だ!!」

 

 叫びながら、長柄のハンマーを頭上で大回転させる。

 

「俺は純粋に貴様と戦う事だけを望んでいるのだ! そのためにザフトについたが、それでも貴様は本気で戦えないとぬかすか!? なら俺のした事の意味はなんだ!?」

 

 ハンマーを地面に叩きつける。爆発するかのような音が激しくなり、先ほどよりも激しく土砂が吹き上がった。

 

「戦え、ストライクッ!! 俺にとってはザフトやラクロアなどどうでもいい! 男と男の一対一だッ!!」

 

 その時、ふとストライクは理解した。デュエル達がザフトに与した真の理由を。
 剣をデュエルの方へと突きつける。

 

「……いいだろう。全力で相手をしよう。ただし、私が勝った時は、自らが劣る事を認めてもらうぞ」
「構わん。それが結果だからな。それに、その時に生きているかどうかは分からんしな……」
「そして、私が負けた時は、ラクロアに帰ってきてもらいたい。私が決めた事だ。例え、この身がここで果てようとも、お前に責は無いものとする!」
「……それも構わん。ザフトにいる理由もなくなるからな」

 

 敗北した時の事を語るストライクに面をくらったようだが、合意の応えが返って来た。

 

(やはりか!)

 

 イージスが裏切ったあの時、ルージュが操られている可能性を示唆していた。
 そして、王をを暗殺した侵入者は魔道士だった。魔術で操られている可能性は考えられた。
 しかし、ラクロアの精鋭たるものがそう簡単に操られるものとは思えなかった。何か、重要となる要素があるはずだ。
 精神を操る魔術なら、要素となるものも精神的なものだろう。それは、それぞれの心のうちに抱える、ラクロアを裏切る事に繋がる何かではないかと思った。
 イージスならば、己の中に流れる血に対する苦しみ――そしてデュエルは、彼より優れていると評価される自分への対抗心だ。
 彼らの心の内にあるその部分を解消させる事ができれば、あるいは元に戻せる可能性がある。

 

(光が見えた……だが、今ここでデュエル負けるわけにはいかない)

 

 ラクロアの事を他人任せにするつもりはない。それに、今ですら本気でない事が見抜かれている。負けるように手を抜く事などできはしない。

 

「勝負ッ!!」
「行くぞおぉぉぉぉぉッ!!」

 

 同時に走り出す。
 デュエルが勢いのままにハンマーを打ちつけてくる。ストライクもまた、走る勢いのままに盾をぶつける。
 武器と盾がぶつかり合う激しい音が鳴り響く。衝撃のあまり盾が手から離れるものの、ストライクはその一撃をなんとかいなした。

 

「はあぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 剣を一閃させる。デュエルの腰から胸までが斬り裂かれ、血が吹き出た。

 

「ぐぁッ……ぐっ、うっ、おぉぉーッ!!」

 

 だが、デュエルは痛みを無視するかのようにハンマーをふるい、ストライクの胸元を打つ。

 

「ぐはッ!?」

 

 数メートルの距離を激しく吹き飛ばされ、地面に落ちて転がる。鎧にへこみができた胸元を抑えつつも、なんとか立ち上がる。
 デュエルもストライク同様、胸元を抑え、なんとか立っているという状態だった。
 斬撃をくわえた時、手応えで浅いと感じた。デュエルの鎧の分厚さを甘く見ていた。咄嗟に自分から後ろに飛んで衝撃をある程度逃がしたが、ダメージは互いに少なくない。

 

「ぐぅ……そのダメージで、盾も失って、次の一撃を防げるか!?」

 

 デュエルは何とか両足で地をしっかりと踏みしめ、ハンマーを掲げる。

 

「そ、それはこちらの台詞だ。まだ私の運も尽きてはいない!」

 

 ストライクは剣を捨てる。偶然にも、先に弾かれた炎帝の剣がすぐ近くに落ちていた。そちらを拾い、今度は両手で構えた。
 両者は睨み合う。裂傷で出血しているデュエルの方が長引けば不利だ。時を待たずして必ず仕掛けてくるとストライクは予想した。
 だが、そこで横槍が入った。

 

「悪い。こっちは完全に不利だ」

 

 バスターがブルーアストレイを牽制しながらデュエルの傍らに移動してきた。

 

「チッ! 何をやっているんだ、お前は!」

 

 悪態をつくデュエル。だが、バスターは飄々とした態度を崩さない。

 

「そうは言っても、デュエルも結構ヤバそうじゃないか」
「違う、状況は五分だ! とにかく、そっちはそっちで何とかしろ! 俺は今から決着をつける!」

 

 もはやバスターの方に意識は向けず、ストライクを見据える。だが――

 

「怪我の具合がヤバそうだってんだよ……これ以上、無理をするんじゃねぇよ」

 

 バスターは穂先が無くなった槍の柄で、後ろからデュエルの首筋を打ち据えた。

 

「き、貴様……一体、何を……」

 

 デュエルは意識を失い、倒れる。
 突然の行動に、ストライクもブルーアストレイも呆然となった。

 

「俺はまあ、そう簡単に命を捨てるつもりはないからさ。降参するぜ。で、まあ、お前が死んで俺だけ投降ってのは流石に酷いと思ってな」

 

 槍の柄を放り捨てる、両手を上へとあげた。

 

「決闘を止められる方がお前は嫌なんだろうけどよ。ま、個人的にはそんな簡単に死んで欲しくないってのもあるんでな」
「……ザフト帝国に忠誠を誓ったりしているわけではないのか?」

 

 ストライクが尋ねると、バスターは皮肉げな笑みを浮かべた。

 

「いや、別に。ぶっちゃけると、元々ラクロアにだってそんな忠誠心とかあったわけでもないしな。今回の事だって他の奴らがザフトについちまったから、俺一人反対しても殺されるだけだったしな」

 

 何の事は無い。国や勢力などに拘らない個人主義的部分、それがバスターの心を操られた部分だったのだろう。
 小さな村での小さな――しかし、激しい――戦いは、こうして幕を閉じた。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「それで、この二人はどうするの?」

 

 縄で縛られたデュエルとバスターを恐々と見ながら、フレイは尋ねた。

 

「投降したと言っても、魔術で操られている疑いがある以上、連れて行く事はもちろん、そう簡単に解放する事もできません」

 

 いつまた敵になってしまうか分からないし、急ぎの旅である以上機動力が落ちる事は避けたい。

 

「そもそも俺は投降などしていない!!」

 

 デュエルが吠える。彼の傷は一応、応急処置が施されている。

 

「まずはこの村に勾留するしかあるまい。これからサーペントテールの仲間を呼んで、こちらで預かろう」

 

 ブルーアストレイはそう言いながら、戦いが終わったのを確認しにきたシーゲルとラクスの方を向く。

 

「ラクス嬢、伝書ハロで俺の仲間達に連絡をとってくれ」
「承知しました」

 

 ラクスは自宅の方へと歩み去った。

 

「村長さんの娘さん、ハロを飼ってるんですか?」
「ああ、色とりどりな結構の数を飼っているぞ。我々との連絡手段としても重宝している」
「い、色とりどりですか……」

 

 ふと聞いてみた事への意外な答えに、キラは呆気にとられた。

 

「サーペントテールの仲間には魔術に詳しい者もいる。ひょっとすると、彼らにかけられた魔術を解除できるか、解くためのヒントくらいは得られるかもしれない」
「それはありがたい。すみませんが、後を頼みます」
「魔術ですか……ふむ……私の知り合いにも、連絡をとってみましょうか」

 

 シーゲルがそんな提案をしてきた。

 

「いいんですか? 本当に何から何まですみません」

 

 流石にフレイも頭を下げる。

 

「いえ、これも交換条件のようなものですから」
「分かっています。この村の事は、ユニオン族とジオン族に良好な関係を築くことができるその時まで、胸の内にしまっておきます。もしその時が来たら、ぜひラクロアにおいで下さい」
「そうですね……人前に戻るとしても、罪を被せられたアルガスでは難しい。その時はよろしくお願いします」

 

 ラクロアの姫君と元ムンゾ公の村長は、友好の握手を交わした。

 
 

 ストライクはデュエルの元へと歩みよった。

 

「君が望むならば、今回の決着はいつか必ずつけよう。だが、先にそちらが言ったとおり、ラクロアやザフトはもはや関係ない。私と君の決闘として、だ」

 

 デュエルは顔を上げ、睨みつけるようにストライクを見る。

 

「……必ず、だな?」
「すまないが、今の私はまずやるべき事がある。だが、それが終わった時は、必ずや」
「……分かった。覚悟しておけよ」
「そちらこそ。次に戦う時までに私はもっと修行し、研鑽をつけ、強くなるつもりだ。決闘以外にも必要となる事だからな」
「フン。俺もこの縄が解けたらすぐに貴様を倒すべく強くなってやる!」
「ああ、楽しみにしている」

 

 ストライクは強くうなずいた。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 翌朝。アルガスへ向けて、改めて出立する時が来た。

 

「フレイ姫、騎士ストライク、気をつけて。必ず、ラクロアを救ってださい」
「ええ、分かってるわ」

 

 キラは村に残る事になった。馬を失った以上、ついてきても足手まといにしかならないと自分で判断したからだ。それに、デュエルとバスターを任せっ放しというのもどうかと考えた。

 

「これを持って行け」

 

 ブルーアストレイは一枚の書状をフレイに差し出した。

 

「これは?」
「アルガスの騎士団長を務めている俺の兄への紹介状だ」
「騎士団長!?」

 

 ストライクは驚きの声を上げた。傭兵をやっているような者の兄が、それほどの地位にいるとは思わなった。

 

「驚いたかもしれないが、家を長兄が継いで、弟の俺たちは好き勝手やらせてもらっている。そういう家なだけだ」

 

 ブルーアストレイは軽く笑いながら答えた。
 ムンゾ公であったシーゲルとの縁とは、その辺りにもあるのかもしれない。

 

「それがあれば、万が一アルガスの協力を得られなかったとしても、兄が少しは手を貸してくれるだろう」
「ありがとう。じゃあ、私達は行くわね」

 

 フレイが礼を言う。そして、ストライクを連れて村を出た。

 

「お気をつけて」
「あなた方に黄金神の祝福があらん事を……」

 

 シーゲル父娘にも見送られながら、森の中を進む。村はすぐに木々の間に隠れ、見えなくなった。
 村が見えなくなると、二人はもう振り返ることはせず、アルガスへ向けて進んで行った。

 
 

 <第2章へ続く>

 
 

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