機動戦士ガンダムSEED DESTINY
第50話 「真なる闇の始まり」
暁の宇宙で、ラクス・クラインら率いるオーブ軍とギルバート・デュランダル率いるザフト軍の決戦が行なわれていた。
だが……大勢は決した。ザフトの象徴でもある新型機デスティニーとレジェンドは地に落ち、レクイエム発射基地も破壊された。
今デュランダルの居る移動要塞メサイアは、ミーティア装備のフリーダムに一放的な攻撃を受けている。ザフト軍が全面降伏するのも時間の問題といえた。
そんなメサイアの司令室でデュランダルがひとり、もの思いに耽るのであった。
ギル 「負けた……か。どうやら私もここまでのようだな……
だが何故だ? 何故ここまで上手く事を運んでおいて最後の最後になって私が敗れるのだ?
なぜ……」
その時、デュランダルの目の前に立体スクリーンがひとつ現われた。
それに写ってるのは金色の髪と挑戦的な目をしたひとりの少女……その名は。
ギル 「カガリ・ユラ・アスハ……?
驚いたな。まさかこの状況でメサイアのホットラインに繋げてくるとは……
それで何の用かね? 敗者である私を嘲笑いにでもきたのか?」
カガリ 『……そうさ、笑いにきたんだ、わざわざ…… 哀れなる道化の末路をな。ククク……』
ギル 「な、なに……?」
デュランダルは瞠目した。
だれだこの少女は? 少なくともアーモリーワンで会った、理想論ばかりを振りかざす未熟で平和を小賢しく語っていたあの小娘ではない!
誰だ? 今わたしの前にいるのは一体誰だ?!
カガリ 『あんた、さっき言ってたな?ここまで上手く事を運んでおいてどうして負けた、とね?
ははは!おめでたいヤツだな!本気でそう思っているのか?!……逆、さ。
ギルバート・デュランダル、あんたの今日の敗北は最初っから決まっていたのさ』
ギル 「な、に……?」
カガリ 『あんたの敗因はただひとつ、アレックス・ディノ……いやアスラン・ザラをザフトに復隊させたことさ』
ギル 「バカな!よりにもよってアスランだと?あんな、結局何の役にも立たなかった男に何が……」
カガリ 『もちろんあんたは知らない。
アスランが私のボディガードである以前に私、カガリ・ユラ・アスハの子飼いの側近であり……
私の愛人であることをな』
ギル 「あい、じ……はっ! ま、まさか……まさか!」
カガリ 『そうさ!
アスラン・ザラは、私がプラントとザフトの状勢を探らせる為に潜り込ませていたスパイなのさ!ははははっ!
それをあんたはパトリック・ザラの息子!ヤキンドゥーェの英雄!そんな肩書きとアスランの能力に目がくらみ、
わざわざ自分からアスランをザフトに復隊させてくれたのさ!それもザフトレッド!それもフェイス!
さらには新型機セイバーを与え、ザフトの最新鋭艦ミネルバに配属ときたもんだ!笑いが止まらなかったよ!』
ギル 「そ、それで……アスランに情報の横流しをさせていた、というのか?
バ、バカな! あのお人好しのアスラン・ザラがそんな!」
カガリ 『まあ……あいつは妙に優しすぎる所があるからな。
そこがまたあいつのいい所でもあるんだが……常に罪の意識には苛まれていたようだ。
そのせいでMSでの戦闘に影をおとしていたかもしれん』
ギル 「な、何故だ?なぜこんなことをした……?なぜ……」
カガリ 『冥土の土産に教えてやろう。
まず1つ、私の統治になにかと干渉してくるセイラン親子を始末するためさ。
私が何の為に莫大な税金を投じてまでアークエンジェルやフリーダムを所有していたと思う?
まず私は一時的にキラ達の助けでオーブを離れる……
そうすればユウナは必ず私の代理としてオーブの実権を握り、バカなことをやらかすだろう?
機を見てオーブに帰り、それをネタにユウナ達を更迭するつもりだったのさ。
まあ……まさかザフトと戦争までするとはさすがの私も思わなかったけどな♪ははっ』
ギル 「く、狂ってる!その為にどれだけの国民が犠牲になったか!君は」
カガリ 『おいおい。ジブリールにわざとプラントを撃たせたり、
そのレクイエムでアルザッヘルの連合どもを皆殺しにしたお前に言われたくないね。
とにかくこの計画を成就させるためには、ザフトの動向を常に知っている必要があったのさ。
どこでどう都合良く利用できるか分からないからな。
それと2つめ……それはもちろん我がオーブがこの地球圏を支配すること、さ!』
ギル 「……」
カガリ 『結果は見てのとおりさ。
私に操られたキラにラクスにアスラン……こいつらに敵う軍隊はもうこの世に存在しない!
ここまで持ってくるのにいい加減演技も疲れたが、その甲斐はあったようだな?』
ギル 「わ、私は……踊らされていた、というのか?
始めから終わりまで……この小娘の手のひらの上で!」
カガリ 『ま、そういう事だな♪うん。
そろそろ……お前に引導を渡す死神が到着する頃だからさ、まあ仲良くしてやってくれな?』
ギル 「き、貴様……!貴様! カガリ・ユラ・アスハァァァ!」
カガリ 『ああ……そうそう最後にひとつ。私は色々な人物に融資しているんだ。
ユニウスセブンを落して、またナチュラルと戦争したいというテロリスト、
ラクス・クラインを何故か敵視するザフトの元特殊部隊、それに……
ああ、ミーアとかいうブスアイドルのマネージャーにも融資していたな。
みんな戦争を起こすために、キラ達にあんたを危険だと思わせるためにいい仕事をしてくれたよ♪
じゃな』
ブッ……
通信が途切れた。
デュランダルは茫然自失としてそこに座り込んだままだ。
ギル 「た、確かに……上手くいきすぎると思ってはいたのだ……
だ、だがまさか全てあの小娘が仕組んでいたとはな!
ラクス・クラインでもロード・ジブリールでもなくユウナ・ロマ・セイランでもない!
よりにもよって一番の小物だと思ってたあの小娘、カガリ・ユラ・アスハだったとは!
し、知りたくなかった! 知らなければあるいは悠然と最後を迎えられたかもしれなかったのに!
おお……!」
その時。メサイアの司令室に踏み込んでくる影がひとつ……キラ・ヤマトが……来た。
キラは黙って銃をデュランダルに向ける。
ギル 「……君は……分かってやっているのかね? 平和な世界の為に、君が本当に戦わねばならない相手は……」
キラ 「……覚悟は、ある。僕は……カガリと戦う!」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
……C.E.3年。ここにひとつの戦争が終わった。
果たしてこれで世界は平和になるのであろうか?
その答えを出すには幾らかの時間が必要であろう……3年という時間が。
ネネちゃん「……と、いうわけで……実は種死における戦争の、全ての黒幕はカガリさんだったのよ!」
「「「「な、なんだってーーーーーーーーーー?!」」」」
風間君 「い、いやでもあれが全部演技だったなんてそんな……!」
ボーちゃん「でも、そう言われてみれば、思い当たるふしも、ある」
マサオ君 「そうだよねえ……
フリーダムやアークエンジェル、アカツキといった規格外の兵器を密かに持ってたりしてたもんね?」
しん 「いやあ~今明かされる、衝撃の事実ですなあ~」
ネネちゃん「でもね、問題はそれだけじゃないのよ。
例えば……ラクスさんがこっそり軍備を整えていたでしょ?あれはおかしいわ。
ラクスさんがいくらお金持ちだからって、どこから戦争を遂行できるだけの資金を捻出できたのかしら?」
風間君 「それは……その、ラクスさんのシンパというか後援者の人たちが資金援助してくれるんじゃ……?」
ネネちゃん「それにしたって限度があるわ。……みんな、これを見てくれる?」
しんのすけ「なにこれ? 数字がいっぱいの紙が沢山あるゾ~?」
風間君 「これは……領収書とか決算書類とか、かな?」
ネネちゃん「これらはあるルートから手に入れた極秘資料よ。調べたところ大変な事が分かったわ……
そう、これらの書類がなにを意味するのか?
それは……オーブ政府から第3者機関を通してラクスさん個人に資金援助されている!
その事実をこの資料は証明しているのよ!」
「「「「な、なんだってーーーーーーーーーー?!」」」」
ルナ 「……さっきから何してるの?しんちゃんたち……」
アスラン「ネネちゃんが朝ごはんを食べながら思いついた、
でっちあげの最終回シナリオと資料で種死がテーマのMMRごっこをしてるんだと」
シン 「で、でも妙にリアリティがあって……とてもでっちあげとは思えないなあ……(汗)」
その後ろ……物陰に隠れてその光景を見ている人影が……
カガリ 「ネネちゃん……恐ろしい子!」