SEED-クレしん_06-601_01

Last-modified: 2009-06-25 (木) 19:48:11
 

嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦 異聞
その壱 「シンと又兵衛が出会ったら」

 
 

 それは、ある日の昼下がり。いつものごとく野原家にて……

 

みさえ 「しんのすけ!散らかしたおもちゃ、さっさとおかたずけしなさい!」
しん  「ほ~い……めんどくさいなあ、もう」

 

シン  「ただいまー!しんちゃんにみさえさん、大黒屋のいちご大福、買ってきたよ~」
マユ  「おじゃましま~す♪うわあ、すごい散らかりようですねー」
レイ  「……どうも。さっきそこでシン達とばったり会ったもので」
みさえ 「あら、みんないらっしゃい!
     それにしてもシン君、わるいわね……おやつの買出しなんかに行かせちゃって」
シン  「いえ、そんな別に」

 

しん  「おお~?わ~い、おつやおつや~~♪」
みさえ 「しんのすけは、おかたづけが終わるまでおやつは無し、よ!」
しん  「むう~~~!横暴だゾこの妖怪ケツでかお婆~~~!」
みさえ 「な、なんですってえーー!」
シン  「ま、まあまあ……俺も手伝うから。さっさと片付けて、みんなでおやつにしよう、な?」
しんの 「ほ~い」
みさえ 「まったくもう……」

 

   ※   ※   ※

 

シン  「しっかし色々あるな。アクション仮面の人形に、シリマルダシに……
     あれ?この刀は何?これもおもちゃ?」
しん  「あ!それ、おらの1番大切な宝物だゾ!乱暴に扱っちゃダメ!」
シン  「あ?ああ、うん……ねえしんちゃん。この刀、ちょっと見せてもらってもいい?」
しん  「別にいいけど?どうしたのシン兄ちゃん?」
シン  「いや、何となく……ちょっと気になってね」

 

 シンはその脇差を鞘から抜くと、しばらくその刀身をじっと見続けた。

 

しん  「シン兄ちゃん。ど、どうしたの?」
シン  「不思議だ。俺はこの刀を……いや、この刀を持っていた人を知っているような気がする。
     なんでだろう……」
しん  「え?その刀は、おらがお又のおじさんから貰ったものだゾ?」

 

シン  「う~ん……あれはそう……そうだ!
     あれは俺やレイ、ルナがアカデミーでまだ訓練生だった頃だ!
     俺とレイはあの時、不思議な体験をしたんだっけ。今まですっかり忘れてた……」
レイ  「シン。お前……思い出したのか?やっと」
しん  「え?え?なになに?どういう事?」
マユ  「私も聞きた~い!そのとき何があったの?教えてよお兄ちゃん」

 
 

シン  「あれは確か、俺にレイやルナがまだアカデミーで訓練中だった頃だ。
     あの時……あの時俺は、いや俺達は……」

 

 

~C.E.72年……プラントのザフトの軍事時訓練施設アカデミーにて~

 

レイ 「シン、待て」
シン 「……何だよ。レイまで俺にお説教しようってのか?」
レイ 「そうじゃないが……やりすぎではないのか?
    いくら訓練とはいえ、教官をあそこまで半殺しにしなくても……」

 

シン 「アイツがなんのかんのと、ごちゃごちゃ言うからさ。
    戦場じゃとにかく相手をぶっつぶしちまえばいいんだろ?
    それをあの野郎は作戦だの、軍規だの、命令だの余計なことをぐだぐだと……
    戦争でそんな生易しい事を言ってちゃ何も……何も守れやしない。なにも、な!」

 

レイ (あいからわず滅茶苦茶なヤツだ……
    が、だからこそ俺はコイツを、シン・アスカという男を買っているのかもしれない。
    元々の立場は違えど、今は互いに失うものがないからこそ己を捨てて戦える。
    大きな素質を秘めながら、その頭の中は戦争への怒りと憎しみで単純明快。
    いずれ……来るべき戦いにいい手駒として使えそうだな、この男)

 

シン 「……ん?どうしたレイ。俺の顔をじーっと見て……俺の顔になんか付いてるのか?」
レイ 「いや、なんでもない。それよりシン……」

 

ザフト兵A 「そ、そこの2人! 危ない!どけーーーー!」

 

シン 「……え?うわ!MSがこっちに向かって倒れてくる!」
レイ 「シン!逃げろ!」
シン 「だ、ダメだ!間に合わな……」

 
 

ドスゥゥゥゥゥン………!

 
 

ザフト兵A 「あ……あ……あの2人、倒れたMSの下敷きになっちまった!」
ザフト兵B 「ぼ、ぼやぼやすんな!まだ生きているかもしれないだろ!人手を集めて、急いで救助するんだ!」
ザフト兵A 「あ、ああ!」

 

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

 

シン  (………ここは……どこだ? 俺は……死んじまったのか……? それならそれで、別にいいや……
     父さん達がいる所に……俺も行けるんな……ら……)

 

わー……! わー………!

 

シン  (……んだよ。あの世にしちゃ、妙にうるさいなあ……)

 

ザシュ!

 

シン  「どわあっ!?」

 

 目の前に矢が突き刺さり、それを見たシンは思わず跳ね起きた。そしてシンが見たものは……
 物々しい鎧兜を着て、槍や弓を手に戦う武者達の戦闘であった。

 

シン  「な、なんだよこれ……あの世にしちゃ妙に血生臭い所だな?」
侍   「よし!押し出すぞ!鉄砲隊、弓隊さがれ!槍隊前へ!」

 

シン  「おお?向こうの軍?とあっちの軍、つまり……戦っている両軍、か?が突撃してきたぞ……
     そしてその激突が予想される地点に俺が………って、それ俺がやべえって事じゃねえか!」

 

騎馬武者 「む、怪しい身なりの男!春日の1番槍だな!いざ推参!」
シン   「い、いや俺は……ええい、くそ!」
騎馬武者 「なに?……うぐぉ!」

 

 シンは騎馬の侍が突き出した槍を避けながら、その槍を手で掴んで引っぱった。そして侍の体勢が僅かに崩れた瞬間に、おもいっきり跳び上がり、侍の顔面に回し蹴りを叩き込んだ!

 

シン  「はあはあ……これでも一応、軍人の端くれなんだぜ。これくらい……うわ!」

 

 休む間もなく、四方八方から槍や刀が迫ってくる。
 シンは奪った槍でどうにか応戦するが、数が多いのと槍の有効な使い方を知らない為に、だんだん疲労し押されていく。そこへ……

 

足軽  「もらった!」
シン  「う、後ろから?うわ!」

 

ザシュ!

 

足軽  「う?うぐ……!(ばたっ)」
シン  「……え?」

 

??? 「ふう。大丈夫か?シン」
シン  「レ、レイ! お前もここに来ていたのか?!」
レイ  「ああ。ここから大して遠くない所に放り出されていた。
     それでとりあえず様子を見たんだが、ちょうどその時シンが馬に乗った男に
     回し蹴りを喰らわすのが見えたものでな」

 

シン  「そ、そうか。とにかく今はこの場を脱出しようぜ。
     正直なにが何だかよく分からないけど、このままじゃ俺達の命の保証は無いってことだけは確かなようだ」
レイ  「了解だ。1点を集中して、この戦場を突破する……付いて来い、シン!」
シン  「おお!」

 
 

 シンとレイは、そこら辺に落ちている槍や刀を拾って、戦いつつも戦場を脱出するべく走り続けた。
 しかし……いくらコーディネイターであろうと、軍の訓練生であろうと。訓練だけで実戦をを知らない2人には……これはあまりにも、あまりにも早すぎる「初陣」だった。

 

   ※   ※   ※

 

シン  「はあ、はあ……
     くそ!こんな、こんなライフルよりも重いもん振り回して、よくこんなに戦えるなこいつ等!」
レイ  「確かにな。俺達は刃物なんてナイフ格闘ぐらいしか習わん。
     こんな長刀や槍を振り回し、かつあんなに重そうな鎧を着込んで戦うとは……
     ここの連中はどんな体力しているんだか」
シン  「後少し、後少しでここから抜けられる!頑張れレイ!……ん?」

 

 シンとレイが向かう先……1人の騎馬武者が多数の足軽に囲まれて苦戦していた。

 

シン  「ぐっ!もう少しだってのに、あんな所で斬り合いなんかするなよ!
     レイ、俺達の体力も、もう限界だ! ここで回り道をするより、いっそのこと!」
レイ  「うむ。正直体力的にキツいが……やるか!はああああ!」

 

??? 「む?敵の新手……いや、違う?」

 

 2人は最後の力を振り絞って、侍に群がっていた足軽を蹴散らした。
 しかし、さすがにシンもレイも疲労が限界にきたようで……足軽を追い払うと、その場に座り込んでしまったのだった。

 

シン  「はあー、はあー……も、もうダメだ……手も足も、全然動かねえ。こ、ここまでか……」
レイ  「くう……な、情けない。アカデミーでは首席だと言っても実戦ではこのザマ……か」

 

??? 「お主たち!お陰で助かったぞ。下手をすれば、危うく討ち取られる所であったわ」
シン  「別に……はあ、はあ……あんたを助けたわけじゃねえよ。ただ俺達は、死にたくなかった……だけだ」
??? 「む?そうか。だがお主達の武勇、かなりのものと見た。着ている物も変わっておるが……異国の者か?」
レイ  「分かりません。第一ここがどこなのか、なんで俺達がここに居るのか、それさえよく分からないんですから」

 

??? 「ふむ……もうすぐこの合戦も終わるな。岩月にしてみれば、今度の戦は所詮様子見ゆえ……
     のう2人共、いくさが終わったら、わしと一諸に春日の城に来ぬか?
     あれほどの武勇だ。きっと殿も、そなた達を召抱えたいと思うだろう」

 

シン  「なんだと!冗談じゃない!なんで俺達がお前らの戦争の手助けなんか……!」
レイ  「待てシン。これはチャンスかもしれない。俺達はあまりにも現在の状況について情報不足だ。
     ここはあえて、この男から情報を引き出すのも1つの手だと思う」
シン  「う、う~ん……まあ、レイがそう言うなら……」

 

??? 「どうする?わしと共に行くか? いやなら無理に引き止めはせんが……?」
シン  「……分かった。行ってもいい。だが……その前にあんたが何者か、それぐらいは教えてくれ」

 

??? 「おお……これは失敬。拙者、名を井尻又兵衛由俊。
     春日の国を治めし春日和泉守康綱さまの家臣にして、侍大将を任されておる」

 
 

 これが……俺と又兵衛さんとの出会いだった。
 偶然か必然か、なぜか来てしまった戦国の世で……俺とレイはこれから自分達がどうなるか、この時はそれだけしか考えていなかった。
 でも今思えば何か意味があったのかもしれない。俺達がこの異世界の、それも過去に来たことに……何らかの意味が。

 
 

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